晴天にもかかわらず 派手な雷が落ちたが

特に気に留めず兄上との合流へ急ぐ道中


新八と神楽に支えられた金時と会った





「ったく、とんでもねーヤツだったアルな」


「大丈夫ですか金さん?あの天パにしこたま
頭殴られてましたけど」


「大げさだなぱっつあん オレがあれくらいで
どうにかなるワケないだろ?」


「こんにちは 何かあったのか?」





事情を聞くと、どうも銀時と名乗る妙な男が
いきなり万事屋に現れて探し物を頼み


依頼と見せかけ金時に書物で殴りかかったらしい





「そうか、よく分からぬが災難だったな」


「本当ネ も気をつけるアルよ?」


「うぬ、兄上にもそのようにお伝えしておく」


「相変わらずブラコンだな けどお前らしいよ
けど困ったらオレに相談しろよ?





手負いにも関わらず優しく笑いかけてくれる
金時は、本当に出来た男だ







挨拶もそこそこに三人と別れて


妙殿達や日輪殿達、あやめ殿に桂殿とも
すれ違いつつ兄上の下へと急ぐため足を速め





妙に弾力のある塊を踏みつけた











「刻んだ絆は上書きじゃ消せない」











足元を見ると、銀色のふわふわした頭の男が
死んだように床に転がっている


息があるかどうかを確かめようとして





「おい大丈夫かお主…ん?
ひょっとして、この男が金時を襲った」


「ってお前もかよぉぉぉぉ!!


いきなり起き上がって飛びついてきたので

とっさに槍底でアゴを強く突き返してしまい


男は勢いよく向こう側へと吹っ飛んでいった





「しまったつい…すまぬ、この侘びは後ほど」





兄上との待ち合わせがあったので、悪いと
思いつつも私はその場から立ち去った







「へぇ〜そんな変な人に絡まれるなんて
金さんも色々と大変だねぇ」


「けど金時なら問題はないでしょうね」





笑いかけてくださる兄上と買い物を楽しめる
この平和も万事屋の、金時のおかげ





しみじみとそう感じる一方で


あの男が何故、私の名を知っていたのかが
どうしてだか気にかかった









―それが仕事の帰り道にもちらついたのが
どうにもいけなかった






物を受け渡し 追っ手を振り切る囮を受けて


ビルを飛び越えていた最中、余計な思考と
雨に足を取られて下へと落ちた





ぼんやりと霞む意識の中で追っ手が止めを
刺さんとこちらに迫るのが見えて







…再び意識を取り戻した時には







お、起きたか アブねー仕事もほどほどに
しとけってんだ、それ以上傷物になったら
嫁の貰い手が無くなんぞお前」





路地には昼間に会ったあの男と


辺りに倒れてうめく追っ手の者どもがいた





「案ずるな、私には兄上がおられる故」


いい加減目ぇ覚ませブラコンんん!つーか
昼間よくも吹っ飛ばしてくれやがったな


「あああの時はすまなん…所で何故私の名を?」


「説明すんのは後だ後、とりあえず
懐も股も現在進行形で寒いしお前ん家泊めろ」


断る、初対面の者を泊める道理など」





身勝手な一言を切り捨てている途中で





「私からもお願いします様、どうか
銀時様を泊めていただけませんか?」


横手から現れた卵殿と定春が頭を下げてきた





何故両者がここにいるのか、卵殿がこうまで
肩入れする理由は分からぬのだが


きっと何か事情があるのだろう


助けてももらった故…少し話を聞くとするか





「分かり申した、負い目も恩もあることだし
兄上に頼んでみよう 着いてきてく…おおっ」


おまっ、まだ足元フラッフラじゃねーか」





平気だというのに半ば無理やり私を定春に乗せ
銀時殿は迷うことなく我が家にたどり着く







無論兄上はいい顔をしなかったけれども


私と卵殿の説得もあって渋々、銀時殿が
泊まることを許してくださった





「そいじゃお休み」


「お休みなさいませ皆様」


「ってたまさんと定春君は帰りましょうよ!





何故かこの二人も銀時殿の側を離れず


朝を向かえ、私達と朝食を共にしていた





「して定春とたま殿 その格好は?」


定八たまぐらとお呼びください
私達、万事屋セピアの一員ですから」


「何ですかソレ、人の家で夜中に
何を話してるのかと思ったら…」


「やらしーなピーマン兄貴、人の睦言に
聞き耳立てんじゃねーよ おかわり」


「兄上、睦ご「忘れなさい!!」





兄上は私へ怒鳴ってから、銀時殿の茶碗へ
山盛りに塩を盛って差し出した





「盛り塩ってレベルじゃねぇぞコレぇぇ!」


「イヤなら食べなくて結構です」





不心得にも兄上へ不満を募るのを睨んで黙らせ





帰ったら晩飯は豪勢に頼むわ、男騙して
稼いでる金でぱーっとやろうぜピーマン兄貴」


「居候の分際でどこまでも馴れ馴れしいですね
塩だらけのフルコースご馳走しますよ?」





三人でどこかへ繰り出して行くのを見送り
私達は、ため息をついた









それから数日…銀時殿と卵殿と定春の三人は
"万事屋の真似事"を続けていたものの


戻っては"金時に勝てない"と愚痴を零していた





当たり前だ、と思う反面…見れば見るほど
どこか金時に似た雰囲気を持つこの男に


何とも言えない心持を抱いていた





「あに見てんだよ


「いや、気にするな」





金時に比べ覇気も誠意も足りぬけれど


どうしてだか金時と話している時よりも
腑に落ちるような気分になる





…まあ金時にしても銀時殿にしても

どちらも兄上には遠く及ばぬのだが





「うーん…なんかあのふてぶてしさと言うか
図々しさに馴染みがあるのよね…何でかな?」


おお、兄上もそう思われるとは!







