特に予定は無かったが、いつもの調子で
万事屋へと顔を出してみれば


居間のソファで銀時が ガクリとうな垂れていた





「な、何かあったのか?」


訊ねるも憔悴しきった面持ちで何やら
ブツブツ呟くのみで、いまいち要領を得ぬ





「…新八、銀時に一体何が?」


「あーソレ 気にしないであげてください」


「単なる自業自得ネ アレが証拠ヨ」





酢昆布くわえた神楽が、下衆でも見るような目で
銀時→銀時の斜め下に視線を示す


つられて見やれば そこには無残に破壊された
何かの残骸が散らばって出来た小さな山が


更によく見れば、人の写真が…ん?これは…







「…女人が 肌身をさらしてるように見えるが」


エロビデオアルからな、秘蔵の夜のお供
ったく男はこれだから」





心底バカにした台詞を神楽が吐いた途端に

間を置かずに抜け殻だった男が気炎を取りもどす





小娘に男の辛さが分かってたまるかぁぁ!

男だってなぁ、溜まり溜まった情熱(パトス)
開放せずにいられねぇ時だってあんだよ!
嫁やガキがいても右手の恋人が必要なんだよ!!」


「そんなんだから銀ちゃんいい年こいて いつまでも
素○童貞卒業できないアル、チ○コだけでなく
求めるゴールまで年々縮こまってどうするネ」


縮んでねぇよ!何なら見してヤローか
立派なアナコンダ拝ましたろーか?あん?」



生々しい話は止めろアンタらぁぁ!これ以上
さんに余計な知識植えつけないで!!」











「付き合い長いと当時の勢いが無くても
ついつい愛着沸いて離れられなくなる」












改めて詳しい事情を聞いた所、

どうやらお登勢殿のお使いで掠めた銭で
破廉恥なシロモノを買い漁ったらしく


金額の差異に気付いたお登勢殿によって
事実が発覚し、制裁を受けてこうなったと





「たしかに金ちょろまかしたのは悪かったよ?
けど、フツーここまでする?!高かったんだぞコレ
かなり厳選して選んでたんだぞ!!?」


「諦めの悪い男だ…救えぬな」


「ちょっとちゃーん無表情キャラのクセに
何フツーに蔑みの目ぇしてんの?視線冷たいの?
キャラ崩壊してるからね軽くぅぅ!!」


「卑猥な銀ちゃんに文句つける資格はないネ
むしろ表情豊かになったのは成長の証アル」





そうなのか?私自身は大して実感など無いが





「言われてみれば、神楽ちゃんの言う通り
始めの頃より生き生きして見えるよねさん」


死亡回数は加速度的に増えたけどな!むしろ」


うぬ、それはお主の言う通りだな





頷いて、出された薄い茶をすすっていると


物のついでのように対面している銀時が
言葉を投げかけてくる





「…で、お前もホントここ来る回数多いよな
裏稼業の住人ってヒマ人だらけなんですか?」


「いつもの事ではないか気にするな」


「それ言っちゃっていいんですか!?
もうちょっとプロとしての自覚持ちましょうよ!!」






新八が何故か反論するが、それは私より


頻繁に通い詰めている あやめ殿へ
言うべきではないのだろうか


ま、余計な世話だとは思うが





「いっそのこと万事屋に就職し直そうとか
思ってたりするアルか?ひょっとして」


「いや、それは無いな」


「うん その方がタダで使えるから助かるわ
むしろ役立たず増えなくて済むしな」


一番の役立たずはアンタでしょーが」


そうだそうだ、と神楽が続ければ
雇い主が不満たらたらに言葉を返して


俄かに室内は騒がしくなる







…しかし、この場所でのこう言った掛け合いも


今ではすっかり私の中で"当たり前"
なってしまったものだ


昔の私が一人でどう生きていたか など
もう おぼろげな記憶となってしまっている





忘れる事は 消える事は決してないだろうけれど







ぼんやりと眺めていると、新八と目が合った





「そういえば、この間の台風で
さんとこ 被害とかありませんでした?」


「いや、兄上もご無事で特には何も…ただ
仕事が一日休みになった と嘆いておられたな」


「あー…ウチもなんですよ、しかもハーゲンダッツ
買いにいけなくて機嫌悪かったから いつもより
近藤さんの制裁がヒドいものになってましたね」





それはまた、間の悪いことだ





「お天気合戦時よりは弱かったみてーだけど
たまの首は風で吹っ飛んだらしーぜ?」


おお、あれから たま殿復帰したか」


「まー私らが直々にワクチン渡しに行ってるネ
