二人の人間が 光が見えず彷徨っている
傍観者の私は、「正義」を諭すべきなのだろうか?









〜第十話 二人の危機〜








ドアの開く音で目を覚ました







目をこすって部屋から出ると、エドとアルが
何処かへ行こうとする所だった









「…何処行くの?こんな朝早くに」


「……大した用じゃない、すぐ戻る」







エドの顔は 昨日と変わらず沈んでいる







 ごめんね、すぐ戻るから待ってて」


「わかった…気をつけてよね?」





ニコ、と笑顔を作って 手を振って二人を見送った









……昨日の事件が 相当二人を傷つけていたんだと思う








だから、敢えて少し自由にさせた













「って 二人とも帰ってこないし…」









時間を見ると 二人が出て行ってから、
もう8時を過ぎていた









「やっぱりついてった方がよかったかも…
とりあえず二人を探さなきゃ」







私は支度を手早く終えて、宿を飛び出した













気が進まないけど 私は東方司令部にやって来た









あの二人の行動範囲として可能性が高いからだ










こっそりと中に入ると、なにやら部屋の一室で
軍人達がこぞって会話をしていた







「"傷の男"?」


「ああ 素性がわからんから俺達はそう呼んでる」







スカー?一体何の事だろう?











一通り話を聞くと、最近"傷の男"と呼ばれる
殺人鬼による国家錬金術師の殺人が増えてるらしく







中央の方から軍人が大佐とエドの護衛の為に
やって来たと言う事らしい











「…そんなやばい奴が、この街に!」







私が小さく呟くと同時に 部屋の中で大佐の声が響く







車を出せ!
手のあいている者は全員大通り方面だ!!」









部屋の中から慌しく軍人達が出て行く中、

ホークアイ中尉と目が合った





ちゃん エドワード君とアルフォンス君を
見かけなかったかしら?」


「見かけてません てゆーか私の方が
二人を探してるんですけど」


ダメよ この街に国家錬金術師を狙う
危険な殺人鬼がいるの、だから宿で待っていて」







私は 二人についていかなかった事を
この時になってようやく後悔した







「私 ちょっと二人を探してくるよ!」


待ちなさい ちゃん!」









中尉の言葉を無視して、大通りへと向かい





私は二人の居場所を 捜して回った







税金泥棒な軍人さん 豆サイズ国家錬金術師
デカイ鎧の二人組、見なかった?」


「何だお前は!」


見なかったか聞いてるんだけど…3秒以内に
答えないなら首落としちゃうよ?


「っ、わ 分かった、その二人組なら広場の方に
向かっていった!!」







こんな感じで道行く人や 捜索をしている
軍人とかに聞いてまで、二人の姿を探す















時計台の側に エドとアルはいた







けれど、二人は立ち尽くしたまま動かない









二人の目の前には 褐色の肌をしたバッテン男





さっき、軍の奴等が噂してた"傷の男"





横には 奴が殺ったらしき憲兵の死体もある







このままじゃ、あの二人が殺される









「エド!アル!逃げて!!」







私が思わず叫んだ直後に 時計台の鐘が鳴り響く





そして二人が私の方を向く







「「っ!来るな!!」」





逃げろって言ってんのにっ!





私は かなり急ぎ足で走り、時計台を
根本から切り落として


"傷の男"に向けて蹴り倒す







「うおりゃーーーーっ!!」







狙い通り 時計台は粉々になり、
"傷の男"を巻き込んで瓦礫の山になった









―とりあえず 上手くすれば今ので死んだ





最悪でもこれで逃げる時間は稼げる…はず









!来るなっつってんだろ!!」


そうだよ!は関係な」


「シャーラップ!!」





まだゴチャゴチャ言ってる二人に 思わず怒鳴って、





「いいから さっさと逃げる!
じゃないと二人とも腕叩っ斬るよ!?







ナイフをかざして脅しを入れ 二人を黙らせた







「大丈夫だって…私も頃合を見て逃げるから」





微笑んで二人を促すと


ガラ、と後ろで瓦礫の崩れる音





早く逃げて エド、アル!!」


「……っアル!!逃げろ!!









二人が掛け出したと同時に





瓦礫から"傷の男"が這い出した







「逃がさん…」







エド達の方を見つめて 追おうとする"傷の男"





そうはいかない!









「何処見てんのさバッテン男!







ナイフの一突きをあっさりかわされ、
私は咄嗟に横っ飛びに避ける


大きな腕が 私の横を掠めた







そして 私は"傷の男"と対峙した











「娘、己れの邪魔をするならば…容赦はしない


「ニャハハ、どっちかってーと邪魔はそっちだよ」







そうとも、こんな厳ついバッテン男
大事な人柱を殺されてたまるもんか







「貴様から先に神の元へと送ってやろう」





ゴキン、と"傷の男"が右腕を鳴らす





「…神様なんていやしないって 確かめさせたげるよ」





目の前の殺意に負けないよう ナイフを構えた









タン、と床を蹴って
一気に"傷の男"との間合いを詰める







自分の体のすぐ横を 大きな腕が唸りを上げて
通り過ぎ、





一拍遅れて 地面に派手な破壊音が響く







「うわー危ないなぁもう!







言いながら 首を狙ってナイフを振るうけど





素早く移動して 首どころか身体にすら
ナイフが届かない









くっ…バッテン男のくせに意外と手強い…!









エドとアルには荷が重過ぎる相手だ、


何とか二人が逃げきれる隙を作らなくちゃ











「…その赤い目 貴様、イシュヴァールの…」







その時、"傷の男"が呟いた言葉に思わず反応した





「……っどうしてそれを」





一瞬気をとられ "傷の男"に頭を捕まれた







まずい 間にあわ―







バチン、とすさまじい音がして 私の頭が弾けた















意識が戻ると "傷の男"はもういなかった







「あーもう 油断してたから一回死んじゃったよ…」







首をニ、三回揺すぶって 何とか意識を定める










頭から まだ血は流れているけど……行かなきゃ










私は鳴り響く音を頼りに 路地を駆け出した








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:原作第六話の辺りまで来ました〜
やっとこさ"傷の男"と対決!


エド:それよりさ…駆け寄ってきたのキャラ
今までと違くないか?


アル:うん、何ていうか男らしいっていうか
兄さんとか師匠を髣髴とさせるような…


狐狗狸:あー、緊急事態だったから が出たのかも


二人:あれの地!?


中尉:それにしても…ちゃんは無茶しすぎよ


大佐:全くだ、まだ可愛らしい少女なのに
憲兵や軍人を脅して道を聞くとは…


狐狗狸:大佐 微妙に発言がセクハラ入ってる


傷の男:あの娘…肌は白いが、目は赤かった
イシュヴァールの血を引いているのか……?


狐狗狸:それについては次回あたりに話します
エド達にツッコまれなかった事も含め(笑)




バトルシーン 気合入れたのに短い…(ガクリ)
次回は、の謎がちょっと明らかに?


様 読んでいただきありがとうございました!