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まえがき(というか楽屋裏)
狐狗狸:サブタイは落丁でも手抜きでもありません
…ってコトを一応警告しとこうかと
新八:ソレだけのためにあとがき持ってきたの!?
銀八:てーか毎度ながら季節ネタ無理くり入れてね?
もーいっそ無くていいじゃん、無駄に時間だけかけて
結局いつもと変わらない出来なんだし
狐狗狸:文化祭ネタ省かせといて まだ文句言うし…
神楽:なんでやらないんですか!私原作での出番
あんま無かったから楽しみにしてたアルのに!
土方:オメーは屋台食い荒らしてただけだろ
毎度思うが一々いるのかこの蛇足はよぉ?
狐狗狸:いるよ、蛇足は…皆の心の中に…
全員:結局ソレ言いたかっただけだろバ管理人んん!
様 読んでいただきありがとうございます!
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イチョウや紅葉が鮮やかに色づいて舞い落ち
地面へと積もり始める頃には
道行く学生達も半袖から長袖のセーラーや黒い詰襟
或いは紺や茶などのブレザーへ衣が変わり
来ている本人が気分を一新させたり
通りすがって目にした社会人などが、自らの
高校時代に思いを馳せたり
はたまた室内にこもった特殊な趣味の方が
目当ての相手や制服をチェックしたりする…
そんな朝の空気の中
「死ねっスこんの変態教師ぃぃ!」
「マジありえないし!乙女の敵ぃぃ!!」
銀魂高校の門前で、怒りをまとった女生徒達に
袋叩きにされる坂本を目撃し
「うわぁ…何アレ…」
やや離れた道端にて、兄妹は呆然と立ち尽くす
「" "!」
他の生徒も 乱闘の横を恐々通り抜けたり
同じように立ち尽くして乱闘を見つめていたりする
「…理由はともあれ、アレでは通行に邪魔なので
場所を変えるよう忠告しに言って参ります」
「下手に首突っ込んじゃダメ!あー言うのは
風紀委員とかに任せときなさい!」
「しかし兄上、ほとんどが級友達なのですが」
の言う通り、袋叩きに参加しているのは
また子や阿音やおりょうなど二人に見覚えのある
顔ぶればかりである
「誤解じゃきー、ワシの話を聞いてくれんかの〜」
「うっさい変態モジャ!人のスカートの中に
頭突っ込んでまだ言うかこんのセクハラ教師!!」
両頬に見事な紅葉を張り付かせたまま、彼女らに
詰め寄られてもなお笑い続ける彼のすぐ側
門柱の辺りに、俯き気味の鉄子と
隣に佇む厳つい顔つきの鉄矢を認めて
二人はそちらへと歩み寄る
「鉄子殿に鉄矢殿、この惨状に心当たりは?」
「…あ…いや…その…」
「いきなり坂本先生が、そこのマンホールから出て
女子達のスカートへ頭を突っ込んだんだよ!」
頬を赤らめモジモジする妹とは裏腹に、兄は
いっそ清々しいほどの大声で説明する
「何ソレ、それじゃまるきり変態じゃない」
「そうとも君!しかもあの教師 事もあろうに
鉄子 自慢の紅色桜柄パンツをも覗き見して」
従来の声量で言い放った鉄矢の顔面へ
次の瞬間、鉄子の拳が思い切りめり込んでいた
「……聞かなかったことにして」
「分かり申した よく分からぬが大変だな」
小さく、しかしハッキリと呟いた相手へ
彼女が無表情のまま了承すると
ようやく騒ぎを聞きつけてか、教頭が血相を変えて
女子に囲まれた坂本の下へと駆け寄る
「ちょっとちょっと!何やってんだ坂本先生!」
「いやー教頭センセ、どうにかこの子らの誤解を
説いてもらえるよう説得してくれんかのー」
「言い逃れしようったって無駄っス!
