「正義」の罪を背負う私を
受け入れてくれる温かさがここにある









〜第十六話 儚い夢〜








そして三日目 ついにエドの機械鎧が
完成し、接続する事になった











嫌そうな顔をするエド







ばっちゃんが足を、ウィンリィが腕を
それぞれスタンバイして同時に繋げ







「でっ!!」







叫んで エドは苦しそうな顔をした





うわ〜痛そう…









二人が義肢をチェックする間、エドが
自信満々に呟く







「賢者の石が手に入れば 元の身体に
戻って 万々歳だ」


「残念だねぇ せっかくの金ヅルが」


「そうよ無理して元に戻る事ないわよ
かっこいいじゃない機械鎧!」







二人はそれでご飯食べてるし、
その言い分はもっともだよねぇ〜







「オイルの臭い きしむ人工筋肉
唸るベアリング…」








あれ、でもウィンリィはちょっと違う?







「そして人体工学に基づいて設計された
ごつくも美しいフォルム…ああっなんて
すばらしいのかしら機械鎧!!








ゴメン訂正、ウィンリィはかなり
マニアックな趣味があるみたい〜







「機械オタクめ」


「うるさい 錬金術オタク」


「どっちも似たもの同士なんじゃー?」


「「一緒に(しないでよ・するなよな)!!」」







漏らした呟きに同時に反応するエドとウィンリィ









やっぱり君たち二人 仲いいでしょ?









「どうだい?」







ばっちゃんが聞くと、エドがストレッチして
感触を確かめ 嬉しそうに答える







「うん いい感じ」


「あんたの事だからどうせ日頃の手入れ
サボると思ってね 今回使ってる鋼は〜」







長々と説明を始めるけれど、エドは
全く聞く様子なさそう







「強度が下がったからあんまり無茶は…」


「ウィンリィ エドは説明聞いてないよー


「ウソッ…って聞きなさいよあんたは!!!







ウィンリィの怒鳴り声を無視して
エドはアルの元へと走っていった







「アララ、じゃ私もちょっとアルの様子を
見に行こうかな〜」







そう言って逃げるように私もその場を離れる







「ちょっとまで!待ちなさーい!!」







ウィンリィの怒鳴り声を聞いても
止まる気は無かった









理由は二つ









一つはアルが元に戻る様子とか魂の定着方法を
色々見てみたかったから







もう一つは、ウィンリィの機械鎧談義
巻き込まれるのを避けるため











「鎧の破片 これで全部か?」


「うん イーストシティの憲兵さん達が
丁寧に拾ってくれた」







ちょうど直す所に間に合ったみたいで
エドがアルの側に鎧の破片を集めてた







「アル、いよいよ直るんだね?」


「そうなんだ〜」







マッチョさんがエドにたずねる







「すぐ直るのか?」


「うん ちょっとコツがいるけどね」


「コツって?」


「背中の内側に印があるだろ」







言いながらエドがアルの頭を外す







「うむ」


「あ、本当だ何か描いてある」







覗き込んで、マッチョさんと私は同時に漏らす









言われたそこには 練成陣のような印
茶色い感じの黒い色で描かれていた







「これがアルの魂と鎧との仲立ちになってるんだ
この印を崩さないように手足を直さなきゃならない」


「へーこの印をねー」







ちょっとしたシャレっ気のつもりで
私はアルの印を触るフリをした







「うわちょっ!!?」


「っコラ触るんじゃねぇ!!」







即座にエドの鉄拳が頭上に降ってきて





余りの痛さに思わず涙目







「いっ、痛ーーー!!冗談なのに〜」


「シャレでもやんな!」







たしかに今のはちょっと悪ノリだったけど
そんなに強く殴る事無いじゃん







「あまり女性を殴るのは関心せんが…
嬢も今のは悪ふざけが過ぎたし
おあいこ、といった所か」







マッチョさんにもため息つかれた
正直ちょっとショックだなー







「悪かったよ…てか、そのアルの印
何で描かれてるの??」


嬢の言う通り…血文字のようだな」


血文字だよ オレの血







あっさりと返すエドに、唖然とするマッチョさん







「それにしても危なかったなー」


「もう少し深くえぐられてたら終わってたねー」


「ニャハハ〜それは言えてる〜」







和やかに笑う二人に混じって談笑してから







「それじゃ 直すからと少佐は下がってて」


「うむ、承知した」


「ニャハッ、オッケー」







言われた通り 少し離れてマッチョさんと見物









エドが両手を合わせ、アルの鎧を復元していく







ほどなくしてアルの鎧が完全に直る









「おー、アル 完全復活ー!





