「頼む、付き合ってほしい」
「はぃぃ?」
銀時が面食らったのも無理は無い
厠から出てきた瞬間、一歩外にがいて
いきなりこう言ったのだ
「イキナリ何!?つーかテメェ
いつの間に上がりこんでんだコラ!」
「あ、すまぬ カギが開いていたので
あがらせていただいた…お邪魔します」
「遅ぇよ挨拶が!」
ベシっと小気味よい音を立てて
の頭にチョップが炸裂する
「てゆうか付き合えって何?
お前 兄ちゃん一筋じゃなかったっけ?」
「むろん兄上一筋だ、付き合って欲しいのは
私の仕事の件で」
「わかるように説明しろや」
チョップ二回目にも関わらず、
表情を全く変えぬまま
頭をさすりながらは語り始めた
「兄上の口添えにより 短い期間で「妖怪喫茶」
という店で働くことになってな」
聞きなれない単語に 銀時は眉をしかめる
「妖怪喫茶ぁ?お前何の妖怪やんだよ
トイレの花子さんか?それとも雪女とか?」
「いや テケテケだ」
「テケテケって、仮にも夢小説のヒロインが
そんな端役ポジでいいのかぁぁ!?」
「どんな役であれ仕事は仕事だ」
キッパリ言い切るに、諦めたように
ため息つきつつ銀時は先を促す
「ああそう でもどーやって仕事すんだ」
「それは無論こうやって」
言うなりは床に手を着き、足の部分を
背中にピッタリとくっつけ
手だけでベタベタベタと廊下を行き来する
「やらんでいいわあぁ!つか怖ぇよ!!」
普段通りの姿にも関わらず、ハマり過ぎな
その動きに 銀時は思わず厠の扉に張り付く
彼女は 姿勢を元に戻し
「それで役に成りきるあまり、明日も出るはずの
ヌメヌメ坊殿をうっかり倒してしまった」
「ヌメヌメ棒って、何そのヒワイな名前の妖怪!?」
「ゆえに責任を持って代役を探すことになった
だから、明日付き合ってくれ」
ツッコミ無視で淡々とそう言われ、銀時は
沈痛な面持ちで頭を抑える
「どうした銀時、頭が痛いのか?」
「誰のせいだと思ってんだコラァ!
…で、お前は真っ直ぐオレんトコ来たと」
「いや、消去法だ」
「はぁ!?」
「トイレの長居はオッサンの常習」
が探すよう言われた代役は
最低二十代後半の渋い(?)男 出来れば
哀愁漂う派、扮装妖怪はヌメヌメ坊でなくても可
まあ とどのつまり平たく言えば
"物悲しいオッサン"だった
どういう基準と経緯が彼女にあったかは不明だが
知ってる顔を探すうちに銀時に行き着いたらしい
「何だよそれ、ヅラにでも頼みに行けよ」
「桂殿は雰囲気にそぐわぬしまだ会ってない」
「それ遠まわしにオレが
物悲しいオッサンだっつってんだろ」
「屁怒絽殿にも頼んではみたのだが、
仕事があるとやんわり断られてな」
「かけたのかよ、かけれたのかよ声!
オメェ逆にスゲェよ!!」
その時の二人の会話を想像するだけで
銀時の背筋は薄ら寒くなる
「そういうわけだ…頼めぬだろうか 銀時」
結論から言えば、銀時はヒマを持て余していた
新八も神楽も出かけていて 特に仕事も
何も無い状態だった
…が、そのまま素直に引き受けるのも
それはそれでなんか腹立たしいと思ったらしく
「あーオレ仕事入ってっから無理かも
でも、どーしてもってお前が言うなら」
ワザと焦らすようにそう言う言い方をした
…しかし どーしても、の辺りで
「そうか わざわざすまなかった」
が頭を下げ 万事屋から
出て行こうとしたので慌てて引き止める
「諦め早ぇえよ!もーちょい粘れぇぇ!!」
「いや、銀時は仕事があって忙しいのだろう
無理に頼むのはかえって迷惑だ」
「人の話は最後まで聞けやぁぁ!
