季節は夏 江戸は記録的な猛暑だと言われた今日







何でうちにたまってるんですか、あなた達」





家に帰ってきたが 開口一番


まるで自分家のようにまったりしていた
万事屋三人にそう言った





「あ、すいません お邪魔してます」


「ちゃんとに許可もらって
上がらせてもらってるアル」





新八はお茶をすする手を止めて、神楽は逆に
酢昆布を食べる手を止めずにに返事を返す







「お帰りなさいませ兄上 お出迎えも出来ず
本当に申し訳ありませぬ





駆け寄るなり、本当にしょんぼりと項垂れる
の頭を撫でながら


「いいよ 気にしないで、それより」





キッと、が表情を険しくして





「他のお二人はまだ許せるとして…
何であなたは他人の家で我が物顔
ジャンプ読んでくつろいでんですか」





自前のジャンプを読みながら


更には用意してもらったお茶と団子を食べながら
一番くつろぐ銀時に詰問した





「いやークーラー無くてよ、ん家なら
クーラーあるから涼みに」


「清々しい位ふてぶてしい人ですね」





ニッコリ笑うだが、口調はかなり刺々しい











「気をつけろ!この季節はゾロゾロ沸く奴が多い」











「そんなに暑いなら海に行けばいいじゃないですか
今の季節なら海水浴に最適でしょう?」





微笑みながら遠回しに"出てけ"と言う
の言葉に反応し、







「そう言えばこの時期になると、海辺に
妙な下着姿の男女が毎年現れるが…」





が 不思議そうにこう言った


「あれは一体何の集まりなのだ?」







その発言に、万事屋の面々もも硬直する







「え、もしかしてお前 水着も
海水浴も知らねーの!?」






コクコクとが首を縦に振る





「マジかオィ 恐竜並絶滅危惧
バカがここにいるんですけど〜」


「今時海水浴も知らないなんて
遅れてるアルよ〜」


銀時と神楽が同じ様にニヤニヤ笑いながら
を冷やかして





「何処のいじめっ子ですか二人とも」


新八が淡々とツッコミを入れる







「うちの父親が海嫌いで、生きてた時は家族で
海水浴に行った記憶は無かったけど…」





今だに信じられないような表情で、
を見つめ





「まさかがこの年までその知識を
知らなかったなんて思わなかったよ」









その後、四人が脱線しつつも掻い摘んで

に水着と海水浴の説明をした







「若者のあの格好には意味があったのか…」


「オメーも若者だろーが」


銀時の指摘に はまあそうだが、と呟く





「なるほど、一度は海に言ってみたいものだ」







興味深げにしみじみと呟く





「なら行けばいいだろ、てーか兄貴が
連れてけばいいだろ」


「そうなんですが 僕も色々と忙しい身で
も気を使ってくれてるのかと…」





苦笑気味に言うの言葉を引き継ぎ、


「それに、私にはその様な事にかまける金はない」





そこではぐっと握りこぶしを作って





「私は兄上と結婚するのだ だからその為に
色々と資金を貯めねば…」


「イヤイヤイヤ 法律無視しちゃダメだよ
近親相姦だからそれ!!」






新八が問いただすも、明後日を向く
全く聞かずに続ける





「そして来年の七夕こそ 子作り祈願を!」


「その橋渡っちゃダメだから てゆうか
何でワザワザ七夕!?」








ツッコミ続ける新八に は真顔で





「何を言う 七夕の日夫婦が二人で笹に
願掛けをして、こうのとりが子供を運んでくるのが
子作りの常識だろう」


「そんな常識は古今東西ねーよ」


 今時こうのとりなんて嘘っぱちネ
本当は男と女がアレをナニして」


「神楽あぁぁ!余計な事を吹き込むな!!」







ややこしい事態に発展する前に
銀時が神楽の口を塞ぐ









が溜息混じりに呟く





「ウチのは昔から 槍の修行一筋で
世情に疎い所はありましたけど…」


疎いってレベルじゃねーだろ!もうこれ
最初から常識やり直した方がいいって!!」





言いながら 銀時が神楽から離れ


の頭をべしっと叩く





ちょっと痛かったらしく無表情ながら
叩かれた部分を擦る





「そこまで言いますかアナタは」


がそう呟いたその時







「ぎゃあああヘルス ヘルスミー!


