「なるほど…そーいう事かよ」
前回起きた家でのやりとりを山崎は
土方に吐かさ…報告した
「山崎の処罰はあとでやるとして…
厄介な事になって来たな」
苦虫を噛み潰したような渋い顔で、土方は
虚空を睨んで吐き捨てる
山崎ら観察達の調べた結果によると
どうやら田足一族は元々 片隅の星にいた
普通の商人の家系だったが
宇宙進出と共に、儲かる軍事産業へ手を出し
死の商人として成り上がったクチで
地方や別の星などで抜け目無く法を掻い潜り
長い年月を経て、違法の武器を裁く
大手ルートへと変貌したらしい
例の事件で殺された主人には弟がおり
新聞へ大々的に事件を載せさせたのも
その弟の差し金で十中八九間違いないようだ
第六訓 やっぱり思考が似るのが兄妹
「と言ってもさほど本腰入れて犯人探しを
してたワケじゃねぇみたいで」
「仮にも兄貴が殺られてんのにか?」
「そこはまぁ、腐りきった金持ちの考える事で」
調べた情報から導き出された推論は
大々的な犯人探しは 兄の死後、残された組織や
遺産を巡り親類との争ってた事を隠すための
カモフラージュだと言う事のようだ
しかしその目論見は徐々に瓦解していった
醜い争いに力を割いていた為か、
犯人と断定していた子供二人など すぐ
見つけられると侮っていたせいかは分からぬが
兄妹の行方は 結局分からなかったらしい
前述のゴタゴタも長く面目を保たせたいがため
裏から手を回し 証拠不十分で事件を途中で
打ち切らせていたようだ
「典型的な昼ドラかっつーの、もう何か
ドロッドロじゃねぇか」
「アンタの犬の餌を食った胃の中と
さして変わりはねぇですねぃ」
眉を跳ね上げる沖田に、反射的に刀へ
手が伸びかかる土方だが何とか堪える
それを見届け 彼は言葉を続ける
「にしても最近の武器密造に連動する
兄妹への脅迫…どうもニオイやせん?」
「ああ、どーも気にいらねぇ」
元々 田足側から真撰組へ情報提供と
捜査協力の申し出されていた
脅迫者と槍男の主が同一人物なら
自白を邪魔する必要はなかったハズだ
「…そもそも昨日の使いからして
どうもタイミングが良過ぎる
何か、まだ裏がありそうだな」
「その線は濃いと思いますぜ」
沖田が懐から出したのは、独自に
調べたらしい調査結果の書類
「今回の件はどーも田足家の背後に
天導衆の新参が絡んでるようでさぁ」
「…ちっ またあのジジイどもか」
煉獄関の一件を思い出し、土方は
眉間のシワを深くする
しばらくの空白を割くように 低い声が響く
「過去の事件がどうだとか、どんな陰謀が
絡んだとか…オレにはどーでもいい」
「「近藤さん いつから」」
「途中からうっすら聞こえてたさ」
驚く二人にふっと笑いかけ、近藤は
視線を天井に向け 静かに続ける
「ちゃんがあんな事を言ったのには
何か理由があるはずだ オレは、何があろうと
あの子とその兄貴を信じている」
彼の脳裏に浮かぶのは 無表情ながらも
誰かの事を思いやるの姿
「あの子の優しい目に、嘘なんかねぇ」
真摯な顔で呟いた近藤の言葉を
土方と沖田はただ黙って聞いていた…
―――――――――――――――――――――
墨で書かれた手紙を見つめたまま
「…どうして、信じてもらえなかったんだ」
呟くの頭の中で
幾度となく ここ数日の妹の姿が浮かんで消えた
「どうして気付いてあげられなかったんだ」
少しずつ、彼の手の中の手紙にシワがより
書かれた文字が歪んでゆく
「いつも 気付いた頃には手遅れで…
僕はを悲しませてばかりだ」
幼い頃、護りたくても護ってやれず
は表情を 平凡な日常を失った
ようやく再会し、今度こそ護ると決意したのに
気付かぬうちに護られていたことを知り
は再び、己の無力さを悔いていた
「……いや、今ならまだ 間に合うかもしれない」
緑玉の瞳に決意を滲ませ
「今度は僕がを助けるんだ…
たとえ、この身がどうなろうとも…!」
は妹の改造槍を手にして外へと踏み出す
「お、やっと出てきたか やっぱ兄妹は
思考パターン変わんねぇな」
家のすぐ前には 銀時、新八、神楽の三人が
待ちくたびれたような顔でたむろしていた
「あなた達 帰ったんじゃ…!」
「がいないとつまんないアル
黙って消えられると迷惑ネ」
憮然とする神楽に、新八も彼へ笑みを向けて
「僕らに一言ぐらい相談してくれてもいいのに
兄妹揃って水臭いですよ」
「あのバカ一人で背負い込んで死ぬ気だからな
ほっといたら寝覚め悪くなっつーの」
「でも…」
尚も何かを言いかけるを黙らせたのは
「んだよ お前らもいんのか」
刀を下げ、普段着らしき姿で現れた
土方と沖田の姿だった
「何だよサボりアルか税金ドロボー」
「オレはれっきとした有給だバカヤローが」
