2月14日バレンタインデー
(今回は本編とは関係ない話だと思って欲しい
スペースウーマンが出てこないんで)
万事屋にやってきたの持ち込んだ代物に
三人が目を見張った
「いつも世話になってるゆえ、みなに持ってきた」
テーブルの上に並べられた 青い包装紙の小箱
言うまでも無く中身は…
「ありがとうございます チョコですよねコレ」
「流石にこれでチョコじゃねぇって事は無いよな?」
「うむ、手作りのチョコだが?」
不思議そうに答える しかし銀時と
新八は神妙そうな表情のままである
「アレ?二人とも何かテンション低いアル
いつもはチョコもらったら狂喜乱舞するはずネ」
先程から気になってたらしく、神楽がたずねた
「いや、別に嬉しくないわけじゃないんだけど」
「コイツの手作りのもんって食ったことねぇから
何が飛び出すか不安でよぉ」
「お前らレディーに対して最低アル」
辛辣な一言をお見舞いする神楽
「案ずるな 兄上の監修の下、作ったものだ」
「ほうほう、どんな感じに?」
「兄上の指示に忠実に材料を混ぜ、
兄上に手取り足取り教わりながら」
「それほぼお兄さんの手作りじゃないですか!」
「いや待て新八、これは考えようによっては
安全を保障されたようなもんだぞ」
その一言に、脳裏で姉の"造形物"が浮かび
「言われてみれば…そうですね」
メガネを指で持ち上げて、新八は頷く
「あら 皆さんおそろいで」
不意にの後ろから現れた妙に
も含めて全員がかなり驚いた
「姉上!?」
「姉御!?」
「妙殿!!」
「おまっ一体いつからいたんだよ!!」
小箱を手に つかつかと皆の側による妙
「まぁ失礼ね 声をかけても誰も出ないし
玄関が開いてたから上がらせてもらっただけよ」
「ああそう…で、その箱は何かな?」
妙は青い箱を持ち上げるとニッコリ微笑み
「今回のチョコは自信作なんですよ?
少し多めに入ってるから皆で分けてくださいね」
差し出されるチョコに四人の顔が引きつる
そこで天井の板が一枚外れ、唐突に
さっちゃんが上半身を現した
「銀さん 私のチョコを受け取って
そして思い切り罵って、蔑んでぇぇ!」
叫びと同時にチョコが投げられ
「うわ危なっ」
「きゃっ何するんですか!」
よけた拍子に妙とぶつかりチョコ二つが宙に舞う
「あっ姉上!?」
「姉御 落ち着くアル!!」
そのまま流れで銀時を殴りだした妙を止めるべく
神楽と新八も向かうが弾き飛ばされる
弾かれた新八にぶつかり、の懐からも
箱が一つ宙に舞った
「あっ、兄上への本命チョコがっ…!」
宙を舞う青い箱を追って、が手を伸ばし―
盛大にテーブルにつまづいてひっくり返した
「チョコに変なもの混ぜるのはやめよう」
「おいぃ!チョコが全部混ざっちまったぞ!!」
「猿飛さん あなたがチョコを投げるから
こんな騒ぎが起こったんですよ?」
「あら、お妙さんが暴れたからでなくて?」
「二人とも ケンカしてる場合じゃないですよ!」
「あわわわわ、兄上へのチョコがっ
チョコがあぁぁっ」
「落ち着くアル!
まず頭の出血を抑える方が先ネ」
まるで蜂の巣をつついたような騒ぎである
「わかった!とりあえずお前等のチョコは
冷蔵庫に保存しておくから!!」
「だから三人とも一旦帰ってください ね?」
この場を治めるために発した銀時と新八の説得に
騒ぎはなんとか収まった
「そうですか、じゃあ帰りますね?
