「あの世って…どういう意味ですか!」





強く問う新八へニヤリともせず主は返す





『知れたこと、兄妹の仲間というなら
貴様等は全員同罪 万死に値する』


「オィ性器ヅラのおっさん…はもう
この世にいねぇとか言うんじゃねぇだろうな」





鋭い目でモニターを睨む銀時へ、田足は
葉巻を捨て眉を強くしかめて答える





『地球人風情が生意気な目を…小娘なら
まだ生きておるわ、辛うじてな』







その一言に二人の目の色が 僅かに変わる







『もっとも、あの世へ行くのは貴様等が先だ


…伏木兄弟 高い金で雇ってやっているのだ
精々役に立ってみせろ』







一方的な言葉を最後に、画面は闇へと戻り







「そう言うワケなのでお二人のお相手
この三男と四男がいたしましょう」


「この場ではまだ殺しはしませんが…我等を
侮辱した分は身体で償っていただきますよ!」





落ち着きを取り戻したらしい伏木兄弟が
己が武器を構えなおし 床を蹴る







「とにかく、さんはまだ無事なんですよね?」


「そーいうこった…とっととこのバカども
ブチのめして迎えに行くとしますか!」







迎え撃つ体勢を取った二人へ







「「ナメるな!我等の極めし斬術とくと見よ!」」





両者はそれぞれ、片手と両手で槍をもっそい速さで
円盤状になるよう回しながら襲いかかってきた





「って槍グルグル振り回してるだけじゃねぇかぁぁ!」











第十訓 ペンを回すアレ、カッコよく
やるのムズくね?












手厳しいツッコミが飛ぶも、見た目のチープさと
裏腹に その攻撃は案外強かった







四男が両手回転の槍を微妙に傾斜させて

相手から距離を取らせ、また逆に回転させた柄に
相手の攻撃を絡め弾いてとする一方


ペンのように片手で回転させた槍をそのままに

三男が縦横無尽に寄った相手を切り裂く





回転する槍攻撃だけかと思えば、不意に
通常の突きなどに調子を変えてくる







「ほらほらどうした侍ぃぃ!
刻んじまうぜ削りぶしみてぇによォォ!?」








斬撃を防ぐ二人は、押されているように見えた







「それともあの世で派の弱っちい小娘に
稽古つけてもらおうと思ってんのかぁ?」









せせら笑う伏木達は気付かなかった





銀時と新八が 今まで回転する槍の
速度とタイミングを計っていた事に









二人が同時に床を蹴って真正面から突っ込んだ





繰り出される突きは、示し合わせたように
分かれた二人の間に突き立って止まる







「くっ…!」





逡巡する三男を狙い 分かれた二人が
挟み撃ちにすべく方向転換する







「させるかぁぁぁ!」





四男が三者の間に立ち、槍を前方に回転させ
盾のような状態を作り出す直前で


銀時の木刀が 柄を思い切り叩き折った







「こんなもん に比べりゃ全然遅ぇよ」





間髪いれず横手から繰り出された
新八の突きが鳩尾に沈み、男は倒れる







「よくも弟をぉぉぉぉ!」





吼えて三男がメチャメチャな軌道で
回転中の槍を振り回してくる





「だからそれぶっちゃけ 槍振り回してる
子供の遊びにしか見えないんですって!」


本家の槍術を愚弄するなぁぁぁ!
惰弱な派の死にぞこないに組した侍め!」





回した槍を袈裟懸けに新八へと薙ぎ払い


その絶妙のタイミングを狙って木刀がぶつかる





槍の勢いを相殺して双方の武器が折れ


硬い音と共に、槍と木刀の破片が宙を舞い
少し離れた床へと跳ね飛ばされた







眼前で起きた出来事に動転する伏木へ





折れた柄の根元を強く握り







「人傷つけて笑ってるアンタらなんかに
あの二人を…さんを見下す権利はない!





