元旦も年賀状のネタも出尽くしたってーのに
この上、一体何やろうってんだ?あのバ管理人
「ちょっと、地の文でぼやくのやめて下さいよ」
「別にいーじゃねぇか…ったく年末ジャンボは
外れっし初夢もロクなもんじゃなかったし
今年は幸先悪ぃーな〜チクショー」
くしゃみを一つかますと、側歩いてた神楽が
あからさまに顔しかめて距離開けやがった
正に"ザ・汚物"へ向ける目は
止めていただけませんかね?新年早々
「夢って言えば、私の初夢には
パピーが出てきてたアル!」
「星海坊主さんが?どんな夢だったの」
「ずり落ちたヅラを拾おうとして
川に落ちて、そのまま流されてってたヨ」
「それ 虫の知らせか何かじゃね?」
まーあのハゲは川流しぐれぇじゃ死には…ん?
「なんか今やわらけーモン踏ん…だぁぁぁ!?」
ずぶ濡れの作務衣の背中から足をどけるが
クソ冷てぇ身体揺すっても頬往復ビンタしても
反応はまったくもってナシ
「きっとコレそこの川に落ちたアルよ
私の初夢当たったネ!」
「んな事言ってる場合ぃぃ!?てゆうか
さん身体冷たっ!息も全然してないし!!」
「新年早々に三途参りはよせぇぇぇぇ!」
くっそコレ縁起悪いにも程があるぅぅ!!
「A011年も健康第一…あと金運上昇も」
半死人担いで走り回ってたら、側にデカイ建物
借り切っての大会やってて
「おや、息切らしてどうしたのさ」
「え?いやいや何でここにいんだよバーさん」
「大会の主催者がいちゃ悪いかぃ?
で、またぞろ後ろの娘は死にかけてんのかねぇ」
「川にドボンして凍死寸前ネ」
簡単ながら医務室的な場所と設備があるって
バーさんが言ってたモンで、まぁそこを借りて
スタッフさん方にしばらくお任せしたら
小娘は無事、何事も無く息を吹き返した
「ああ…助かった 年明けからすまぬな」
「ったく冬至が終わってもう寒入りすっからって
川入りで凍死とかシャレになんねーよ」
「うまくないですから…これどうぞ」
ホットカルピスを受け取りながら、は
上目遣いに問いかける
「これは?」
「なんかここでカルタ大会やるらしくて
有志の人が配ってたネ あったかいアルよ」
会場に畳を敷いただけのクソ寒いトコで
よくもまぁカルタ大会なんてやるもんだと思ったが
なるほど、こーいうサービスがあんなら納得だ
「おお、楽しそうだなあちらも」
「意味深な台詞は止めてくださいよ…
なんだって川の側で死にかけてたんです?」
カルピスをすすってアイツは、無表情で答える
「総悟殿と共に瞳孔マヨ殿へ初抹殺を行った折
弾みで落ちて流されてな…岸には上がったが」
「力尽きて、あの場所で倒れてたっつーことか」
「その通り」
バッカじゃねーの 相変わらずよぉ
ま何にしても用件はすんだし、ついでに
暖も取れたからもうここにいる理由も
「ってアレ?神楽ちゃんは?」
「先ほど、なにやら一目散に飛び出して行ったが」
「オイオイオイ便所か?だからあんだけ
カルピス飲むなっつったのによぉ」
「いやアンタもその甘酒いい加減まで飲んで
有志の人に睨まれてましたよね?」
寒ぃ日の甘酒やミロやココアはアレだぞ?
もう天上の飲みもんだっつーじゃねぇか
それにゴミ箱を紙コップの山に変えた神楽よりは
節度守って飲んでっからいーんですぅー
「まーアイツだってガキじゃねぇんだし
ちゃんと帰って来れんだろ 先行ってるぞ」
「あぁちょっと、待ってくださいよ!」
お世話になりました、なんて律儀にスタッフさんに
挨拶するお子様二人を背に先に入り口を潜りかけ
「あら銀さん、参加して行かれないんですか?」
九兵衛をお供に割合増しな装いのゴリ…志村嬢と
鉢合わせをいたしやがりました
何で急に丁寧語かって?
