「アレは…白木蓮斬!?」





壊れぬハズの機械を壊したの技は


伏木二人の顔にかつてない驚愕を浮かばせた





バカな!あの技は遥か古に途絶えたハズ
何故よりによって派の小娘が知ってる!?」


「そんな事、知りませんよ」





つっけんどんな言の葉が伏木兄弟の耳を打つ





「でも…一つだけ証明された事があります」





意識を失った妹の身体を抱きしめて





「"殺人術"が至上の伏木派が"活人"を目標とする
派に勝るなんて 幻想だって事です!」





強い光を緑眼に宿らせ、
彼らへ言い放った







「「ぐ……!!」」





流石の両者もこの時ばかりは憎まれ口を
叩く事も叶わないようだ







「ボロ雑巾のクセにやるじゃねーか 


「あとは私達に任せるアル!」





気絶したを見やり、呟く沖田と神楽





さんはさんを連れて僕らと非難を!」


「…はい!」





妙を背負う新八の指示に従い、彼は妹を抱え
少し離れた場所へと移動を始める





「土方さんはまだ本調子じゃねぇでしょう
足手まといにならないよう隅にいてくだせぇよ」


「言われなくても」





舌打ちしつつ、土方もまた九兵衛を支えたまま
非難する二人へと続く







それを見送ってから ゆっくりと振り返り





「さぁてと、じゃキモ兄弟のお二人さん
覚悟はいいかコノヤロー?」







コキコキと首を鳴らして銀時が叫ぶ





を傷モンにした分とオレらに迷惑かけた分
たっぷりとお礼してやろーじゃねーの!」






その宣言と同時に三人が床を蹴って


フロア内で思う存分暴れ始めた











第十五訓 遺されたモノの善し悪しは
テメーで決めろ












体力が疲弊しているとはいえ
ハンデの無くなった彼らの快進撃に


壊滅寸前の兵隊達が持ちこたえられるハズも無く





立ち向かう者達よりも、不利を悟って
逃げだして行く者の方が圧倒的に多くなる







その中に、伏木兄弟の姿もあった







「ここは一旦逃げよう大兄ちゃ」





言葉半ばで 七男は物凄い力を受けて
宙高く吹っ飛ばされる







唖然とする長男の前には、末弟の槍の
破片を散らし





木刀を構え 佇んでいる銀時がいた







「甘ぇんだよ、逃がすと思ってんのか?」


「うるさい!私の邪魔をするな
時代遅れの遺物がぁぁぁぁぁぁ!!」








吼えて特殊な構えから刺突を繰り出す伏木





苛烈なその攻撃を次々と弾き返して


間合いを詰めた銀時の木刀の一振りが
伏木の槍を粉砕し







「汚ぇ汁で凝り固まった槍なんざ
何度だって砕いてやらぁぁぁぁ!!」








続けざまに振り下ろされた一撃により





男は床へと沈められた










「…うぅ、っぐ…」







ようやく意識を取り戻し、身を起こした
七男が目にしたものは





自分の長兄が銀髪の侍に倒されるという


本人にとって信じられないような光景だった







「嘘だ…嘘だこんなっ!我等有守流の本家
伏木派がこんなワケの分からん者どもに!!」





狼狽する伏木の肩越しに、二本の剣が現れる





「ワケがわかんねぇのはテメェだ槍野郎」


「非番ながら警察にケンカ売った罪
重いんでぃ…潔くお縄につけぃ」







タバコを咥えた土方と鋭い眼差しの沖田に
睨まれ 竦みあがりながらも


なけなしの虚勢で七男が言葉を吐き出す







「…私達にこんな事して、ただで済むと思うのか
今に 天導衆のあの方が」


「おや、テメェの兄貴が刺した元主人と
同じセリフたぁ大した忠誠心じゃねぇかぃ」


「だな総悟 こいつら仲がいいみてぇだし
三食クサい飯つきのスイートへご案内しとけよ」







その一言で観念したように伏木が頭を垂れ





