バレンタイン…恋人や若い男女にとっては
期待に満ちた甘いイベント





しかし、モテない野郎にとっては


日々の苦々しさを
際立たせるしかない行事である







それは銀魂高校でも一緒らしく





「持ち込まれた全てのチョコを没収し
カップルを厳しく取り締まるべきだ!」






ザ・モテない男筆頭の3Z生徒、近藤らが
率いる風紀委員達による


"チョコ取締り強化月間"が発足された







「そのチョコ返してください!」


ダメです!勉強に関係ないチョコは
学校に持ってきてはいけません!!」





バレンタインに近づくに連れ、校門や
校内でのチェックは厳しくなり





「あ、あの…これ 土方さんに…」


トシィィィ!ずるいぞチョコもらって!」


「いやいやいや、オレ甘いの好きじゃないし
それに総悟だってもらってんだろ!!」


「何言ってんでぃ、こいつはいわば
自主的にチョコを提出させてんでしょうが」





身内へのモノであろうと、チョコを
渡されたものに対しての言及も厳しく





そこぉぉ!イチャつくなぁァ!!」


「んだよマジうざいんですけどぉー」





二人一緒にいてベタベタしている
カップルを見つけるや否や


風紀委員の激が飛ぶのは
当たり前な光景になっていた











「カバンの中にチョコ入れてたら溶けるよね?」











二月に入ってから、チョコを持ってきている
女子達や学生カップルは


この取締り月間に大いに困らされていた







ちょっと!私達の国ではバレンタインは
国際的な文化なんですよ!?」


「他所は他所!ウチはウチなんですぅ!」





外国からの転入生カップルも、例に漏れず
風紀委員の取り締まりにあっている





「本編で食えなかったんだから、せめて
こっちでくらいマトモにチョコ食わせろぉぉぉ!!」





叫んで取り返そうとする金髪の彼の手を振り切って





「例外は認めません!運んどいて!」


『うっす!!』







見事なバケツリレー方式で、チョコは
男達の手を渡って何処かへ運ばれていった







「横暴だぁぁぁぁぁぁ…!」









彼氏の嘆きが教室内に木霊する中







「…何ですか、この物々しい催しは」





彼らの様子を席に着いたまま眺め
は唖然としたように呟いた





「あー これ毎年の恒例行事みたいな
モノなんですよ」





ふぅとため息をつきつつ新八が答える







月間となるまでの発足は初めてなのだが


毎年、似たような取締りは風紀委員が
自主的に行っていたりする





今年はさらに近藤が熱を入れているせいか


取締りがより一層強化されているが







「そうなんですか、でも僕らには
関係ないですね…むしろありがたいかな?」


「ありがたいって言うのは?」


「ああ、毎年この時期は僕宛へのチョコやら
チョコに見せかけた嫌がらせやら多くて
ウンザリするんですよ 正直」





アンニュイなため息と共に、優越感を
ちらつかせた言い方をする





「さりげに腹立つ言い回しですね」


「それにこっちでは兄上の分と父上の分しか
用意できなかったのでな ほらこの通り」





言いながらがカバンから
ぎこちなくラッピングされたチョコを出し


は飲んでた紅茶を思い切り吹き出した





「なんで持ってきちゃったの!?
今まで家で渡してたでしょ!!」



「だって、学校でチョコを渡すと
みんな幸せになると伝えられているから」


聞いたこと無いよそんな伝承!
ちょっさん それ誰から聞いたの!?」









それは、昨日の放課後になるそうな







「どうしてバレンタインにみんな学校で
チョコ渡すか 知ってるアルか?」


「分からぬ…神楽は知っているのか?」


「当たり前ネ いいアルか、学校で渡すと
みんな幸せになれるからに決まってるネ」


「なるほど…それでか!


