「今日は銀時一人なのか」


「ようブラコン 何しに来た」







玄関から聞こえた声に
動くの面倒だし勝手に入るよう怒鳴って







律儀に「お邪魔します」とか言って







入ってきてオレのデスクの真向かいまで
一直線にがやって来た







「特に用はないが…何となくではダメか?」


「あのな オレァ今万事屋営業中なんだよ
ちょっとは空気読めよ」


「営業中か、失礼した
…なら 新八と神楽は仕事中か?」


「あーそうですよどうせあいつ等
好き勝手外出してますよー!」








立ち上がり の頬を左右につねる







「痛い痛い、頬が千切れる銀時」


正義のパン戦士じゃねぇのに千切れるか
てか相変わらず 能面みてーな面だな」









実際、表情があまりにも変わんねぇから







出来のいい機械じゃねぇかと
ついつい顔や頭を触って確かめる









あ、セクハラじゃねーよ別に







だってこいつ触られても全然顔にも言葉にも
って気配出さねーし







あと胸や尻にゃ手ぇ出してねぇから うん







紳士だからね銀さんは









「出会い頭に機嫌が悪そうだな 銀時」


「うるせーこっちはヒマでヒマで
退屈してんだよ 何かおもしれーことしろよ」







手を離して椅子に座りなおす





が眉を少しだけしかめながら頬を擦る







「…わかった、では指でハートの形を作ろう」







言いながら右手をオレの前に持ってきて







人差し指と中指をあり得ないぐらい
グニグニ曲げやがった







「うわっ何それ気持ちワル!


「…お気に召さぬか、ならこれはどうだろうか?」







今度はグニャグニャと 身体を反らしたり
足や腕を曲げまくって踊る









こいつ 中国雑技団入れんじゃね?







…これで作務衣っぽい服と凹凸のねぇ身体と
能面じゃなきゃガン見すんのにな〜







「おいおいヤメろよ そんなもん美人の
オネェちゃんがやんねぇと色気でねぇって」







ピタリと動くのを止め、
こっちをじっと見ながら言う







「なら 銀時は何をしてほしいのだ?」









その真っ直ぐな目 勘弁してくれよ…







マジでどう答えていいかわかんなくなるし
正直 苦手なんだよなー









「何なら代わりに仕事とってこいや」







冗談で呟いてみたその一言を







「了解した」







は真顔で頷いて 外へと出て行った











え、マジ ちょ本気で仕事探す気アイツ!?







いやいやいや、あんな常識ナシ
街中でふらふら仕事探してたらヤベーって!!







下手に騒ぎ起こして捕まったら
最悪 オレも捕まるし!









外に出ると既に辺りにはいなかった







「だあぁぁもうこれだからバカなガキは
手間がかかって嫌いなんだよ!!」








とにかく街中を探すために、
メットかぶってスクーターにまたがった











「保護者はガキから目を離すな」











走り始めてすぐさま、見知った顔に会う







小柄ながらキリッとした振る舞いに長髪
顔の眼帯…九兵衛









「おい九兵衛、のヤツ 見なかったか!」







スクーターを止めて聞くと、九兵衛が
ああ、とか思い当たって







さんとなら 少し前に会ったぞ
仕事を探しているとか聞いてたな」







出来ればそのまま引き止めといてくれよ!







あいつがフラフラしてると面倒なんだって
察してくれよ頼むから!







「そのまま二言三言会話して、余っていた
バナナを渡して 別れたんだ」


「おま、何でバナナなんて持ってんだよ」


「非常食だ バナナは栄養満点だからな」







遠足のおやつかオィ







「それよりも、さんがどうかしたのか?」


「どうもこうも あいつが一人で出歩いてて
色んな意味で心配なんだよ」


「そうか それは大変だな…」


「なにやら騒がしいですね…どうされました、若」







いつの間にか九兵衛の後ろからロフト男、
東城が現れた







「東城、お前は さんを見たか?」


「そういえば、先程 怪しげな男と
一緒だったのを見ましたね」


「「何処で見た!?」」







オレと九兵衛が詰め寄ると、ロフト男は
あからさまに身を引きつつ







「あの、い 行きつけのソープラ…
じゃなかったロフトでですロフト!









