五月晴れの陽気と、子供達の笑い声が
心地よく辺りを満たす孤児院・童子の里の


高い木の側で四角い顔を上げた青白い"少年"が


似つかわしくないボーイソプラノで語りかける





「…ねぇ、イジはらずに梗子先生に聞こうよ」


ダメだダメだ全然ダメだぜ それだと
カーちゃんにヒミツにできねーじゃん」


「けど、早く決めないと間に合わないよ?」


「うるせぇなぁ、オレだって考えてるよ!」





枝に座っていた金髪の少年はふて腐れたように唸り





「…そうだ!いいこと考えたっ」


唐突に思い立って飛び降り 嬉しげな笑みを
八重歯の突き出た口に浮かべて駆け出していく





「ウィヒヒ、そうと決まりゃゼンは急げだぜ!
いくぞイワン!オレについて来い!!


「えっちょ…待ってよケイイチくん!」


慌てて四角い"少年"も彼の後を追って走り出す…







万事屋の居間にて、無表情に腕を組み

は小さくため息をつく





「珍しく呼び出された故、何用かと思ったが…
啓一と唯碗も難儀をしているようだな」


難儀してんのはオレだっつーの 金になんねぇ
相談が一発目だなんて今月も幸先悪ぃぜ」


「電話番号教えたのは銀ちゃんアル」


神楽が呼び出した張本人を軽くなじる





GWも明け、第二日曜が迫る中


電話で啓一から相談を持ちかけられて





そんな難しく考えることかぁ?肩叩き券とか
手作りのヘッタクソな絵で十分だろーが」


『ダメだダメだ全然ダメだぜ!それじゃ
ほかのヤツと全く同じだろ!?バッカじゃねーの』



「んだとこのクソガキ!」


『ごごごゴメンなさいゴメンなさい!





…多少大人気ないやり取りを経て 万事屋に
が召集されたのであった











「見づらいから、感謝は時々形で表す」











「事情は理解したが…私は何をすればいい?」


あん?ガキの悩みはガキ同士で解決するのが
筋だろーが、ってコトでこいつらの引率頼むわ」


「って丸投げ要員として呼んだのこの人!?」


鋭いツッコミが飛んだ直後


ガラリ、と側の棚の一番上の引き戸が開いた





「んもう銀さんたら…水臭いじゃないの
どうして未来の嫁である私を呼んでくれないの?」


「お呼びじゃねぇんだよ棚の暗黒世界に帰れ」


「聞いていたなら話が早い、あやめ殿
母の日への贈り物について意見が聞きたいのだが」


さんソレ人選ミスな予感んんんん!」





さっちゃんは器用にも胸を張って答える





簡単な事よ!母の日へのプレゼント…すなわち
実際に子を作ってみれば分かるのよ!だから
銀さん受けとめて私の愛と身体をぉぉぉ!!