てゆうか銀さんが悪かったから聞いてお願い!」
しかしそれで話を聞けば苦労などしないわけで
銀時を引き連れたまま は万事屋を
出て辺りをうろついていた
「なぁ、その仕事オレが引き受けるって」
「いやお主には他に仕事があろう」
「だぁかぁらオレの話を聞けェェ!!」
と、急に彼女はダッシュで駆けて行く
「何その急なBダッシュ!?
ちょ、!待てェェ!!」
慌てて銀時も駆けて行くが 彼女は
すぐ近くのスーパーで足を止めていた
「局長、ペーパーはどれ買ってきます?」
「んー?まあこれでいいんじゃね?
どーせケツ拭くだけだしあんま高くてもなぁ」
そこでは 近藤(と原田)が
トイレットペーパーの吟味をしていた
「勲殿、どうしてここに?」
「おおちゃんか!いやなに、
屯所のトイレットペーパーが切れたから
こうして買出しにだな」
「やぁちゃん こんにちは」
挨拶をする原田に、こんにちはと返し
早速用件を切り出す
「唐突だが勲殿、バイトの代役を頼めぬだろうか」
「いやー聞いてやりたいのは山々なんだが
生憎オレも仕事があってな」
「いっちょ前にエラそうなんだよこの
ストーカーゴリラァァァ!!」
銀時の飛び蹴りが炸裂し、近藤は
トイレットペーパーの山に頭から突っ込む
「局長ぉぉぉぉ!!」
「ぶっ…テメ万事屋!何しやがる!!」
そのまま店先で言い合いが始ま…りかけ
「おいテメェら」
低くドスの利いただみ声と共に
近藤と銀時の顔面スレスレを縫って
一発の弾丸が飛んできた
ギギィっと二人がそちらを向くと
銃を構えた松平が不機嫌そうに佇んでいた
「おじさんはよぉ、愛するカァちゃんと娘の為に
トイレの洗剤買いに来てんだよ そこどけや」
「いやオレらの命取りに来てるようにしか見えないし」
「てゆうか街中で発砲はマズイよとっつぁん!!」
近藤の言う通りである、おかげで店員や
スーパーの前を歩く者達なども引いている
が、だけは動じずに口を開く
「勲殿の知り合いの方だろうか?
よければ私の頼みを聞いていただきたいのだが」
その言葉に、松平は目を僅かに輝かせ
「お嬢ちゃん結構可愛いじゃないの おじさん
可愛い子の味方だからね、そこの店で話聞こうか」
いつの間にかの肩を抱きながら
近くの喫茶店に入ろうとしていた
「ちょ松平さまぁぁ!それどうみても
ちゃん連れ込もうとしてる風にしか見」
言葉半ばで銃で脅され、原田さんは沈黙する
そこで近藤が 松平にしがみついた
「万事屋ぁぁぁ!オレがとっつぁんを
引き止めてる間にちゃん連れて逃げろ!!」
「言われなくてもそうするよ!!」
銀時はの手を掴むと、大急ぎで
その場から逃げ出す
「オイ待てテメェらァァァ!!」
松平のだみ声と銃声、そして近藤と
原田の悲鳴が 町中をしばし騒がせた
少し遠くの公園まで駆けた所で、
ようやく銀時は一息つき の手を離す
「せっかくよい代役が見つかったと思ったのに」
「いや、あのオッサンは止めとこうね
見た目通りの危険人物だから オレにしとけ」
「人は見た目で判断するなと兄上から…あ」
声を上げたに釣られ、銀時も
視線をそちらへ向けてみると
ボロボロのダンボールを腰に下げ
これまたボロボロに擦り切れた新聞紙を
じっと見つめるグラサンのオヤジが一人
「…同じ紙だからいける…いや!道に落ちてた
新聞でなんて……でも、大きさ的によさげだし」
「何をしているのだマダオ殿」
呼ばれて、マダオこと長谷川は
あからさまに狼狽した
「い、いやちゃん これはその…
新しいビジネスを考えた行動で」
「嘘つけ万年無職、どーせケツ拭くのに
新聞紙が使えっか考えてただけだろが」
「言うなよ銀さんんん!つーか何でアンタと
ちゃんがこんなとこにいんのぉ!?」
「うるせーよ関係ねーだろこのマダオ!!」
長谷川の姿で、現在の状況を何となく
察したのか察してないのかわからないが
とにかくは先程同様頼み込んだ
「マダオ殿、実はバイトの代役を探している
引き受けてもらえぬだろうか」
「え、マジで!?やるやる!!」
渡りに船と思ったのか、長谷川は
二つ返事で引き受ける
「そうと決まれば話は早い、喫茶へ案内し」
さっそく職場へ案内しようとしたへ
ラリアットかけつつ
「この募集は終了しましたぁー、ってことで
ジャマしたな長谷川さん じゃオレ達これで」
銀時は公園からすぐさま移動していく
「ちょ銀さん!なんでちゃん連れてくの!?
