「正義」や他の罪を生み出すのは
他でもない、人間












〜第二十話 真実の一端〜











一週間が経過して、







散歩を終えて部屋に戻ってきたら





二人が部屋の中で生ける屍になってました♪







「ニャハハー、その様子だと行き詰まったみたいだね」





机に突っ伏したエドがぐったりと呟く





「なんなんだこのクソ難解な暗号は…」


「兄さん…これマルコーさんに
直接聞いた方がいいんじゃ…」


「ほーら、だから私が言ったじゃん」







クスクス笑いながらからかうと、エドが
悔しげに顔を上げて







いや!これは「これしきのものが解けない者に
賢者の石の真実を知る資格無し」
という
マルコーさんの挑戦と見た!





にわかにやる気を取り戻す









「ニャハハ、意地張んない方がいいって」


は黙っとけ、オレはなんとしても
自力で解く!!解くったら解く!!!」









噛みつかんばかりの勢いで私に吼えて
資料に向き合うも、すぐさま弱音がこぼれる







「…でもやっぱりわかんねー」


「だから降参しちゃいなって」


「だぁぁうるせぇ!」







泣き出すエドをつつきながら
悪魔のささやきを続けてみてた所







「あの…」





声の方に視線を向けると、本の虫さんが
エドたちの方を見て頭を下げた





「シェスカ…」









どうやらエドのお陰でお母さんが
いい病院に移れたらしく、





律儀にもお礼を言いにここまで来たらしい











「…はぁ あの料理研究書には
そういう意味があったんですか」







本の虫さんは二人の説明にきょとんとして





「で…解読の方は進みましたか?」





空気の読めない質問で二人をどよんと
落ち込ませた







「うーんナイス空気読まない質問!
二人の心を抉る見事な言葉だよ」


「お前こそ空気読めよ!
その親指なんだよ!!」



「まぁまぁ…君は仕事みつかった?」







アルのその言葉に今度は彼女が落ち込んだ







「お、アルもいい線行ってるね〜
極めれば免許皆伝いけるよ!」


「何のだよ!」





エドのツッコミで、幾分か空気が柔らかくなる









「じゃあ私そろそろ
本当にありがとうございました」


「ああ 金の事はもういいって」


「そうそう、エドにとっては端金だもんね〜」


「そこまで言ってねぇよ嫌味か」





何を今さら 嫌味に決まってるじゃ
あーりませんかエドワードさん





「いえお金の事もそうですけど…」







本の虫さんは 微笑を浮かべて言う







「本にのめりこむ事しかできないダメ人間な私が
人の役に立てたのが嬉しかったんです ありがとう」











…この人も何を言っているやら







ここにある数の資料の再現なんて
ビックリ人間でも出来ないのに









エドとアルの方を見ると、今の私と
似たような顔をしてるし





訂正 アルは鎧だから表情じゃなく
雰囲気でした





それはともかく、







私は近くにあった資料を適当に一掴みして





「…これだけの資料を提供していて
本の虫さんは何を言ってますやら」


「え?」







戸惑う本の虫さんに、エドとアルが
言葉を続ける







ダメ人間じゃないよ 何かに一生懸命に
なれるって事はそれ自体が才能だと思うし」


「それにすごい記憶力あるし自信持っていいよ」









本の虫さんから 嬉しそうな笑顔がこぼれた







「ありがとう!」


「お〜 そういう顔すると本の虫さんも
中々美人だよねぇ〜ニャハハ!」





からかうように言うと 途端に本の虫さんが
顔を赤くして大慌てに慌てだす





「えっいやそんな私なんてっ」


「あはは、赤くなっちゃってカーワイー♪


「あんまりからかうなよ







呆れ混じりに呟くエドに、私は返す刀で一言







「心配しなくても エドも可愛いよ
身長とかがね」


 それ兄さんには禁句だって!」


「オレの背のことは言うんじゃねー!!」











今にもケンカ勃発寸前って所で









よっ♪賑やかだなお前らは〜」





メガネさんがひょうひょうと現れた







「ヒューズ中佐!」


「少佐に聞いたぞ 何だよお前ら
中央に来たら声かけろって言ったのによー」





入り口の側にいる軍人さん二人は敬礼しながら
本の虫さんと同じようにおどおどしてる







まぁ、中佐って言えば軍人の中でも
割と偉い人だから当たり前か





「いやぁ急ぎの用があってさ」


「まぁオレも忙しくて持ち場を
離れられなかったんだけどよ」







けどこうしてエドと話したり
大佐達と話してる姿はどーも







軍のお偉いさんには見えないんだよねぇ







「そんなに忙しかったんだ
軍人さんも最近はマジメだねぇ」





近づきながらいつもの皮肉をかますと





ちゃんも相変わらずの
憎まれ口を言うなぁ」





笑いながら頭を力一杯撫でられた





「やぁん乱暴に撫でないでよ〜
髪形崩れちゃうじゃん」


「おっ いっちょ前に色気づいてんな?
このこの〜」







しまった近寄ったのが裏目に出たか〜





頭を抱えられてホールドさせられそう
だったから寸前で抜け出す









本当 出会って間もないのに


馴れ馴れしいオジサンだなぁ〜
キライじゃないけどさ







「…この人 さん達の知り合いですか?」


「んー私達も最近知り合ったばかりなんだよね」







側にいた本の虫さんに聞かれて笑顔で返す











冗談はこれくらいにして、と言ってから
途端に深刻な表情に変わって