「だからも学校で渡すといいアル
情報料はチョコでヨロシ」









話を聞き終わって、新八は即座に
神楽へと首を向けた





「お前かぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「ウソは言ってないアル、現に私も
チョコもらって幸せになったネ」





もっさもっさと満足そうに
チョコ(市販品)を頬張る神楽





「それ明らかに報酬目当てでしょーがぁ!
とにかくバレる前に隠した方が…」


局長ぉぉ!じゃなかった委員長ぉぉぉ!
ここにも違反者がおります!!」





新八の懸念は、目ざとい委員の一人に
無残にも破られてしまった







ちゃんんん!なんで持ってきたの!?
まぁいい、見つけたからには回収します!!」








言って手を伸ばしてくる近藤をすり抜けると





手近にあったモップ(掃除用具)を掴んで







「スマヌが、このチョコだけは渡せぬ!」







行く手を塞ぐ風紀委員を一突きで退けて
彼女は廊下を駆け出していく







ちゃん 悪いけど、観念してもら」


「聞けぬ!」


「チョコ渡しゃ済む話だろーがっ
大人しくしろ!」


「これは兄上への大事なチョコだ
だからその申し出は聞けん!!」







チョコを奪おうと次から次に迫る
風紀委員の手を掻い潜り





は校内を縦横無尽に駆けて行く











室内から出てきたばかりの相変わらず
気だるげな銀八の目の前には





箱の中に一杯詰まったチョコレートを晒し


頬を赤らめて彼を見つめるさっちゃんがいた







先生ぇ、これ私が丹精込めて作った
特製チョコなんです さぁ召し上がれ」


「いやチョコくれるのは嬉しいんだけど
渡す場所選んでくんない?ここトイレ」


「ずぅっと出てくるの待ってたんです
食べてくれるまで に・が・さ・な・いV


「計画的犯行!?」





箱からチョコレートを一粒摘み上げて
食べさせようとするさっちゃん


それを拒否して首を振る銀八









そこへ逃げてきた
追う風紀委員達がなだれ込んでくる







「いい加減 諦めてチョコを渡しなせぃ」


「断固として断る!」





そのまま廊下での立ち回りが始まり





「オィィ、学校で暴れんなそこのバカどもー
怒られんのオレなんだからぁぁぁ!」


「ちょっと何なの…きゃっ!?





吹っ飛ばされた一人がさっちゃんとぶつかり


勢いでチョコが一粒空中へ跳ね飛ばされ







『あ』


「え…んぐっ」





それは見事な放物線を描いて、
狙い済ましたようにの口へ飛び込み


反射的に はチョコを飲み込んでしまった







途端に目を見開き、彼女は首をガクリと
下に向けて その場で立ち止まった









「…ふ、ふふふふふふふふふ」







やがて 彼女の口から漏れたのは笑い声







「あ、あの…ちゃん?」





おずおず尋ねる山崎に構わず、
徐々に上がる面の 口元を吊り上げて







「あはははははははははははははははははは
ははははははははははははははははははは
ははははははははははははははははははは
ははははははははははははははははははは
ははははははははははははは!!」








