こちらに向かって駆けて来る、ハッピ姿の
新八が見え は通りに立ち止まる





「おお、どうした新八 息など切らせて」


「はぁ…やっと見つけましたよさん!」


「む?何か用事を約束したろうか…」


「理由は歩きながら説明しますんで
とにかく僕についてきてください!さぁ早く!!


「むぉ!?どうしたと言うのだ新八!?」





問いには答えず、やや強引に新八が
彼女をどこかへと引っ張っていく







しばしの時が経ち…





「この子が電話で言ってたちゃんね
初めまして 寺門通です」


「む、お初にお目にかかるお通殿」


「そんな固い発言しなくたって大丈夫です
ヨード卵光」


「すまぬ この口調は生まれつきゆえ…
よ、ヨード卵光?」





はTV局の楽屋でかの人気アイドル
寺門通と対面していた











「お花畑って口にして許されるのは
女だけんちゃん汁」












事情はTV局の楽屋前に着くまでの道すがら
新八が懇切丁寧に説明してくれたが


事情により簡単に要点だけまとめると







「はい、もしもし万事屋です」


『あ…新八さん?』


「えっ、もしかして…お通ちゃん!?





万事屋に戻った際、鳴っていた電話を
新八が受け取ったのがそもそもの発端だ







何でもある番組の意向で、自分と同い年くらいの
女の子に どうイメージされてるかを対面で
話を聞くという企画があり





ハードスケジュールでリハーサルするヒマがなく
いよいよ収録が間近に迫り


どうしても事前練習がしたかったお通は


万事屋に頼む事にしたようだ







「そういう事でしたら任せてください!
寺門通親衛隊隊長の僕に心当たりがあります!」






と、電話で簡単にの事を話して
必ず連れて来る約束をし


本人の自宅にすぐさま赴いたが留守で





あちこち探し回って冒頭のシーンとなった







ちなみに入室前 清掃員が掃除を行っている廊下で





「…相手は人気アイドルなんですからね
くれぐれも!失礼な発言は控えてくださいよ!」





グッと顔を近づけて真剣に忠告する新八に





「う…うぬ、了解した」





やや恐ろしさを感じつつ、は頷いた







とにかく、お通と彼女の対談が始まる







「ええとまず最初に…私の曲は聴いたこと
ありますカルピスサワー?」


「あのお通殿 その妙な言い回しは一体?」


「一々気にしないで下さい、ただのお通語ですよ」


「お通語?」





首を傾げる無表情のに 笑顔でお通が答える





「私が作った言葉で、主に語尾の最後に
カワイイ言葉をくっつける事です溶岩」


「なるほど お通殿は博識なのだな」


「えへへ〜誉められちゃった」


「あのーお通ちゃん、喜んでる所悪いんだけど
質問の方はいいの?」


「あっ、そうだった それでさん
答えは何です回覧板?」





再び訪ねられ、両者の視線が集まる中







「すまぬお通殿…あまりTVを
見る機会なども無いゆ壊死」


「ちょっとぉぉぉぉぉ!!」





彼女がまさかのKY発言をかました







「あんた何の為にここにいると思ってるんだ!
もっと空気呼んで発言しろぉぉ!!





もっそい顔で怒鳴る新八を宥めるお通





「いいんですよ、そういう人もいますし
じゃあ別の質問します粘着テープ」









それから次々と質問系統の対談は続いたが







「お通のこのスタイルについて、感じたこと
言ってみてくださいのウンコ見たこと無い!」


「華やかで可愛いと思うぞ もっとも
兄上の美麗さには及ばぬ餓死」


「だから後半余計ぃぃぃぃ!つか
お通語の部分物騒なもんばっかですって!!」






万事がこんな調子で、正直言って
まともな回答は一つとしてなかった







「じゃ、じゃあ次の質問ですけど…」





珍回答に顔が引きつり若干キレ気味
なりつつありながらも


お通は対談を成立させようと努力していた







「それよりも逆に、一つよろしいか
お通殿ロウィルス」


「なぁにンニキニキニキニニンが死?」


「会った時から気になっていたのだが…
お主、何か悩んではおらぬか?





