同じ赤い目を持つ者の「正義」
私のそれと同じ歪みを持っていた









〜第十三話 戦いの後に〜








「次に会った時は問答無用で―潰す









イシュヴァールで起こった殲滅戦の話を
聞かされて







ようやく私は、理解した









傷の男に会ってから ずっと引っかかってた違和感











あいつと私の行動は 同じなんだ











大嫌いな事を我慢して、間違った道であっても
進まなきゃいけない道を歩いてる








あの男は 軍人に自分の故郷を潰された復讐で







私は 軍人のせいで存在そのものを
否定された憎しみで





なりふりかまわず 生きている













軍人の理不尽さへの憎しみは 私にも理解できる











けど、エドが言うように







あいつの行動は
「復讐を神の代理人なんてオブラートに
つつんで、崇高ぶってる」だけだ















さて!辛気くせぇ話はここで終わりだ」







重く沈んだ空気を換えようと、
メガネのおじさんがひざを叩いて立ち上がり





…何故か私の方を見て 怪訝そうな顔をする









「ところでずっと気になってたんだけどよ
この娘っ子は何なんだ ロイ」







訝しそうに睨むメガネのおじさんに


大佐がおざなりな感じでこう言った







「あー 彼女はと言って、鋼のが
旅先で知り合って ワケあって同行しているそうだ」







扱いのぞんざいさに 私はふくれっつらで返す







「ひどいなぁ 私だって傷の男に襲われた
被害者なんだから、邪険に扱わないでよー!」





はっとしたようにエドとアルがこっちを見つめる





「そういや お前、どうやって
傷の男のから助かったんだよ!」


「だーかーらー上手い具合に死んだと傷の男に
思わせたからなの、私って演技派だし?」







ニャハっと軽く笑うけど、二人は納得いかない様子







「だったら何でまた…」


「それも二人が心配だったからだって
何べん言えば分かるのさ」







ったく、人の事は心配するくせに
自分のことは省みないんだから…





手間のかかる人柱達だね 本当に











「そう言えば このという娘、
目が赤いが、もしや…」







マッチョなごついおじさんが私の顔を覗き込み
大佐に尋ねると、







「ああ その娘については我々も初めに
会った時に鋼のに聞いたんだが…」









大佐が苦笑交じりで言葉を途切り







引き継ぐように、私は頭を掻きながら明るく話す







「ニャハハ、実は私 昔の事は何一つ
覚えてないんです〜」









我ながら嘘臭いまでの明るい笑顔と口調で
司令部内の軍人さん達の注目を痛いほど受ける







自分が浮いている事を自覚しつつ、





それでも言葉を続ける







「暗い地下から出てきて、ずっと一人で
放浪してて…それでエドとアルに会ったの」









嘘ではない 半分位は











―今でも覚えている










母が死んでたった一人になった







混血の自分はあの頃、好奇と奇異の目で
見られていて







唯一の肉親がいなくなった瞬間
そこには住めなくなった









色々な街を渡り歩き 盗みをして生きていた











軍人達に目を付けられ、殺されかけて
何とか地下の下水道へ逃げたけれど









思ったよりも傷が深くて









きっと"お父様"に会わなければ あのまま―













「放浪してる時分から軍人さんに目の事とかで
怪しいって疑われてるし…だから軍人は嫌いなの
とにかく 言えるのはそれだけ」









突き放すようにそう言って、私は話題を打ち切る









軍人たちがじっとこっちを見ているけれど
私はもう、何も言う気はない










「な…なんと悲惨な…!








沈黙を破ったのは 意外にも
涙を流しながら言う ごついマッチョさんだった











「え、あの えーと…」







同情されたり哀れみの視線を向けられたりは
慣れているつもりだけれども





こうもストレートに感情を表されると


こっちとしても対応に困るなぁ





てゆうかこの人 意外と涙もろいんだ…







「とすると この娘は実質、一切経歴不明
って事なのか?」









メガネのおじさんが溜息混じりに大佐に言うと
大佐は少し唸って









「…まぁ イシュヴァール人の血は引いているかも
しれんが、確かめる術はないな」







さすが大佐、話が早くて助かるよ〜







「まー信じる信じないは別にしても、現状
受け入れてよね?」









そう言った途端、明るい笑い声を上げて
メガネのおじさんが背中を叩いた







お前結構生意気なガキだな!
でもそういう奴は嫌いじゃねーぜ!」


奇遇だね!私もおじさんみたいな面白い軍人は
あんまり嫌いじゃないよ〜」


「オレぁヒューズっつーんだ 覚えとけ!」







ワシャワシャと私の頭をなで回してから







メガネのおじさんはエドとアルに向き直ると
調子を少し真面目に戻して尋ねた









「で、エルリック兄弟はこれからどうする?」







問いかけに エドは少し考え込んで









「うん…アルの鎧を直してやりたいんだけど
オレのこの腕じゃ術を使えないしなぁ…」







すると、いつの間にか上半身を脱いだ
半裸のマッチョさんがポーズを取って言った





わー見事な筋肉☆







「我輩が直してやろうか?」


「遠慮します」


「ニャハハ 即答したねアル」


「当たり前です」







たしかに、あのマッチョさんの錬金術じゃ
直す前よりヒドくなるかもしれない









…でも マッチョさんのセンスだと鎧が
どんな感じになるのかは


ちょっと見たかったかも







なんて言ったら、アルが怒るかもしれない









「アルの鎧と魂の定着方法を知ってんのは
オレだけだから…まずはオレの腕を元に戻さないと」







そんな方法があるんだ、とか
気になる部分も多々あったけれど





それよりも私が驚いたのは、







「意外だなーなんかエドなら 腕がもげても
錬金術使えそうな雰囲気あるのに」


アホ!腕がもげたら錬金術どころか
普段の生活でさえ不便なんだぞ!!」







だって 今までついて来た短い旅路の中でも
エドはバンバン錬金術使ってたし





なんかもうエド=錬金術ってイメージが


頭の中で定着してるんだよねー









「そうよねぇ…錬金術の使えない
エドワード君なんて…」







中尉の言葉を引き継ぐように、





軍人さんたちが口々に色々な一言を漏らす







「ただの口の悪いガキっすね」


「クソ生意気な豆だ」


「無能だな無能!」


「てゆーか存在価値ナシ?ニャハハ」







みんなのここぞとばかりのエドの悪口合戦
私もさり気に便乗し









「ごめん兄さん フォローできないよ」


「いじめだ―――!!!」







アルのとどめの一言に エドが叫んで泣き出した





最年少天才国家錬金術師も、形無しですなぁ







「ニャハハハ エドったら面白い顔ー!


うるさい黙れ
…はぁ しょーがない…」







エドはため息をつきながら ぽつりと呟いた









「うちの整備師の所に行ってくるか」





「整備師って…その機械鎧の?」


「他になんの整備をするんだよ?」







なるほど たしかにもっともだ








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:鋼の長編 ようやく七話が終了しました〜


エド:…この話わざわざ分割する必要あったか?


狐狗狸:言わないでほしいな毎度ながらそういう
いらないツッコミ


アル:それよりも にあんまり無茶させないで
ください、女の子なんですから


狐狗狸:アレを女の子と言える時点で
君は紳士だよ アルフォンス君


少佐:たった一人放浪をしていたとは
少女にはなんと過酷な運命だろうか!!(涙)


狐狗狸:あーあー 少佐まーだ泣いてるよ


中佐:ほっとけほっとけ、少佐は涙もろいんだよ


狐狗狸:いいのかな…?




次回 立ち寄った駅にいたのは…?


様 読んでいただきありがとうございました!