8月が過ぎても、なおしぶとい熱波の名残りと
生き残っているセミの鳴き声が響く今月に





「はーい、それではこの会場からスタートです
皆さん全制覇ガンバってくださいね〜!!


例によって例の如く


かぶき町でのイベントが始まった





今回は町内と周辺限定のスタンプラリーだが


行楽っぽさと町の名所を始めて来た者
地元民 関係なく楽しめるように

ちょっとした仕掛けを施したらしい





もちろん参加者自由で、スタンプを埋めた者に
簡単な景品が送られるようになっていて


一番早くラリー制覇したものには定番として
豪華な国外旅行を町内会議にて決定し


そこそこ目を引くモノであれば、と


気合を入れて用意にとりかかったらしいが…







「本当に五泊六日程度でいいのか?宇宙船を
もう少しグレードの高い戦艦にした方が」


いやいいから!これで十分だからぁ!!」





柳生家からのセレブなバックアップにより
若干豪華になりすぎたのは


ツテを紹介した万事屋組&お登勢も予想外で





「いいかい、絶対しくじるんじゃないよ?」


「たりめーだ あんな分不相応なシロモンが
パンピーの手に渡ったら一大事だっつの」





依頼料代わりにそれなりの品で手打ちとして


なんとしてでも先着一名を死守するべく

万事屋一同は三人仲良く
スタンプラリーへと繰り出したのだった





「まさか関わった企画でマッチポンプする
羽目になるなんて思いませんでしたよ…」


ギョーカイじゃこれぐらい日常茶飯事アル」


「いい加減なこと言わないで、これ以上
どこ敵に回す気?」


「ま、どーせ適当なミニゲームかなんかをクリアして
スタンプ埋めればいいだけの簡単な仕事だろ
サクサク終わらせてババアに焼肉奢らせよーや」


なんぞと会話を交わしながら、三人は
もらった台帳に記されている場所へと移動し





「いらっしゃぁ〜い、待ってたわよ





耳かきを用意し 満面の笑みで座敷に横たわり

スタンバっているオカマの面々
と対峙した











「近年はセミの息も夏ネタ引き伸ばしも長め」











確かに仕掛け自体は銀時の言った通りのものだが





店の名物早食い大会や、ホストの写真での神経衰弱


キャバ嬢総出によるタンバリン叩きの震源地当て
などなどの催し(有料)


かなりの難易度を誇っていた


ついでにサイフにかなりのダメージも受けた







さ、さすが姉御ネ…オカマどもと組んで
スタンプ入手への難関仕掛けてくるとは予想外アル」


「むしろスタンプ押させる気ねーだろコレ…
オレらがやらなくてもよかったんじゃね?」


「まあでもスタンプはあと一つですよ、ええと
あと埋まってないのは…"さまようムスメ"?」





新八がそう言ったのと同時に、ふらりと

首からスタンプぶら下げたが通りかかった





「アレだろ」「アレアルな」「間違いないですね」







呼び止めれば、やはり彼女はスタンプラリーの
係員として町内を徘徊していたらしい





「なんだかんだでイベント参加率高いですよね」


「花子殿に頼まれてな、してお主ら例の品は?」


「例の品って何アルか?」


「あー多分アレだろ?さっき源外のジーさんと
ポラロイドで撮った時計の文字盤っぽい背景の写


それ以上はダメです、けど確かに
"後で必要になる"って渡されてましたね」


スタンプはその品と引き換えろと言われている」


「そいつぁ話が早ぇ、じゃ受け取れ」





言って作務衣の少女へ銀時が差し出したのは、何と





ソレ "アレ勃 ちぬ"のフィルムぅぅぅ!
しかも一枚じゃないですかぁぁぁ!!」


「残りが欲しけりゃスタンプと交換「いらねぇよ!
てゆうか映画見てない人にはネタバレぇぇぇ!」






大丈夫だ!管理人も情報だけしか知らん!


「「「映画見に行けバ管理人んんん!!」」」







地の文を越えて唱和する彼らのツッコミに構わず





「無いのならやむなし、では後ほど」


とだけ言ってはあっという間に走りだす





「いやありますから!待ってってさん!