は静かにそう訪ねた







「えぇっ!?」


「ど、どうして分かったんですカミキリムシ」







新八とお通が問いに対し、それぞれが
違った驚きを見せる







「部屋に入った時のお主の目に見えた不安が
言葉を交わす合間にも 仄見えただけゆえ」





その返答に半ば感心してから





「何かあるなら、話してみてよお通ちゃん
僕らで出来る事なら力になるから」








優しく告げる新八に、お通が頷き
淡々と事情を語り始めた





「実は…最近 盗撮されてるみたいなの」







人気のアイドルともなれば 周囲にトラブルが
巻き起こる事も不自然ではない


お通もこれまで幾度か事件に巻き込まれてきた





今回も、ネットに彼女の着替え写真
流出していた事が原因となっており


幸いにも迅速な対応で公に知られる前に
被害が防げたのだが、それ以来より一層
周囲を気にするようになったのだとか







「何だかお風呂やトイレでも視線を感じて…
下手に騒ぎに出来ないから警備も頼めないし
どうしても不安になっちゃっTE○GA」


「それは許せぬな…所でお通殿
TE○GAとは何だろうか?」


さんんんんん!頼むからお通ちゃんに
ソレの説明させるのだけは止めてェ!!」



「なら、新八が教えてくれ」


えっいや僕に振られても困るんですけど…」





惑う新八が一歩後退った所でお通の後ろの
ゴミ箱付近から、カタリと小さな物音がした







自然とそこへ全員の視線が集まって







ゴミ箱の陰から…黒々と光るゴ


「キャァァァァァァァ!!」


下がってお通ちゃん!ここは僕がっ」





悲鳴を上げたお通を後ろに庇い、咄嗟に手にした
新聞紙でそいつを狙って叩く新八


素早い動きで回避し 奴が羽を伸ばして飛びかかる


が、その直後に閃いたの槍が
空中で真っ二つに切り裂いてしまった





っどわ!ななななな何てことぉぉぉ!!」


「む、いけなかったのか?」


「いやいけなかないですけど…」





首を傾げつつ彼女が無表情に槍をしまおうとして


その柄がゴミ箱をつつき、拍子に横倒しになり
ぶちまけられたゴミの中から…





「「「あ」」」





小さなカメラが紛れていたのを見つけた







徹底的に楽屋内を探し回って、三人は程なく
幾つかの仕掛けカメラを見つけ出し 破壊する







「こんなに沢山…許せない!
お通ちゃん、この楽屋に入る人物は!?」


「ええっと、バンド仲間やプロデューサーさんに
お母さんに清掃員さん…結構多いんですけど」


「それならここ最近入った人達を出来る限り
思い出していただけますか?」







お通の記憶によるリストを元に聞き込みをすべく


怒りに身も心も滾らせて、勢い良くドアを開け





「お通ちゃんに手出しする不届き千万な輩は
この寺門通親衛隊隊長・志村新八が天に代わって
処罰を下してくれるぅぅぅぅ!!」



「おぉ?!何処へ行くのだ新ぱt」





問いに答えず新八は廊下を駆けて行く…









通りがかる清掃員がキョトンとする廊下を
一瞥し、は扉を閉めると





「また新八さんにご迷惑かけちゃって…
本当にスイマセン」





寂しげに微笑むお通に 思わずこう訪ねる







「…お主は何故、辛い目に遭っても
笑って仕事を続けられるのだろうか?」








彼女が色々な事件に遭っている事は
話で聞いた事があった





アイドルの世界も大変なのはおぼろげに分かる







自分のように咎があるわけでも強い執着が
あるようにも見えないのに


辛さを嘆かず笑顔でいるお通が…気になったのだ







「私、いつも万事屋の人や新八さん達に
助けてもらってるんです…いつも感謝してて