ここにいる皆が、アンタが私らのスカートへ思い切り
頭突っ込んだの見てんだからな!!」
「朝うっかり下水道に迷い込んで、這い上がったら
運悪く満開のパンツん中に入り込んだだけぜよ」
「それ十分懲戒免職モンじゃねーか!」
緑色の顔面に青筋立てるメガネに怒鳴られても
バカ笑いを絶やさないグラサン教師を冷めた目で見て
「アホらしい、行こうか」
「え…しかし兄上 坂本先生に悪気は無いのでは?」
「いつもの事だから気にしなくていいでしょ
それに、急がないと遅刻しちゃうから、ホラ」
スッパリ言い切り、兄は妹の背を押しながら
校舎へ入るよう促したのだった
「おはよう九兵衛殿、銀八先生は?」
「おはようさん、まだ来てはいないようだが…」
「坂田先生はチャイムギリギリが通常ですからねぇ
全く、セレブな柳生家である若を導く教職者として
もっと自覚を持ってもらいたいものですな」
「僕には お前も学生としての自覚が足りないと思うが」
カーテンのシャーの金具やらロフトやアダルトグッズの
カタログを抜き打ちの持ち物検査で取り上げられ
絶賛正座中の東条へ、彼女の冷たい眼差しが飛ぶ
しかし校門での乱闘(フルボッコ)に参加していた
級友が教室へと顔を出しても、チャイムが鳴っても
一行に スリッパの音が近づいてこないので
「銀八先生、ちょっと遅すぎだよね?」
「うぬ…そうだな甘崎殿」
「山崎だからオレ!頭にYつけて!!」
席についても隣や近い席同士でのひそひそ話がやまず
やがて教室へとやって来たクラスメートの花野が
教壇の手前に立ち 放送部らしいよく通る声で言った
「えー皆さん、HRと一限目は自習だそうです」
どよ…と室内に騒音が満ち、間を置いて新八が
手を上げながら訊ねる
「ちょ、どういう事ですか!?」
「詳しく申し上げますと、"中間試験の問題作りで
体調を崩したので休んでくるわ"とのコメントが」
「要するにサボりじゃねーか!教師として
あるまじき発言だろソレぇぇぇ!!」
しかしながら、真面目に授業が出来ないコトを
憂いたのは数人のみで
「よっしゃラッキー!これで納期に間に合うぜ!」
「っておもむろに内職始めんなぁぁ!」
「キャッホー!したら堂々と弁当食べれるネ!」
「早弁するにも程があるよ神楽ちゃん!?」
大半の生徒は、早速各々好きなように振る舞い始める
「ったくどいつもこいつもたるんでらぁ、土方さん
ちょっとコーラとメントス買ってくるついでに
先生引っ張ってきてくだせぇ」
「パシリ主体!?テメェが一番たるんでんだろーが
ちったあ風紀委員として働け総悟ぉぉぉ!」
止めようとする常識人やツッコミ役もあっさり
暴徒に飲み込まれ、或いは傍観を決め込んでゆく
室内を走り回る生徒や飛び交い出す文房具を眺め
「こんな時、屁怒絽殿がいればよいのだが…」
「そ、そうだね…休みの人多いね今日」
廊下側へ退避した兄妹が、ストッパーと
なりうる相手へ思いを馳せている所で
締め切っていた引き戸が勢いよく開いた
「っだあぁ!ちったぁヨソのクラスに
配慮しやがれ3Z…んがっ!!」
喧しさに耐え切れず 隣で授業を行っていた服部が
怒鳴り込んだ直後すっ飛んできたラケットの
直撃を受けて顔を抑えて廊下へ下がる
「不用意に扉を開けるから…大丈夫ですか?」
収まらぬ騒ぎを背に、二対の緑眼が彼へ注がれる
「っだー鼻血出たコレ…つうか坂田先生
まだ保健室から戻ってねぇのかよ?」
「保健室にいるのですか?先生は」
鼻をかんだちり紙を無造作にゴミ箱へ投げ入れて
前髪に隠れた眉を潜め、服部は言う
「おいおい常連のお前なら知ってたろーが妹」
「生憎と 兄上以外に感心ごとはないので」
「ああそう それはいいから早いトコあの天パ教師
呼び戻して来い誰でもいいから、これじゃ授業妨害だ」
苛立ち混じりの一言に反応し 桂が大げさな
咳払いをしながら立ち上がる
「致し方ない、不甲斐ない風紀委員に代わって
オレ達で先生を連れ戻すとするか」
「うぬ!」
「ノリで返事しない あと桂君それおかしい
一緒に行くなら同じ学級委員のお妙さんでしょう?」
「君の意見も最もだが…しかしな」
と、言葉を途切って桂が向けた視線の先を
二人も伺ってみれば
「この新作のマロンタルトとか美味しそうですね」
「ハーゲンもメープル味が新しく出るみたいだし
なんだか目移りしちゃいそうね?」
「秋のスイーツとして、オレならこの安納芋と
カボチャのパウンドケーキなんてヘルシーでオススメ」
「懲りずに横からしゃしゃり出てくんなゴリラァァ!」
騒ぎに乗じて女子達の会話に混ざってた近藤が
妙に、TASさん真っ青のウルテクコンボを
決め続けられてオーバーキル状態になっている
「アレでは到底しばらく手は開くまい」
「確かに」
「…むしろいい加減 近藤君には救急車
呼んだ方がいいかも、黄色の」
保健室へと足を運べば 予想通り眉間にしわを寄せた
伊東が二人を出迎えてくれた
「なんだって君らが…いや、まあとにかく