私は両手をパチパチと叩く





「調子はどうだ アル」


「うん、直ってるよ ありがとう兄さん」







アルが身体を動かして直り具合を確かめる







エドは後ろ髪を三つ編みに編みこんで、







「よーし んじゃ早速…」









何をするのかなと思ったら
そのまま二人が その場で戦い始めた











直ったばかりのくせに
あまりにいい動きするんで







しばらくじっと見つめてた









「なんだ?兄弟喧嘩か?」







マッチョさんの問いかけに、視線を
アルに向けたままエドが答える







「ちがうちがう 手足の作動確認も兼ねて
組み手をやってるんだよ」







アルも動きを止めないまま続ける







「それにここしばらく身体を動かして
なかったからカンを取り戻さないとね」


「…変わってるねー私も」







雑ざろっかな、と言いかけてナイフを
取り出そうとしてた所で







「ほほう…ならば我輩も協力しよう!!







いつの間にか脱いで上半身の筋肉
剥き出しにしたマッチョさんに先を越された









「問答無用!!」


「ギャーっ来るなー!!」







二人とも逃げるけど エドが逃げ遅れて
マッチョさんに捕まってます







「アハハ がんばれー」







私は一人で安全地帯まで退避して観戦を決め込む





と、後ろから腕を掴まれた
振り返ると…げ、ウィンリィ







「よくもさっきは逃げてくれたわね
あんただけでも機械鎧談義 付き合ってよね?


「えええ〜ちょっ ウィンリィ〜!?









そのままズルズルと家の中に引きずり込まれ







エド達が戻るまで鋼の比率やら機動性やら
よくわからない話を延々と聞かされ続けた













「オレ達の師匠が「精神を鍛えるには
まず肉体を鍛えよ」
ってんでさ こうやって
日頃から鍛えておかないとならない訳よ」







食卓を囲み エドが食べながら言う







「君らの師匠 本当どんな人なの?」


「うーん…怖い人、かな?」







アルが鎧の頭をオイルで拭きつつ苦笑する







「それでヒマさえあれば組み手やってんの?
そりゃ機械鎧もすぐ壊れるわよ」







肉をナイフで刺しつつ呆れるウィンリィ







「まぁ こっちはもうかっていいけどねぇ」


「ばっちゃんは商魂たくましいね〜
よっ 商売人!







かかか、と笑うばっちゃんを、スープ飲みつつ
はやし立てる







「ふむ しかし正論であるな
健全な精神は鍛えぬかれた美しき肉体
宿るというもの 見よ我輩の







料理を食べてたはずのマッチョさんが瞬時に
上半身脱いでポーズを決める





呆れるウィンリィ 笑う私 頬染めるばっちゃん







「アル そこのソース取って」


「はーい」







エドとアルの二人は慣れたのか無視











ここ数日 滞在してて感じたんだけど







なんか、この家の人達といい村全体の
雰囲気といい あったかいな









エドとアルがあんな風に育ったのも
なんとなく頷ける









気を抜くと うっかり居着いてしまいたくなる程







柔らかく、儚い夢のような所だ











「明日 朝イチの汽車で中央に行くよ」







だからエドのその言葉に 私は残念だと思い
同時に、少しホッとした







「あ、もう行くんだ」


「当たり前だろ オレ達は
立ち止まってらんねーんだよ」









きっと二人も、出来ればずっと
ここで過ごしてたいんだろうな







けど、大切な旅の途中だから







寂しいのを振り切ってでも進むんだ









「そうかい またここも静かになるねぇ」


「へへっ元の身体に戻ったら ばっちゃんも
ウィンリィも用無しだな!」







しみじみと呟くばっちゃんに、明るく
エドがこう言って笑った







「言ったね小僧!」


「わーエドったらお世話になっといてひどいヤツ〜」


「だいたいあたし達 整備師がいないと
何もできないくせにこのちんくしゃは」


「そうだそうだちんくしゃエド〜







笑顔で文句を言うばっちゃんとウィンリィに
私も便乗して参戦





アルは足元に寄ってきたデンに魚をあげている







「ちんくしゃってなんだよ!!」


「うむ 言いえて妙なり」







怒鳴るエドに楽しそうに笑いながら
マッチョさんが力強くそう言いきった








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:前回、次で終わるとか予告しといて
また話が一話伸びちゃいました…ゴメンなさい!


エド:原作の掛け合いをうまく省けよな


狐狗狸:わかっちゃいるんだけど、つい…


アル:ウィンリィはと何してたの?


ウィンリィ:もちろん機械鎧の素晴らしさ
こんこんと語って聞かせてたのよ


狐狗狸:…さぞかしは退屈してたろうね


ウィンリィ:何か言った?(スパナ構え)


狐狗狸:Σなっなんでもないですぅ!!


少佐:美しき技は美しき肉体にいぃ〜!


狐狗狸:少佐いつの間に てか脱ぐな!




ほのぼのした部分はつい助長しちゃうんです
次回は本当にちゃんと旅立ちますので


様 読んでいただきありがとうございました!