「トシ、総悟、もう入っても大丈夫だぞ」





近藤の声のすぐ後で、ふすまを開けて
土方と沖田が室内へと入ってきた





「随分と物々しい客だったな」


「あいつら、何なんですかぃ?」


「ああ お上からの使いだよ」







使いの人間は、近藤と対面すると
開口一番にこう言った







―局長殿にのみお伺いしたい事がある―







やむを得ず近藤は二人に席を外してもらい
客人の質問に答えていた





その間、ずっと側で待機していたとはいえ


殺し合い一歩手前のケンカを繰り広げていた
二人は室内の会話を聞き逃している







「何でも田足家が昔の事件について色々と情報を
集めてるらしくて、何か知らぬかしつこく聞かれたよ」











第一訓 予期せぬ客は大体不意打ち











「そりゃ何とも どうでもいい用件ですねぃ
で、奴さんにはなんて?」





たずねる沖田に、近藤は肩をすくめる





「知らないと答えたら 捜査協力するように
とだけ言って帰ってった」







ふぅ と困ったようなため息と共に
呆れたように近藤が続ける





「全く、管轄外の古い事件を蒸し返すとは
お上のやることはよくわからんな」


ストーカー騒ぎ新手の武器密売ルートの噂に
大忙しだって時に あちらさんはヒマなもんでぃ」


「だよなぁ、今更お蔵入りした地方のヤマを
解決でもするつもりかねぇ」





同意する沖田が 小声でボソリと付け加える







「サル山大将程度一族のカビの生えた事件より
土方抹殺の方がよっぽど急務だろがぃ」


「そうだな、オレも真っ先にお前を処理したいよ」





耳聡く聞きつけた土方が刀の柄に手をかけ
ふすまの裏側の光景が再度展開され


あわてて近藤が二人をいさめた





「トシも総悟もこれからストーカー被害の
案件あんだからケンカはナシ!!」



「へーい…命拾いしやしたね」


「そいつぁこっちの台詞だ馬鹿野郎」





舌打ちと睨みが入りつつも、両者は渋々
刀と怒りを納める







よーし!それじゃ悪質なストーカーや
犯罪者から市民を守りに 行くぞぉぉ!」


「近藤さん、懐から姉御へのプレゼントが
はみ出てますぜ」


「おっとこいつはうっかり!ガッハッハ!





鼻の下をやや伸ばしつつ豪快に笑う近藤だが


彼のその顔面が今よりももっと趣味が
悪い感じに変形させられるであろう事は
火を見るよりも明らかだ







「そいじゃ、行きましょうや土方さん」


「おぅ」





鼻歌交じりに歩き出す近藤の後ろを
沖田と土方がぞろぞろとついて行く







(田足ねぇ…その名前を聞いたなぁ随分久々だ)











かなり昔 地方の天人の資産家殺害事件が、
全国紙でやや目立つ所に載った





同時に行方不明と報道された重要参考人も


顔写真等は記載されてなかったものの氏名だけは
両者が未成年にも関わらず実名で出ていて





血塗れで逃げていく片割れを目撃した
家政婦の記述までご丁寧に載せられていた







…にも関わらず 犯人逮捕の報告が載る事は
ついになかった





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やがて人々の関心と共に消え失せ
時の流れの中に、事件は埋もれ忘れ去られた











(風の噂にゃ証拠不十分でお蔵入りと聞いたが…


またほじくり返し始めたって事は、証拠か
下手人でも見つけ出したってのか?)







屯所の外へと踏み出した瞬間





(…下手人か)







土方の脳裏に の姿が浮かんで消えるが







(いや、まさかな)