おい人の話聞けコラァァァ!てゆうかいい加減
このジャンルの空気を理解しろおぉぉぉ!!」





早々にボケを殺されながらも


必死で追いかける万事屋トリオを振り切ろうとして







角を曲がる彼女の足元へ クナイが投げつけられる





「私を差し置いて銀さんに追っかけられる
役目を奪うなんてどういうつもり!?」






屋根から先回りしたさっちゃんが、飛び降りざまに
スタンプを狙って手を伸ばした





ナイスさっちゃん!そのまま足止めしといてヨ」







二度三度と身をかわしていただが


表情を変えぬまま、ひらりと横をすり抜けて言う





「あやめ殿、ならば代わりに応対頼む」


「へ?どういうこ…わっと!





すり抜けざまに投げられたスタンプ
さっちゃんが反射的にキャッチする


と、入れ替わるようにして追いついた
万事屋トリオが歩み寄ってくる





「何で逃げてんだアイツは…まあいいや
そのスタンプこれに押してくれ、早く


「いいのかなこれ、ルール的に」





いそいそと嬉しそうな顔をしてさっちゃんは





「ええ、コレで私達は晴れて夫婦ね銀さん」


すかさずすり替えた婚姻届(夫の欄に銀時の
個人情報記入と捺印済み)
へ、これまた
すり替えた自分の印鑑を


押そうとして 見事にはっ倒され
スタンプを強奪されていた





「この期に及んで余計な手間かけさせやがって」


「…ってコレ、ボツ案のスタンプですよ?!」


「まさかここまでが姉御の策略アルか…!?」


どんなスタンプラリー!?何で囮と
ダミー駆使して逃げてんのアイツぅぅぅぅ!!」






してやられた事に頭を抱えて悔しがりながらも


まだ近くにいると当たりを付けて、三人は再び
作務衣少女の姿を探しまわる







すると、ほどなく近くの通りで





「待ちやがれゴルァァァァァァ!!」


すっかり耳に馴染んだ怒鳴り声が









駆けつけてみれば、目当ての少女は
土方を先頭とした黒い制服の人間に追われていた





止まれ槍ムスメ!逃げられると思ってんのか」


それむしろ逆効果だろがぁぁ!頼むからテメーら
一旦お引き取りしてくんない!?三百円あげるから」


「いるかぁぁぁ!こっちが欲しいのは
指名手配犯の情報だっつーの!!」








走りながらの土方の説明によれば





指名手配犯らしき人間と接触していた
という目撃情報を部下から聞いて


詳しい事情を聞くため当人を探していたのだが





見つけた瞬間、何故か物凄い勢いで逃げられたとか





「つーかテメェらは何で槍ムスメ追ってんだ」


「それもこれも銀ちゃんのロクでもないボケ
原因アル、素直にアレ渡しとけばこんな事には」


るっせーよ!とにかくとっ捕まえるのが先だ!
てわけでジャマなテメーらは退散しろ」


「ざけんなテメェらがヨソへ行け!」


「って二人とも!前見て下さい前っ!!





