「本日 ランチタイムでトンカツが
キャベツ大盛り、お得ですよおぉぉ〜」








オレの名は、桂 小太郎





狂乱の貴公子として名高い攘夷志士だ







この国を変えようと攘夷浪士達と共に
指揮をとって活動しているが、







先立つものを稼ぐためにも







こうして バイトをしている









今回はトンカツ屋のバイトのため
オレの右手には出来たてアツアツのカツがある







厨房にいるエリザベスが作った特製のカツ







これに吊られぬ客はいない!
現に少しずつ店へと入る客も増えて―











「桂殿 何をしているのだ」







声のする方を見れば、そこにはがいた









妙に泥だらけで頭から流血しているが
本人は平然とした顔をしている







「おお、か まぁ何、革命を
起こすにしろまず金が要るからな」







フンフンと頷くに、オレは胸を張って言った







「見ての通りバイトをしている」


「なるほど、立派な心がけだ」


「それよりもお主、何故頭から流血してる
しかも右手が変な方向に曲がってないか?







言われてようやく気づいたのか、
は自分の右手に目を向けると







「先程 道路に飛び出した御老人を
助けるため車に轢かれただけゆえ」







言いながら 左手で曲がった右手を
グキッと捻って―







「ちょちょちょちょっと待て!!」


「何か?」


「何かではない!普通は車に轢かれたら
一大事ではないか!!」








どうしてそうキョトンとしていられるのだ







常人ならば車に轢かれた時点で
そんなに動き回れぬはず





…まあ、銀時とかなら別だろうが







いやいやそう言う問題じゃない







「それに専門の者でもないのに間接を
矯正しては骨に歪みが生じてとんでもない事に!」


「気にされるな、関節が外れるのは
日常茶飯事ゆえ」







あっさりと言うの言葉に
オレは内心 戸惑いを隠せなかった







どんな日常茶飯事だというのだ!?











…確か 再び会った時も怪我をしていたが







眉一つ動かさぬとはどういう神経をしているのだ
そもそもお主 本当に人間か!?











「仕事と何かの両立は難しい、いやマジで」











この者の名は、 







近頃 こちらに来た裏稼業の人間だ











とある件に巻き込まれた兄の依頼を万事屋に頼み
(その件に、オレも少しは助力したが)







その時以来 気になっている者ではある







裏稼業での実績といい、今はただ一人
有守流槍術を使えることといい…







攘夷浪士として 中々悪くは無い人材だ







それに妙に人懐っこいし、側で見ていて
飽きず 黙っていれば可愛らしい









しかし如何せん、常識が無さ過ぎる所







兄を敬愛し過ぎる所は玉に傷だが











「桂殿 エリザベスは一緒ではないのか?」


「オレがエリザベスと離れるわけなかろう
エリザベスは厨房で働いている!


「エリザベスは料理が得意なのか
羨ましいな」







そこでの腹が 勢い良く鳴った







「…そう言えば、今日は急いでいたゆえ
兄上の朝食を一口も食べずに出てしまった」









オレの手にあるトンカツを見つめる
の顔こそ無表情だが







口からはよだれがダラダラたれている









まるで犬のような奴だ、と思わず口から
笑みが零れた







「食させてもいいが、交換条件だ」


「交換条件とは?」







オレは咳払いを一つすると、







「無論 我ら攘夷志士の…」


「オイヅラ 何そのうまそーなトンカツは
食い逃げか?ついに食い逃げやっちゃったか?」







オレの台詞を遮り 横から銀時がしゃしゃり出た







「失敬な、ヅラではない トンカツラ
これは今のバイト先での宣伝としてだな」


「上手くねーんだよ つか飲食店で働くなら
そのうざってぇ長髪切れ」


「貴様の天然パーマとて似たようなものではないか」







オレと銀時は その場で激しい論争を繰り広げる









相変わらず空気の読めぬ男だ







「今 オレはを攘夷志士のメンバーに
勧誘しているのだから邪魔しないでもらいたい」


「え、何 こいつを勧誘するの?
やめた方がいいって絶対 常識ねーし兄バカだし」


それは百も承知だ、しかしそれを補って
余りあるものが沢山ある」


「てゆうかなんでそんな必死な訳?
ひょっとしていかがわしい目的あんじゃねーの?」


「貴様のような男と一緒にするな
オレはそんな下賎な思いは微塵も無い」







キッパリ言うと 銀時が顔を歪めて叫ぶ







「だーもう本当うぜぇなお前 そのクソ真面目な
性格といい長髪といいよぉ」


「髪の毛は関係ないだろう、いい加減にせぬと
貴様でも斬るぞ銀時」







銀時が、の方を見ながらオレを指差し







だって こいつの長髪うざいと思うよなー」


「そっそんなことはないよな、!」







同意を求めるが は濃い緑色の目で
こちらを見つめているのみ











え、何だそのじっと見てくる視線は…









まさか オレの髪がうざいとか
言い出すんじゃ…!













