家に戻ると 何やら大きなダンボールがあった





「兄上、中身は一体?」


ああこれ?なんか知らない宛名なのよねぇ
時々ガタガタ音がするから怖くて開けてないわ」







私が仕事に出た時には無かった…





とすると、兄上がお戻りになられて受け取り
そのまま半日くらい放置されていたことになる







「…この大きさ、尋常ではない」





何が入っているのかとダンボールに手をかけて


その手を、兄上が取り首を横に振る





ダメだよ 開けたら返品できなくなるから
悪質な詐欺だったら取り返しつかなくなるよ?」


「…分かり申した」





ゆっくりと手を退け しばらくは
少し離れた位置でそのダンボールを見やっていた







…確かに 時折ガタガタと中から音がする







兄上はああ言っていたが、気になる







しばらく悩んだが好奇心に勝てず
兄上の目を盗みダンボールの封を解いた





コラッ開けちゃダ」







言葉半ばで冷気を帯びた煙が噴出し





そして 中に詰まっていたものが眼前に現れる









「おおおおお ちちゃん」


「あ、こんにちは辰馬殿」







そこにあったのは、大量の冷凍サンマに
埋もれるようにして身体を振るわせた辰馬殿だった







「いやいやいや普通に返事しちゃダメ
それより誰ですかアナタ!?」


「アアアアッハッハ、ワシは怪しいもんじゃないき」


怪しさ満点ですから!それよりそこから
出ないと凍死しますよ!?」





正に兄上の仰る通り、


髪の毛も服も至る所に霜を張り付かせている
現状のままなら いずれ凍死するに違いない





「三途に行っても風邪を引かぬようにな」


死ぬこと前提!?それよりもまず
助ける方が先だからね!?」


「アハ…アハハ…何だか眠…く…」


「意識をしっかり持ってェェ!
ウチで死なれたら本当に迷惑だから!!」








兄上の叫びに、辰馬殿は力なく首をふらつかせていた











「家出するガキは最終的にお気にの場所で捕まる」











辰馬殿をダンボールから引きずり出し
風呂に入れたり熱い茶を飲ませたりして





どうにか凍死を免れ会話の出来る状態に戻した







「いやー死ぬかと思った アッハッハ」


「死にかけたってのによくそんな陽気に
笑えますね、そしてアナタはどこの誰ですか」


「兄上 この人は辰馬殿と言って」


 君に聞いてるんじゃないから黙ってて」


「ワシャ坂本辰馬つうての、快援隊っちゅー
デカイ会社を率いてるモンじゃ」







名前に覚えがあったのか 兄上は
得心のいった顔をされる







「ああ、アナタが快援隊の社長さんですか
お話は色々と聞いてますよ」


「ほぅ そいつは光栄じゃのう
おんしはどんな話を知ってるんじゃ?」


「まあ会社の規模やら何やらもそうだし
アナタの人柄もね…勿論悪いウワサなんかも」


「アッハッハッハ、おんしベッピンなのに
辛口じゃのぅ 嫁の貰い手に苦労するぜよ」


「スイマセン僕、です 
兄上って言ってたでしょ?」





辰馬殿は豪快に笑って受け流す







「それで辰馬殿はどうしてダンボールの中に?」





訪ねると、良くぞ聞いてくれた!と声を張り上げ





「事業が忙しいのはいいことじゃが
しばらく地球によってなくてのう…


会いたい顔があったもんで、陸奥の目ぇ盗んで
冷凍サンマに身を潜めてここに来たんじゃ」


「理論的におかしい部分があるのはさて置き

どうして送り先がウチだったんですか
てゆうか、どうやってウチの住所を…」







言われてみれば 銀時と旧知の間柄なのだし
万事屋に直接送ってもいいはずだ







「金時んトコが宛先じゃ陸奥にバレると思うての
悪いが少し調べさしてもらったき

後はまぁ道案内が必要じゃったのと―」







そこで言葉を途切ると、辰馬殿は
サングラス越しに私を見据える







ちゃんにまた会いたいと思ったんじゃ」









兄上の表情が、少し強張ったように見えた







私に会いに?ああ、なるほど







「そうか、それで三途の川で待つつもりで
凍死しかけたのだな」


「どこをどうしたらそんな結論になるの!?」


「アッハッハ、まあ生きたまま会えたから
ワシの幸運も捨てたモンじゃないぜよ!」


「辰馬さんもどれだけプラス思考なんですか!
普通は死の宣告に近いですよね!?」








ひとしきり笑ってから、辰馬殿は急に
真面目な口調でこう言う





「けど陸奥はやたら鋭い、恐らくはワシが
抜け出して地球に行ったことはお見通しじゃ」





そして立ち上がり 私の肩を叩く







「とゆうわけで早速スナックすまいると
万事屋金ちゃんへ案内頼むき、ちゃん」


「うぬ、心得た」







以前会って意気投合し そして私を
頼って来てくれた縁である


これは案内を引き受けるべきだろう







「姉ちゃんよ、と言うわけでちゃんは
一寸借りてくぜよ」


兄ですって!それにいきなりそんな事を
言われてハイそうですかと」


「これは少ないじゃろうが迷惑料じゃ
取って置いてくれぃ」







言って辰馬殿は懐から どうやって
入っていたか分からぬ量の紙幣を兄上に渡す







「…まあ仕方ないですね、にあんまり
ヘンな事させないで下さいよ?」





疑わしげに見やりつつ、兄上は手にした
金をしっかり仕舞い込んで私達を見送った