作品中、一度として出したことのないような
狂ったような哄笑を轟かせた









その様子に 周囲の生徒や風紀委員はおろか


クラスメイトの土方や沖田、さらには
担任の銀八までちょっと引いた







しかしは彼らの様子にお構いナシに





「兄上へのチョコを奪うつもりなら
やってみるがいい…!」





いつもは決して浮かべない不敵な笑みで
手にしたモップの先を風紀委員に向け





「逆に、お主らが没収したチョコを奪い
兄上への献上品にしてやんよぉ!!」








そう言い終えるより早く駆け出し、





たちまち辺りが戦場と化した







ちょっ、キャラ崩壊してんじゃねぇかぁぁ!
一体何入ってたんだあのチョコ!!」





土方がたまらずチョコの持ち主を糾弾する







さっちゃんは頬を赤らめながらも





「誰が答えるモンですか
私を責めていいのは先生だけよ!」


「エラそーなこと言ってないでさっさと答える」





ベン、と頭を叩かれ 急に笑顔になりながら
銀八先生へ熱いまなざしを向けつつ答える





ハイテンションになるハーブ(通販)です…
一粒食べてハイテンションになった先生なら
私を存分に攻めてくれると思ったんです!」


「んな怪しげな代物食わそうとすんなぁぁ!
お前らはこーいうのを取り締まれよ!!」



「それよりの暴走を止めんのが先でさぁ」







沖田の言う通り、テンション高くなりすぎて
おかしくなったの被害が拡大しつつある





転がる生徒の中に、近藤の姿も垣間見えてたりする







「ったく…しょうがねぇな、オレに任しとけ」







さっちゃんの手から残ったチョコを箱ごと奪い


いまだに笑みを称えながら見境無く
暴れるへ、銀八が近寄る







「おーいちゃん、ここにも
チョコがあるぜ 取りに来いよ」





よく通るその声に、の足が止まる







しかし 不敵な笑みは変わらず
その瞳は、本編の仕事モード並に鋭い





「先生…何か企んでいるでしょ?でしょ?」


「何言ってんだよ、先生が生徒を
騙すわけ無いだろう?」


嘘だ!大方チョコを手にした隙をつき
皆で一斉に取り押さえる魂胆に違いない!」


「ちょ、ちゃん目が怖っ!
お願いそんな目で見ないで 先生を信じて」


「…とにかくそのチョコを床に置いて
一歩下がっていただこうか」


「ハイハイ、わかった…よっ!





床へと置くフリをして、銀八は箱のチョコを
に向けてぶちまける







「ぶわっ!?」





怯んだ一瞬に 銀八は距離を詰めると
彼女へ足払いをかける







さすがにこれは一溜まりもなかったのか





まともにバランスを崩して、
後ろへとすっ転び―







後頭部を強く打ち付けて 気絶した







一丁あがり、じゃ後は風紀委員の仕事って
ことでよろしくなー」













が目を覚ますと、そこは保健室だった







タイミングよくドアを開けて銀八が現れる





「よー目ぇ覚ましたか


「あ、先生…私は何を…それより私のチョコは?」


「んー、あぁアレな お前が気絶した後
風紀委員が持ってっちまったぞ」


「そんな…兄上に捧げる本命チョコが…」







ガックリと項垂れるへ、銀八は
口元に怪しげな笑みを浮かべて





「なぁ、条件付きで先生が
お前のチョコ取り返してやろうか?」



「…条件にもよる」


「なーに 簡単なことだ、耳かせ」







素直に耳を傾けたに 銀八は
口を近づけ、コショコショと何かをささやく







な?簡単だろ?」









腕を組み しばらく何か考え込んでいたが





「少し辛いが……背に腹は変えられん
その条件、飲んだ





やがて何かを決断したらしく、
彼の提案に乗った







「おーし交渉成立な」









…そして 彼女は無事に没収された
兄へのチョコを取り戻し







「いやー、やっぱ一仕事終えた後の
チョコは格別だねぇ」


「今月は散財が高くついたな…」





銀八にファミレスのチョコレートパフェを
三杯ほどおごる事になったのだった








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:拍手ネタと退助様のバレンタインネタに
触発され、やっちゃいました悪夢再び


新八:悪夢とか言うなァァ!


神楽:そうよ、私はからせしめたチョコ
食えてめがっさ幸せだったアル


狐狗狸:騙したの間違いでしょーに;


土方:てーか拍手でも思ったが、異常に
熱入りすぎだ近藤さん


沖田:お妙さんからチョコもらえないから
嫉妬してるだけでさぁ


近藤:だから言わないでぇぇぇぇぇっ!!


銀八:つーかオレが主体でいーじゃん、何で
アイツらとか冒頭にいんの?


さっちゃん:あぁ…私のチョコが…
ヒドイじゃない、もっと踏んでください!


狐狗狸:君ごと踏まれてどーするの!?




ギャグ100%でキャラ壊れスイマセンした


そして退助様のキャラが短編とかちょっと
出演するかもなので宜しくです(コラ謝)


様 読んでいただきありがとうございました!