お返しに、皆を笑顔に出来たらって」


「……そうか」







しばしの沈黙を破り、お通が立ち上がる





「あ、そうだ 次の撮影に備えて
お花畑に行って来ていいでスカンジナビア?」


む?三途なら案内いた葬式」


「違います、おトイレですっテレビジョン!」







どうにか納得したを楽屋に残し、お通は
近くのトイレへと駆け込む





ちょうど清掃が終わったのか 清掃員が
入れ違うように通り過ぎる









「ふー危なかったんたんタヌキの金た…あれ?」







用を足し、手を洗っていたお通の目の前に





先程の清掃員が入ってきた







「あのーお掃除終わったんじゃ「お…お通ちゃん
どうしてカメラを壊した?





言葉を遮り じっとりと湿った目つきで睨まれ
彼女は思わず身を強張らせる





僕は君の全てが好きだ!だから君の全てを
余すとこなく撮り続けていきたいのに…!」


「ま、まさかアナタが盗撮犯…!?」





いきなり判明した事実と見知らぬ男が
目の前にいるこの状況に混乱するお通に構わず







「そうか…僕が側にいないと気が乗らないんだね!
なら自宅に連れて行ってあげるよ!!」






男は狂気染みた笑みを浮かべて近寄る


恐怖に後退りするお通だが、狭いトイレで
逃げ場など無くすぐに壁へとぶち当たり





「ふふふ…もう逃げられないよお通ちゃぁぁん!」





竦んだ彼女へ男の手が勢い良く伸ばされ―







「させるかぁぁぁぁぁ!」





叫びと共に天井板を外して降りたのデコが
男の頭部と思い切り衝突し


衝撃に怯んだ刹那、落下しざまに
突き入れられた槍底が喉元を直撃して





盗撮犯は耐え切れずに気絶した







「大丈夫です海綿体!?」







そしては…落下した際の打ち所が
悪かったらしく 頭から止め処なく流血していた





足元で倒れた身体を思わず抱くお通へ







「何やら不穏な気配を感じ…こっそり天井裏から
付いて来ていたのが功を奏したようだ
ともあれ…お通殿を、救えてよか…た…







その一言を最後に 意識が途切れ







「え、ちょっと…ちゃんんんんん!?





脈が止まった彼女を抱えたまま、お通は
ただ悲鳴を上げる事しか出来なかった…









あの後 悲鳴を聞きつけて駆けつけた
新八達のお陰で無事、盗撮犯は逮捕され


同時に適切な処置をしてもらいも助かり







後日 お礼の印として新八にはサイン色紙


にはサイン入りの新曲CD
プレゼントされ…







「あっあのさん、そのCDよかったら
定価で譲ってくれませんか!?」


「新八…すまぬがこれは頼まれても渡せぬ」


そんなぁぁぁ!さんCD聞く機械なんて
使えないでしょ?譲ってくださいよぉぉ!!」


「断る」





二人のそんなやり取りが、万事屋で
展開されたとかされなかったとか








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:OFCの話が終わらない内にお通ちゃん話
書いてみましタバスコ一丁


新八:僕の活躍とか事情説明は丸々スルー!?


狐狗狸:内容全部を乗せると、新八が今度の
コンサートに向けての親衛隊育成の様子も語らねば
ならないし長そうなんでカットで


新八:てゆうかさんはともかくお通ちゃんに
何つぅ目ぇ合わせてんすかぁぁぁ!


狐狗狸:ピンチになるのもアイドルの宿命なのだよ


新八:そんな宿命いるかぁぁぁぁ!!
(鼻フックデストロイヤーファイナルドリーム)




個人的には「お前の婆ちゃん〜」がCD化して
欲しいと思ってま…聞いてませんねスイマセン


様 読んでいただきありがとうございました!