テストと共に午前中の時間帯…所謂
"半ドン"で終わる学業から解放された
生徒の高揚は計り知れない
それが半ば自暴自棄を解消するべく
発揮されたものであったとしても
多くは各々の趣味に費やしたり買い物に
発散させたりと、自分なりに空いた時間を使う
「それじゃー2時半にあの場所に集合ね」
「遅れたら承知しないアルよ」
銀魂高校から帰路へと付くまでの合間
「女同士での買い物か…何だかドキドキする」
「奇遇だな九兵衛殿、私もだ」
彼女ら四人が話題にするのは テストという
悪魔の物体などではなく
"友達と好みの服を見に行く"という実に
年頃の乙女らしい行動についてであった
「九ちゃんはこういう機会少ないし
ちゃんだって、こっちは来たばかりでしょ?」
「そう言ってもらえるとありがたい」
少し照れたように頬を赤らめる九兵衛の隣で
「にしても兄上や、あの者を誘わなくても
良かったのだろうか?」
ぽつりと呟く彼女に、神楽が首を
ぶんぶか振りつつこう返す
「兄貴誘ったら女同士じゃなくなるネ」
「あの子にもひと声かけたんだけど
広報委員のお仕事が忙しいんですって」
…妙の言葉に嘘は無いものの
迷う彼女と委員長が直後繰り広げたバカップルぶりに、
それ以上誘う気が失せたのも事実である
ニ、三雑談を交わしてから路上で別れ
それぞれ帰路について私服に着替え
時間を見計らって家を出る…のだが
「場所は間違いがない…な、うぬ」
特徴的な石像がある公園は待ち合わせの
定番スポットらしく何人かの姿が見える
が約束した四人の内、いるのはだけ
「正直者はバカを見る」
始めてのクラスメートからのお誘いに
あまりにも気負いしすぎた為か
少しばかり早く来過ぎたらしい
「参ったな…刻限まで十五分以上ある」
近くの時計を見やり、彼女は珍しく
困ったように眉を下げる
手持ち無沙汰そうに石像へ寄りかかりつつ
辺りをぼんやりと見回していた緑眼に
「あちゃー阿伏兎置いて来ちゃった
ま、いっかアイツ丈夫だし」
前触れ無く飛び込んできたのは、黒い学ランに
赤い三つ編みの男子学生
割合目立つ髪色と浮かぶ笑みに見覚えあってか
「「あ」」
眼を留めた彼女と、彼の視線とがかち合う
「お嬢ちゃん確か銀魂高の…」
「やはりお主が神威殿か」
「へぇ〜名前知ってるんだ?」
「一目は見覚えがある、あと神楽から
チャランポランのダメ兄と聞き及んでいる」
「初対面だってのにヒドっ、殺しちゃうぞ?」
笑みを崩さぬままの物騒な発言に
しかしも表情を変える事無く
至極真面目にさらりと答える
「死体処理の当てはあるのか?」
きょとんと青い目をしばたたかせてから
神威は弾けたように笑い出す
「アッハハハ、やっぱり君こっちでも面白いや」
理解できず首を傾げる彼女の姿が
どうやらツボに入ったらしく
ひとしきり笑い終えてから、彼は言葉を返す
「生憎今回は構えるほどヒマじゃないし…
てゆかむしろ逃亡の身なんだよね実は今」
「何かやらかしたのか?」
「そんな所かな?あのハゲ本当しつこくてねー
ちょうど催して来たし、ほとぼり冷めるまで
ここに潜むつもりだから黙っててよ」
「いや私にそれを言われてもどうしろと」
「裏切ったら殺しちゃうぞ?」
全く聞く耳を持たず勝手に指切りをして
神威は近くの公衆便所へと姿を消す
「…聞いた通りの理不尽さだな」
呆れたようにため息をつき、時計へと
反射的に視線を向ける彼女だが
生憎経過した時間は数分にも満たない
と、蟲惑的な声音が風に乗って耳に届く
「確かこの位の時間にあの先のコンビニで…」
「こんにちはあやめ殿」
挨拶がてら声をかけられ、やや早足で
通り過ぎようとしていたさっちゃんが気付く
「あら、じゃない…あなたが
ここにいるなんて珍しいわね」
「人と待ち合わせの約束をしている故」
「そう…まあ別にどうでもい」
言い差して メガネの奥の瞳が見開かれる
「万一空知が割れても有り得ないとは思うけど
…よもや銀八先生じゃ無いでしょうね?」
「いや神楽と妙殿と九兵衛殿だが」
「そう、それならいいわ…それじゃ私は
これから用事があるからまたね?」
「うぬ 気をつけられよあやめ殿」
やたらと頬を染めつつ、いそいそ立ち去る
さっちゃんの姿が人込みに紛れて消え
「ったく先に逃げやがって
あーの、すっとこどっこい〜…」
入れ替わるようにしてやってきたのは
ややよれたボロボロの学ランに身を包んでも
明らかに老けすぎな、むさい男子生徒
「あのさ、老けて見えんのは気苦労の
せいだから主に団ちょ…じゃね番長の」
いやいや阿伏兎さん、こっちじゃアナタ
八年留年してるでしょーが公式で
何はともあれ その場で息を整えて
ふと上げた顔面の目がかち合った瞬間
「おいそこのお嬢ちゃん、何見てんだコラァ」