セリフと共に棚から飛び出し一直線に銀時へ


飛びつき…かけて腕を取られた彼女は


美しい放物線を描いて窓から外へと投げ出される





「うーむ…七夕まで待つとなると間に合わんな」


「よーしお前も窓から落ちようか?」







さらりと物騒な発言かました彼は結局
一歩たりとも居間から出る事は無く





「どんだけ外出るのダルいアルかあの天パ…」


「もうあの人のコトは放っとこう
じゃ、まずは情報を集めるとしようか」


「なにやら楽しそうだな二人とも」


「GW中は仕事もイベントもロクに無くて
ヒマでしたからね、行きましょう」





新八と神楽は逆に意気揚々とした様子で
と共に街へ繰り出していく


"思い出に残る贈り物"を母親代わりの人へ
届けたいとの相談にアドバイスするために









「やっぱり子供の目線で聞くのが一番ネ!」





自信満々な神楽の意見の元、まず三人は
近所の子供達へリサーチを開始する





「お母さんへのプレゼントかぁ〜…私は
やっぱり、肩たたき券かな?」


ボールを抱えた五月の言葉に促され





「カーネーションじゃねぇの?」


「思い出かー…化粧品とかは?」


「手作りのおかし!」





側にいたよっちゃんや てる彦らも
次々と意見を吐き出していく





「こうして聞くと、やっぱり相手によって
意見が違うみたいだね」


「…他にはどんなモノがあるだろうか?」


「じゃあ逆に聞くけど、おネーさんは
母親へのプレゼントを思いつかないの?」





とぼけた顔をした大五郎が手を上げながら
やたらと鋭い質問を繰り出して





「恥ずかしながら 物心ついた頃には
既にいなかったのでな」





表情一つ変えずに彼女が言うと


途端に、ニヤッと子供らしからぬ
ニヒルな表情と声色でこう答え返す





「なら他人に尋ねるよりもまず自分の頭で
答えを出すのが大人ってもんだろ?」



「むぅ…それも一理あ」


言いかけた言葉が終わらないうちに、大五郎の
ドヤ顔にボールがめり込んだ





「リサーチはこれで十分ネ、ありがとみんな
それじゃ次行くアルよ〜!」


「アレやりすぎでしょ神楽ちゃんんんん!!」





ボールと顔が一体化した少年と取り巻く子供達を
その場に残し、三人はリサーチを続ける









「母ちゃん、かぁ…オレも君らぐらいの年には
それくらい純粋に大人とか信じていられたっけな」





色々あったらしくボロボロになった長谷川が

グラサンから涙を流して乾いた笑いをもらし





「憔悴しているようだ…大丈夫かマダオ殿は」


アイサツするたび友達減ってる大人
これだから…叩くか死ねば直るアルよ」


「ならいっそ殺せよぉぉ!今殺せよぉぉぉ!!


追い討ちかけられて本格的にヘコんだり







ある時には桂を追う真撰組の捕り物に





「しばし待たれよ、お主らに質問が」


「「後にしろおぉぉぉぉ!!」」





空気読まずに割り入った
双方に怒鳴られてちょっぴりヘコんだり







怯えて袖を引く二人を置き去りにして





「うーん、やはり花じゃないでしょうか?
カーネーションなんかは定番ですし」


「なるほど…して"かーねぇしょん"とは
どういった花なのだろうか?」


ええっ!?さんカーネーションを
見た事無いんですか!?」





彼女が屁怒絽と和やかに会話を交わし





「よろしければ僕も一緒に考えさせてください」


「それはありがたいが…よいのだろうか?」


「ええ、こんなコトぐらいしか出来ませんが
立ち話も何ですし…皆さんどうです?お茶でも


いえいえ!めめめ滅相もないアル!!」


「本当に貴重なお時間ありがとうございました
僕らこれで失礼します屁怒絽男爵ぅぅぅ!!


「だから屁怒絽でいいですって…あ!


駆け去る三人の行く手にダンゴ虫がいたことに
気付いた屁怒絽の投石により 道路がヘコんだり







「そうですね…品物よりも、心のこもった
サービスを重視することで喜ぶ方々も多いので
家事など率先して行うのはどうかと?」


「流石にNo.1ホストの方は目の付け所が
違いますね〜勉強になります」





運良く面会が出来たので、高天原にて
狂死郎へ直接話を伺う新八の側で





「回りくどい事せずに、本人に直接
聞いてみた方が早いんじゃねぇか?」


純情チェリー二人にそれは酷アルよ〜」


「変わらん年だろお前も…で、そこの
娘っ子はなんでオラの頭を凝視してんだ?」


「そんな物体を頭に乗せて肩はこらぬか?」


「これは元々のヘアースタイル…って
触ろうとするな!引っ張るな!!


八郎の見事なアフロが若干ヘコまされたり







実際に母子揃った相手を訪ねて吉原へ行き





「お、オイラ今まで考えたことも無かったよ!
母ちゃんは何が欲しい!?


「そんな慌てて用意しなくたって平気さね」


いやダメだって!オイラだって母ちゃんに
ちゃんと日頃から感謝してるし…!」





返ってなにやら余計な方向へ話が飛び火し





「…すまんが今から買い物に行くのでまたな
晴太、ぬしも一緒に行くか?」


「勿論だよ月詠姉ぇ!」





彼女のフォローによって、日輪には質問を
行う事が出来たものの





「やっぱり気持ちに勝る贈り物は無いんじゃ
ないかねぇ…あ、でも月詠の子は見たいかも」


「いやソレ僕らに言われてもどうしろと!?」


やっぱり余計な方向へ話が逸れたり







「いやいやいや将軍がこんな所にいるワケな…
ねぇ?ちょっと二人とも何してんの?