ようやく、事件が決着を迎えた













「どーもちゃんお元気ですか?」







山崎が家に訪れたのは事件から数日経ち


伏木と共に田足による武器密売ルートが
一斉検挙されゴタゴタが片付いた後だった







「眠ってるのでお静かに…あの件での
疲労からかまだ目を覚まさないみたいで」





済まなそうに告げるへ慌てて手を振り







「いや実は旦那達に、二人がくたばってないか
様子見て来いって言われて…コレお見舞いに」





懐から出したソーセージを手渡しながら
山崎が苦笑いを浮かべた







「…それだけで来たんじゃ無いでしょう?」


あれ?バレちゃいました?」


「分かりますよ、これでも人の腹を
読むのは得意分野ですから」





ふふ、と笑う彼に感心する山崎





「そりゃスゴい さんなら観察の仕事
向いてるかもしれませんね」


「折角ですが遠慮しときます…危険ですし
面倒だし、僕に戦闘力と体力は皆無ですから」







"それもそうか"と納得したように言って





「田足の事で、ウチで調べがついた事を
話しておくように言われましてね…」





山崎が淡々と調査結果を語り始める









武器商人として繁栄した田足家は
故当主の一世代前が黄金期の終わりらしく


栄華を維持すべく前当主は生前、より
経済能力のある兄へ期待するようになり





母の無い兄弟は殺伐とした環境で育ち


その内 父が没し跡を継いだ兄は星を転々と
移り地球のある地方へ住み着いたようだ







「で調べるとこの兄 お二人の前にも
年端の行かない少女や少年を何人か
養子に引き取ってたみたいなんですが…」







残されていた書類と、当時の部下の証言から
裏は取れていて その養子達は行方不明
事故による死亡が報告されていたのだが





部下の自白により、田足兄がその手で殺し


秘密裏に養子達の死体を処理していた事
明らかとなった









の脳裏に、あの日の会話が甦る







『ワシは…実家に嫌気がさして、あちこち
転々と移り ここに住み着いたんじゃ』







隠し財産の場所を聞き出したその後





『お前も知っている通り、ワシは色々な幼子を
養子に引き取ったが…どいつもワシを
愛する事無く死んでいった』





寂しげな顔で主は淡々と呟いて
透き通るような頬へ、そっと触れる





…お前だけはワシを、愛してくれるな?』







それは、間違ったやり方ではあった


決して褒められたものではない行為ではあった





けれども…愛情に飢えた果ての行いだったと
彼は今なら、理解できる気がした







しかし その時は己とのことしか頭に無く





『…えぇ、もちろん』





その思いを汲み取る事は、ついに無かった









あの人も…可哀想な人ではあったんですね」





は初めて、死した主に憐憫の情を抱いた





「ある意味ではそうかもしれませんけど
付き合わされたこっちにゃいい迷惑っすよ」





関与してた天導衆の人間へ繋がる証拠も
上がんなくて、圧力かけられて云々と


ここ数日の内に苦労した話を散々語られ





「それは大変でしたね…それで、あの
僕らはどうなるんです?







訊ねる一言に、山崎は曖昧な笑みを浮かべる





「それなんですが、元々管轄外だし
捜査の指揮を執ってた田足弟がいなくなったんで

証拠不十分で お蔵入りだそうですよ?







彼が浮かべたのは、安堵の笑みか





「…そうですか」





それとも 悔恨と憔悴の混じる苦笑か…











更に日が経ち、それぞれの怪我も治り


彼らは大事を取って長期治療で入院する
近藤の病室に集っていた







「お妙さ〜ん!やっぱり夫のオレが心配で
お見舞いに来てくれたんでゲファ!



