夕食の時間を過ぎても は部屋を出ない





部屋のふすま越しに、はそっと
中に居るに語りかける







「… 僕が言い過ぎた、本当にごめん


夕飯 テーブルの上に置いておくから
機嫌が直ったら食べてね」





しかし 返事は返ってこない







「…おやすみ 





ため息混じりにそうささやいて、
自分の部屋へと戻っていった







部屋の前から遠ざかる足音を聞きながら





「……すみませぬ 兄上」





は 声を殺して泣いていた







―――――――――――――――――――







夜が明け、はふすまを軽くノックする





 まだ怒ってる?」





ふすまの向こうからの返事は 相変わらず無い


それ所か、物音一つしないように思われて







「…入るよ?」





手をかけ ふすまを開けたの目には





形見の槍と封に包まれた手紙を残した、
主の居ない室内が映っていた…












第四訓 悪いニュースは光ケーブルより早い











朝早く 万事屋にかけられたの電話にて





「はーい万事屋ですけどぉ……んだよ
ピーマン兄貴か、人がせっかくボイン
姉ちゃんと楽しんでたって時に」


「まだ夢の中にいる場合ですか!?が…!」





必死の体で伝えられた内容が
寝ぼけ眼の銀時の目を覚まさせた







「オィオィオィ、マジかよ
わかった すぐ行くから待ってろ」






電話を終えて 仕度を始める銀時へ


布団に身を横たえたまま、押入れの戸を
薄く開き 神楽が訊ねる





「朝から血相変えてどしたネ銀ちゃん
泡だらけの尿にとうとうが混じったアルか?」


まだそんなレベルじゃねーもん!
つーかそれ以上の問題だっつの 着替えろ!」


「いやアル、まだ眠いヨ」


「二度寝すんなぁぁ!
のヤツがまたやらかしたんだよ!!」








その言葉に、神楽がガバッと身を起こす









二人で仕度を整え すぐさま新八の家に
電話で簡潔な内容が伝えられる





「銀さん ちゃんがどうかしたんですか?」


「ちょうどいい、お前からちょっと
九兵衛ん家に電話かけてくんねぇか?」


「九ちゃんに?…まさか九ちゃん家の誰かが
ちゃんを手込めにしたとか言うんじゃ」


姉上ぇぇぇ!
流石にそれはシャレにならないですから!!」





昨日の新八の話のせいか、今の発言を
違う方向に受け取ってたらしい







時間が無いながらも、銀時と新八が
どうにか妙の誤解を解き





「…わかったわ 新ちゃん、先に銀さん達と
ちゃん家に行っててちょうだい」


「わかりました、姉上 それではまた後で」







家を出る新八を見送ってから、妙は
九兵衛の家の番号へとかける







「朝早くからゴメンね九ちゃん
所で ちゃんはそっちに来てない?」


「いや、来ていないが…何かあったのか?









こうして六人が家に集まって
から詳しい詳細を聞いた後







「では、一時間後にここに再び集合で…
よろしくお願いします







の姿を求め、かぶき町を各自で探し始める









さんが家出だなんて…
流石にこれは異常事態ですよ」


槍バカが槍置いてくなんて
男と入籍以上にあり得ねぇアル」





道々に黒い制服姿がちらつく中、新八と
神楽が辺りを駆けながら呟く







「ったく、アイツらがいりゃすぐ見つかんのに
こんな時に別の国に飛びやがって…」





恨みがましそうに銀時が空を仰ぎ


とある男女のペアを思い浮かべる







彼女のよく稽古する場所や昨日の尾行で
立ち寄っていた場所などを探し





辺りの人に行方を尋ねては見るものの







の足取りを全くつかめないまま







ほどなく六人は、家へと戻ってくる





「そちらは何か分かりましたか?」


「いいえ…姉上や九兵衛さんは?」





新八の言葉に 二人は収穫ナシと首を振る







「何かやけに真選組の人達 殺気立ってません?」


「そうだな…僕達もさんを探して
歩いてる間、やたらと姿を目にしたぞ」


「っと、噂をすればちょうどいいトコに」





銀時がふと横を向くと、血相変えて
側を通りかかる山崎が







すかさず後ろ襟を捕まえて





「おーいジミー、何なのこの騒ぎは」


山崎ですから旦那ぁ!それと
いきなり襟引っ張るのとかナシっすよ!」


「うるさいネ、お前らさっきから何
バタバタ騒ぎまわってるアルか」


「騒ぎもしますよ誰だって!
近藤さんが…賊に刺されて重体なんです!!