憤る新八の一括が響く







「うるさいこのクソガキ!殺してやる!」







懐に忍ばせていた短刀を取り出し
目の前の相手へ突き立てようとするも





「オィオィ、槍使い名乗ってんなら
テメーの槍だけで勝負しやがれっての!





背後に回っていた銀時が腕をねじり上げ
後頭部を強く殴ったため


伏木はたまらず昏倒した







「お前も案外無茶すんなー新八ぃ、でも
やれば出来る子だとは思ってたぜ?」


「銀さんほどじゃないで…うわあぁぁっ!?





照れ笑いをしていた新八は、背後から
現れた男と首筋に添えられた槍の穂先に竦む







先程までの伏木二人はいまだ床に伸びており


姿形は同じまでも、まとう気配が今までの
伏木達とは別格だと 彼らは感じ取る







「弟二人を下した程度で油断しては
いけませんよ お侍さん方?


「銀さんっ…!」


「テメっ、新八を放しやがれ!!」


「おっと 動くと彼の安全は保障しかねます」





ちらついた刃に、銀時がギリと奥歯を噛む





「こんなのっ…卑怯じゃないですか!


「何と言われようと結構です、私は命令を
忠実に遂行しているだけなので」


「のワリにゃ、随分楽しそうに見えんなぁ
オレの気のせいか何番目かの伏木さんよぉ?」


私は長兄です お初にお目にかかりますが」





新八を引き連れたままゆるりと距離を取る
伏木を油断なく睨んだまま


銀時の瞳がスゥ…と細められる





「嫌がらせ仕込んで、を殺しかけて
かと思えばいまだに生かしておいたり…


テメェら 何企んでやがる?







男の笑みが、殊更深さを増した







「それは、死ぬ直前に合間見えた際
お教えします…死なない程度に相手してやれ





現れた新たな兵達へ告げると新八を引きつれ
伏木は部屋を後にした









無言で佇む銀時を囲む屈強そうな軍団の中





「へっへっへ…散々暴れてくれたお礼を
今からたっぷりしてやるぜぇ!」





一際身体の大きい天人兵が駆けて大刀を





振り下ろすよりも早く、木刀による
渾身の一突きを受け


何人かを巻き添えに部屋の壁へ叩きつけられた







「うるっせぇよ 雑魚風情が」







低く刺すように吐き捨てる銀時の目は


対峙する者全てを慄かせる殺意を宿していた















地階は巧妙な隠し部屋などが数多くあり


そこに潜んでいるのは、どれも兵器やおぞましい
実験などの類に関わる品や場所ばかりだった







中でも、かなり下層に位置する
実験動物用の牢獄はまさに地獄絵図で





鎖のついた鋼鉄製の拘束具で
首と両腕とを天井から吊られたの姿は


そこに相応しい燦々たる変貌を遂げていた







先日の怪我が治りきっていないにも関わらず
作務衣の腹に拳や靴の跡がついており


足元には 嘔吐したらしき痕跡もある





腕や足の部分や顔にも 打撲やムチで
出来たらしき痣や


黒い髪や服の端に 電撃を受けたような
焦げ痕がそこかしこに見受けられた







「田足様は例の兵器にコイツを使うらしいが
その前に殺っちまっても構わねぇよな?」


「いーだろ、こんなクソガキ」







彼女の目の前に佇んでいた天人らしき
二人の兵隊が、器具を手にせせら笑い







「「ちょっとそこのお兄さん」」


「「ん?」」





肩を叩かれ 二人は振り返ると


九兵衛と妙の一撃を受け、声を上げる
ヒマなく倒れ伏す





妙殿に九兵衛殿!何故ここに…!?」


「助けに来たに決まってるでしょ!」


「今解放するから、動かないでくれ」







九兵衛は刀を抜き放つと、瞬時に
鎖と拘束具を微塵に断ち切る





戒めを解かれ、落下するの身体を


妙が駆け寄り 受け止める







「大丈夫っちゃ…!」





言葉を失う彼女の様子に 慌てて
近寄った九兵衛もまた





間近で見たの、左目の瞼の少し上に


刃物の刺し傷がある事に気付いた





さん この目の傷は…!