「調子乗ってんじゃねぇぞゴリラァァ!」


姉上ぇぇ!近藤さん死んじゃうから!
三途の川渡りきっちゃうから勘弁したげて!」


「勲殿、三途に渡ったら父上に伝言を頼む」


「さらっと怖い事頼まないでさんんん!」





四人が騒いでいる端で銀時と土方と沖田が
少し壁際に寄ってその様子を眺めている





「しっかしゴリラの生命力ならとっくに
怪我の一つや二つ治ってんじゃねぇの?」


あん?こんなんでも一応大将だからな
少しは大事とって休ませとくべきだろ」


「オレとしちゃ永遠に休んで欲しいでさぁ」


「何でオレ見ながら言ってんだコラァ!」







二人が火花を散らして睨み合い





喧しさに、椅子に座りながら果物を
剥いているからの叱咤が飛んでくる







「少しは静かにしてくださいよ…手元が
狂うじゃありませんか」


さんの皮剥きは職人技だな」


「リンゴのな、まぁピーマン兄貴なら
別の皮剥きも得意なんだろーけど」


「「ちょっとは自重しろぉぉぉぉ!!」」







今日も新八とツッコミシンクロ率
絶好調のようだ







「勲殿、迷惑をかけた侘びとして
私に何か出来る事は無いだろうか?」


「いやいやいいよちゃん、そんな気を
使わなくたって〜」





手をパタパタと振る近藤に構わず





「あーじゃあオレいちご牛乳と旬のデザート」


「私は酢昆布10箱でヨロシ!」


「タバコ切れたからこの銘柄買って来い」


「じゃあオレぁタバスコ一瓶で」


「新刊の女性用雑誌をお願いね、九ちゃんは?」


「僕は…バナナで」







銀時の言葉を皮切りに他の面子も遠慮なく
へと注文を突きつけて







「「「何であんたらが命令してるの!?
てゆうかそれ、パシリだよね!!」」」






三人分の同時ツッコミが見事な唱和を見せた









…ツッコミは入ったものの、集った彼らに
迷惑をかけた負い目もあってか





結局 は頼まれた品を買いに


病院近くのコンビニへとやって来ていた







「勲殿の言ったコン○ームは…よく分からぬから
戻って聞き直すとして、こんなものか」





カゴの中身を確認し 頷いた所に







「おーい、買うモンはそれで全部かぁ?」


「まだ買ってねぇなら ついでにマヨネーズ
あるだけ追加しとけ槍ムスメ」





銀時と土方が現れ は珍しく
不思議そうな表情を強く表した





「お主ら、何故ここに?」







問いかけに銀時が頭をガリガリと掻きながら





「お妙と兄貴が荷物持ちに行けってよー
ったくこんな時だけタッグ組みやがって…」





続くように、土方も渋い顔をして言う





「病院じゃヤニが吸えねぇし アイツら
騒がしすぎんだよ」





二三、他愛の無い会話を交わしながらも
三人がレジへと並んで会計が行われ







その最中 袋にまとまった品物を





「んじゃ、先行ってっから会計ヨロシク


「兄貴がうるせぇから とっとと来いよ」





それぞれ持ちながら、彼女へ告げて
銀時と土方が店を出て行く







急いで会計を済ませると 小さく笑い





「二人とも 待たれよ!」





は彼らの背中を追いかけた








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:好き放題書き散らしてた捏造長編も
これにて閉幕です、ありがとうございました!


全員:ありがとうございました〜


銀時:つかよMGSのアイツの長編とキャラやら
動機に近ぇモン被ってね?パクリ?


狐狗狸:言うな!元々は動乱篇と竜宮篇の
リベンジで書いてる所もあるし色々仕方ないの!


神楽:でもヅラとマダオがいないアル


狐狗狸:その二人とかは次の次にやる共演長編で
出す予定だから、まだまだ出ないよ


妙:つーかちゃんに何頼んでんだゴリラァァ!


近藤:いやだって今回の件でやっぱ死ぬ前に
夫婦になりたかぶぎゃぁ!


土方:あとタバスコって何に使うつもりだ総悟


沖田:そりゃ勿論、寝てる土方さんの目玉に


土方:本格的に殺す気かぁぁぁぁ!?


新八:あーちょっとケンカしない!って
そう言えば九兵衛さんは?


狐狗狸:とっくに帰った 門限だし




次回長編は夏辺りです(そしてあのネタです)


様 読んでいただきありがとうございました!