『な、何だってぇぇぇぇ!?』









―――――――――――――――――――







まだ老人位しか起きていなさそうな早朝の





朝霧にけぶる橋の上に、近藤・土方・沖田の
三人と 対面に佇むの姿があった







こんな時間にオレらを呼び出すたぁ
何企んでんだ?槍ムスメ」


「ったく、呼ぶにしても時間考えろよな
せっかく土方一万斬り達成しそうだったのに」


「そのまま永遠に夢見させてやろうかコラァ!」





時間帯関係ないテンションでケンカへ
もつれ込もうとする二人を 近藤が止める







落ち着けって こんな時間に呼ぶくらいだ、
ちゃんにも余程のわけがあるに違いない」





昨日は妙に死ぬほどボコられて
ユッケと化した近藤だったが





愛の力(勘違いによる)と持ち前の
しぶとさで顔に絆創膏程度まで回復していた









「お主らを呼んだのは、私の犯した罪の告白と
頼みを聞いて欲しいからだ」







一旦言葉を切り、少し戸惑うが







やがて思い切ったように は口を開いた







田足家のあの事件の犯人は、私だ
…私が この手であの男を殺したのだ」


「…それは、自白と受け取っていいんだな?」







土方の言葉に は一つ頷いて





「大人しくお縄にかかり、どのような処罰も
受け入れるつもりだ…しかし」





相手を真っ直ぐに見つめ返す
その緑色の目に宿るのは、昨日と同じ決意







「私を連れて行く代わり 事件に関係のない
兄上を何としてでも保護してほしい」


「…そうそうテメェの都合だけ聞けるかよ
自白だけで事件は解決しねぇんだよ」







管轄外とはいえ、お上からの協力要請も
受けている殺人事件である





犯人自白の形の決着にせよ


重要参考人、当時の証拠品や証人を
すべて揃え 事実確認をして裏づけを
取らなくてはならない







了承が取れない事に焦りを感じたらしく





「兄上は本当に何も関係ないんだ
頼む、この通りだ!





必死の面持ちで繰り返し、
その場で土下座をした







普段 自分の前で絶対にしないであろう
その行動に、土方も目を見張った





「ちょっちゃん 女の子が
土下座なんてしちゃダメ!顔上げてぇぇ!!」






近藤が慌てて彼女の腕を取り その場から
立ち上がらせる







動揺を隠すように紫煙をくゆらせる土方に


目で差しながら、沖田がこう言った





「土方さん 連行は事件の話を聞いてからでも
遅かないんじゃないですかねぃ」


「……それもそうだな、話だけでも
聞いてやる 話してみろ」







顔を上げ はゆっくりと口を開く







「夜更けに館で物音がして―」


「今更警察に自首して 罪が償われると
お思いですか?…甘っちょろい考えだ」






四人の視線は
橋の欄干に槍を抱え、佇む男を捕らえていた





近藤達が反射的に刀を構えた次の瞬間


男は俊敏な動きへと槍を繰り出した





咄嗟に始めの一撃をかわしたものの


体制を崩しかけたの身体を男は
飛び蹴りの要領で思い切り橋から蹴落とす







「テメっ…何やってんだ!?





土方と沖田の剣戟を 槍の中央を持ち
両端の動きで裁いてから、男も橋を飛び降りた







下が川とはいえ 水深が膝丈ほどしかなく


橋の高さが二階程の高さの場所から
落とされた


息つく間もなく変則的な槍捌きが襲う





「この型は…お主、有守流の!







目を見開くに 男は不敵な笑みで答える





「流石は…ですが…所詮は分家、
本家には手も足も出ないでしょう」







槍があれば、まだ戦うことは出来ただろう







しかし今はそれも適わず 幾重にも身体に
赤い切り傷がつけられて





「あ………」





周囲の水を朱に染め、はその場に
ガクリとヒザを付く







「安心してください、あなたのすぐ後で
お兄さんもそちらへお送りしますから」






彼女の心臓を目掛け 男は腕を振り上げた







穂先が目標を貫かんとする直前







突き入れられた槍を剣で受け弾いて





「止めろ!」





瀕死のと男の間に、近藤が割って入った







「アンタが何者か知らんが、この娘に
こんなことをする権利は無いはずだ!」



「……駄目だ、勲殿…逃げ……!」







男は首を傾げると、近藤をつまらないモノでも
見るように目を細めて







「うるさいですねぇ 幕府の狗の分際で」





一瞬、男の身体が 微かにぶれて







近藤の胸に、赤い花が咲いた









「……え」







呆然とした表情のまま 近藤がその場に倒れる







「勲殿ーーー!!」


「「近藤さん!!」」





一泊遅れでの悲鳴と
駆けつけた二人の叫びが重なる








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:四話目にて、まさかの近藤さん
死亡フラグ勃発です!!


土方:まさか過ぎんだろがぁぁぁ!
新手のスパイ映画か何かか!?


狐狗狸:それだと二回死ななきゃならんくなるて


沖田:てーか誰でぃあの槍男は?


狐狗狸:それはこの先分かるので今は…あの
スイマセン刀向けるの止めてください


銀時:ホンットといいアイツらといい
勝手な行動するヤツ多すぎじゃね?


神楽:まったくアル 皆でシコシコ
いやらしいったらないね


新八:あんた等それ以上しゃべんなぁぁ!




次回こそ、一連の行動の真意が明らかに?


様 読んでいただきありがとうございました!