…食わずに捨てたら分かってんだろうな?」
後半のセリフに凄みを持たせ、妙は
万事屋を出て行った
「じゃあ私も仕事だから…また夜にね、銀さん」
さっちゃんもいそいそと屋根裏から立ち去る
しかし、はその場を去ろうとしない
「兄上への本命チョコはあれ一つきりだ
あれが無ければ帰れぬ…」
珍しく戸惑いの表情を浮かべる
「わかった お前の気持ちはよーくわかった」
銀時は深々と頷くと
「だからオレ達がお前のチョコを見つけといて
やるから 後で来い」
の襟首を引っつかんで 玄関から
半ば強引に放り出した
「銀さん 玄関のカギ閉めなくていいんですか?」
「あん?どうせあのブラコンが来んだろ
それに今やるべき事はカギを閉めることじゃねぇ」
「そうアル、一刻も早く危険なチョコを
排除する方が先ね」
こうして 望まぬロシアンルーレットチョコが
始まったのだった
「よりによって みんな同じ包装紙ですね
しかも大きさも大体一緒だし」
箱を左右に手にとって、比べながら新八は言う
「ったくどうせなら目印でもつけとけよ」
銀時も適当な一つを手に取り そして戻す
中々開く決断がつかめぬ中
神楽が、一つの箱の匂いをかいで
思わず鼻をつまんだ
「銀ちゃん コレ臭いアル、腐ってるね」
銀時はその箱をつかみ、匂いをかぐと
箱ごと定春に投げつけた
「よーし、食え 定春」
「って定春に食わせるんかぃ!!」
新八のツッコミもむなしく、定春は
箱ごとチョコをひとのみした
「定春に変なもの食べさせないで欲しいアル!」
「大丈夫だって もともと変なんだから」
「そういう問題か!?てゆうか確か
犬にチョコは害だって聞いて」
新八の言葉は そこで遮られた
暴れだした定春の攻撃をもろにくらい
天井へと突き刺さって
「新八ぃぃぃぃ!」
「定春が発情期になったアル!いつもより
デカくね?さっきのチョコのせいネ!!」
「どんなチョコだよ!てか女の子が
そんなとこ指差しちゃいけません!!」
…とにかく、二人は暴れる定春を
何とかして落ち着かせたのだった
「何とか落ち着いたアル よかった」
「よかねーよ、これ修理が必要だよ
また火の車だよ万事屋」
あちこちボロボロの室内を見て
ため息をつく銀時
ついでて助け出された新八は
全く気にかけていない二人であった
「もう定春に食わせるテはおシャカか…」
「当たり前アルこの外道!
定春を犠牲にするなんてヒドイね!!」
「って お前何すでにもうチョコ開けてんのおぉ!?」
いつの間にか神楽は箱を二つ開け、
その内の三日月型のチョコを食べていた
「ちっ、バレちゃしょうがないアル
でもこのチョコは渡さないネ!!」
「お前だけに食わせるか オレにも寄越せ!」
二人で星型のチョコを取り合い、辛くも
銀時はチョコにありつけたのだった
「銀ちゃん 大人気ないアル」
「うるせーオレだっていい思いさせやがれ
コンチクショーが!」
神楽と銀時は美味しくチョコをいただいた
どうやら、この二つは兄監修のチョコだったようだ
「残るは三つか…やべぇな どれがお妙のチョコだ?」
「ウダウダ言ってても開けなきゃ
はじまんねぇだろーが」
「だああぁぁからお前は勝手にチョコを
開けるなって…」
神楽と銀時の動きが 止まった
開けられた箱の中から出てきた、それに
目が離せないでいる
包装紙に包まれた箱から出てきたのは…
チョコではなかった
ヘドロで出来た泥団子…
いやそう形容するのも生ぬるいほどの
おぞましい物体
最早地球上には存在しない物質
禍々しいオーラさえ放つそれに、銀時と
神楽はただただ恐れおののいた
「かっ神楽ちゃーん、これ お前が先食えよ?」
「いやアルまだ死にたくないネ」
「オレだって死にたくねーよ!