居座ってる担任を早く引き取ってくれ」
ベッドの上で、よだれ垂らして憎たらしいくらい
豪快にイビキを掻く銀八を揺さぶりながら
二人は呼びかけを試みる
「先生、授業をしてくだされ」
「うーん…生徒は教室、戻んなさ…むにゃ…」
「だったら担任である先生は即刻目を覚まして授業を
行うべきじゃないんですか?それが教育者としての
果たすべき義務じゃないんですか?教師が生徒を
放置して睡眠をとって何になるんですか?教師として
職務を全うする以上 体調管理を万全に整えておくのが
仕事の内じゃないんですか?自習にしても学ぶべき
範囲くらい教えておくべきじゃないんですか?そして
先の見えぬオレ達はどこを目指したらいいんですk」
滔々と耳元で語っていた桂の鼻っ柱に
強烈な裏拳がヒットした
「…うぜぇ お前はとりあえずヅラを脱ぎ捨てろ」
「訴えますよ先生、今のはハッキリとした意識の中
行った暴行として記録しますからね 二人も証人に」
「ならないから 僕の仕事だけでなく面倒まで
増やすのは止めてくれないか坂田先生」
「…体育祭とかで…筋肉痛なんですぅ…後五分…」
その後の呟きは言葉にならず、しばらくしてから
再びイビキが聞こえ始める
無言でしばし見つめ、が伊東へと訊ねる
「保険医殿 刺激臭のする薬品などは」
「その手は試したよさん…けどこの男
よほど眠いのか毛布をかぶって耐え続けていてね」
手に負えない、といった様子で伊東は肩を竦める
「どうしてそこで諦めるんです!出来るやれば出来る
絶対起こせる!奇跡も先生も起こせるんです!!」
「チャレンジ精神はいいけど、脱脂綿かティッシュ
鼻に詰めときなさい桂君 下に血が垂れてる」
「とにかく時間はまだある!諦めず続けるぞ!」
「桂殿、次はこよりで先生の鼻をくすぐろうと思うが」
「本当に人の話を聞かないな3Zはっ!!」
…その後、両者の努力も空しく
銀八が目を覚ますことなく一限目が潰れたが
「あのー月詠先生 二限目って数学じゃあ…」
「坂本先生は一日謹慎として早退したから
急遽 英語と入れ替わる事になりんした」
代わって現れた彼女が、3Zのたるんだ空気を
一気にピシッとまとめ上げ
二限連続の体育では捻挫をした生徒が出たものの
「3Zの保健委員は猿飛だっけか?おーぅい猿飛
ちとひとっ走り保健室行って氷もらって来てくれ」
「松平先生 猿飛さん今日風邪で休みでーす」
「マジで?じゃあハム子、自力で保健室行って来い」
「ちょっと先生ぇ〜あたしの名前公子なんですけど
女子の名前間違えるとかマジありえなくね?」
「あーうん悪かったわ豚ハム子、間違って
冷蔵庫にしまわれないよう気ぃつけるんだぞ」
「何でグレードアップしたんだよぉぉ!?」
普段と変わらぬ進行度で時間割は消化されていく
けれども 3Zの教室に銀八は本日
まだ一度も顔を出していない
「…先生は、帰りのHRには顔を出すだろうか?」
「流石に保健室は追い出されて、寝ぼけ眼で
授業やってるみたいですけどね」
「けど先生のことだから 二度寝するために
すっぽかすとかやりそうアル」
「あーあるね、もしくはHR早めに切り上げるとか」
「新八に神楽に!
くっちゃべってねーで手元に集中しろぃ!」
ペシ、と源外に頭を叩かれ、三人は
手元の薬品と教科書の指示に再び注意を払う
「あ゛ー…だる…頭重っ…」
―六限目の終わりごろ、宿直室の畳に寝転がり
布団を被った銀八は 外したメガネをかたわらに置く
「これ…アイツの風邪完璧うつされたか?」
昨日のゲリラ雨の中、ジャンプを買いに行く途中
教え子につけられていた一件を思い出し
若干イラっと来た彼の耳に、チャイムが響く
勿論 受け持ちのクラスのHRを思い出すものの
「…うん、ちょっと休んでから行こ」
と半ば睡魔に思考を譲り渡して 彼は目を閉じ
「あ、ここにいたか先生」
不機嫌そうに、引き戸を開けてやってきた
生徒へ半目を開いて呟く
「あんだよ、先生今日ちょっと体調悪いの
ちゃんとHRはあとでやっから寝かして…」
「寝すぎもよくない 起きてくだされ」
「ね 人の話聞いてる?オレ風邪気味っぽいから
少し寝たいの、だから寝かして」
「風紀委員の者が来る前に起きた方が楽かと」
「だーから空気読めってのぉぉ!誰が何と言おうが
寝るっつったら寝るからなオレぁ!!」
ふて腐れ 布団に包まり縮こまったダメ教師の耳元へ
無表情のまま、彼女は唇を近づけて…
「" "!」
心底驚いた顔で 銀髪を振り乱し彼は飛び起きた
「…マジでかぁぁ!?オイそれどーいう」
「それでは先に戻ります故」
「いやいや先生騙されねぇよ?んなガキみてぇなウソに
引っかかるほど…ってちょい待てっ!
ウソだよな?それ絶対ぇウソだよな?せめてさっきのが
ウソか本当かだけは教えなさい コラ待てオィィィ!!」
うっすら頬を赤くして、そそくさと宿直室を出た
三つ編み少女を慌てて追っかけた銀八は
「いたぞー!確保だ!!」
風紀委員の面々にとっ捕まり、3Zへと
強制連行されたのであった