「旦那方ももしや、方向一緒だったりするんで?」
「そーいうお前らこそ何しに来たのここへ」
訪ねられ、二人は間髪要れずに答える
「「兄貴の護衛」」
「…僕の?」
「あのアホ娘が頭下げてまで頼んだからじゃねーぞ
近藤さんの敵討ちついでだ」
「素直になれよ土方よぉ…ま、オレも
やられっぱなしは性に合わねぇんでぃ」
渋面の土方をからかいながら 沖田も続ける
「まーいいんじゃね?足引っ張んなきゃ」
「それはこっちのセリフだアホ天パ」
「正直オレ一人で十分なんで、とっとと
地獄に帰ってくだせぇ土方さん」
「ふざけんなよ総悟テメェェェ!!」
は信じられないという顔つきで彼らを見やる
「あなた達も…本当に田足の所へ
乗り込むつもりなんですか?無茶もいい所だわ」
「その無茶をやろうとしてたお前に
言われたくないアル」
「そうですよさん、僕ら仲間でしょ?」
新八の言葉に彼が口をつぐんだ所で
「あぁよかった まだみんないたのね」
「ちょうどいい、僕等もお供させてもらえるか?」
六人の背後から九兵衛と妙も寄ってきた
「姉上!九兵衛さん!!」
「さんの悩みに気付いてやれなかった
僕にも責任がある」
「ストーカー被害のとばっちり分、
しっかり償ってもらわなきゃ ね?」
「…皆さん…こんな僕と、の為に……」
微かに小さく呟いて、揃った彼らの顔を
ゆっくりと順繰りに眺めると
「皆さん…本当にスイマセン
よろしくお願いします」
は、誠意を込めて頭を下げた
「そいじゃ、いっちょピーマン娘を
連れ戻しに参りますか」
意気揚々と言い切り先を一歩歩き始めた
銀時が くるりと後ろを振り向く
「つーわけで大串君と総一郎君 案内よろしく」
「「って目的地知らねぇのかよ!」」
新八と土方によるWツッコミがキレイに炸裂した
江戸から少し離れた山間の土地に
似つかわしく無いような近代的な建造物があり
堅牢そうな門に囲まれたそれは
現・田足一族の長である男が
住まう屋敷であり、会社でもあった
その一番上に位置する室内から
「まったく…どこまで人をコケにすれば
気が済むのだ あの兄は」
窓際に佇み、階下を見下ろしながら
眉間にしわ寄せ呟いたのは異形の主
室内に明かりは無く、窓から離れた部分は
多く薄闇が支配していて
そこから滲み出るように 一人の男が現れる
「あの記事の被害者は、田足様のお兄様で?」
「腹違いだがな 忌々しい奴だった」
振り返りもせず、田足は言葉を続ける
「オスメス問わず地球産のガキなどに無闇に
手を出すから命を落とす羽目になるのだ…」
チッと舌打ちしたその顔に浮かぶのは、憎悪
「ようやく奴が死に、資産を乗っ取って
田足の中で一番の座についたと思うたら…」
「続いた下らない争いのせいで 落ち目とは
いやはや田足様も運がお悪い」
鋭い一瞥が飛び、男は肩を竦ませる
「……あの小娘はどうしてる?」
「あれだけの拷問ですから しばらく牢で
眠ったままでしょう」
男の答えにふん、と不機嫌そうに呟く田足
「あとで例の新兵器の準備を整えておけ
小娘の身体で威力を試しておく」
その言葉に 男がやや大げさに驚いてみせる
「おやおや、例の件を
聞き出さなくてもよろしいので?」
田足はその驚きように僅かに嫌悪を
表しながらも淡々と言う
「構わぬ 片方いれば事足りるだろう、それに
妹の遺品を見せれば口も割りやすいしな」
「残酷なお方だ、この世でただ一人の
派の有守流を継ぐ者を殺そうとは」
「貴様が言えた義理では無かろう…派を
断絶へ追いやった伏木の槍使いよ」
鋭い田足の言葉に 男は口の端を
笑みの形に吊り上げると
「そうですね…それではお心のままに
兄の方を生け捕りにして参りましょう」
呟いて、溶ける様に薄闇へと消えた
田足はしかめ面で男のいた場所をしばし睨み
もう一度舌打ちをして、窓へと視線を戻す
「…楽に死ねると思うなよ のガキども」
低く響くその言葉には、苛立ちが見て取れた
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あとがき(というか楽屋裏)
狐狗狸:ホントは分担するつもり無かったですが
長すぎたので千切った潜入部、ようやく描写
銀時:くでぇぇぇぇ!!(飛び蹴り)
てか六話かけてやっと先っちょとかどーよ!
新八:誤解を招く発言やめぇぇぇ!!
沖田:原作はとっくに土方の追悼篇まで単行本
出たってのに、筆が遅くていけねぇよ
土方:弔ったのはトッシーだろーがぁぁぁ!
狐狗狸:もうこれいつもの情景だよね?
今回の話に絡んだあとがきじゃなくなってね?
神楽:今更アル 銀フルに脳蝕まれて
マトモな判断なくしてるアルか?
謎を残しつつ、次回は本拠地へ潜入します!
様 読んでいただきありがとうございました!