ある昼下がりの日、かぶき町で







「アッハッハッハ 困ったのー
迷子になってしまったようじゃ」





やたらと能天気な笑い声が道端に響く





長身でひたすら朗らかに笑う男の姿を
道行く人々は 不審者を見る目で見てたりする









むろん、仕事帰りのも例外ではない









「お主 この辺では見かけぬ顔だな」


「おおっ、ちょうどいい所に声をかけてくれた
おんし 万事屋金ちゃんという所は知らんがか?」


「万事屋なら知ってるが…銀ちゃんでは?」


金ちゃんじゃと言うとるき、おっちょこちょいじゃの
アイツとは昔からの盟友でのぉ〜」







は一瞬 眉根にシワを寄せたが







「…とにかく案内しよう」





あまり深く考えず、男を案内し始めた











道を歩きがてら 男が嬉しそうに話しかける







「案内してくれるとは おんしはいい女子じゃな〜
じゃが笑えばもっと可愛いのにのぅ」


「すまぬが私は感情を表に出すのが不得手でな
…お主はよく笑うのだな」


「これはワシのクセみたいなもんじゃ
そういえば、おんしの名前を聞いちょらんかったの」


「人に名を尋ねる時は 自分から名乗るのが礼儀だ」


「そうかそうか〜アッハッハ、中々胆の据わった
女子じゃな ワシは坂本辰馬じゃ」


「ご丁寧な挨拶いたみいる 私は
と申す」







坂本のウザいペースにこれまたマイペースな








この二人の繰り広げた会話は傍から聞いても
ツッコミ入れたくなるほど色んなものがズレていた











「困った時の友達ん家泊まり」











「ついたぞ辰馬殿、ここが万事屋だ」


「おおっすまんの〜ちゃん
久々じゃな金時ぃ〜!