以前も案内していた時に感じたが、辰馬殿は
かなりの方向音痴だ







辰馬殿、そちらではない」


「おおそうか〜悪いのちゃん」





しかし本人は気付いていないようなので
こちらが気をつけつつ腕を引く必要がある







何しろ以前も、一度はぐれかけた事が









歩いていたはずの地面が 急激に無くなる


ガクリと落ちる感覚は、後ろへ強く
引かれた力によってそちらに引き戻される









下水道へのフタが開いていた事に気付かず
うっかり足を踏み入れていたようだ





…辰馬殿がいなければ転落していた、危ない所だ







「足元見て歩かにゃいかんぜよ」


「む、すまぬ」





礼を言い 足元へ気をつけながらも
先へと進んでゆく







思わぬ伏兵がいたとは油断がならぬ
これは益々厄介





「ああ今度は横じゃなちゃん」







声に気付き、立ち止まるとその横を
車が掠めて過ぎていった







「…度々すまぬな」











こうして色々ありつつスナックにつき、







「おっりょうちゃぁぁぁん、結婚し」


「銀河の果てに帰れモジャ星人んんん!!」





懇意にしている女性に袖にされて店を出た
辰馬殿を 今度は万事屋へと案内するが







先程の道のり同様、私は





窮地を助けてもらっている形で進んでいた









…何故だ、何故こうも危険な目に遭う





私だけの時なら兎も角 何も辰馬殿を
案内しているこの状況で危機に遭わずとも







「何か危なっかしいのぉちゃんは」


「…すまぬ辰馬殿、迷惑をかける」


「その辺はお互い様じゃがこれじゃ埒が明かん
どれ、ワシがエスコートしちゃるき







横に近寄った辰馬殿が私の腕を取ろうとし





反射的にその腕を外すようにしてすり抜けた







「おわぁぁっ!?」





辰馬殿がもんどりを打ってうつ伏せにコケる







少し痛そうだったので、手を取って
立ち上がる手助けをする







「…すまぬ辰馬殿 ついクセで」


「アッハッハ、ビックリしたの〜」





と笑いながら いつの間にか辰馬殿は
再び私の腕を取り、自らの腕に絡めていた







「あの、これは何だろうか?」


「なぁに気にするな こうすればちゃんは
安全に案内できるじゃろう」







ふむ…それは一理あるかもしれぬ


こうしてしっかり腕を引かれていれば
逸れることも無く 危機に陥った時も対処が取れる







「なるほど…しかし、歩きにくくはないだろうか?」


そうか?ならこうすりゃ問題ないぜよ」







明るく笑い、辰馬殿は絡んだ腕を少し緩め
その手を私の手に繋ぎ直す







おお本当だ 辰馬殿は見かけによらず頭が良いな」


「アッハッハ〜本気で泣いていい?」













辰馬殿の妙案のお陰か、私達は逸れず


危機にも対処を落ち着いて取りながら万事屋へついた









「アッハッハ よー金時ぃ







笑いながら戸を開けたところで、辰馬殿は
真正面から正拳突きを食らって倒れた


勢いで繋いでいた手も離れる







殴ったのは、三度笠を被った凛々しい女人だった





「ここにおれば いずれ来るとおもっちょったわ」


「おーい、ウチはホイホイじゃねぇぞぉぉ!」





女の人の背後で銀時がげんなりとした顔をして叫ぶ







辰馬殿は鼻血を垂らして尚、笑いながら立ち上がる







陸奥は手が早いの〜そんなじゃじゃ馬じゃ
本気で行かず後家にな」





金的を蹴られ それ以上言う事無く辰馬殿は
その場に転がり悶える







「お主が件の陸奥殿か…私の名は」


「よい、この阿呆から聞いちょる
迷惑かけたき 連れてきてくれて礼を言う」







頭を下げつつ淡々と用件を告げ
邪魔したな、と銀時に言ってから





陸奥殿は辰馬殿の後ろ襟を引っ張って
強制的にそこから引きずっていった







「痛たたた、もう少し優しく出来んのか」


黙らんかぃ穀潰しが ワシらの頭が
度々仕事ほっぽってどうする」


「それじゃ金時ぃちゃん
また来るからの〜!」






笑いながらこちらに呼びかける辰馬殿に







「うぬ、今度は陸奥殿に怒られぬようにな」


「もうお前その頭焦がして死ねェェ!!」







私と銀時は同時に答えたのだった








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:色々あって微妙に間に合わなかった
坂本夢再びっす いやー相変わらずヒドイ出来


坂本:アッハッハ、ワシの誕生日祝い
小説だよねこれ?


陸奥:全く 性懲りも無く船抜け出して地球に
遊びに行くとは、一辺骨になれこんモジャが


狐狗狸:陸奥さんアンタも表情変えずに淡々と
怖いこというなぁ(汗)


坂本:同じ無表情でもちゃんとは
エラい違いじゃのう〜アッハッ


陸奥:本当にうざい(回し蹴り)


狐狗狸:強っ!てゆうか陸奥さんそれ
的確にみぞおち狙ってますよねぇ…


陸奥:当たり前じゃ、勝手をするコイツが
ワシより出番が多いのが納得いかん(更に股間蹴り)


狐狗狸:陸奥さぁぁぁん!やめたげて!
そこを重点的に狙うのはやめたげて!!


坂本:アッハッハ 本当に可愛くない女じゃ(青)




もしまた坂本夢を書く機会があれば、今度は
陸奥さんの出番を増やそうと思いました(笑)


様 読んでいただきありがとうございました!