初めて会うけど 流石は二人の師匠だよ
自分の「正義」をしっかり持ってる









〜第三十六話 師との対面〜








「エド……か?」





笑顔を強張らせたままのエドにオジさんは
思い切り手を伸ばして







「よく来た 大きくなったな」





力一杯頭を撫でた うわー縮みそう…







「こっちは?」


「アルフォンスです ご無沙汰してます」


「そうか、すごく大きくなったな」





アルの頭を撫でてから、オジさんが私を
不思議そうに見て二人へ訪ねる







「この子は?」


「エドのフィア…冗談、冗談だって〜
ワケあって二人と旅していると言います」


「そうか…女の子が旅をしてるなんて大変だろう」


「いえいえそれほどでも…オジさんがエドと
アルの師匠なんですか?」





聞くとオジさんは首を横に振る





「二人の師匠は家にいるよ…急にどうした?」


「師匠に教えてもらいたい事があって…」





オジさんはお兄さんに店を任せて私達を案内する







どうやら二人の師匠は元々病弱で、今日は
元気な方だという話だそうな







「起きれるか?」


「大丈夫 今日は少し体調いいから」





呼びかける窓の向こうから返るのは女の声





「…君達の師匠って女の人なんだ」


「うん……でも師匠、具合悪くて寝てたんだ」


「また身体悪くなったんじゃねーの?」





扉の前で小声で言葉を交わす内に、軽い足音が
ドンドンこっちに近づいてきて







開いたドアから伸びた足がエドを蹴飛ばした





「もぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…!!」


いきなりの展開に青くなって壁にへばりつく
アルと目を丸くする私の前に





「お前の噂はダブリスまでよ〜く届いてるぞ
この馬鹿弟子が 軍の狗に成り下がったって?」





機嫌悪そうに細身でドレッドの人が現れる







「何とか言え!!」


「無理だよイズミ」





答えるオジさんが 血塗れのエドを摘む


うーわ あのエドがここまで…こりゃ二人が
怖がるのも無理ないね、うん





案の定逃げようとしたアルに師匠が気付く







「あっ…おっ…弟のアルフォンスです
師匠っっ あああ、あのっ」





面白いぐらい慌てふためくアルに





アル!随分大きくなって!」





師匠は笑顔で手を伸ばし、恐縮しながら
その手を握り締めたアルは


あっと言う間に投げ飛ばされた







「鍛え方が足りん!」







おぉ〜アルまで手玉に取るとは流石師匠!







あれ…でも確か話では…





「師匠具合悪いんじゃなかったんですか〜?」





同じように疑問に思ったアルが情けない声で言う







何を言う!お前達が遠路はるばる来たと
言うからこうして」


怒鳴っていた言葉半ばに、師匠の口から
勢いよく血が溢れ出す





「無理しちゃダメだろ ほら薬」


「いつもすまないねぇ」


「お前、それは言わない約束だろう?」


「あんた…!」





仲睦まじく抱き合う師匠とオジさんを二人は
虚脱しまくった顔で見ないフリ


なるほど このオジさんは師匠の旦那さん





正に美女と野獣のバカップル!これは面白い!