「最近 事件やら何やら多くてなぁ
オレのいる軍法会議所もてんてこ舞いだ」





頭を掻きつつ困ったようにメガネさんは呟く





「タッカーの合成獣事件もまだ片付いてないし
…っとすまねぇ 嫌な事思い出させちまった」







申し訳なさそうに謝るメガネさん





エドを見ると渋い顔をして 目を逸らしていた







…私もきっとさっき、似たような
顔してたかもしれない







「仕事が忙しい中をわざわざ
会いに来てくれたんですか?」


「いや息抜きついでだ気にすんな
すぐ持ち場に戻る」







たずねたアルに座りながらメガネさんが
笑って答え、かと思いきやまたため息









「まったく…ただでさえ忙しいところに
第一分館も丸焼けになっちまってやってらんねーよ」







最近耳にしたその名前に、私とエドが反応する







「第一分館?」


「何かあったの?」





話を聞くと、軍法会議所に近いから


分館には過去の事件の記録名簿などが
保管されていたらしい





「業務に差し支えて大変だよ」





ため息混じりにぼやくメガネさんに
改めて同情してしまう







丸焼けだから何も残ってないもんねぇ





そりゃ忙しくもなりそうだなぁ〜









…ん?第一分館??









「「「へ―――――…」」」







私たち三人は、まるで示し合わせたように
側に佇むシェスカを見た













「え――――――――――――!?」







本の虫さんは一通りの説明を聞いて
今の第一声を張り上げた







「たしかに軍の刑事記録も読んで
覚えてますけど…」


「どうだろう中佐 この人、働き口探してんだけど」







エドが本の虫さんを指し示しながら
メガネさんにスカウトを薦める







「え?この譲ちゃんそんなにすごい特技
持ってんのかよ!?そりゃ助かる!」








話を聞いて驚いてはいたものの、





善は急げとばかりに





戸惑う本の虫さんの襟首をつかんで
意気揚々とメガネさんは出口に急ぐ









「あっ…あのお三方!」





メガネさんに引きずられながらも





「ありがとう!自信持って 私
頑張ってみます!本当にありがとう!!







本の虫さんは感謝の言葉を言って
両手を振っていた







去っていく二人を





私達は手を振りながら見送った











人さらいかあのおっさんは」


「お、エドうまいこと言ったね」


「へへん、まぁな…でも」





と言いながらエドはアルに向き直って
ニヤニヤ笑いながら続ける







「何かに一生懸命になれるって事は
それ自体が才能」
か 言うねぇ弟よ」


どっかの誰かさんを見てるとね
心の底から思うよ」







ため息混じりにエドを見つめながら返すアル









「…なるほどね」


「へへっ そんじゃそのどっかの誰かさんは
引き続き一生懸命やるとしますよ」







照れくさそうに笑いながら、エドは
また資料に向き直った















そして、今日で10日目









二人が 資料の暗号を全て解読した











ワクワクしていた顔が次第に曇り、引きつって
しばらく沈黙が部屋を埋めて











「………ふっ……ざけんな!!







立ち上がったエドが 搾り出すように叫んだ









「なっ…何事ですか!?」





物音を聞いて 軍人さん達が慌てたように
部屋へと入ってきた







部屋の様子と二人の雰囲気に戸惑い





女の軍人さんが、入り口近くにいた私に
理由をたずねる







さん お二人に何があったんですか?」


「…二人に聞いてみてください」







それだけを告げると、私は口を閉じた









困ったように男の軍人さんが声をかける







「兄弟喧嘩ですか?まずは落ち着いて…」


「ちがいますよ」


「では暗号が解けなくてイラついてでも…?」





私は無言で首を振る









それなら、或いはマシだったかもしれない







「解けたんですよ
暗号 解いてしまったんです」








語るアルの言葉は 重く







「本当ですか!?良かったじゃないですか!!」


「良い事あるか畜生!!」







見当違いな賞賛の言葉に
苛立ちを隠せずに、座り込むエド







「悪魔の研究」とはよく言ったもんだ
恨むぜマルコーさんよ…!」


「……いったい何が?」









エドは険しい顔をしながら







独り言のように 吐き捨てた









「賢者の石の材料は…生きた人間だ!!











その場の空気が―凍りついた








――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:キリのいいところで賢者の石の資料を
解読したトコまで書けました〜


エド:お疲れ、次は第五研究所の辺りだな


狐狗狸:ん それについてはこれ夢主視点だから
次から別行動めになると思うよ


エド:主役はオレだぞ わかってんのか?


狐狗狸:そうだけどこれ夢小説だし(笑)


アル:最近 とみにが悪魔に
見えるのは気のせい?背中に羽生えてない?


狐狗狸:ハハハ何を今さら…それに悪魔的なのは
君のお兄さんだってそうでしょ


アル:うん…まぁそうだけど…


エド:おいこらアル!オレをの奴と
いっしょくたの扱いすんなぁ!


狐狗狸:(無視気味で)それに君の中の人だって
悪魔的キャラやること多いじゃん


アル:言っちゃったー!!


エド:他版権の話はやめとけって!!




次回から夢主視点で第五研究所の辺りを書きます
ウロボロ組とかも絡んできますので…


様 読んでいただきありがとうございました!