叫んだ新八の忠告は間に合わず







「「へぶっ!?」」


「どわぁっ!な、何だアンタら!!」





タイミングよく大工が肩に担いで運んでいた角材

先頭突っ走ってた両者は 仲良く顔面をぶつけてしまう







ちなみにはスレスレでしゃがみ回避し


そのままあっさり逃亡してしまったようだ







「また逃げられたネ、何やってるアルか!」


「あのなチャイナ テメーらと違ってこっちは
仕事でやってんだよ遊びなら後にしろ」


「こっちだって仕事だっつの、ガキ一人
捕まえれねぇたぁ大した警察だよな全くよぉ」





殴打した部分をさすりながら無駄に火花を
散らして睨み合う二人が嫌味合戦を





始めた直後に飛来した砲弾が彼らを襲った





「ぎゃあぁぁぁぁぁ?!」





爆風に当てられる隊士達や新八など眼中に無く


ギリギリで避けた二人と神楽へ


バズーカ片手の沖田が面白くなさそうに呟く





「ちっ、今度こそ土方とチャイナの葬式
開けると思ったのによぉ」


「「逆にテメェの命日にしてやろうかぁぁ!」」


「てゆうかあのベルトコンベア葬式で死にかけた
オレらの恨みもまだ残ってんぞぉぉぉ!」


「いやちょっ、アンタらここで暴れんでください!」


落ち着かせようとする新八や隊員達の努力も
むなしく、土方と神楽+銀時vs沖田のケンカ
その場で繰り広げられる





…かと思いきや







季節柄似つかわしくないセミの鳴き声
だんだんと大きく鳴り響き始め





逃げた方向から舞い戻ってきた

無表情で、彼らの方へと駆けてくる





あれ?なんで戻ってきてるアルか…って」





そして走る作務衣少女の後ろから


低空飛行しながら追尾しているデカいセミのような
顔したオッサンの群れ
を見て、全員目をかっ開いた





『どこの村からの襲撃いぃぃ!?』







戸惑う暇(いとま)もあらばこそ





目と鼻の先までやって来た少女は槍の底を
路面に叩きつけ、棒高跳びの要領で彼らを飛び越し


見事な着地を決めてダッシュで逃げていく





それを追って天人と思しきセミ集団は
高度を上げて銀時達の頭上を通り過ぎて行くのだが





「「ぎゃぶぶれべぇぇぇ!?」」


伸び上がるような飛び方のせいか二名ほどが
銀時や土方の顔面に衝突して墜落し


スレスレで避けた沖田が尿を引っかけられてた







「…オレにションベン引っかけて逃げるたぁ
ズイブン肝の座ったセミじゃねぃかぃ」


ぎゃあぁぁ!何処で拭いてるアルかぁぁぁ!」





神楽の服で頭を拭いて、間を置かず沖田は
セミ集団を追いかけて姿を消した







衝突の際に強打した股間らしき部位を抑え


手足をバタつかせながら逃げ去ろうとする
オッサンらを踏みつけて 被害者二人は問う





「で、オタクら何してくれてんの?


公務執行妨害及びに傷害の現行犯で逮捕だな」


「キキキキ…あの女が悪いんだミーン」


「はぁ?日本語で分かるように説明「ザコに
かまっている場合ではないぞ貴様ら!」






新たなセミの輪唱と共に聞こえた声の主は


建築中の建物の、隣の屋根に堂々と佇む


ワラ帽子・虫取り網・虫カゴを装備した桂だった





「ヅラお前何そのカッコ?てかうるせぇ!」


ヅラじゃない桂だ!とにかミーンの身が
危ない、急ジジジジ殺されてしミ゛ーンぞ!」


「どーいう事だ?てかセミうるせぇ!





耳を押さえる彼らへ、桂は腰に下げてた
セミだらけの虫かごをかざして声を張り上げる





「今晩のおかずに生きのいいセミを捕まえてたら
お楽しみ中の貴奴らと遭遇してしまってな」


「何やってんですかアンタ!?」


「とっさに隠れたら、運悪く居合わせた
出歯亀と勘違いしたらしく 抹殺対象と
認識されて追われているようだ」


何余計なコトしてくれてんのお前ぇぇぇ!
余計アイツが捕まえにくくなったじゃねぇか!!」



「っと後続が来たようだ…後は頼むぞオレhミーン
を見つジーワジーワを救い借りを作カナカナ


「桂さん本音隠れきれてませんから!」







走り去っていく桂の背後を、セミ天人がさらに
数人ほど追跡していったのを見届けて





「なるほど…槍ムスメを先に確保できりゃ桂逮捕の
チャンスも巡ってくるな、行くぞテメーら!