役に立たなきゃモシャス銀ちゃん面目丸潰れヨ」







以前、"うぃるす"に侵された一件の後遺症か


後日若干具合を崩し "あっぷでーと"が上手く行かず


直接"わくちん"とやらを"白血球王"へ届けるべく

源外殿の機械で小さくなって、卵殿の体内へと
入った事も記憶に新しい





「おお…本当に銀時と同じ顔だ」


「おい兄弟、何だこの小娘は?
なんか妙にヌルヌルしてて油くさいんだが」


「あーコレ移動中にお椀から落っこちて
ちょっと溺死しただけだから」


それ十分一大事じゃないのか!?てーか
ちょっ、近寄るな触るな汚れるぅぅぅ!!





あの時は、滑った拍子につかみかかって転んで
白血球王殿には迷惑をかけたが


無事に持ち直してくれたようでよかった







しかし…それはそれとして





思い出したのでついでに銀時へ不満を告げる





「あの後、せめて風呂を貸して欲しかったぞ
帰ったら兄上に恐ろしく叱られてしまったし」


「風呂場を再起不能にされてたまるかってんだ
それにヅラに生臭いの大量にぶっかけられた時に
比べりゃマシじゃね?見た目どっちもエロかったけど」


「何の話!?」





そこへ間に現れ 佇む桂殿が参戦する





「卑猥な言い方するな事故だ、それにお前が
乱暴に扱ったのが原因だろう あとヅラじゃない桂だ」


だから何の話!?つかどっから出てきたの?!」


「あの時も汁が散った上にニオイが取れず難儀」


「空気読む以前の問題ぃぃぃ!!」





説明を行っただけなのに、何ゆえチョップを
加えられねばならぬのか…解せぬ





「サブタイの時点で今回なんか思い出話
語るフラグっぽかったのでスタンバってまし」


「定春、ウザいから捨ててくるヨロシ





"わん"とひと鳴きして、定春が頭へかぶりつき
窓の外へと勢いよく放る





「せっかくスタンバってたのにぃぃぃ…!」





即刻放り出された桂殿の悲鳴が、尾を引いて

路地へと落ちていった







「一体何の用があったのだろうな」


「単に話の尺稼ぎ要員だろ」


「メタはいいですから それで結局さっきの話は
何だったんで「ニオイと言えば猿達のフンで
三途に行った折も父上から鼻をつままれていたぞ」
ガン無視!?てーか何その最悪な死に方!?


「あーあのクソ猿ん時の事まで持ち出すの?
どんだけ根に持ってんだよ 兄貴の執念深さ
移ったんじゃねーの?」


「兄上の侮辱は許さぬぞ」


「安心しろ侮辱してんのはお前だ」


「ならよし」


よくねぇぇ!つーか一貫して無視かお前ら!」





ツッコミが大音声になった辺りで、神楽の拳が
顔面に見事めり込み 新八は沈黙する





「ビチグソ丸 元気してるアルかな」


「相変わらず息災そうであったな
お主らも顔を見せに行くといい、喜ぶぞきっと」


「オレぁゴメンだぞ アイツ絶対顔面に
ウ○コ投げてくっから、全力投球してくっから」





理由は分からぬが つくづく動物に嫌われる男だ







…しかしこうして改めて思い起こしてみれば





この者達と 仕事などで共に行動して


辛い目や苦しい目に合わされた事も
決して少なくは無いが


それでも、関わりを断つ気には全くならない





逆もまた同じで…今日のように用なく訪れても

三人は 気にせず迎えてくれる







「ところで…先日捕った鈴虫やコオロギなどは
依頼主に高く買ってもらえたか?」





訊ねれば、銀時が意気込んで身を乗り出したので
反射的に少し身を引いてしまった





よくぞ聞いてくれた!それがよぉあの依頼主
羽の状態が悪いだの何だのって買い叩きやがって
結局、はした金しかくれなかったんだよ」


「そのわずかなはした金を全額パチンコに
注ぎこんだ人が言っていい台詞じゃないと思います」


「勝てないんだからいー加減パチンコ通いは
スッパリ諦めるべきだと思います」


「ここに来て何その息の合ったコンビネーションンン!」





と、机の上に乗った黒電話が鳴り響く


はーいもしもしぃ、こちら万事屋ですけどぉ?」







二言三言かわし、通話が終わって銀時が言うには


先程のは依頼の電話で 夫の部屋にあるゴミを
大量に片付けたいので人手がいる、とのこと





「旦那がいない時間帯に頼みたいらしいから
夕方頃に現地の屋敷で作業だと」





浮かない顔色をしている所を見ると、気が乗らぬか
厄介な仕事なのだろうか?


