もしも帰る場所があったなら
「正義」の業を背負わなかっただろうか









〜第十七話 自分にはないもの〜








夕飯も食べ終わり、エドが真っ先に
ソファーで眠りだした







「うわーいつもながら 寝るの早っ」


「あーあ またおなか出して寝てるよ
しょうがないな」







アルが怒ったように言うと、ばっちゃんが
「まるっきりこれの保護者だね」と笑った









「これじゃあどっちが兄貴だかわかんないね」







毛布をかけながらウィンリィも笑う







「ニャハハ〜言えてる」


「…お前達 いくつになった?」


「僕が14で兄さんが15」







眠るエドの側にウィンリィは腰掛ける







「あたしと同い年でこんなちっこいくせに
"人間兵器"だなんて笑っちゃうよね
無防備に寝ちゃってさ」


「こうして見ると、エドも普通の男の子
なんだなって思うよ」


「そうよね…ホンッと生意気そうな顔」







ウィンリィの横の壁に背を預けて
エドの寝顔を眺めて 改めてそう思った











あ、と急に思い出したようにアルが笑う







「どしたのアル?」


「いやぁ「おなか出して寝て」って言えば
ユースウェル炭鉱に行った時の事
思い出しちゃって」


ああ!そう言えばその時もおなか出して
寝てたよね〜エドったら」







手を打つ私にうんうん、と頷くアル







ウィンリィが興味深そうにこっちを見る







「ふぅん、どんな話?」


「私が二人と会って間もない時に、一緒に
ユースウェル炭鉱って所に行ってね…」











私とアルがお互い言葉を交えて
その時の話を 二人に語って聞かせた











「そこの親方の
「炭鉱が俺達の家でカンオケなんだ」って
言葉を聞いて 結局助けちゃったんだよね」









…アルのその言葉に、ああそうかと納得した







カヤルがあの時、後ろを振り向いてた事







宿が焼けて皆が悲しそうだった事







二人がどうして彼らのために動いたのか










今になって ようやく分かった











「そうだね…帰る家の大切さや無くなるつらさは
おまえ達は身に染みてるもんねぇ」







ばっちゃんの言葉に アルは静かに頷いて







「だからいつも本当の家族みたいに迎えてくれる
ばっちゃんとウィンリィには感謝してる
…口に出さないけど兄さんもね」


「……そっか、迎えてくれる人がいるっていいね」


「ありがとう、でもね」









続くアルの台詞になんとなく見当がついて







でも 何も言う事は出来ずに聞いていた









「それでもやっぱり 生まれ育った家が
無いって言うのが現実なんだ」












私には今のアルの気持ちがまだ良くはわからない







でも、仕方が無いことであっても
やっぱり悲しくなるのだけは 分かった











「いっそ一度思い切って泣いちゃえば
ふっきれるかもしれないけど
この身体じゃ 泣くに泣けない







ハハ、と少し悲しげに笑うアルに近寄り
私は 軽く背中を叩いてあげた









「泣ける身体があるのに 泣かないバカもいるしね」







エドを見つめて ウィンリィが優しく微笑んで







「ほんと 強がっちゃってさこのバカは…」













辛い過去を背負う二人が前を向いて進めるのは、
温かく迎えてくれる 家族がいるからなんだ











私にはなくて、彼らにある暖かな居場所









それが羨ましくて、眩しく感じ







またここに二人と一緒に来たい、と
初めて思った









「ねぇ、私も 二人と一緒に
またここに来ていい?







聞いて 自分でも少し驚いていたけど







ウィンリィとばっちゃん、アルが
私の方を見て 温かく笑った







当たり前じゃない あんたなら
大歓迎よ、!」


「一人増えりゃそれだけ賑やかだからね」


「僕もそう思うよ 







その優しさがすごくすごく、嬉しかった







「ニャハハ ありがとう」















ニワトリが鳴く朝早くから、ばっちゃんに
見送られて 皆で出発する事になった







ウィンリィは徹夜続きで寝てて いない











「ボウズども たまにはご飯食べに
帰っておいでよ」







キセルをふかして笑うばっちゃんに
アルと私は返事を返す







「うん そのうちまた」


「ありがとうね〜ばっちゃん」









エドは振り返る事もせずに言う







「こんな山奥にメシ食うだけに来いってか」


「ふっふ…」







楽しそうに笑うマッチョさんが気になってか
振り向きながら エドが聞く







「? なんだよ」


「支えてくれる家族…帰るべき場所が
あるというのは幸せな事だな」








嬉しそうに頷くマッチョさん









あ、ひょっとしてマッチョさん
昨日の夜の会話 聞いてたんじゃ…?


うーわー、だとしたらこっ恥ずかしいー







「へっ オレたちゃ旅から旅への根無し草だよ」





皮肉げに言うエドに、照れ隠しとからかいを
含めて ニヤニヤ笑って言ってやった





「…本当は嬉しいくせに







エドはチッと小さく舌打ちしたけど
否定はしなかった







「素直じゃないよね 兄さんは」


「全くだな」







アルとマッチョさんが可笑しそうに笑う









そのまま私たちは歩き出して―











「エド!アル!!」









振り向くと ベランダにウィンリィが
眠そうな顔をしてもたれかかってた







「いってらっさい」









何気なく ひらひらと振られた手と言葉が







私にも向けられてると思うと、やっぱり嬉しかった











「おう!」







エドは照れくさそうに後ろを向いて、







アルと私はウィンリィに向かって
それぞれ手を振り返した








――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:やっとみんな旅立ちました…引っ張っちゃって
本当にサーセン


エド:オレほとんどしゃべってねぇー


狐狗狸:だって夜中の話だから(笑)


アル:がしゃべってる所も意外に少ないよね


狐狗狸:この話が本人主観だし、原作沿いで
考えてるからねー


ウィンリィ:…でも、あんまりしゃべらなさ過ぎると
空気キャラになっちゃうわよ?


狐狗狸:シリアスの時は結構気をつけてるつもりだけど
どーしてもね てか何気にヒドイね(流石ヒドイン


少佐:我が輩、出番が思ったより少ないである


狐狗狸:存在自体がインパクトなんだけどね、
活字になると意外と控えめになるよね少佐って


エンヴィー:ねぇ、僕の出番まだ?


一同:どわぁっ!?


狐狗狸:こらキミの出番はまだまだ先だって!!




次の話からウロボロサイドも徐々に絡むと思います


様 読んでいただきありがとうございました!