「決まっておろう」


「リサーチアル」


「いやいやいや!仮にもし将軍様だったら
どうすんの!?ちょっ聞いてんの?ねぇ!!






制止の声を無視してズンズンほっかむりの青年
歩み寄ろうとする二人の内


神楽だけが直前で身を引いた―刹那





直進してきたエリザベスにが跳ねられ





ん?今先程がいたような…気のせいか」


「いい加減観念しやがれ桂あぁぁぁぁ!!」





地面に落ちた彼女が、逃げる桂と
追う真撰組の面々にしこたま踏まれてヘコんだr





「まだやってたのアンタら!?」







……三途からの帰還を経て、帰途に着く途中





「すまぬな、逆に迷惑をかけて」


「気にするなヨ〜今更すぎネ」


「そうか?…まあ、これが二人の手助けに
なると思えば安いものか」





清々しい顔つきの二人に新八は小声で
"いいんだそれで"とか呟いていたが





彼らは万事屋へ戻り、童子の里へ電話をかけ

二人へリサーチ結果と結論とを答えた





「そうですか…イロイロな意見を
聞かせてくださってありがとうございます」


『役に立ったんなら何よりだよ、がんばってね』


おー!メガネも女王ももありがとな!
銀さん全然役立たなかったけど」


『うるせぇよクソガキ』


方向が決まり、声を弾ませて啓一が受話器を





…放しかける直前 静かな声音が待ったをかける





『カーちゃん好きなのは結構だが…オメーら
もう一人大事なヤツを忘れちゃいねーか?』


「「え?」」







―そして、待ち望んでいた母の日当日





子供達の代表に立候補した啓一と唯碗から
院長は贈り物を手渡されて驚く





まぁ!こんなにたくさん?嬉しい…」





中身は肩叩き券や似顔絵、真新しい軍手にタオル


…そして"メガトンフロアブル"と書かれたボトル


「何かしらコレ…まぁ、農薬?」


「これでカーちゃんがヤサイ作るの楽になるだろ?
ウィヒヒっオレって頭いー!


「え…ええそうね、ありがとう」





やや戸惑ってはいたものの、彼女は相手の好意
そのまま素直に受け取り 微笑んだ





「よかったわねぇ二人とも」





ふわりと笑いかける梗子へ顔を向けて





「はい…あとコレ、梗子先生にボクらから」


頬を赤らめた唯碗が 隠し持っていた

小さな花の冠を差し出す





「キレイなお花…これ、アナタ達が?」


「た、たまたま通り道にあったヤツだけどな!
いちおーババアにも世話になってっし!」


「ケイイチくんたら照れちゃって…イタッ」


コラ、お友達に乱暴しちゃダメでしょう?」





耳まで真っ赤な啓一を諌めて、二人へ
礼を告げた梗子は 冠を頭へと乗せた








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:更新が母の日の前日だったもんだから
自キャラ再登場も兼ねて短編に仕立ててみた


神楽:白鴉歩執守読んでないヤツらには
誰が誰だかわからないアルよコレ


新八:てーか色々とんでもないもんが
ヘコんでるんですけど、主に人災的


狐狗狸:もはや日常 銀魂的には


銀時:大体よぉ〜GWなんかにワザワザ外に
出なくてもいーじゃねぇかよ面倒クセェ


さっちゃん:そ〜よっ!お家デートでも十分
楽しめるんだぞvねっ銀さ(シュゥゥゥト!)


神楽:役立たずのクセしておいしいトコだけ
持ってってズルいアルなー銀ちゃん


銀時:いーの主人公だから 銀魂的に


新八:てゆうかアレ本当に農薬の名前ですか?


狐狗狸:実際にあります、デジタルメガフレア
悩んだ下りとか、実は院長は有機栽培派だから
農薬ほとんど使わない派とか書きたかった




夢主が空気なのは私の話だけ!(←ダメだろ)


様 読んでいただきありがとうございました!