表情と、だらけた声色に同じものを感じてか


新八は若干眉をしかめ
神楽は酢昆布を噛み締め ため息





「銀さん、今回の仕事ってどんなゴミを捨てるんです?」


「なんでもブツは部屋の三分の一以上あるらしくてな
一人や二人じゃとても捨て切れないそーだ」


「うげ、そりゃマジで面倒ネ…
 どーせだから手伝ってけヨ」


「構わぬが 兄上のお見送りもしたいし
一度戻りたいのだが、よいだろうか?」


「へーへー 間に合わなかったら置いてくからな」





許可をもらったので一礼し、玄関で
足袋を履いて外へと





出ようとして、居間で賑やかに言葉をかわす

さっきまでと変わらぬ三人の声を耳にして
立ち止まる







…何故かふ、といても立ってもいられずに





「銀時、新八、神楽」


「あんだ?」 「どうしました?」 「何アルか?」





振り返って呼んでみたら、銀時達は
不思議げだが穏やかな顔で答えてくれたので


想わず緩む口元のまま 私は言葉を紡ぐ





「呼んでみただけだ、後ほど会おう」


「おう」 「それじゃまた後で」 「遅れんなヨ」





それきり、振り返らずに万事屋を後にする







心地よすぎて…少し怖くなったけれど


迎え入れてくれる人がいる限り ここは
今の私に許された場所なのだと信じられる気がして


ずっと縁が続けばいいと願った









…予定通り、夕方に依頼された屋敷へ訪れ
私達はゴミを詰めたダンボールを黙々と捨てた





途中一度、ダンボールをひっくり返し
数多の女人の破廉恥な姿の本やビデオなどが現れ


動転のあまり槍でそれらを破壊してしまったが





それを除けば 概ね無事に全て捨て終え
夜に依頼は完遂した…のだが





「…それにしても銀さん遅いな」


「厠に行くと言って、大分経つな」


「このままじゃ私のお腹と背中が融合するヨ
どんだけションベン切れ悪いアルかあの天パ」


「神楽ちゃん 今更だけど台詞自重して」


いつまでも戻らぬ銀時が気になり、三人で
辺りを探し回ってみたら







「ツラ的には右のが好みなんだが、最近のは
表紙で騙し入れてくっからなぁ…」





ゴミ捨て場で、ダンボールを漁り中身を
真剣に物色している姿を見つけてしまい





「あ」





…縁を切ろうか 本気で考えてしまった








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:今回は原点回帰しつつ色気度増したり
たまクエ後日談とか補完してみたり…ぶっちゃけ
アニメの尺伸ばし回みたいな話ですね


新八:だからいつにも増してグダグダなんだ
結局 銀さんと桂さんとさんの間に何が…


桂:オレの話で二番目にある「呼び捨てにする
タイミングってシビア」
のやり取りだな
ファイルだと"gt22"だな、ぜひとも読むといい


銀時:覚えてる奴いんのかぁぁぁ!?
つか宣伝にくんな、帰れヅラぁ!!


神楽:尺伸ばしって言う割には、猫の話や
メギネ篇や監獄篇やスキーとかは放置アルか


狐狗狸:それらも隙を見て話に盛り込みます
ほとんど裏方やほぼ無関係な形の関わりになるけど


新八:確定事項!?


銀時:あと誤解なきよう言っとくが、人手が
いるんでガキども駆り出したけど ブツの
ダンボール詰めはオレ一人でやったからね?


神楽:仕方なさ装ってもエロ本漁ってた
事実は消えないアル 男って本気で不潔ネ


新八:僕まで汚物を見る目で見ないで!!




お登勢さん&彼女が破壊したエロい品物残骸
後で新八がしっかり掃除しました


様 読んでいただきありがとうございました!