オレの仕事を返せェェェェ!!」
長谷川の悲痛な叫びが 公園に空しく響いた
ずるずると少し先のコンビニまで引きずられ
やっとラリアットから開放されると
は銀時を少し睨んだ
「銀時 なぜ先程から邪魔をする」
「るせーよこっちにも事情があんの」
「そうか、どのような事情だ?」
「イチゴ牛乳とジャンプ買ったら説明すっから
ちょっと待ってなさい」
言いながら、まず真っ先に雑誌コーナーへ
進んで 平積みになったジャンプに手を伸ばし
「「あ」」
同じようにジャンプに手を伸ばしていた
全蔵とかち合った
「何でここにいんだよジャンプ侍!」
「それこっちのセリフ!てか何このサイト
最近原作にでねーからってコイツ出すぎだろ」
全蔵は座薬を入れる為に近くのコンビニに
駆け込んだだけなので、単なる偶然なのであった
「サクッとバラすなァァ!!」
あ、スンマッセーン
とか言ってる間に ちゃんが
目ざとく彼の姿を見つけたようだ
「おお ちょうどよかった
実は全蔵殿に折り入って頼みたいことが」
「も一緒か?つーか何だよ頼みって」
「よせよせ、こいつの頼みってのは
よーするにバイトの代役だからよぉ」
冷やかすように口を挟む銀時だが
全蔵はアゴに手を当て、少し考え込む
「…ふぅん、ちなみにそのバイトするとこって
ウォシュレットあんのか?」
「最近出来たばかりだからあったと思う」
「なるほどな、それなら引き受けようかな
オレ 今んトコ仕事ねーから」
まんざらでもなさそうな全蔵の様子に
銀時は慌てて割って入る
「それならオレもさっき仕事無くなったから
代役引き受けられるぜ!」
「おお、そうなのか?」
「いや騙されるなよ!
今の明らか後付けくせぇ嘘だろーが!!」
「うるっせーよ 黙ってろ痔忍者ぁぁ!!」
は少し疲れたようにため息をつく
「私は代役が一人見つかればそれでいいのだが」
が、二人にギッと鋭い視線を向けられ
無表情のまま少したじろぐ
「よくねぇって、いいか 妖怪喫茶で
働くんなら妖怪の事を知ってなきゃダメだろ」
「ならオレの方が適任だって!
「ぬら○ひょんの孫」とか「地獄先生○ーべー」とか
ジャンプで愛読してるしな!」
「んなのオレだって読んでますぅー!
てゆうか生き様的にぬら○ひょん行けるしぃ?」
「そんならオレの方だって目ぇ隠してっから
鬼○郎になれんぞぉぉ!」
「んなオッサンくせぇ鬼○郎がいるかぁぁ!