……笑顔で黒いオーラ背負いながら、所々
血のついた拳を握られて屈しない方がおかしいだろ
「明けましておめでとうございます…
二人は大会に参加するのか?」
「明けましておめでとうさん 正月らしくて
楽しそうだ、と妙ちゃんも乗り気でな」
「いつの間にエントリーしてたんですか姉上」
「人数の増減が激しいから飛び入り参加も
可能らしいわよ ホラ」
お妙が示す方を見れば、広がる畳に転々と
カルタを円になって囲んだ一団どもの一角に
阿修羅の如き勢いで札を奪うチャイナ娘が
「ちょっ!なにやってんの神楽ぁぁぁぁ!!」
「この大会、参加すれば豚汁食べ放題アル
きゃっほぉぉぉぉ!!」
「ンナワキャネーダロアホ娘ガ!!」
…あー本当だ よく見りゃあっちの隅で
猫耳ババアが有志のおばちゃんらと混ざって
参加者用の豚汁作りしてら
「てゆうか手加減しなよ神楽ちゃ…って
係の人達、スゴイ手際で医務室運んでない!?」
「毎度大会ネタで怪我人が多いので、今年は
軍の方々と協力して簡易の医療施設も用意しました」
マジでか、道理で係員の奴らの手際がいいワケだ
つーかよく見りゃオレもどきリーゼント参加してる
カルタ取りながら女口説くな、働けテメーも
「にしても無駄な金と労力使ってカルタ取りたぁな」
「よいではないか、休みにもかまけず独特の鍛錬方を
皆で行うとは やはり侍の国だ」
「あのー…カルタを別のものと勘違いしてません?」
「頭が残念な子は放っとけ 実は早いトコ
万事屋でこたみかしなきゃいけないから、じゃ」
オレは本気でそのつもりだった
卵が淡々と口にした、この一言さえなければ
「個人での競い合いとなりますが、優勝者には
賞品もご用意しておりますのでぜひどうぞ」
こうして飛び入りながら一位を目指すべく
オレ達はカルタの輪の中へと飛び込んだ
どうせこの三流作者のこった、正月にかこつけて
知った面いくつか出して"メジャーキャラ集合"とか
カビの生えきった手を使うに決まってる
知りつつ敢えて策に乗りながら…しかし
布石としてを引き込んでおいた
「よし!オレらも歴史の文化をいっちょ
学んでみるとすっか!なぁ!!」
「いきなりどうした、胡散臭いぞ」
真顔で言われ 一瞬浮かんだ青筋を抑えつつも
「ハッハッハ〜そんな事はねぇさ、ちなみに
カルタは正月に伝わる大事な儀式でなー…」
肩に両手置いて親切丁寧に語ったら、ちゃんと
理解してくれて快く参加もしてもらえた
初心者だから気の知れたヤツとの組に入ればいいと
アドバイスすれば
狙い通り、先の女二人とで組むと決めたようだ
上手い具合に三人でそれぞれ別の輪に入り込み
オレは、案の定見慣れたバカ面どもと顔を合わせる
「お、銀時か まさか飛び入りでお前らも
参加するとはな」
「いやー強そうだなこのチーム」
「まあオレらは純粋にカルタを楽しもうじゃないか
正月特有のこの国の遊びなんだろ?」
「そーそー、まったり行こーぜ」
しけたグラサンや金髪どもへ初見で油断させ
「それでは行きマース ひさか「はいぃぃあぁ!!」
誰よりも素早い札さらいで、読み上げと
ほぼ同時にカルタを次々かっさらって
屍の山を築き上げていった…
「…銀さん、今回は初手からえげつないですね」
「まさかオメーが生き残るたぁな、新八君?」
お手つきを誘うフェイントを織り交ぜながら