「…いや、私は桂殿の髪は嫌いではない」







のその一言に、オレはガッツポーズをした







やはりこの者は見所がある!







「え、何 やっぱりサラサラヘアーがブームな訳!?」


「ほら見ろほら見ろ!」







の指示を得たことと 銀時の悔しげな顔が
嬉しくて、思わずはやしたてる











しかし







次の、の放った言葉がオレを
絶望の淵に追い落とした













「いや、兄上の次にキレイな黒髪ゆえ
羨ましいな と…」







や、やっぱり 兄至上主義かァァァ!









足元がガラガラと崩れるような感覚を味わった







「そんなこったろうと思ったぜ、結局こいつは
兄貴が一番のブラコンなんだよ」







何気に頭をポンポンと叩きながら





勝ち誇る銀時の顔が 非常に悔しい







気を取り直してオレはに問う







とにかく!このトンカツが欲しくば
攘夷志士として共に活動してもらおうか!!」


「おーい常識で考えろ どこの世界に
そんな安い条件飲もうって奴がいんだよ」


「うーむ、中々に魅力的な話だが
兄上と共にいる時間が減るのは…」


いたよ!安っ、この子 安っ!!」







ダラダラよだれを垂らしながらも悩む











むうう…あと一押し、あと一手決定打があれば
をこちら側に引き込める…!







「時間の事なら オレが何とかする
だから一緒に攘夷を目指そう


「兄上と共にいる時間も
変わらず済むのだろうか」


「…無論だ







少し辛いが 頷くと









が目をキラキラさせていた







「おお…それならば 是非とも…!


「え ちょっちゃーん!!?」







うろたえても遅いぞ銀時!







形勢逆転 これで流れは一気に
こちらに傾いたとほくそえんでいたら









背後から殴られ、振り返ると店長がいた







「オイコラ 何仕事中に女ナンパしてんだバイト」


てっ店長!いや、これはナンパではなく
深いわけが」







しかし、店長はオレの必死の説明を
全く聞かずに 右手からカツを奪ってどこかに置き





流れるようにオレに逆エビ固めをかけ始めた







「油売らずにカツ売れやあぁぁぁ!!」


「ギャアァァァ ギブギブギブマジ折れるって!!」







と銀時はただその様子を眺めているだけ







お主等、人の情があるのかぁぁ!?
つか助けてください!!







「桂殿が大変な目に…これでは
私の空腹を満たせぬな…」







何 オレより自分の腹時計の心配!?







「何 腹へってんのか、じゃあ一緒に
来れば飯おごるぞ〜宇治銀時丼」







ちょっオレの作戦をパクるな銀時!!







「いいのか?何時も貧窮極めていたのに…」


「あーいいんだよ、銀さん今日はパチンコで
大勝ちしたし ヅラがむかつくし







むかつくのは貴様だろうがぁぁぁぁ!!







はオレと銀時を交互に見た後









すまぬ桂殿 仕事、頑張られよ
また近い内にここに来るゆえ」







謝って、銀時について行った









くっ…今 雇われの身でなければ
を追うことも出来るのに…!







「今日はオレの負けだ銀時!しかしオレは
諦めんぞ 必ずを攘夷志士に」



「うるせーよ働けバイト!!」







去り行くと銀時の背にオレは吼え







店長に見事なアルゼンチンバックブリーカー
もらったのだった








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:桂の夢話を書いたんですけど…夢かなコレ?


桂:これオレ いい思いしてないだろうがあぁぁ!
なんで銀時にかっさらわれてんの!?


狐狗狸:うーん 話書き始めの時点じゃ
桂さん主体のつもりだったんだけどね


桂:だったら何故それを押し通さない!


狐狗狸:銀さん出してノリノリで書くうちに
いつの間にかVSそして負けネタ


桂:だから何で負けてんの!?
この話の主役オレだよね!銀時じゃないよね!!


狐狗狸:うるさいです、私の話にまともな
甘い話を期待したあなたが間違ってます


桂:開き直るなこのダメ作者があぁぁ!!




やっぱギャグオチでスンマセンでした…


様 読んでいただきありがとうございました!