おいしそうなタコ様ウィンナーがあったから
ひょいっと一つつまんだら、ハシで取り返された
「行儀が悪いぞ神楽」
「それ、に言われたくないアル」
「自分のお弁当持ってこなかったの?」
「私のはもう一時間目に食べきっちゃったヨ」
「「早っ」」
新八との兄ちゃんの声がステレオで響く
「育ち盛りだからガマンできなかたヨ」
諦めきれずにジッと二人の弁当の中にある
ウィンナーを見つめ続けてたら
「…そこまで食べたいなら、一つやる」
ため息ついて、が弁当のフタに
タコ様ウィンナー乗せて差し出してくれた
「一つだなんてケチくさいアルな〜ついでに
玉子焼きも追加しろヨ、あとポテサラも」
「ちょっとは遠慮しようよ神楽ちゃ「あら
そんなにお腹すいてたの?」
ひょいっと姉御が横から現れる、ま、まさか
「よかったら私の玉子焼き分けてあげるわね
遠慮しないで食べてちょうだい?」
天使のような悪魔の笑みで 姉御は玉子焼き…
となるべきだった悲しい黒い物体を
タコ様ウィンナーの隣へと置いたのでございます
断る術も、逡巡する時間も選択肢も
私には何一つなかったヨ…
「あ、ありがと姉御「それだけじゃバランスが
悪いんじゃないのか?どうだ、よければ
オレのパンとお妙さんの玉子焼きを交換し」
横からしゃしゃり出てきたゴリラが瞬○殺で
ラッシュされまくってる合間に
途方に暮れてた私が持ってるフタへ
「残っている分でよければ、これもやろう」
言って、がほとんど手付かずっぽい
ポテサラを全部よこしてくれた
「自業自得なんだから、そこまでしなくても」
「いけませぬか?」
「いやまあ、いけなかないけどさ…ねぇ?」
兄ちゃんと苦笑いする新八は後でしばくとして
奇跡とも言えるの心配りは、正直言って
涙がちょちょぎれそうな位うれしかった
…とまあ、これは数日前の出来事で
「あ゛ーやっぱ熱いお茶はうまいアルぅー」
今の私は 傘を片手に家飛び出して
ん家にお邪魔している真っ最中ネ
「隣の芝生が青くても、うらやむかは別問題」
「して、何があって家に来たのか
説明してもらえぬか?」
「あーするする、するからもうちょい
待ってほしいヨ〜てかお茶菓子まだアルか?」
「茶請けのせんべいは先程食い尽くしていたぞ」
「あれっぽっちじゃ全然足りないネ
ケチケチせずにもてなすヨロシ」
「本気で本編並みに自重しないわね神楽ちゃん」
物言いたげなツラで兄ちゃんが大福差し出すけど
それはこっちのセリフヨ
が色気無い作務衣で迎えてくれんのは
まあ、おおむね予測していたけど
まさかお前まで着物だたなんて驚きネ
「茶道教室から帰ったばっかりで、まだ部屋着に
着替えてないだけなの」
「なっ…心の中を読まれた、だと!?」
「そーいうのは得意なの、まあ神楽ちゃんは
顔に出やすいタイプだしバレバレだけどね」
「おお、流石は兄上!」
本編でも無駄にハイスペなオカマだけはあるアル
「それで?いきなりウチに来た理由はあるんでしょ
しかもこんなどしゃ降りの雨の中を」
その言葉が示す通り、外はまだザーザーと
雨の音が耳について離れない
私は髪の毛の雫を借りたタオルでふき取りながら
「単にかくまって欲しくて来たアルよ」
せっかくの休みの日に、パピーとついでに
バカ兄貴と三つ巴でケンカしまくって
耐えられなくなってプチ家出したのを伝えた
「それはまた難儀だな」
「ちょっとちょっと、それお父さん心配するでしょ
お家に連絡しといた方が」
「余計なお世話ヨ とにかくしばらくここに
いさせてくれればいいアル」
ほとぼりが冷めるまではまだ帰る気も謝る気も
ないから、必死で頼みこむと
二人はため息混じりに 受け入れてくれたようだ
「夜になったらウチの親戻ってくるけど
その時になったら、また相談しようか」
着替えとか残ってる家事あるからって兄ちゃんが
自分の部屋に引っこんでったのを見届けて
一口お茶すする間を置いてからが言った
「しかしお主が駆けこむなら、まず妙殿か
九兵衛殿の屋敷かと思っておったが」
「姉御んトコは留守だったヨ 九兵衛は何か
取り込み中でそれどころじゃなかたネ」
それで他の家よりかは、ん家が近かったし
気も向いたから足を運んだのだ
「なるほど…それは光栄の至り」
よろこんでんのかそーでないのか 無表情だから
全くわかんねーアルなー…そうだ!
「は自分の部屋あるアルか?」
「越してきたこの家では、一応あるぞ」
「じゃあせっかくだし拝見させてもらうヨ」
「構わぬが見ても面白くは…早いな」
許可をもらったんで、ソレらしいドアを探して
さっそくお茶持ちながら移動する
兄ちゃんの名前のプレートの隣がそれっぽい
「いっちょ前に個室とか生意気アル、どれどれ
おじゃましま〜す…うわぁ」
開けた先は、ぶっちゃけ四畳半ぐらい狭い
でもやたらと物が少ないから広く感じる
洋服用のちっさいタンスと机用のテーブル
あとは壁にかけてある、墨で書かれた
"野武士"って文字だけがやたらと目立ってる
「何アルかあれ」
「父上のお知り合いから誕生祝に頂いた」
「普通はそんなもん女子の部屋に飾らねーヨ」
ドアサイズの押入れの中身は布団だけ
おもむろにタンスを開ければ、キチンと制服や
色違いの作務衣が収められ
「こら、行儀が悪いぞ」
手にかけかけた下段のタンスを閉めながら
怒られたので、タンスチェックは中断しとく
ちゃんとしたパンツはいてるか見たかったのに
「にしても私服にスカートなかったアルけど
女らしいカッコとか嫌いアルか?」
「嫌いではないのだが…どうにも落ち着かぬのだ
兄上の方が数億倍お似合いになるしな」
「それは…まあ、正論ネ」
着物似合いまくってるし、この後スカートで
出てきたとしても違和感はないアル
「だが決して兄上が女装趣味とか言うわけでは
無くてだな、むしろ兄上なら何を着てもお似合」
「はいはい似合う似合う」
こいつの兄貴礼賛はもう数え切れないぐらい
見聞きしてるからお腹一杯ネ
普段から口ぐせみたいに自然に飛び出すから
はたで聞いてるだけなのにどんなセリフ言うのか
大体パターン読める位には覚えちゃったし
銀ちゃ…じゃなかった銀八の卒業生試験だかの
予行演習だかで卒業証書渡した時
『本校を卒業すると共に日々兄上に感謝し、その
生涯を兄上の幸せのために尽くすべく努力する事を
認める そして兄上の笑顔を曇らせる事のないよう
節度の持った生き方を行いまた兄上のお言葉に耳を』
『証書授与のついでに何布教してんのぉぉ!?』
『ついでではない!大事な教えだ!!』