ヘルプミーね…って何でそんな懐かしい
リアクションしてんの神楽ちゃん」


「ああああああっちからあっちからゴキ」





神楽の視線の先、普通のサイズのゴキブリ
一匹だけこちらに這い進んできた





『うわっ』







飛び退いた皆と違い、


は表情を変えず(元々 無表情めだが)


側を這っていたゴキブリを素手で掴んだ





何だこの虫は?やけに油っぽいが…あ 潰れた」





どうやら力加減を間違えたのか


が手に掴んでいたゴキブリを
握り潰したようだ





「ぎゃあああああ!何お前素手で潰してんの!?
えんがちょ!!」



それと同時に、銀時達が急激
から距離を取る







首をかしげながら が握りつぶした
ゴキブリを指し、に尋ねた





「兄上 何故皆この虫に怯えるのですか?


「てゆうか、どうして君は平気なのっ」





青筋立てつつ、引きつった笑みを浮かべる





「生憎と私はこの虫のことを何も知らぬのだが
何故皆が怯えるのか 逆に教えて欲しい」


が潰したゴキブリを不思議そうに見つめる





「わかった、わかったから手を洗って…」







そのまま の表情が凍りつく







『ぎぃやああぁぁぁぁぁぁぁ!!』





の背後から現れたものたちに
銀時達の悲鳴があがった







現れたのは紛れもなく、巨大ゴキブリの群れだった





「さっきの虫の大きいのが群れをなしているようだ」


「何でそんな冷静なんですか!?」


「だから私はこの虫の事を知らぬのだ
知らぬ物を怯えることも出来ぬ」


常識知らずもそこまでいきゃ才能アル」


「もはや常識知らずの範疇じゃねぇよそれ!」


なんて事を騒ぎながら、四人は巨大ゴキブリの
群れの中にを残して離れて行く





「うわっ こっちに来るっ!!」





巨大ゴキブリが鈍い動きに向かってきて


怒りの炎を燃やしたが、その一匹を
槍で串刺しにする





「兄上に害成す者は 全てけ「とりあえず奴等を
片付けろ あと、お前は近寄るな」






彼女の台詞を遮って 銀時が叫ぶ





「……了解した」







憮然としながらも は頷き
巨大ゴキブリたちを殲滅し始めた







「って僕達だけノンビリしてる訳にも
行かないですよ!」


「新八さん これを!





がどこからか取り出した殺虫剤とライター
新八の手に手渡す





「とりあえず二人分しかないので
僕とあなたとでの援護をしましょう!」


「あの、殺虫剤は分かるんですが何でライター?」





新八の疑問に全く答えず


は殺虫剤を巨大ゴキブリに向け


躊躇い無くライターを手前に持って噴射する





「ってそれ火事になる!!」


大丈夫です!ゴキブリの方に向ければ
ゴキブリが焼かれるだけですから!!」





自身満々で言う、だが目はきっちりイっちゃってる


やはりあまりの事にパニクってしまったらしい







銀さん 神楽ちゃん!手伝ってください、
ていうかさんを落ち着かせてください!!」





新八は銀時達の方を向いた、すると





「オレはちょっと家にバズーカ
忘れたから取りに帰るわ」


「私も酢昆布が切れたから取りに帰るアル」





二人はそう言いながら 早々と玄関に向かっていた





「ちょっと待て!お前等逃げる気…って早っ!?


「あはははははは燃えろ燃えろ、ゴキブリが
ゴミのようだわああぁぁぁぁ!!」



「家まで燃えるうぅぅ!!」





すっかりトチ狂ったを新八が
チョップで気絶させた







幸い家の何処にも燃え移りは無く
周囲には焦げた巨大ゴキブリが何匹か転がっている





ついでにいえば 部屋の中に入った巨大ゴキブリは


皆 見事に殲滅されたようだ





兄上!新八 兄上は何故気絶されたのだ!?」


「ししし知らないよ てか近寄らないで!!





