明けましておめでとうございます


話は、前回から引き続いて真撰組屯所から
山崎退がお送りさせていただきます







前回の最後感じた不穏は 現実となった





お二人とも!お早いおつきで!」


「ワザワザ出迎えありがとうございます」





いまだかつて無いほどキレイな整列で
出迎えた相当数の隊士達の間を


出勤してきた二人が歩いている





え、何そのVIP待遇!とっつぁんでさえ
受けた事ないよそんなの!?





「換気扇のフタを外すなどという荒事で
その白き御手に傷はつけられません!」


「ここは自分らがやりますので!」


「あら、それは助かります
ではその部分はお任せしますね?」


って それバイトの人の領分じゃん!
しかもさり気に押し付けてるしあの人!





兄ぃ!頼まれたお飲み物と雑誌
買ってきやした!!」


「お忙しい中、ご苦労様です」


隊士 一般市民にパシられてるぅぅぅ!





そう…気づけばいつの間にか屯所内の半分が


さんの勢力化に置かれていた







「面倒な事になって来ましたね」


「ああ…ったくあの女男のお陰で
ロクにタバコも吸えやしねぇ」


「隊士達もうるさくなってやがるから
オチオチ昼寝もできないぜぃ」


「それはテメェの自業自得だろ」





屯所裏手の隅で オレと副長と
沖田隊長は声を潜め肩を付き合わせる





「まー大晦日と同時にバイト期間が
終わるしそれまでの辛抱ってトコか」


「それが…」











「掃除はやる気の内に片付けよう」











こないだ立ち聞きした話を説明すると
途端に副長の顔色が変わった





んだと!?あからさまな
組織乗っ取りじゃねぇかそんなもん!」


「声がデケーですよ土方さん
他の奴らに聞かれたらどうするんでぃ」


「あの野郎…誰の差し金かテメェの野望か
知らねぇが吐かせてやらぁ」



「ちょ…ちょっと待ってください副長!」


「下心のあるなしにしても奴さんへの
手出しは、屯所の半分を敵に回しますぜぃ」


諌められて、チッと短い舌打ちが飛ぶ







内部紛争はどうにか回避したものの





「このままあの人を野放しにしてたら
屯所がヤバイのは確かですね」





ため息つきつつ呟くと、少し遅れて
静かに副長が口を開いた





「…こうなりゃ手遅れになる前に
奴ら兄妹を辞めさせるしかねぇな」


「どうやってですか?支持率と発言権
半分向こうにある状態ですよ?」


「正攻法じゃ下手すりゃ いや確実に
奴さん、伊東の野郎よか上手ですぜぃ?」


「…気は乗らねぇが槍ムスメを
こっち側に引きずり込む」


「えぇっ!?そんな無茶な!!
あの子最もお兄さんサイドですよ!?」





しかしタバコを燻らす不敵な笑みは崩れない





「奴の性格を利用すんだよ いいか…」









折りよく一人でハタキがけをしていた
彼女へ オレらは物陰から声をかける





ちゃん、こっちこっち!」





手招きに応じて相手はこちらまで寄ってくる





「お主ら三人とも怠けおって、勲殿が
ずいぶん探しておったぞ?」


「割烹着似合ってんじゃねぇかぃ
ーお前ココで働く気はあるか?」


「総悟殿…兄上と同じような事を言うのだな」





無表情のまま 彼女は静かにこう言った





「あくまで今の仕事は臨時のみ
本職として働く気はないし、出来ぬだろう」


「お前の兄ちゃんが裏で誰か
繋がってるって事はねぇだろうな?」


まさか!先週の買い物とて偶然に過ぎぬ
第一兄上にその様なことは一切させぬ!」





キッパリ言い切るところを見る限り
少なくともそれは信用してよさそうだ





「何故 私にそのような話を?」


「あの、実は偶然聞いたんだけどね…」







そこでオレはさんと局長の会話を
掻い摘んで説明した







「そうか…兄上が働きたいのであれば
私には止める権利は無い」


「本当にそれで納得できんのか?」





あ、今 ちょっと目が揺らいだ!







チラリと副長がオレらへ視線を寄越し





「本格的に雇われたとなると、基本
住み込みで働いてもらう事になるぞ」


「知っての通りオレら武装警察だから
危険は日常チャメシだぜぃ?」


「荒くれな隊士だけでなくとっ捕まえた
凶悪犯が出没するかもしれないんだよ?」


「更にはどっからともなくテロリストの
爆弾や火災やバズーカ砲が飛んでくる
もちろん 予告は一切ナシでぃ」





流れで先程決めた懐柔作戦が展開される







しかし自分で加わってて何だけど
アドリブの説得にしても誇張しすぎだろ


しかも隊長さり気に後半自分のコトじゃん


基本、常識知らずのバカでブラコンなこの子だけど


いくらなんでもこんなの信じるかな…







「それは困る!兄上がこの様な危険区域に
お一人で泊まりこむなど!!」






って信じたよ!本気にしてるよこの子!!
嬉しいけど複雑な心境だコレぇぇ





「じゃ、どうにかテメェから兄貴説得して
なるべく早くバイトを終わらせろ」


「…心得た!」





動かぬ表情に確固たる決意を秘めて

説得された彼女は駆け出していった







「本当に上手くいったよ…でもお兄さんを
説得出来るんでしょうかねあの子」


「まー十中八九無理だろうねぃ」





えぇぇぇ!?じゃあ懐柔無意味じゃん!