首を軽く横に振って、それを否定する









―――――――――――――――――――







「最近よぉ の奴、万事屋に来ねぇな」





ジャンプを読みながらの銀時の声が
どこかのんびりと響くけだるい午後







「そういう事もあるんじゃないですか?
さんだってお仕事されてますし 一応」


「さっちゃんだって仕事あるのに よく
万事屋に顔出してるアルよ」


「あれはドMのストーカーだからいいの」





仰向け状態から視線だけ銀時へと向ける神楽





「ストーカーって言えば、あのゴリラもアル」


「あーアイツも懲りねぇからなぁ」


「止めて下さいよその話題は、近頃一段と
磨きがかかってるのか姉上イライラし通しなんで」





三角巾をつけて甲斐甲斐しくハタキを動かしていた
新八が、今朝の姉の様子を思い出してため息







「そろそろ命日迎えんじゃね?あのゴリラ」


「今頃姐御に生き血抜かれて 真っ青に
なってると思うヨ FFのモンスターみたいに」


「本気でシャレになんねーよ!
てか局地的なネタを持ち出すなァァァ!!」






新八のツッコミが炸裂する中、


神楽が半身を起こして 近くのテーブルに
置いておいた酢昆布をかじり始める





「けど、確かに 見かけないアルなー
新しい流行でも教えたかったのに」


「神楽ちゃーん にこれ以上妙な知識
教え込むんじゃねーよ、どうせなら
もうちっと恥じらいとかだなぁ」


「恥をかなぐり捨てた銀ちゃんに言われたくないネ
その腑抜け面ミソ汁で洗って出直せよ」


「テメェだってどっこいだろが酢昆布娘
昆布の代わりに酢漬けになってこいや」


不毛なケンカを繰り広げんなそこぉぉ!」





すんでで両者のケンカを止めたのは
玄関から響いた 戸を叩く音







「ほら、お客さんですよ 二人とも
しゃんとして…はーい、今でまーす







ソファに寝転ぶ二人にそう言ってから
新八はパタパタと玄関へ向かい





「はい何か御用……あれ、さん?」


「あの…ここにが来ていませんか?」







困ったように眉を潜めると対面した









応接室に通され、薄めの茶を出された
挨拶もそこそこに語り始めた





の様子がここの所、おかしいんです」


「アイツがおかしいのは元からだろ」


「いや、そーいう感じではなくて」





出鼻をくじかれるも、すぐさま気を取り直し





「仕事柄、帰りが遅かったりすることは僕も
似たようなものなので気に留めなかったんですが…」







帰りが遅くなる事に加え、


無断外泊家を無断で空ける事
最近になって目立ち始めたらしい







「理由を聞いても謝るだけで話してくれないし
ここ二日家に戻らないから 流石に心配で…」


「それで ウチに来たんですか」





頭をボリボリ掻きつつ、投げやり気味に
銀時が口を開く





「そりゃお前、に決まってんだろ
若い娘の外泊は大抵野郎ん家でしっぽりだよ」


「身もフタも無いですね…てゆうか
あのさんに限ってそれは無いような気も」


「甘いね新八ぃ、だって女アル
盛り始めたって別におかしくはないネ」


犬猫と同列扱い!?せめて人でいさせたげて!」







薄い茶を一口すすり、は美しく整った顔に
嫌悪感を僅かに浮かべながら答える







「品の無い言い回しはともかく可能性としては
ありそうな話ですね、ただ…」





普段の妹の常態を思い浮かべて


その表情は、腑に落ちないと言いたげな
代物へ変わっていく





「それならそれで、僕に一言紹介してくれても
おかしくはないと思うんですけどね」


「オィオィオィ 妹も妹なら兄貴も
シスコンですかぁぁ?」


違います、普通に一般的な思考です」





彼の言葉にうんうんと首を振る新八





「そうですよ 僕も姉がいるから
さんのキモチ、わかるなぁ」







クチャクチャ音を立てて酢昆布かじりつ、
冷めた目をした神楽が二人を見やり





「ほら、ダブルでシスコン揃ったアル」


「「シスコン言うなぁぁ!!」」







新八との声は それは見事にハモった









話を切り上げるように立ち上がり





「とにかく、もしがここに来たなら
ここに引き止めて置いてくださいね」







それだけ言うと、は一礼して
玄関へ向かおうと踵を返す







「オィオーィ どこ行くんだよお兄ちゃん」


「決まってるでしょう、を捕まえて
真相を詳らかにするんですよ」







ハッキリキッパリ言い切って、廊下を
数歩 歩き始めた所で







の横を 神楽と新八が通り抜けた





「銀ちゃーん、私の酢昆布切れたアル」


「そう言えば 洗剤とかもかなり
少なくなってましたよね?」





思わず立ち止まるを後ろから追い越し







「そうだな 天気も悪くねぇし
甘いもの補給がてら外に出てみっか」





真っ先に玄関へたどり着いた銀時が笑う







「…あなた達もついてくる気ですか?」


「たまたま目的地が一緒なだけだろ
買い物のついでだよ、ついで


野次馬根性が顔に出てらっしゃいますけど?」





呆れたように嫌味を飛ばすだが、
口の端は微かに笑っている





「まぁいいじゃないですか、一人より四人で
探した方がさんも見つかりますよ」


「仕事なくて退屈してたから
ちょうどいいウォーミングアップね」





二人の言葉に ようやく笑みを見せて





「…お金は出せませんけど、それでも
協力してくださるのでしたら お願いします」





は、深々と頭を下げた







「セコっ せめてパフェ一年分おごるとか
景気のいい事言えよな」


「生憎僕は富豪じゃありませんので
アナタの基準で一年分は到底不可能です」


銀ちゃん銀ちゃん!兄貴じゃなくて
にたかればいいアルよ!」





神楽の言葉に感心して銀時が手を打つ





「おっ、冴えてるじゃねーか神楽ァ」


「「外道ですかアンタら」」







ツッコミの声はまたもや見事にシンクロした








――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:年明けして遅ればせながら、捏造長編を
またぞろ始めました〜


銀時:なんでオレらじゃなくてゴリとかマヨとか
ドSが初っ端持ってっちゃうワケ?(泣)


神楽:しかも、一辺も出てきてないアル


狐狗狸:ハイハイ 次回に見せ場も絡みも
あっからグダグダ言わないの


沖田:どーせなら動乱篇書けよなー
土方の処刑シーンとか見所あんのによぉ


土方:原作にもねぇもん捏造すんなぁぁぁ!


新八:てゆーかFF〜の下りは 明らかに
アンタの隣の人間が関係してるよね!?


狐狗狸:あーあーあーあー聞こえませんん!


近藤:お…お妙さん…(血塗れ)


狐狗狸:ちょ!出番早すぎですよ!?




次回にはギャグと絡みを増やします きっと


様 読んでいただきありがとうございました!