すかさず鋭い眼光でメンチ切るものの
「お主が視界に入っただけであろう」
無表情でさらりと返したに、凄んでいた
阿伏兎が逆に怯む格好となった
「あのさお嬢ちゃん…この学ラン
ちゃんと見えてるわけ?」
「夜兎工業高校の制服だな、神威殿と同じく」
「そーその通り 泣く子も黙る夜兎工だ
なのに何だってそんな平然としてんの!?」
「仕方なかろう、この表情は生まれつき故」
物凄く何か言いたげに眉根を寄せた彼が
そこで先程さらりと流した言葉を思い出す
「…ってウチの番長知ってんの?アンタ」
「つい先程もここで顔を合わせたばかりだ」
「マジで?どこに行きやがったか知らね?」
果たして"目の前の男"に教えていいのか…と
問われてしばし考えたは、ゆっくりと
次の言葉を口にした
「お主は…カツラでは無いよな?」
「いやこれ地毛だから!オッサンだろとは
よく言われるがソレ言われたの初めてだよ!」
「そうか、神威殿ならあそこの厠だ」
「え…マジ?ウソだったらカツアゲすんぞ」
「…調理道具など見当たらぬが?」
相手のズレたマジボケは華麗にスルーして
わざとらしく「オレもションベンいきてーし
便所よってみるか…」なんぞと呟いて
阿伏兎もまた落書きだらけの建造物へ入り
…やや間を置いて その中から
「…マジでいたぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「うるさいよ阿伏兎「ぶげあぁっ!」
という一連の台詞が聞き取れた
周囲に聞こえたのでは…と何故か心配になり
彼女は動かず通りをぐるり見渡すが
「ちょっと百音、外での買い物でぐらい
その笛置いて来れないわけ?」
「ぴー!ぴっぴょる〜」
「だから外さなきゃ分かんないっつーの!」
疎らに歩く人々と、その合間を行き交う
同じ3Zの双子姉妹は至って普通の様子
それに安堵し、小さく息を吐いた直後
「今ガキどもの声がしたぞ…どこに
隠れてやがるアイツるぁぁぁぁ!」
もっそい巻き舌がの耳をつんざいた
ズルズルと学ラン姿の云業引きずりつつ
鬼のような形相で辺りを見回すのは
メガネとちょびヒゲ装備したバーコード頭の
「誰がバーコードだゴラァァァァ!」
…もとい、3Zでは"夜兎工教諭"の星海坊主
「お、お前さんは神楽の同級生の…」
面識があるらしく彼女は軽く会釈する
「星海坊主殿…一体どうされた?」
「なーにちょっと悪さしでかしやがった
ウチのガキどもをとっ捕まえてるトコでね」
云業を示してから正眼で直り、彼は問う
「赤毛三つ編みのにやけた兄ちゃんと
むさいオッサン面、どっちか見てねぇか?」
…結論から言えば居合わせただけのに
先程の二人を庇う理由も責任もない
しかし目の前の人物からの威圧感と
件の二人のやり取りとが心に引っかかり
正直に告白することを躊躇わせる
「あの星海坊主殿、一体あの二人は何を」
「あ、すまん 話聞く前にちょい便所タイム
…年取るとクソが近くなっていかんな」
手で言葉を止め、戸惑う彼女に構わず
云業片手に星海坊主が公衆便所へ…
程なくその場所は戦場と化した
騒ぎを生み出した責任の一端を感じ
思わず足を踏み出した辺りで
「ー!待たせたアル!」
「さっ、行きましょ?」
肩を叩いて 約束していた三人が現れる
「お、おぉもう約束の刻限か…あの」
「どうかしたかさん…ん?
何だか知らないが、うるさいなあの便所」
「きっと清掃が立て込んでるだけネ
トイレならもっとキレイなトコまで我慢ヨ」
轟音途絶えぬ建物に注がれた緑眼を曲解し
グイグイと手を引く神楽に しばし逡巡するも
「…そうだな、すまぬが後でお主の
兄と父に謝っておいてもらえぬか?」
「?意味わかんないけど分かったアル」
内心で頭を下げながら彼女は予定通り
友達との買い物へ繰り出した
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あとがき(というか楽屋裏)
狐狗狸:元ネタの童話は"三匹のヤギのがらがらd"
神威:聞いてないよ、そんなどーでもいいこと
神楽:つーかアタイの台詞取んじゃねーヨ
バカ兄貴がぁぁぁぁ!!(飛び蹴り)
星海坊主:まだ話はすんでねぇぞぐぉらぁぁ!
狐狗狸:ちょ、ここ戦場にするって何事!?
妙:てゆうか猿飛さん…何やってたの?
さっちゃん:決まってるでしょ?
ジャンプ買う先生にさり気なく会いに
狐狗狸:本編でもストーキングてどんだけ!?
阿伏兎:さて選択肢だ…オレにボコられっか
あの三竦みに放り込まれるか選べ
どっちもフルボッコ?たかがクイズだろ?
狐狗狸:え゛、ちょ拒否権は!?
女子率増&あの人も巻き込みました(謝)
様 読んでいただきありがとうございました!