時には(こっそり)拳も交えて優位を取り
カルタを囲む円陣が減る中
肩越しに再び合間見えた新八の面は、
歴戦を重ねた武士のそれに変わっていた
「よくも抜け抜けと言えますね…姑息な手だけじゃ
飽き足らず、あの人まで利用するなんて」
「カルタは体力も必要な遊びだからなぁ〜
オレぁ間違ったことは教えてねぇぜぇ?」
「さんはロクにカルタなんて知らない
常識知らずの上にKYだ…他の班に混ざったなら
即効でお荷物になることは必定…っ!」
そう、よしんば生き残ったとしても
あのバカが敵となる事は有り得ない
あわよくば女三人で潰しあって共倒れになればと
考えていたが…
あの二人だけでなく、半分以上の参加者が
持っていかれたっぽいトコ見ると
意外に戦果はでかかったか
「感謝しろよ新八くぅん、オレの策のおかげで
今年は幸先のいい一年になるんだからなぁ」
我ながら策の成功に
口の端が上がるのを止められず―
「ええ…けど残念ながら、銀さんの策には
大きな誤算がありましたよ」
鋭い光を帯びたメガネの奥の光に
笑みが途絶えたのが、自分でも理解できた
「…どういうことだ?」
「甘く見すぎたんですよ……彼女達を」
ニッと笑って身を引いた新八の後ろには
「銀ちゃんが相手なら楽勝アルな!」
「いや…この男の手は姑息につき、油断するな」
見たくもねぇ嫌らしい面と能面とが並んでいた
「さみだ「うぉぉぉるあぁぁぁぁ!」
目当ての札を取ろうとした矢先、神楽の起こす
一陣の烈風に似た払い手が畳に叩きつけられ
いくつもの札諸共吹き飛ばされる(身体が)
取られまいとフェイントかましつつお手つきさせて
どうにか片方を封じたとしても
「あしび「はいぃぃ!!」
手にしたハズの札は、刹那の間隙を縫って
「甘いな、先に取った」
の手の中に収められてしまう
……しかも防ごうにも普通じゃ
ありえねぇ所から手が伸びるわ
手をぶっ叩こうにも避けられるし
「テっメェその能力反則だろーがぁぁ!」
「カルタが大事な戦いの儀式なら、持てる力の
全てで挑むが武人の礼儀であろう」
くそっ!あの説得作戦が裏目にでやがった!!
「がんばって〜二人とも」
ジリ貧の戦いを強いられる中、読み上げられる札を
神楽がガキの欠片も失せた面で吹き上げて
「取ったぁぁぁぁぁ!」
だが 伸ばした小さい手からタッチの差で
空中の札は掠め取られた
その札を掴んだのは オレ達では無く…
「ふふふ…甘いぞリーダー この大会
オレとエリザベスの前には正に児戯に等ぶヴぉ」
「何でテメェがいるんだよヅラぁぁぁぁ!!」
「ヅラじゃない桂だ!飛び入り参加が
認められているから来たまでだ…九兵衛殿も敗れ
強敵が残った今、共に力を合わせるべきぞ!」
「どんだけ九兵衛に対抗心燃やしてんだぁぁぁ!
テメェが加わっても大して戦力になんねーんだよ!」
殴られて尚、このバカはむかつく笑みを崩さず答える
「これを見ても言えるかな…エリザベス!」
『分かったよ桂さん!!』
「『チュージョン!』」
完全にどっかで見たことのあるアクションの後
アイツら二人をどこからとも無く生まれた光が包む
「わっ…まぶしいアル!」
光とうるせぇ効果音が止んで そこに現れたのは…
「ふはははは!これぞ無敵究極生命体!
キャプテンカツザベス三世だぁぁ!!」