「で、こっからはオレ達三人で
やる区分だから心して聞けよ?」











…沖田隊長の予想通りに説得は難航し





「もう十分汚れは落ちましたよ兄上」


「いーや、請け負った以上は
新築レベルまでキレイにしなくちゃ」





背後から言い募る妹を宥めながらも
通りがかった彼は







「アレ?掃除したはずなのに
何でやる前より汚くなってるの!?」






ゴミと雑誌の山が散乱している
部屋や通りを目にし 愕然とした







そう…懐柔しての説得策は囮





彼女に気をとられているその隙に


屯所内を掃除しても無駄だと思わせるぐらい
汚くして 自主的に辞めさせる





これこそが本命の策だった





…大分本末転倒だけど、屯所が
乗っ取られてしまうよりマシである







呆然とするのも無理はないだろうな
これは幾らなんでも悲惨すぎる





「兄上 この場所はいくら掃除しても
このようにたちまちに汚れてしまいます
ですので、即刻立ち去り」


「いや…ここまでヒドいとなると
見過ごせないよ!キレイ好きとして!」





って逆に闘志に火ぃつけちゃった!?









次々に汚して回っているものの


猛スピードで行われる清掃技術
こちらを上回っててイタチゴッコだ







兄上!ここは私にお任せを!」


「わかった、頼んだよ!!」





っていつの間にかちゃん
お兄さん側に逆戻りしてるしぃぃぃ!!







「ちっ…単に汚すだけじゃ足止めは無理か」


「こうなりゃ片付け手伝うフリして
こっそり汚れ増やしちまいやしょう」





案に乗る形でオレ達は 二人の前へと歩み寄る





旦那方ぁ、精がでやすねぃ」


うわぁ!PCじゃないと分からないけど
沖田さんの台詞がまだらに汚く!!」





いくら汚れを増やす作戦だからって
そこはやらなくたっていいんじゃ!?





「むしろどうやったんだよソレ!?」


「ソースからフォントをちょいとイジりゃ
案外簡単にできますぜぃ ホラ」


「専門的な用語使うんじゃね…って
おま、よりによってなんつー色にすんだ!



「瞳孔マヨ殿の台詞が背景と同化して
なんとも見辛い…目が痛くなる」


ムリして見なくていいからぁぁぁ!
閲覧してる方々もマウスで反転させて
見たほうがいいですよコレ!!」


「副長に山崎さん それに沖田隊長も
皆さんどういうおつもりですか!」






唐突に響いた声の主は、後ろから
厠用の掃除用具を両手に携えた…


せ、清蔵さん!?アンタどっから?!





「何やら仕事もせずコソコソしてると思いきや
事もあろうに屯所内を汚して回っているとは!
見損ないましたよ!!」







あっさりバレたぁぁぁ!







「…どういう事ですか?三人とも」





ああああ怖い!笑顔なのに黒いオーラが
肉眼で見えるよ この人怖すぎ!!





「それと…さっきからの不自然な
説得からすると君も一枚噛んでるでしょ」


「し、知りませぬ 私が頼まれたのは
兄上への説得だけ故!」


「へぇぇ?どんな?」





墓穴を掘ってきつい視線を投げかけられ


怯えるあの子を見かねてか、沖田さんが
すっと手を上げてこう言った







「いやー実は土方さんが全部計画したことでねぃ
オレら巻き込まれたんでさ」


「テッメ、何オレ一人に押し付けようと
してやがんだコラァァァァァ!」


「発案してる時点で同じでさぁ
てわけで罪を認めてくたばれ土方!


「お前がくたばれぇぇぇぇ!!」





言い争いからあっという間に
バズーカと剣が飛び交う乱闘になり







「お二人ともお止めな」


「「じゃーかぁしい!!」」





Wコンボで清蔵さんは撃沈されて





「お主ら止めぬか!
兄上にお怪我でもされたらどうしてくれる!!」






更に彼女まで乱闘に参加してしまい


ワザワザ汚すまでもなく屯所内は
見る見るうちに荒れていった









「一体、どうなってるんですか?
事の起こりは一体何なんです山崎さん」


「……実はオレ、聞いてたんですよ
あなたが局長に取り入ってたのを


「ああ あの時の話が聞かれてたのですね」







何を差すか察したらしく、彼の顔に
柔らかな苦笑が浮かんだ





「語弊があるようですが…僕は別に
真撰組をどうこうするつもりはありませんよ」


「だったらどうして」


「知っての通り僕ら兄妹は、人様からは
後ろ指を差される仕事で生計を立ててます」





言葉半ばで柔らかな視線が彼女へ注がれ





「僕自身は望んで選んだので後悔はありませんが
…あの子にはもっとまともな仕事して欲しいんです」





ようやく この人の意図に気がついた





「もしかして、ちゃんにここで
働かせるつもりで…!」


「まあ ここで働けなくとも人脈や経験が増えれば
あの子にとってきっとプラスになると思いましてね」







…じゃあこないだ感じたオレの不安って
単なる杞憂?したら


オレらのやった事 ただの掃除の邪魔!?





「でも勘違いとはいえこんな仕打ちをされては
…もう辞めさせてもらおうと思います」


「そ、そんなぁ!掃除してってください
さぁぁぁぁんお願いぃぃぃぃ!!」








しかしヘソを曲げたカリスマ主夫が
二度と振り向くことは無かった








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:新年一発目が越年…しかも何気に
詰め込み気味にお送りしててスイマセンでした


山崎:今年も謝罪から始まるって
どんだけネガティブなんですかアンタ


土方:つかピーマン兄貴、どうやって
隊士どもを手なづけやがったんだか


狐狗狸:手練の技と魅力でしょ?


沖田:まぁオレとしちゃ面白かったし
に貸しも作れたんでよしとしとくか


山崎:やっぱあの助け舟って
下心ありきのモノだったんですか!?


清蔵:全く、真面目に掃除をしていれば
よかったのですよお三方も


土方:後から来て締めくくってんじゃねぇ




相変わらずオチ無い駄文で失礼しました!


様 読んでいただきありがとうございました!