うおぉぉぉい!よりによって
ホテル街の近くぅぅぅ!?








ヤベーじゃん 下手したらのヤツ
貞操の危機か!?









「急いでさんを!!」


「わかってるっつーの!」







ロフト男をどつく九兵衛に発破かけられて
オレは全身からやな汗かきながら







スクーターを全速力で動かした











ロフト男の言ってた辺りにすぐ辿り着き
神経を集中させる









「…では 仕事の件、頼むぞ」


「任せとけってちゃん」







いやがった!なんか男に引っ張られてね!?
てかそっちホテル街!!?







あああああマズイ ピンチだあいつ!







やっぱり知らない男に騙されてるよ!!









「未成年ホテルに連れ込んでんじゃねぇぞ
このスケベ野郎ぉぉぉ!!」








言いながら 俺はすぐさまスクーターで
ホテル街への路地へ突っ込んで―







「「あ」」











ちょっ なんで立ち止まってんの!?
音聞こえてんなら左に避けろぉぉぉ!!







スクーターがぶつかって


は空中に跳ね上がる











「「うわあぁぁぁぁぁぁぁ!?」」







オレと男の悲鳴が二重奏を奏でる







「おっおい 大丈夫か!!









スクーター降りつつ慌てて駆け寄ると
はむっくりと身体を起こした









「案ずるな銀時 私はこの通り無事だ」


「おまっ無事じゃねぇ!両腕ブラブラしてんぞ
新手の類猿人みたくなってんぞおおぉぉ!!」


「受身の際にしくじって両肩ハズれただけだ」







言いながら、平然と肩の関節を直してやがる







やっぱこいつ天人だ てーかバカだ







「平気なわけあるか、お前
今すぐ病院行け!特に頭の!!」



「うわわわわ 何なんだこの子!?







あーそっか、こいつが半分天人だって
知らねぇとそう反応するわなーって…







「うおぉぉい、何してんの長谷川さん







を路地に連れ込んでた男は
マダオこと長谷川さんだった







「銀さん いやこれにはワケが」


「…長谷川さんよぉ あんたついに
ロリコン走ったか?」


誤解だって銀さん!オレはハツ一筋だ!!」


「どーだか、もう嫁さんが帰ってくる望みも
薄いからやけっぱちでガキに手ぇ出したとか」


不吉な事言うなあぁぁぁ!オレは
ハツのためにも浮気は絶対しないんだよ!!」


「うるせーよ じゃあこの事態は何だよマダオ」







オレと長谷川さんの口ゲンカに、
横からが口を挟んできた







「マダオ殿は今日、仕事の面接らしいが
店の場所が分からなくて困られていてな」


「そうそう!」







矛先が変わって嬉しそうな長谷川さんが言葉を続ける







ちゃんが場所を知ってるから、万事屋に
仕事を紹介するかわりに案内してくれるってさ」









マダオの言い分はとりあえず聞き流して







オレはの方に聞き返す









「…で、なんでホテル街通るんだよ?」


「いつも兄上の職場へ行く時に使う道だからだ」







ここでも兄貴がらみ!?つーかお前一応
女なんだからもっとマシなルート通れよ!!







心配してスクーター飛ばしたオレの苦労は何!?









そんなオレの思いもつゆ知らず
長谷川さんとは平然と会話している







「てことで頼むよちゃん、面接終わったら
仕事の紹介だけじゃなく何か奢るからさぁ」


「お気遣いは嬉しいが仕事のみで結構
九兵衛殿にもらったバナナがあるゆえ」







が懐からバナナを出して、







剥いた身を口に―







「いや、ちょっと待て待て待て


「…何故だ?」


「なんでそのタイミングでバナナ食うの?
おかしくね?」


「怪我をしたので栄養補給のつもりで
何か いけないのか?」







不思議そうに見るな!つーか聞くなよ!