―だが、疑問を抱かせる奇妙な居候達は


ある日 何も言わずに消えた







たまがやられた オレのたまもやられた」





皆を集めた金時が "銀時殿がたまを襲った"
告げて私達に協力を頼んできた





「本当に…あの男がたま殿を?」


「ああ、オレはこの目で見たんだ…
例えアイツに恩があっても情けはかけんな

お前になんかあったら、オレが辛いからな」





金時のこの言葉に、間違いはないだろう







けれど…私にはどうしても納得が出来ない





「よし、はあちらの通りをさらってくれ
この辺りは刺激が強すぎるじゃろう」


「よく分からぬが分かり申した月詠殿」





手分けしての銀時殿の捜索を行う傍らで


この違和感を訊ねようと新八と神楽の姿を
探していた時、細い路地の合間を白い獣







気づけば どうにか先回りして対峙していた





「…たま殿に手をかけたと言う話は、真か?


「そこ退けよ 


「問いに答えぬまで 私は動かぬ」


「お前は、オレがやったと思ってるのか?」





訊ねる表情はいつになく真剣で 眼差しは
始めて見るような鋭さを帯びていた


まるで斬り合いを決して戦場へ赴く侍のような


とても強い意思を秘めた どこか懐かしい眼差し





「分からぬ…だから、お主の口から聞きたい」





定春の上に乗っていた銀時殿が降りて


槍先を向けられているにも関わらず、私へと
歩み寄って手を振り上げる


動きに反応して引いた腕をつかまれて





「信じろ オレぁ仲間を手にかけはしねぇよ」


開いた手の平が、頭と髪とを強く撫ぜた





父上のものとは違う とても馴染みのある
温かさと力強さが記憶を呼び覚ます





―ああ、そうだ


この手はいつだって私を殴り こづき 頬をつねり


それでも肝心要の時には、兄上を 私を 仲間を
そして誰かを救うために力を振るって


事が収まればこんな風に 頭を撫でてくれもした






どうして 忘れていたのだろう―







「…っ銀時!


呼びかけるも、あの男は再び定春に乗って
私の前から駆け去っていってしまった





違和感は不安へと大きく変わって





「やはり妙殿も…新八と神楽は何処へ」


「きっと見つけるから、新ちゃんと神楽ちゃんは
私に任せてちゃんもあの人の所へ!」





頷き、騒ぎの中心と思しき場所へ赴き







「何度取り戻そうとも何度つながろうとも

お前さんの40巻分の努力は
オレの腕の一振りで0に戻る」






そこで全ての事実が…金時がこの街の者へ
洗脳を施していたことを理解した







「潰せ!!全員まとめて叩き潰せ!!」





操られた者達へ相手取る 九兵衛殿や
マダオ殿、あやめ殿に月詠殿に桂殿と共に





「遅ればせながら…助太刀いたす!


「ちっ、テメェもかじゃじゃ馬女が」


「心強い援軍が増えたな…行け 銀時」


「ああ 背中は任せたぜ」







侍(なかま)の殿を護り両者の決着を見届けた―







「…って何ダイジェスト風に回想してんだコラ」


「痛いではないか」


殴られた箇所をさするも、銀時はいつも通り
悪びれる風も無く横柄にこう続ける





「他の連中ともどもホイホイガ○プラ野郎
騙されてたクセに、したり能面(ヅラ)で
語り部気取ろうなんざ10億年早いんだよ」





そこを突かれると痛い…よもや機械に誑かされ
恩人を見誤ったとは





「…武人として、はなはだ恥ずかしい限りだ」


「いいんですよさん 元はと言えば
僕らが原因作っちゃったよーなモンですし」


「それに金ちゃんのが銀ちゃんよりも立派に
万事屋回してたから、目が眩むのも無理ないネ」


「ちょっ本当に反省してんの!?」


「いいじゃないですか、こうして元の鞘に
収まったのも私達の絆のおかげなんですし」


「いい話風にまとめようとしないでくれる
こちとら主人公の座の危機だったんだっつの!」





ひどい仕打ちを受けたとは言え根に持つ男だ


これならば心を入れ替えた金時殿の方が
余程見所があるのでは


「おいお前失礼な事考えてんだろ


「気のせいだろう」


「んなワケねーだろ 能面ならバレねーと
思ったら大間違いだこのヤロ」


「ちょっ銀さんスリーパーホールドはやり過ぎ!」





ギリギリと頭を締め付ける私の耳に





「…ありがとな」


とても小さな声で、銀時がささやいた





同じように 私もそう返した





「こちらこそ」





ああやはり…この方が、落ち着く








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:二度目の夢主遭遇はファミレスのやり取り後を
想定してます…長篇で書いてもいいかと思いましたが
せっかくの三期に間に合わせたくて短編に


銀時:ウソつけ、本当は絡みが思いつかなくて
省きたかっただけだろ 特に金時との


神楽:それにアニメじゃ金魂篇とっくの
とうに終わってるネ


狐狗狸:い、いいじゃん!終わってるなら
むしろネタバレ気にしなくてもいいし!!


金時:そうそう、オレの活躍が見たいなら
ぜひとも四十三巻三期のアニメ 見てくれよ!


新八:どんだけ堂々としたステマぁぁぁ!?




多分万事屋セピアの拠点は夢主の家だったんじゃ
ないかなーと勝手に妄想した結果がコレです


様 読んでいただきありがとうございました!