「さて…さんを探すにしても
まずはどこから当たりましょうか」





銀時は頭を掻きながら、やる気なく言う





ピーマンみてぇな色の目した黒髪女は
こっちじゃ早々いねぇからすぐわかんだろ」


「誰か〜ピーマン色の目の三つ編み女
知りませんかぁ〜!」








さっそく先頭を歩きながら声を
張り上げる神楽に は顔をしかめる







「その言い方やめてくださいません?
目の色は母からの遺伝なんですから」


「おやの旦那、万事屋の旦那と一緒でしたか」


「あれ?何でいるの総一郎君 サボり?


総悟でさぁ旦那 生憎今回は仕事でねぇ」





沖田の側に、土方もため息混じりに寄ってくる





ストーカー被害を訴えてたくせに
勝手に出歩くとはどーいう了見だよ」


「スイマセン、お話をするつもりで家にいたのですが
昨日からが戻らないもので つい探しに…」


「へぇ〜がねぃ、そういやアイツ
最近付き合い悪ぃよな 土方抹殺の」


あぁん?テメェを抹殺すんぞコルァ」





バチバチと火花を散らす二人を慌てて止める新八







止めて下さいよちょっと!…てゆうか
ストーカーって さんもですか?」


「新八の所のは、いつものごとく
ゴリラの仕業アルよ」











第ニ訓 知人のゴシップは蜜よりウマイ











「…まーウチのバカはさておいて、
一般市民からの正式な要求だからな」


「実質的な被害ってのは どういうモンで?」





問いかけられ、は首を縦に振る





「少し前からなんですけど、どうも気になって…」









話を簡単にまとめると、誰かの視線
頻繁に感じるようになったり


悪質な嫌がらせが家や職場で相次ぐらしい







…数だけ見れば個人で出来るレベルを
越してはいないそうだが





内容は話を聞く限りでは、どうにも
個人で出来る範囲を越すほど悪質だとか







「この間も家の前に 何かの血の跡がベッタリと
ついてたりしてましたの…こんな感じで」





袂から取り出した写真を見て、うわ…とか
うげ…とか言う呻き声が彼らから漏れる







「なるほどねぇ…けど、人の恨みってのは
わからねぇもんだぜ?」





写真を摘み、しげしげと見つめて土方は続ける





「案外、アンタ個人に対する妬みが
突出してるっつー可能性も捨て切れねぇしな」


妬み程度でこんなに派手にやりませんよ」





さらりと言い切るその態度を、
少し鼻で笑って 沖田は返す





「…そいつぁまた大した自信で」







二人と話すに、銀時は納得がいかないと
言いたげな視線を向ける





「つーか何でこいつ等に頼むワケ?
普通知り合いのよしみでウチに依頼じゃね?」


「犯罪被害の相談を警察にするのは
市民としての良識ですよ?それに」





彼は、誰もが見とれるような笑顔で続けた





「どうせ頼むなら安上がりな方が
断然いいじゃないですか」


「うっわこの兄貴、腹ン中は腐ったピーマンだ」


頭が腐ってるアナタに
それをいう筋合いがありますか?」







銀時と似たような表情を浮かべながらも
土方は万事屋トリオの方を見やる







「で、お前らは何でいるんだよ?」


「そりゃまーバカな妹の様子が心配な
ピーマン兄貴に対するボランティア?」


のヤツ、最近付き合いが悪いから
ちょっくら捕まえてヤキ入れる所ネ」


「ヤキって神楽ちゃん…いつの時代の
ヤンキーの発言それ?」


「しかし、あのが兄貴に心配かける
っつーのはどうも腑に落ちないねぃ」







が深刻な面持ちで呟く







「そう言えば、ちょうどその頃から
の様子がおかしかったような…」


「単なる偶然じゃねぇのか?」


「そーそー大串君の言う通り、複雑に考えすぎ
男に乗られてるだけだってあのバカの場合は」


「どんだけ単純な思考なんですか!つーか
アンタの思考はそればっかりかぁぁ!!」



「みんな、そこで何をやってるんだ?」







固まっている六人の後ろから、九兵衛が現れた







「あ、九兵衛さん 確か姉上と
買い物に行く約束だったはずじゃ…?」


「ああ、当初はな…けど途中で
ストーカーしてるアイツが現れたんだ」


「あーそういやウチのゴリラ 姐御に
プレゼント渡す気満々だったねぃ」









妙と九兵衛の二人は、昔からの幼馴染で


柳生家のゴタゴタはあったものの


再び親交を温め、彼女等はよく街へ
買い物などに繰り出していた







「あら、このかんざし九ちゃんに
似合うんじゃないかしら?」


「ぼ、僕はそんな…妙ちゃんの方が







今日も今日とて 女の子同士の買い物と
会話を楽しんでいた所





どこからともなく近藤が出現した







おぉ〜お妙さん!奇遇ですなぁ!!」


「奇遇もクソもあるかゴリラァァァァ!」





出会い頭、見事なほどのアッパーカット
笑う近藤を沈めてから





「でもちょうど良かったわ…実は私
アナタに聞きたいことが山ほどあるの」





微笑む妙だが 目だけは確実に笑ってない







有無を言わさず彼の襟首を掴み





「九ちゃん、チョット待っててね?
私 この人にお話があるから」





九兵衛に一言そう言ってから、妙は近藤を