倒れたに近寄ろうとした
新八が必死で静止していたその時







『ぎぃやあああああああああ』







悲鳴を聞いて 新八が窓から外を見る





二人が飛び出した外にも、巨大ゴキブリが
大量にひしめいていた





「ちょっとこれどーなってるの 嫌がらせ!?
酢昆布ゴキブリの再来!!?」






銀時が寄ってくる巨大ゴキブリを蹴り倒す





アレ?何か さっきから…こいつら
動き鈍くね?」


「そういえば、最初に部屋に入ってきたのも
何か動きが鈍かったような…」





銀時と新八がそう言葉を交わした瞬間





あははははは、ゴキブリなんて
江戸ごと全部殺っチマイナ!!





ついに状況に耐えられなくなった神楽が


往来の真ん中で傘をぶっ放し始めた





巨大ゴキブリ達と建物がもろともで吹っ飛んでいく







「うわばばちょっと!神楽ちゃん町壊れる!!」





慌てて外に出て 神楽を止めようと
近寄った新八が


エルボーのいいのを顔面に食らってKO







!神楽止めろ むしろ止めてください!」





神楽に容易に近づけない銀時が、
に向かって叫ぶ







無理だ 気絶された兄上を介抱するので精一杯だ」





即答されてもめげずに銀時が再度シャウト





「神楽止めたら海水浴に連れてってやる!」


「了解した」


間髪いれずに返事をし、は即座に外に出て
暴れまわる神楽に直進し





特殊な体捌きを交えた一撃で気絶させた







倒れた神楽を引きずったまま


が無表情でこちらに戻ってくる





「約束は果たした、次はそちらの番だからな」


「わかったから寄るなぁぁ!!」





銀時が千切れんばかりに首を振って後退った










これは後でわかったのだが、





また性懲りも無くバカ王子が宇宙ゴキブリの
女王を持ち込んでいて脱走され


実はが初めに潰したゴキブリが


その女王(名前は助六)だったらしい











「海とは森の中にあるのだな」







とある湖のほとり

水着姿(ウェットスーツ)が周囲を見回す


水着姿の新八が、同じように水着姿の銀時をつついて





「…銀さん いくらなんでもこれはちょっと」


「いいんだよ、どーせあのバカ娘にゃ
湖と海の区別なんてつきゃしねーって」


「距離的にはこっちの方が近いアル
それに木陰あるから、私も水に入れるネ!」





水着姿の神楽が浮き輪片手にそう言う





「それによぉ、この湖広ぇし水もそこそこキレイだし
考え様によっちゃここで泳ぐのも悪くねーだろ」


「確かにそうですけど」


「それに仕事も金もねーのにわざわざ海に
行くのもかったりーしな」

「結局そんな理由かよぉぉぉ!」







二人の掛け合いを無視し、神楽と
湖で泳ごうとしていたその時





「お前等 人の湖で何騒いでんだよ」





湖から、河童のような天人・海老名さんが
怒鳴りながら顔を出した







「お主は…海の番人だろうか?」


「誰だお前は、てかここはだ」


「人に名前を聞く時は
まず自分から名乗るのが礼儀だ」


「お前の方がよっぽど礼儀知らずだろが
てゆうかお前等か、こんなの連れてきたの!」










この後四人は 海老名さんに小一時間ほど
お説教を喰らったが





は今でも、湖を海の一種だと


間違って信じている








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:銀魂夏ネタ書きましたが…夏って言う割には
あんまりそれらしさを現してないなぁ


神楽:夏ネタってよりゴキネタアル


銀時:つか、の非常識ぶりは正直
ありえなさ過ぎんだろオィ


狐狗狸:まあね の非常識さは書くつもりで
あったから予定内なんだけどね、ゴキネタは…


新八:何でまた酢昆布ゴキブリの話が出るんですか
しかもさんの様子がおかしくなり過ぎだし!


狐狗狸:予想外だったの 最近部屋に出るようになって
ビクビクしてたから、さんにも伝染?みたいな


銀時:適当だなオィ


神楽:無責任アル


新八:てゆーか最後のオチは 別に普通に海に
さん連れてってもよかったんじゃ


狐狗狸:だって銀魂は読者の予想を裏切るオチ
基本だし、ぶっちゃけ面倒だったから


三人:結局それが理由かアアァァァ!!




狐狗狸は三人にボコられ、海に沈められて
来ましたとさ めでたしめでたし(ヲィィ)


様 読んでいただきありがとうございました!