「え〜と 改めて」


「お久しぶりです」





畏まって挨拶をする二人に笑顔を向け





「うん、よく来た!」







エドの頭を叩きながら師匠は言って、そこで
ようやく私の存在に気付く







「…で、この娘さんは?」


「ワケありで二人と旅をしている
ちゃんだそうだ」


「ニャハハ、初めまして〜」





愛想良く笑うと あっちも笑い返してくれた





「初めまして イズミ・カーティスよ」









家の中に通されて、二人と共に師匠の家に
泊めてもらう事になり





早速エドとアルは賢者の石について切り出す







「そんな伝説でしか存在しないようなモン
研究してどーすんの?」


「いやっ…ほら、知的好奇心といいましょうか!」





必死に繕うエドがおかしくて笑うと睨まれる





「何がおかしいんだよ


「べーつーにぃ?」







話を続けると 旦那さんがこの前の旅行で
中央に寄った際、石にやたら詳しい錬金術師
会った事を思い出し





それが「ホーエンハイム」と言う名前の


エドとアルの父親だと判明した…が







「あの昔出てったっていうお前達の父親?
丁度いいじゃないか まだ中央にいるかも…」


「あんな奴!!」





師匠の言葉を遮り、俯いたままでエドが続ける





「あんな奴に頼るのだけはごめんだ…!!」


「…ねぇアル 二人とも、お父さん嫌いなの?」





アルも何処と無く沈んだ様子で返す





「……ごめん 僕はあまりよく
父さんの事、覚えてないから」







それ以上聞けない雰囲気に、納得したように
頷くしかなかった







「あ…あの、父さん
石について何か言ってました?」







口を開いたアルに師匠からの答えは





「長年の望みがもうすぐどうとか…
嬉しそうに語ってたっけ」







解けない謎を含んだ、意味ありげなものだった











ちょうどいい時間帯なので 私も二人同様
お昼を頂く事にする







おいしい食事にがっつきながらの話題は





もっぱら、これまでの旅の経過







「しかし殺伐とした旅をしてるねぇ
ちゃんも一緒なんだろうに」


「まーこの二人だからしょうがないですよ♪」


「どーいう意味だよっ!!」


「兄さん…
でも、そんなひどい出来事ばかりじゃないですよ」







手を振りつつ、アルがラッシュバレーでの
出産の事を話し始める







「バッカおめー!手伝ったって言えるのかよあれで!
オレ達うろたえてただけじゃん」


「だよねぇ、主に私達女子三人がやってたもん」


「ちっ…ソレに関しちゃの言う通りだよ」







あれ?何かお兄さんとオジさんの表情が
どんどん微妙に…気のせいかな?







「皆に祝福されて 人間は産まれて来るんですね」


「そうだよ、お前達もそうやって生を受けた
自分の命に誇りを持ちなさい」







顔を見合わせ、笑いあってからエドが訪ねる





「そう言えば 先生のとこは
子供は居ないですけど…」







その瞬間、師匠の目が影を宿し







「エドワード君!!」





大声で叫びながらお兄さんが立ち上がった







「どうかしたの、お兄さん?」


「え……あーー…ほら、あれから君達二人の
錬金術も進歩しただろう?
修行の成果を見せてくれないかなぁ」


「ああ それならいくらでも!」





明るく答えたエドは気付いてないみたいだけど





お兄さんは、さっき明らかに動揺してた







…最も部外者の私にそれを指摘する権利は
無いだろうから、黙っておくけど







「僕達かなり大質量の錬成も出来るように
なったんですよ!」


そうだ!どうせなら表でドーンと
やってやろうぜ!アル!」







立ち上がった二人が意気揚々とドアへ向かい







「師匠もも早く早く!」


「はいはい、今行くよ」


「そう慌てなくても大丈夫だって〜」





席を立って 私はすぐに二人へ駆け寄ってく











家のすぐ前にある地面に、みんなに
見守られながらアルが錬成陣を描いていき


完成させ 両手を合わせた陣の中に


石造りの可愛い馬を生み出した





「ほー早くて正確になったな」


「本当、結構可愛いじゃんコレ」





私達の誉め言葉に、アルが照れたように頭を掻く







「次 オレ!」





指差してからエドが勢いよく両手を合わせ
同じように石畳へ両手をつけると


足を振り上げ、翼と角とキバをつけた
アルの100倍シュミ悪い馬を作り上げた





「兄さんの錬成はもっとこうディティールがだねぇ!」


なんだよっ!オレのセンスに文句あんのか!」


大アリだよ 悪シュミ〜ニャハハ」


「人のセンスにケチつけんな!!」


の言う通りでしょ、大体ムダが多いんだよ」


「お前なんて地味じゃんか!!」





そのまま二人が不毛な言い合いになだれ込み


そうなってようやく 私は気が付いた







エドの作った馬に見惚れてるオジさんと





エドを見る、師匠の鋭い視線に







「お前 錬成陣無しで出来るの?」


「え?はい一応…」







しばらく口に手を当てて何かを悩んだ後





「エド」


「はい?」





険しい顔で師匠がこう言った





「お前ひょっとして…あれを見たのか







キョトンとしてたエドが、一瞬にして凍りつく








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:師匠登場!アニメではもうこの辺まで
来てるんだろーなーと思います


エド:月に2〜3回で話ぶつ切りにしてっから
やたら展開が遅いんだって


狐狗狸:それは書き始めてから背負ってるです
いいの、亀遅でも終わりまで書くから


アル:この調子で進むと年越しても終わんなくない?


狐狗狸:……一応善処します、長編書くのも
結構エネルギーいるんで(特に原作沿い)




次回 厳しく問う師匠にエドは…!


様 読んでいただきありがとうございました!