文字通り引きずって どこかへ移動した









「しばらく待っても 二人とも戻らぬから
仕方なく探していた所だ」







神楽が挙手しながら九兵衛に言う





「姐御のことだから、きっとゴリラに
引導を渡しに行ったネ」


「シャレになってないから!」


「その通りでぃチャイナ、アレでも結構
しぶといから 念入りに息の根止めねぇと」


「何のアドバイスしてんだ総悟ぉぉ!!」







ワヤワヤと騒がしくなる面々を無視して
九兵衛は銀時に再び尋ねる







「…で 皆はここで何を?」


「あーうん、この二人はともかくとして
こっちものバカ探しをだな」


さんなら 最近たまにウチに寄ってるぞ」


『え!?それどゆこと!!?』







六人は思わず詰めより 九兵衛を少したじろかせた











屋敷の敷地内で、微かな気配を捉え





「…そこにいるのは誰だ?」





九兵衛は ある茂みに視線を投げかける







ガサリと小さな音を立てて、そこから
ゆっくりと が現れる







「驚かせてすまぬ、九兵衛殿」


さんか…なぜこんな所に?」


「侵入したことは謝りたい、しかし
普通に入るわけにはいかなかったのだ」







どういう意味かを尋ねるより先に





「誤解なきように言っておこう、決して
暗殺などを請け負っているワケではないのだ」





がそう告げてから、先を続ける





「ワケあって 家へ帰ることがままならず
少し別の所を歩く必要があったゆえお邪魔した」





表情は普段通り まったく変わらぬものだったが


声音と身にまとう気配から、敵意も悪意も
感じられなかった







「帰ることがというと…さん、
家にはあまり帰ってはいないのか?」





こくりと頷き 彼女は少しだけ項垂れる







「うぬ…流石に、少し疲れた」


「何か悩んでいるのか?さん」


「ああ…しかし、詳しくは話せぬのだ
申し訳ない 九兵衛殿







それからも、時折は九兵衛と
顔を会わせていたのだという











「いつの間にか敷地内にいて、大抵は話だけして
帰るんだ…一度ウチの四天王と手合わせもしたか」


「ちょ、何してんですかあの人は!」


不法侵入してる点についてはガン無視かよ」







新八のツッコミと土方の呆れ声が交互に飛び交う







「けれど結局、一度たりとも悩みの種を
明かしてもらうことは無かった」


「そうなんですか…何を悩んでたのかしら」





益々増えてゆく謎に悩むを他所に





「ぶっちゃけオレぁがあの柳生100%どもと
どれだけ渡り合えたかが気になんだけど」





銀時がズレた質問を投げかけてきた





「いや、どうでもいいです本気で」


「良くないネ、あの時いたら
私もうちょっと楽できたアル!」


の奴ァ 墓参りで不参加だったからねぃ」


「作者の長編事情をここでバラすなぁぁぁ!」





いらん事を言う二人へ、新八のシャウトが炸裂する







「冗談はさておき、こりゃマジで男絡みか?
しかも何か面倒起こしてるクセェな…」


「なんと さんに男の影が…?」


本気にしちゃダメ九兵衛さぁぁん!
って…あの、あれ さん……?」





新八の指摘に 全員が指し示された方を見る







少し先の角を曲がったのは灰色の作務衣
身を包んだ、黒い三つ編みの小柄な少女


おまけにチラリと見えた横顔のその目は緑色





そんな子は、くらいしか有り得ない







本当だわ!っ」





駆け寄ろうとするを、銀時と神楽が
同時に押さえ込む





「まー待てよお兄ちゃん
焦っちゃ元も子もねーぜ?」


「で、でもっ 僕はあの子に聞きたい事が」







戸惑うに、沖田が横からささやく





「幸い あちらさんはオレ達に気付いて無い
みてぇだし、ここは様子を見やしょう」


「いい事言うアルなドS ここは一旦
を泳がせて、決定的な証拠を掴むネ!」


「ちょ、何お前ら仕切ってんの!?







黒い笑みを見せるガキ二人の意見に
引きずられるようにして、





男疑惑の真偽をどれだけ真剣に考えているか
その辺の所は よくわからなかったが







とにかく流れで七人は、の尾行を開始した








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:ギャグをもちっと盛り込みたかったですが
あんまり盛り込めてないなー…


土方:兄貴のストーカーねぇ…余程の物好きか?


狐狗狸:まー外面は女神ですから さん


銀時:つか、マジで 出来ちゃったワケ?


新八:まだ決まったワケじゃないだろうがぁぁ!
本気で頭腐ってんですかアンタぁぁ!



神楽:てーか、私達ほっといてアイツらと
5P同時対戦かよ ふしだらすぎネ!


狐狗狸:どこで覚えたのそんな言葉ぁぁ!
誤解を招く発言やめてあげて!!


沖田:で、のヤツぁどれだけ
アンニャロどもとやりあえたんで?


九兵衛:西野と南戸が負けで北大路は引き分け
東城は何とか勝ったようだったな


新八:さん案外強っ!




疑惑を引き継いだまま、次回も続きます


様 読んでいただきありがとうございました!