なまじコイツに常識がないから、
くわしく説明しなきゃわかんねぇだろうし…







「いいじゃねぇか銀さん、バナナ食うぐれぇよぉ







そういうテメェは何でニヤついてんだ







テメェ 間違いなくバナナ咥えてるとこ
見る気満々だろこのマダオが!







「そーゆうわけでゆっくり食いなよちゃん
出来るだけゆーっくりバナナを口に含


「ちょっと黙れマダオオォォォ!!」







エロ親父全開のマダオにラリアットかまして
すぐさま後ろ襟首つかみ







 つーわけでバナナはまだ待て
ちょっと長谷川さんと話してから、な?


「う、うむ…」







それだけ言うと、引き気味のから
少し離れて背を向け 小声で会話









年頃の女がバナナ咥えた様ガン見っつー
描写は流石に大人としてヤバイだろーが」


「何言ってんだ銀さん、に生まれた
からには見てみたい光景の一つだろ」


「いやでも、それは流石にロリコン
一歩手前だろ まずくね?


「いやいやでもさ 可愛い女の子が
バナナを咥える姿は男のロマンだって」


「可愛いって…あの能面ヅラがか?」


「バカ 面だけじゃなくて性格も含めて
ああいう子はあれで可愛いんだって!









……言われて見りゃ







黙ってれば割とツラ可愛いよな







それにバカはバカなりに扱いやすいし
神楽よりは素直な所多いし









うん、そうだよな バナナ食ってるのを
ガン見するだけだもんなー







別にオレのバナナを食わすとか
そういう展開になるわけじゃねぇもんな









「うん、まー いいかな、うん」


だろ?わかってくれて嬉しいぜ銀さん」







お互いに意気投合し 振り向けば、







「悪かったな 存分にバナナ…
って食ってるうううぅぅぅぅ!?


「すまぬ 腐るし我慢できなくて
先程食べ終わってしまった」







振り向けば…もっさもっさ口を動かす







右手にはバナナの皮がむなしく握られている











お、遅かったか







お預けって言っときゃ良かった









「どうしたのだ二人とも…もしや
二人もバナナが食べたかったのか?」


「いや…いいんだよ ちゃん」


「スマヌ 二人がそんなにバナナが
食べたかったとは知らなんだ」


「いや そー言うわけじゃなくだな」







バナナが大事なんでなくて、バナナを
咥える顔を見ることが大事なんであって…







ってアレ、これ中二の思考じゃね?







「今すぐ買ってくるゆえ、しばし待たれよ!











はそれだけ言うと一目散に走り出した







だからバナナはいいんだってば!
てゆうか仕事探してたんじゃねーのかよ!!








「お前が待てえぇぇぇぇ!!」


「ちょっちゃん オレの面接は!?


「自分で何とかしやがれマダオ!」







叫ぶマダオはこのさいどうでもいい











追いついたら 首輪かロープつけとこ、うん







全力疾走でスーパーに向かう
スクーターで追いかけながら思った








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:相変わらずグダグダテンションです
てゆうか銀さん変態チックでスイマッセン!


銀時:まったくよーこんなん本来の爽やかな
銀さんじゃねぇっての ファン減ったらどうすんの


東城:あなたは元から変態でしょうが!それより
若の魅力が十分に伝わってないこちらの方が深刻


九兵衛:東城 今後お前は僕から3m離れて歩け


東城:若あぁぁぁぁぁ!?


狐狗狸:あーあ ソープ行ってるって言うから…


長谷川:てか初めてオレが出てきたと思ったら
いきなりちゃんにマダオ呼ばわり!?


狐狗狸:多分神楽と一緒の時に会ってて
しつこくマダオ連呼されてたからだと思います


長谷川:ヒドくない!?


銀時:つーかよぉ新八と神楽何処行ったんだよ
いや、今回神楽いなくて助かったけどね


狐狗狸:新八は道場で稽古かお通ツアー、
神楽は散歩とかでしょ そんなんだといいなー


銀時:願望かよ!?




甘味よりギャグ脱線な話で申し訳なし


様 読んでいただきありがとうございました!