冬に向けてのこの時期になると空気が乾燥し
火災の発生率や被害が増加する為か


大半の学校や職場などで防災訓練が行われる





それは神奈川県川崎市の某悪の組織や


熊とか変な外人のいる 気の短いヒーローに
狙われっぱなしの某秘密結社や


更には狐の名がついた某国の軍隊など同様


我等が銀魂高校も例外ではないのだ







黒板の隅に"明日、防災訓練やりまーす"と
やる気無く書かれた文字を見て





「もう防災訓練の時期か…去年は別の高校で
火難の訓練を受けていたな」





ある意味間違っていない字違いをしつつ
廊下に佇んで ぼんやりとが呟く







「やっべ、バイト遅刻しちまう!!」





教壇側の戸口から駆け出した長谷川が


廊下にいた彼女に気付き、声をかける





「そこで何してんの?」


「いや、たまたま通りかかって
黒板の文字を眺めていたのだが…それより
マダオ殿はまた補習をサボるのか?」





開いた手で拝みながら長谷川は声を潜める





「黙っててくんない、オレだって
生活かかってんだしさ」


いかんぞ長谷川君!そんな不正は
学級委員長のこのオレが許さん!!」





そう言ってどこからともなく現れたのは


実は3Zの学級委員長な桂だ











「防災訓練の時さ、教訓守る奴っていんの?」











「いやそんな固ぇこと言わないで
ホント今日だけでいいからさ桂君」


「ならん、学生の本分は勉学に励む事だ
ましてオレ達は三年だ そうそう学問を疎かには」


「しかし桂殿 この話は基本私達の年齢が
止まったままだと神楽から聞いたぞ」


ちょ、人がせっかく真面目に話してるのに
根本から覆すの止めてくれる?」







メタな発言に渋顔でツッコミを入れる
その様子に好機を見たらしく





「そういや明日は防災訓練っつってたよね!」





長谷川は彼女へ水を向けてみた





「ちょいきなり何の話「それがどうか
したのかマダオ殿?」ってオイ!?