万事屋の玄関先にて、明るく坂本が挨拶した瞬間





「銀時っつってんだろバカヤロぉぉぉ!!」


「ふぐおぉっ!?」





出迎えた銀時のアッパーが炸裂した







「…昔の盟友に対してずいぶん手荒な歓迎だな
今はああいうのが流行なのか?」


「無いですからそんな乱暴な流行は」







見当はずれなのコメントを
手を振りつつ冷静に否定する新八







「てゆうか なんでこんなウザイやつ
連れてきたアルか?」









神楽が本人を前に堂々と指差して訪ねる







無表情のまま さらりと答えが返ってきた







「困った人を助けるのも仕事かと思って」


「確かに困った人ですけど 意味が違いませんか?」


「なんであれ困った人に違いないなら
差別はよくないと思うが」


「こいつの場合こっちが困った人になるの逆に!
あーもう面倒くせぇから元の場所に返して来い!!」










まるで捨て犬か捨て猫を拾ってきた子供
叱る母親のような物言いである









そげんつれんこと言うな金時〜
 困ってるんじゃ助けてほしいんじゃ〜」


銀時だっつーの!引っ付くな気色悪ぃ!」







銀時は抱きついてくる坂本を両手で
嫌そうに押して離す













なんだかんだ言いつつも玄関から上がりこんだ二人に
新八はお茶を置きながらたずねる







「そもそも坂本さんは何しにここに来たんです?」


「挨拶なら土産のひとつも持ってくるのが常識だろが
酢昆布一年分とかよー」


「それ オメー限定だろが」





神楽の頭に銀時のチョップが入る







「実は昨日陸奥とケンカして 船を飛び出して
きたんじゃがうっかり財布忘れてな」


どこぞの若奥様ですかアンタは」







…アハアハと笑う坂本の背後に


目線を入れた某お魚くわえた野良猫追っかける夫人
が浮かぶのはさて置いて 話は続く







「一日目はポッケにあった金でなんとか
なったんじゃが今は無一文になってしまってな」


「とある女性に会いにキャバクラによって
朝まで飲んで使い切ったらしい」


「そうそう、おりょうちゃんにまたプロポーズ
断られてしもうてのー」


「いい加減諦めろヨ そのうち店の
ブラックリストにのるアルよ」







心折れそうな神楽の一言に、しかし坂本は
全くといっていいほど動じず会話を展開する





ある意味アイアンハート







「それで、しかたなしに泊まる場所探しを
しとったんじゃ」





「だったら別んとこ行けよ ウチはオメーを
泊めれる余裕なんてねーの」









冷たくあしらう銀時に 坂本はすがりつく







「つれんこと言うな、わしら友達じゃろ金時ぃ〜


「寂しがりやかテメッ離れろウゼェェェ!!」







わき腹に見事なリバーブローを入れられ
流石に床に転がって苦しむ坂本











床に転がる大の大人転がした張本人
表情一つ変えず見比べ が口を開いた









「ここに来るまでの間 困っていたと辰馬殿は
言っていたのだ…何とかならぬだろうか?」


「知るかよ つーか何でお前ら初対面なのに
仲良くなってんの?」


「何故か話が妙にあってな」


「そうじゃき〜ここに来るまでの間
ちゃんとワシは話がかなり弾んでの〜







痛みから早々に復活したらしく、立ち上がり
サムズアップして坂本は言う







天然でバカ同士通じ合うものがあったアルか」


「君がそういうこと言う?」





辛辣な神楽の台詞に冷静にツッコむ新八





「…昔の友人が困ってるのに泊めぬとは
少し度量が狭いのではないか?」


友達なら名前を間違えねぇぇぇよ!
そう言うならなぁ、お前が泊めろっつーの!」







向けられた緑色の視線に 銀時がヤケ気味に叫ぶ









は考えるように腕を組んで呟く







「ふむ…言われてみれば それも道理だ」







そして 表情を変えぬまま坂本の方を向いて言った









「辰馬殿、よければウチに泊まらぬか?
兄上にも事情を話して頼んでみるゆえ」





『え、えええええマジでえぇぇぇぇぇ!!?』







全員が その発言にかなり度肝を抜かれた







「ちょっ 銀さんが泊めろなんて言うからですよ!?


オレのせい!?いやだって普通は泊めるなんて
思わないっしょ 初対面だし兄貴いんだし!!」


「甘いアル銀ちゃん!
に常識は通じないネ!!」








早速 発言の発端となった銀時は二人に責められる







「おお…会ったばかりなのに、なんと
心の広い女子じゃあ〜!」






感極まったように坂本が声を上げて





ちゃーん 結婚してくれー!!」







そのまま勢いで ガバッとに抱きついた









「辰馬殿 すまぬが私は兄上と」







台詞の途中で銀時が、坂本をから引き剥がし







「お前 おりょうちゃん一筋だろうがぁぁ!」


「ドサクサにまぎれて
なにやってんですかアンタぁぁ!」



「変態アル、今すぐ宇宙船帰るヨロシ!」







流れに任せて 銀時・新八・神楽の
三人は坂本にストンピングの嵐をお見舞いした









前言撤回ぃぃぃ!ん家泊めるぐれぇなら
万事屋泊めてた方がマシだ!!」


「いや、一度言ったことに責任を持つのは
人として当然のことだ!」



何その無駄な責任感!てゆうかもう少し
常識とか考えてくださいさん!!」


そうアル!こんなウザイやつ泊めても
百害あって一理ナシね!!」









必死で説得をする三人に対し
頑として主張を譲らぬ









「何と言われようと 意気投合した辰馬殿を
見捨てるわけにはいかん!」


「初対面なのに信用しすぎだろ!
一体どんな会話交わしたらそんななるんだぁぁ!!」



オイコルァ坂本!テメーのせいで…って
何やってんだアイツ」











四人の争いをよそに坂本はというと
いつの間にか携帯で誰かと通話していた







「…わかったき、今から戻る」







通話を終え、電話を切った彼は
ようやくみんなの視線に気づく









「ん?みんな どうしたんじゃ?」


「いや、坂本さんこそ…誰と電話してたんですか」


「女とっつったらフクロにすんぞテメー」







返ってきた答えは、若干怒りに満ちた空気を
呆れに変えるモノだった







「ああ、陸奥としゃべっとった」


『は?』


「いや ちゃんとおんしらが
ワシをめぐって言い争っておるからのぉ」









ニコリ、と微笑み の側まで歩み寄ると
頭をポンポンと撫でながら坂本は言った









ちゃんに迷惑はかけられんきに
ワシはこのまま帰って謝ってくるぜよ」


「「「最初っからそうしやがれえぇぇぇ!」」」







銀時の叫びと共に、神楽と新八も加勢し
坂本にダイビングキックが炸裂する





その威力で坂本は外に吹っ飛び


ニ回転ぐらいして地面にダイブした









「おお 見事な回転着地だ、すごいぞ辰馬殿」


「そ…そうじゃろ ちょっと痛いんじゃがな」







色んな所の論点がずれたの発言
二階から見下ろしたアングル)に





これまた論点ズレまくった坂本の返答
地面に顔をめり込ませた状態で)











立ち上がって土ぼこりを払い







「それじゃーのちゃん おんしにも
近いうちまた会いに来るぜよ!」



「うぬ、気をつけてな辰馬殿」







笑って別れの言葉を交わし、坂本は去った













「「「何しに来たんだってか
もう来んなあぁぁぁ!!!」」」








ついでに三人の罵声も思いっきり背中に浴びて








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:某サイト様の絵を見て、書く気になった
坂本夢でしたが…結局こんなオチです


坂本:あっはっは、相変わらず脈絡がないのー


狐狗狸:笑いながら言う台詞じゃないっすそれ


坂本:あとワシは財布を忘れたりするほど
おっちょこちょいじゃないぜよ


狐狗狸:…いや、それは否定できないっす


坂本:あっはっは、まあそうじゃな


狐狗狸:あっさり前言撤回したよ てーか笑いすぎ


坂本:笑う角には福来るというじゃろ?
ちゃんも もっと笑わんといかんぜよ


狐狗狸:それは本編で言ってやってくださいよ
あと、陸奥さんとどんなケンカしたんです?


坂本:ああ、聞きたいか それはのぉ


陸奥:うざい(バズーカ構え)


狐狗狸:ちょっ陸奥さんバズーカは沖田の十八番




ギャグ一辺倒でスイマセンでした、でも書いてて結構
楽しかったです(ドサクサ紛れで役得だったし)


様 読んでいただきありがとうございました!