そんな明らかに有害そうな物体で!!」
「そうだ!これ新八用にとっとくアル!!」
そう言って、神楽がそれを
出来るだけ自分から遠ざけた瞬間
「ふざけんなあぁぁぁお前が食ええぇぇ!!」
最後の力を振り絞り 起き上がった新八が、
チョコと言うのもはばかられるその物体を
神楽の顔面に思い切り叩きつける
「ふぐあぁぁあぁぁげふぐぅぅぅ」
暴れる神楽の拳で 新八は再び倒れ伏す
そして、神楽もまた 妙の作った
物体の毒性に耐え切れず昏倒した
銀時は 目の前の一部始終に何も言葉が…
「げ、神楽も倒れたよ…まぁずぅいよぉ〜
この残った二つのどっちかオレが開けるのか!?」
いや、ありました 言葉
二つの青い箱を前にして
銀時は 汗をダラダラと流していた
頼みの人身御供は、もういない
「…そうだよ 両方開けちまえば
どっちかスグ分かるじゃねぇか〜」
我ながら名案、と言いながら
両方の箱を引き寄せるが
「銀時ー」
玄関の方での声がして、銀時は
びくりと身を強張らせた
「っ…ま、待て あとちょっとで
終わるから それまでとにかく待てっ!」
「うぬ わかった」
が待っている以上、両方開けている
時間は―ない
「くっそう なんでオレがこんな目に…
神様、オレにうまいチョコを!」
こんな時にだけ神頼みしながら
銀時は 意を決して片方の箱に手をかけた
青い包装紙が剥がされ、箱の中のチョコが
姿を現す一瞬 息を飲む
中にあったチョコレートは―
花の形をした 匂いも見た目も
普通の手作りチョコだった
「はは…ははは なんだよ驚かせやがって!
まともなチョコレートじゃねぇか」
緊張の反動で ものすごく浮かれる銀時
「さってと、ガキども二人も再起不能だし
これはオレのモノってことで!」
今だ倒れ伏す二人と一匹を尻目に、勝利の美酒
ならぬチョコを味わおうとした所に
「もういいだろうかー」
「待たせたな カギなら開いてっから入れ入れ」
お邪魔します、と律儀な声と共に
が玄関から室内へと入ってきた
「気になってまた来たのだが…見つかっただろうか?」
「あん?お前のはこれだ 持ってけ持ってけ」
空いた手で青い箱を投げて寄越し、銀時が
右手のチョコに歯を立てる
「…新八や神楽、定春はどうしたのだ?」
「気にすんな 単に死闘が一つあっただけだ」
「そうか……あああああぁぁぁ!」
叫んだの声に驚き、かじったチョコが
途中でつかえてむせる銀時
「なっなんだよいきなりデケェ声出しやがって
銀さんちょっとビビッたじゃねぇか」
涙目になりながらも何とか言う銀時に
目を見開いたが、手にされている
チョコを指差して 呟いた
「それ…私の 本命チョコ…!!」
「……え?」
直後、銀時の視界がぐらりと揺れて
胃からこみ上げるハンパない気持ち悪さに
耐え切れずその場に突っ伏して倒れた
「銀時 どうして本命チョコが
ここにあるのだ、たばかったのか!?」
倒れた銀時にかけより、責めたてる
「いや…それよりもお前…チョコに
何混ぜたんだよ」
問いかけに、予想外の返事が返ってくる
「美味しくなるかと思って 隠し味に、
兄上が作ってた団子に混ぜてた粉を入れたのだが」
「は…団子に粉ぁ?」
「うぬ、タマネギや小麦粉やジャガイモを
練ってるものに混ぜてた」
「おまっ…それホウ酸団子じゃねぇかぁぁ…」
苦しみもがきながらのツッコミを最後に
銀時も ガクリと力尽きたのだった
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あとがき(というか楽屋裏)
狐狗狸:バレンタインネタ 銀魂なんで万事屋です
敢えて今回は本編が絡まない方向です
銀時:て、なんでん家にホウ酸あんの!?
狐狗狸:お兄さんがG対策でホウ酸団子を作ってて
ホウ酸が台所に置いたままだったんでしょう
新八:なんて適当な
神楽:定春が最初に食べたのは誰のチョコアルか?
狐狗狸:さっちゃん特製です 納豆と媚薬入りの
ダブルで危ないチョコレート
銀時:…食べなくてよかった
新八:あの後僕らどうなったんですか?
神楽:病院行きに決まってるアル アホか
このヤロ新八よぉ
新八:なんで僕にケンカ売るの!?
…関係ないけど、一応ここで補足(?)
実はは世話になった人には男女問わずに
義理チョコ渡しに行ってます(笑)
様 読んでいただきありがとうございました!