オレなら吸血鬼で十分通るぜ!!」
「モジャモジャの吸血鬼もいねぇだろがぁぁ!」
コンビニ内で客の迷惑顧みずに白熱する
二人の頭を、何かが直撃した
「「あだだだだだだぁぁぁ!!」」
頭を抑えて転げ周り 二人は自分の頭を
叩いたらしき人物…
いや、エリザベスを睨みつける
エリザベスはヌボーっと立ち尽くし
"ジャマだからどけ"と看板を掲げている
「確かお前 桂のペットの…!?」
「何でテメェがここにいやがんだ!」
『プライベートだ』
「プライベートって何だよプライベートって!」
更に追求する銀時だが、エリザベスは
その看板しか掲げてこない
「どのような用なのだ?」
見かねたが尋ねると、エリザベスは即座に
新しい看板を掲げる
『桂さんに頼まれて 厠の消臭剤を買いに来た』
「そうか、消臭剤の買い出しか
エリザベスもご苦労なことだな」
「ちょ!何でには教えてんだァァ!!」
「オレらとの扱いに差ァありすぎじゃね!?」
男達の抗議など、エリザベスにはどこ吹く風だ
緑色の目でじっとエリザベスを見つめ
ややあって、がこう言った
「出会ったばかりでぶしつけなのだが
バイトの代役を探している、頼めぬか?」
しばし、周囲の空気が固まり
「いやいやいや、そりゃねぇだろ」
「そうそう そいつが引き受けることは
ねぇって、諦めろ」
ものっそい勢いで二人が手を振りながら
否定するのだが
エリザベスが新たに出したボードの文字は―
『引き受けた』
「「えええええええええ!?」」
まさかの二つ返事OKに両者とも
某アニメ並の作画崩壊顔になる
だが そんな事など微塵も構わず
「エリザベスが引き受けてくれるそうだ
二人とも、つき合わせてすまなかったな」
ペコリ、とその場に頭を下げてから
「さあ行くぞエリザベス」
と言ってコンビニの出入り口まで移動する
あくまでマイペースな
コクリと首(?)を振り エリザベスも
そちらに向かって歩みを―
「いやいやいやケンカしてたオレ達の立場は!?」
「てゆうか探してたのってオッサンだろ!?
ちょっ…待てっつの!!」
納得いかずに問いただそうとする二人だが
ズイっと二人に寄ったエリザベスのクチバシが
最大限にまで開き
そこから、世にも恐ろしい眼光が覗いて
「文句アンのかコラァ…!?」
「「……す、スイマセンでした」」
ドスの効きまくった低い小声に、銀時と全蔵は
青くなって震えることしか出来ず
「何をしているのだエリザベス、行くぞ」
クチバシを瞬時に閉じて振り返り、
こくりと首を縦に振って エリザベスは
へとついていった
「何アレ…つか何で止めねぇんだよ」
「無理だろ、お前アレを相手に出来んのか?」
「悪ぃ オレも無理」
オッサン二人はポツンとコンビニに
取り残されていたのだった…
後日、代役のエリザベスは人気となり
余りの人気の高さに本来のバイトを
クビにしてまで正式に雇われ
「え、エリザベス!?この所 無断外出が
多いと思ったら 何故と二人で働いている!
しかもナンバーワンだとぉぉ!!?」
こっそり後をつけた桂は どうしようもなく
ショックを受けたのだそうな
――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)
狐狗狸:サブタイは主に関わってる人達が
便所の長そうなオッサン繋が
銀時:最低な理由だなオィィ!!
てゆうかオレがオッサン!?ふざけんなぁぁ!!
狐狗狸:いや、行動とかオッサンじゃないすか
銀時:それいうならコイツなんかモロに
オッサン丸出しだろーが!!
近藤:何おう!?オレは枕のニオイから
オッサン臭がするだけでまだ若いんだぞ!!
原田:局長ぉぉ!それ既にオッサンですから!!
松平:テメェらはどーでもいいんだよぉ
オレはオッサンの中でもダンディーな
渋いオッサンだろが?なぁ?
狐狗狸:いや、人さらいの危ねーオッサンに
しか見えないと思います どう見ても
長谷川:てゆうかオレとちゃんの絡みって
ロクなのねーじゃねぇかぁぁ!
狐狗狸:あったらそれはそれで問題だよ!
全蔵:オレの扱い 本気でヒデェな!
狐狗狸:だってそーいうキャラだから(キパ)
桂:オレの出番はあれだけか?
狐狗狸:そうです
まさかのオッサン逆ハー…にすらなってない
グダグダ話で失礼しました!
様 読んでいただきありがとうございました!