「目を抉られかけたが、奴等の気が
変わったから さして重い傷ではない」


「でも、こんなに深く」


「気にされるな妙ど、痛っ…」





身を起こしかけるを 二人は手で制す







「余り動かないで ひょっとしたら
骨が折られているかもしれない」





九兵衛が看破した通り、執拗な暴行が
彼女の肋骨にヒビを入れている







だが…惨状はそれだけでは済まなかった







「何これ…ひどい…」





妙はの手を掴むと、口を押さえる







五本の指と爪の間に 針が差し込まれた
形跡と流血がありありと残っていた



もう片方も、どうやら同じ状態のようだ







「平気だ、この手の荒事には慣れている」







表情を変えぬまま は手を引っ込め





ゆっくりと突き放すように言葉を紡ぐ







「どうして この場所へ来たのだ」


「どうしてって…」


私は罪を犯した罪人だ、不当な扱いであれ
罰を受けることは当然なんだ」







二人を睨むように見つめるの顔に
人らしい感情はまったくなく


緑色の目も、何者の侵入をも許さぬような
底知れぬ闇を宿している







「危険を冒して助ける価値など私にはない
今ならまだ間に合う…見つからぬ内に逃げ」







言葉半ばで、妙はの頬を張り飛ばした







呆然と叩かれた頬を押さえる彼女へ







「アナタがたった一人で罪を背負って死んで
お兄さんが喜ぶと思ったわけ?」








険しい目をして、妙は言葉を続ける







「自分がいなくなって悲しむ人達の事
ちゃんと考えなかったの?」


「…ごめんなさい」


僕達はそんなに信用できなかったのか

…田足家が嫌がらせをしていると分かったら
さんは僕達が軽蔑するとでも思ったのか?」


「そんなつもりは…!」







陰りを帯びた顔で俯き、彼女は
微かに震える両の手をぐっと握り締める







「私はただ、私の罪のせいで大切な人達が
苦しむのを もう見たくはなかっただけ…」


「昔の罪なんて、もうどうでもいいのよ!」







遮るような一括に 怯えたように
顔を上げた







「どうして相談してくれなかったの?
私達…仲間でしょ?ちゃん」








今にも泣き出しそうな声で 妙は優しく
片方の手を引いて、両手で掴む





同じように空いている手を両手で包み
九兵衛も諭すように呟く







さん 僕らと戻ろう」







二人の眼差しはひたすら温かく







「……っ 私は…!」





悲しげに顔を歪めたから、涙が一筋









「オィオィ、随分安い友情ドラマを
繰り広げてくれるじゃないのお嬢さん方」








横手から響く声に が咄嗟に
妙と九兵衛を突き飛ばした次の瞬間





飛び出た槍の柄で横薙ぎに殴られる







「「(ちゃん・さん)!!」」


「ちっ、邪魔しやがってこのクソガキ!」





咳き込む身体に蹴りを入れ、三つ編みを
掴んで身体を起こし 七男が二人を見やる








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:三男&四男の対決と囚われた
説得シーンまで漕ぎ着けました〜


新八:ってさんの状態ひど過ぎでしょ、
危うくR18指定になりかけるトコだよ!


狐狗狸:これでも抑えた方です、本当なら熱した
焼きゴテで***だの足の爪が***だのとか


妙:ちゃんを何て目に合わせてんだ
 このど変態がぁぁ!(飛び蹴り)


狐狗狸:ぎゃぶるぁぁ!(ぶっ飛ばされ)


九兵衛:普通、槍はあんな風に回せんハズだが?


銀時:毎度毎度適当に書き散らしてんじゃ
ねぇぞコラァ


狐狗狸:そこはお話だから敢えて目を
つむってください頼むからっ!




現れた七男が、更に彼女へ非道を行い…!?


様 読んでいただきありがとうございました!