土方も隊員を連れて 元来た道を引き返していく







「ヤツらより先に見っけないと
スタンプ押すドコロじゃなくなるアルよ!」


「だな、最悪スタンプだけでも奪取の方向で」


「僕らだけでも本人の心配してあげましょうよ」







通りのあちこちでセミの鳴き声がやかましかったが





より大きな鳴き声に注意して移動した三人は









「知らぬと言っておろう、何故邪魔をする





耐久年数が危ぶまれそうな橋の上


ブリッジで這うオッサンセミ集団が
を挟み撃ちしているのを発見した





「手間を掛けさせやがってジー」


「もう逃げられないミーン、観念して死ぬミーン





橋へと急ぐ三人をヨソに


包囲を狭められながらも 彼女は真顔で答える





「…スタンプラリーとは命がけなのだな」


「何を言ってるカナカナ!」


「オレらの営みを覗いた罪は万死に値するミーン!」


背中の羽根を震わせ飛びかかるセミ集団を
迎え撃とうとが身構えた瞬間







橋の袂にいたセミの数人が爆音と共に吹っ飛んだ





!助けに来たぞ!
攘夷の力で助けに来たぞおぉぉぉぉぉ!!」






追手のセミ天人をも吹き飛ばし、爆弾片手の桂が

橋へと躊躇なく進撃を開始しだす


勿論、セミ達への爆撃も橋の状態や救助対象顧みず
現在進行形で行われている





「「むしろ命(タマ)取りに来てんだろぉぉ!」」





任せていたら死亡フラグ回収一直線だと
直感した万事屋トリオが桂を蹴倒し


流れで群がっているオッサンセミ達を相手取る







が大人数の戦闘と、先程の爆撃でガタが来たのか





「ぬ!あぁぁぁぁー…」


橋板が一部崩れ、乱戦に乗じて逃げようとしていた
が足を踏み外して落ちかける





っ!」





ギリギリの所で手を掴んだので


「毎度かたじけないな、銀時」


「後でこの分代金請求すっから覚えとけよ」


いつも通りの軽口を叩きつつも力の限り
引き上げようとする銀時の背後から





「なんだか分からんが死ねぇジーワジー!


不意打ちでセミ天人がナイフを振りかぶり…







反撃しようとした銀時ごと、橋のセミ天人の
大半が頭上からのバズーカの直撃を受けた





「銀さああぁぁぁぁんんん!?」





幸い被害を免れた新八や神楽も、続くバズーカの
爆風であわや川へと落ちかかった







どんどん壊れていく橋や落ちる人々を


気にもかけずに 少し離れた箇所から
狙いをつけて沖田は砲撃を続ける





「秋も本番だってのにセミだけ生き残るなんざ
滑稽でぃ、引導を渡してや…ぶべら!





側に転がってたセミのオッサンをぶん投げて
モロに食らわせた神楽が、彼の暴挙を止めた


「お前いい加減にするヨロシ!」


「くたばり損ないが、テメェも駆逐してやらぁ





私怨たっぷりの死闘が橋の側で始まった隙に


ようやく駆けつけた他の隊士が橋に残っている

或いは川に落下したセミ天人の確保へ急ぎ







「っぷは!おい生きてっか槍ムスメ…て
何やってんだ万事屋」


「助けようとしてお宅の真性ドS
橋から叩き落とされたんだよ」





沈みかかってたを抱えた土方と
手を掴んだままの銀時が水中で睨み合い


どちらともなく、無言で一時休戦して

少女を支え 岸へと這い上がったのだった











「と…飛ぶ力さえ残っていれば…ジジジ…」





苦しげにもがくセミ天人達が連行され
ついでに桂も縛り倒されて


これで、無事に終わればよかったのだが…







「やっぱり、こうなったアルか」





爆撃を受けて川へと入水してしまった
は生命活動を停止…死んだのだ





「死んでねーよ!まだ辛うじて生きてるって!!」


「おぉよ 死んでしまうとはなにごとじゃ」


だから死んでませんって!というか
トドメ刺したの沖田さんですよね!?」


クソっ…なんで早く気づいてやれなかったんだ
いつだってオレってヤツぁ気がつくのが遅すぎる」


「自分を責めるな銀時…誰にだって
どうにも出来ない時ぐらいある」


「アンタら本当に容赦ねぇな!てゆうか銀さん
スタンプ漁ろうとしないであげて!」






こうして三途参り中の少女を中心として
繰り広げられた容赦無いボケ合戦によって


彼らの本来の目的は、当人が復活するまで
しばらく忘れ去られていたのであった








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:9月ギリギリ更新となりましたが一応
夏と秋の合間っぽい感じでお送りしました


桂:前回よりもオレの扱いがヒドいじゃないか!
まだセミを食すほど急してはおらんぞ!


神楽:そっちの台所事情なんか興味ねーヨ


沖田:オレらからも旦那方からも無駄に
逃げ回っては一体何がしたかったんでぃ


妙:スタンプ引き換え用の写真(有料)
ないなら一旦相手を撒くように伝えておいたの


アゴ美:で、私らの誰かしらが代わりの写真か
ちゃんの出現場所を有料で教えると


新八:参加者からどんだけ搾り取る気?!


土方:騒ぎをデカくしといてあの槍ムスメ…
結局大した情報持ってなかったたぁな


銀時:火に油注いだのはセミ共とテメェらな?




もう少しやる気出して早めに更新できてたら
詰め込まず二話に分割してたかも…

まあ、ネタと勢いと結末は一緒ですが


様 読んでいただきありがとうございました!