「いや、あれの原則で"おはし"ってあるけど
誰がいつ頃作ったんだろうな〜」


「言われてみればその通りだ…気になるな」


だろ?したら今すぐ図書室で
調べに行こうぜ!って事でオレ達はこれで」


ごく自然な成り行きを装いつつそそくさと
場を離れようとして





「待たぬか!!」





制止の声をかけられ、彼の動きが止まる







足止め失敗と迫るバイトの刻限に
内心苛立ってくる長谷川へ





首を横に振り 桂はこう言った







「調べるなら原則は"おかし"が正式だ」


「ってそっち!?」


「桂殿 私は"おはし"も別の学舎で
聞いた覚えがあるのだが…」


「それはホラ、地方によって方言が
違うような…アレの類だ うん」


「しかし教えていただいた先生の言葉は
れっきとした標準語だったぞ」


「いやいやこの場合 始めに教えた
人物の言葉で語り継がれるのであって」







予想とは大分違ったが、結果的に
相手の気が逸れた隙を突き





「それじゃ二人ともまたな!」


「あっコラ廊下を走るな!!」





長谷川はダッシュで駆け出していった







「全く、こう言う時だけは足の早い」


「どちらが正しいか分からぬと
訓練の際 苦労すると思うのだが」


「…よ、お前はいくらなんでも
空気を読めるようになってくれんか?」


「桂殿 空気は目に見えぬのだが」


「そういう意味じゃなくてだな」







小さくため息をつき、やや顔を近づけて
人差し指を立てると彼は説明を始めた





「いいか?"おかし"は"押さない・駆けない
しゃべらない"の頭文字で出来ている」


「む、なるほど…」


「"おはし"だと"押さない・走らない
しゃべらない"となっているのだろう?」


「聞いた限りではその様に覚えてはいる」





ここで間を取り、彼は自信ありげに笑う





「そこでだ、"駆けない"と"走らない"は…」


「おお どちらも同じ意味だ!!」


そう!だからより端的に表している
"駆けない"こそが先と分かるだろう」


「うーむ…そう言われれば一理あるが…」







勢い任せの妙な説得に納得しかけた
二人に、ひょいと長身の教師が割り込む





「なーにしちょるんじゃ二人とも?」


「ジャマしないでください坂本先生
今、大事なトコなんですから」


「…先生も"おかし"が正式だと思われるか?」





説明丸省きな問いかけに、坂本は
んん?と思い切り首を傾げて言う





「ワシは"おかしも"と聞いちょるがのぅ」


「「"も"?"も"とは何だ?」」





訊ねられ 彼はあっけらかんと言い放った





分からん!
だがワシは"もどさない"じゃと睨んでおる!」


「ほう…してその意味合いは?」


「避難してる最中に吐きそうになっても
吐かずに我慢しろっちゅー事じゃろうな」


「それはありそうだな、ぜひ覚えておこう」


待てぇぇぇぇ!覚えてはダメだ!!
それは何か間違ってる気がする!!」





桂が珍しく最もなツッコミを入れた所で







「おーい、ウチの生徒に
デタラメ教えんなそこのアホ教師」





安物のサンダルを鳴らして銀八が現れる





「アッハッハ〜おんしだってオツムは
似たり寄ったりぜよ金時ぃ」


銀八だっつってんだろ、いー加減
覚えやがれアホもじゃ」





咥えタバコのまま眉をしかめて彼は続ける





「ヅラは既にもう手遅れだけど
は一応まだ取り返しつくんだから」


先生!どうしてオレが手遅れなんですか!」


「そんなウザイ長髪のヅラかぶって
学校来てる時点で手遅れだろが銀河系バカ」


「訴えますよ先生 これは地毛だって
入学当初から言い続けてましたよね?」



「…所で"も"は何なのですか先生?」







話を無視した問いかけに 間髪いれず答えが返る





「決まってんだろ、アレだよ"もらさない"だよ」


「先生!避難中にトイレに行く方が
よほど困難だと思います!!」



「知るか 根性で我慢しろってことだろ多分」


「困ったな…新たな説が二つもついたぞ」


「いや迷う必要などない、元々"も"など
そこのバカ教師二人が言い出したことぞ」


「アッハッハ、言われちょるぞ金時ぃ」


オメーも含まれてんだっつの!
だーもういいだろ訓練の原則なんざどーせ
皆大して守らねぇんだしよぉ」


「そんな弛んだ事は学級委員のオレが許しません!」







無表情ながら真剣に悩んでいた彼女が





やがて何かを思いついて手を上げる





「したら原則は間を取って"おかしあ"
改定するのはどうだろうか?」


"あ"って何!?」


「兄上最優先」


「「それお前だけしか当てはまらないし!!」」







期せずハモったツッコミの後、やれやれと
言った感じで桂が言葉を紡ぐ







「埒が明かないので"おかしも"の件は
"おかしな"で手を打とうと思うんですが」


どっから来た"な"は!?おかしいのはお前だ」


「"な"は何を意味するのだ?」


「無論"泣かない"だ 避難をする間は
どんな事があっても涙を流さず強くあるべきと…」


「たかが訓練に何を求めてんだテメーは!!」







しかし他の二人は彼の言葉に感心しているようだ






「ほほう、中々いいトコつくの〜ヅラは」


「流石は学級委員長だけはある 的を射た言葉だ」


何処もヒットしてねぇから!もーお前ら
それでいいからとっとと下校しやがれ」





呆れ混じりに二人を帰らせようとするも





「にしても、"おかしも"の"も"は
結局何なんじゃろうな 気にならんがか?」


「ちょ話蒸し返すなぁぁぁ!
お前もそこのピーマン娘並に空気読めねぇな!」






「"おかしも"の"も"は"戻らない"だぞ」







トンチンカンな議論に終止符を打ったのは





いつの間にか廊下へと出てきた高杉だった







「むむ、それがあったか!」


「確かに火事が起きちょるトコへ
戻る奴が一人は出るからの〜」


「なるほど、晋助殿は頭がいいな」


「いやいやお前らがバカなんだって」





やる気なくパタパタと手を振る彼に
やや憮然と銀八が問う





「てか高杉 オメー授業出てねぇのに
なんで学校いんだよ?」


「忘れモン取りに来ちゃ悪ぃのか?」


「どうだ高杉、ついでに避難訓練の原則は
どれが正式か皆と論じるのは」


「用あるから遠慮しとくわ」


桂の誘いを即答で断ってから





「じゃ、オレ帰るから」





そそくさとカバンを抱えて彼は去った







「…付き合いの悪い奴だ」


「せめて意見くらいくれても良いだろうに」


「まぁアイツも忙しい奴じゃからの〜」





朗らかに笑う坂本の後ろエリを引っつかみ





「単にバカ達の集いに参加したくなかった
だけじゃね?つーワケでお前らも帰れよ」


「気をつけるんじゃぞ〜二人とも〜」







そのままズルズルと引きずって銀八が
やる気なく廊下を歩いていった









後には、桂とが残される







「…そう言えば、お主の兄はどうした?」


「また進路で遅れるのだそうな…厠で
席を立つまでは教室で待ってたのだ」







何となく原因を察しつつも、口には出さず
代わりに桂はこう返す





「そうか…どうせなら待ち人が来るまで
どれが避難訓練の原則に相応しいか論じぬか?」







不毛すぎる提案に しかし彼女は


無表情のまま首を縦に振った





「…そうだな、受けてたつ」


「そう来なくては 言っておくがオレは
先程の意見を曲げるつもりは無いぞ?」


「無論 こちらもだ」





楽しげに笑い合い、二人は教室へと入っていく








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:3Zでの桂夢にしたかったのですが
他の人々との兼ね合いでほぼ費やした感が…


銀八:つか冒頭のアレ、テメーの趣味じゃねぇか
版権ネタ引きすぎだろ つか分かる奴いんのか?


狐狗狸:んー…一般だと軍隊がギリギリ?


坂本:結局どの原則が正しいんじゃろうな〜


狐狗狸:どれもほぼ一緒ですよ、"おはし"
一番先で 最近言われてるのが"おかしも"


高杉:意味の無い話だな…単にオレらを
出したいが為に部分部分が飛んでるしよぉ


長谷川:あーソレはあるなぁ、オレらの
登場と退場がおざなりだしさ


桂:オレにも文句があるぞ!毎度毎度
夢小説での扱いに異議あり!!


狐狗狸:全面却下!!




面子フルボッコ同様に、ファンの皆様に
ボコられても仕方ない内容でスイマセンでした!


様 読んでいただきありがとうございました!