照りつける日差しが、表の明と暗とを
より色濃く浮き上がらせる
屋敷の縁側や開けた窓にスダレはかけてあっても
無風のせいか風鈴はその涼やかな音色を
ちり、とも響かせぬまま垂れ下がり
「…暑いな」
日陰に控え扇子を仰ぐ清明の額からも
うっすらと汗が滲んでいた
「御頭、無理に自然の涼に頼らなくとも
文明の利器もありますでしょう?」
庭を掃除していた結野衆の一人がやんわり訊ねるも
「エアコンや扇風機をつけたままの部屋で
過ごすと風邪を引く、とクリステルに叱られてな」
当人はそう端的に返すのみ
"お天気お姉さん"としての人気も高い彼女の
TVでの呼びかけは割合影響力が強いが
特に殊更左右されやすい一人が 実兄の清明である
熟知しているからこそ発言者は微妙な苦笑いを
浮かべてから、自ら課せられた務めに戻る
「しかし 手持ち無沙汰じゃな…」
江戸の守護を任された陰陽師の先陣として
成すべき勤めは果しているものの
基本は片手間ほどの能力で事足りる為
殆どの仕事は既に片付いていた
江戸には特にこれといった危機も無く
妹の身の回りもまた平和そのもので
…要するに彼は 現在ヒマを持て余していた