明るい外に驚いて寝巻きのまま、両手に
ゴミ握り締めて慌てて階段を駆け下りたが


まだゴミの山はそこにあった





「あっぶねー…出し忘れるトコだったわ」





息をついて 持って来たゴミを山に重ねたトコで
セミの鳴き声がやかましく耳につく





湿気で髪の毛クリンクリンになる梅雨が過ぎても


クーラーもロクにねぇ室内が自動サウナに
早変わり猛暑が控えてるってんだから気が滅入る





ったく神楽のヤロー、たまにはゴミぐらい
出しに行けよな あのぐうたら娘が





舌打ちしつつ戻ろうと振り返った路地の向こうで


相も変わらず色気のねぇ作務衣娘がこっちに
来るのが見えた…挨拶でもしてやるか







「あ、あのっ  さんですよね?」





オレが声をかけるより早く、呼び止めた
どっかのにーちゃんの言葉にが振り返る


「いかにも、して私に何用か?」


「実はそのっ…渡したいものが…」


新八並の顔したソイツが上ずった声で懐から


白い便せんを差し出して





「…よ、よかったらいつでも返事ください!





それだけ言うと真っ赤になった面を隠すように
一目散に逃げ出してった





「……はい?」











「ズレたままでも話は進む」











今何か、トテツモナク名状シガタイ情景ヲ

目撃シテシマッタヨウナ気ガスル



これはひょっとしてアレか?始めて見た時から
ずっと気になってました的なアレですか?





いやいやいやいや 無理だろ今更その路線は!


その辺は新八とかがもうやっちまってるし

WJでも腐るほどやらかして読者飽きてる展開だし


サイト的にも原作的にも、ついでにブラコン娘の
キャラとしてもそれは流石に無い絶対ないっt


「おはよう銀時、そんな所で何を?」


ふおぅっ!?ななななな何だよ
びびびっくりさせてんじゃねーよ!!」



「何故ゆえそこまで驚くか」


「べ…別になんともねーけど?てゆうか
お前こそなんでここにいるんだよ」


「こちらの問いが先では…痛い





生意気能面ヅラをひっ叩いてから、手の中に
握られていた白い便せんを掠め取る





んん〜?なんだぁこの手紙は〜?」


「こら銀時、人の文を勝手に奪うとは何事だ!」





取り返そうと伸びてくる腕を避けながら封を開け

ざっと中身を確認する


どうせアレだろ?デート商法詐欺とか宗教の
勧誘とか そういうオチに決まって…





文章の羅列を目で追って、オレは動きを止める


横合いから覗き込んできてる気配があるけれど
そんな事は知ったこっちゃなかった







…斜め読みした内容を大まかに抜き出すと





"暴漢からアナタに救っていただいてからと言うもの

ずっと、アナタのことばかり考えてしまいます


よろしければ結婚を前提に…いやお友達からでも
構いませんのでお付き合いして下さいませんか"






いかにも"思いの丈をつづりました"、と
言わんばかりのテンプレど真ん中ストレートな


実に若者らしい"オテガミ"だった





「オイオイオイ、これってまさか…」


「恋文であろうな 私宛の」





マジでかァァァァァ!?


おいどっかのにーちゃん アンタ本気でコレ
ゾッコンなのか!正気か!?


コイツ DQで言ったらWのピンク鎧の
おっさん騎士のお供やってるホイ○ンだぞ!?


人間になりたいからっておっさんストーキングして
行き倒れも仲間も構わずホイミかけまくる
節操の無いクラゲだぞ!?


…あーでも、見た目不気味だけど見慣れりゃ案外
カワイかったりすんだよなーアレ





って魔物の話はどーだっていいわけで!





と、とりあえずアレだ…こりゃ一旦断る方向に
話を持ってかせた方がいいな


前途有望な青年を、この常識限界突破な
歩く死亡フラグから護らないと行けないしな!







どうにか平静を取り戻して、オレは言う





「騙されんなー これきっと罠だから
返事したら最後怪しい壷とか紹介されたりとか
ヤバイ儀式の生贄にされたりとかすっから」


「まあ良くは分からぬが、私には兄上がいる故
いつも通り断りに行くが」


「そーそー、それがお互いにとって一ば…へ?





今この小娘…"いつも通り"とか言ったか?




「どうでもいいけどお前、ひょっとして
こういう事態 初めてじゃないワケ?」


うぬ 兄上ほどでは無いが幾度かはあった」


無表情のまま淡々とそう言って、この女は
オレの手から手紙を取り返す





「へー、そう」





…我知らず引きつる口元から吐き出した呟きは

思い出したようなセミどもの声に負けていた









避暑と昼飯たかりついでで保護者に聞けば


あの小娘、手紙だけでなく直の告白なんかも
受け取ってやがったようだ





「あの子の場合、生来の性格に加えて 自分が
モテてる自覚がないから余計に性質が悪いんですよ」


根本原因のオメーさんが言うか?それを」


「別にモテたいと頼んだつもりもありませんし
後の部分は不可抗力なのに、僕にどうしろと」





まあ、ピーマン兄貴の面がヅラ以上にカマ向きなのも

アイツのブラコンも今に始まったもんじゃない


「しかしよぉ…ここらで兄貴離れさせねぇと
そろそろ本格的にマズいんじゃねーの?」


「盛大にその邪魔しといてどの口が言うんですか
そりゃ僕だって 相手にもよりますが本人が
付き合いたいなら交際くらい許可しますけど」


「いっそのこと縁談でも何でも無理やり
持って来いよ、その無敵の超カマパワーで」


「通常エレクト出来なくしますわよ?」





思わず引いたトコで、買出しから戻った

目ぇ輝かせて兄貴の側へと寄ってくる





ただいま戻りました!それと兄上へ
渡して欲しい荷を預かって参りました!」


「本当どうしてこうなっちゃったのかしら…
あとコレ今すぐ送り主に返してきてちょうだい」


早っ!開けずに突っ返すのかよ」


「どこにも宛名が無かったり筆跡が怪しい品物は
つき返すのが一番なんですの 精神防衛的にも」





このカマピーマン まじでいい性格してやがる









メシも食い終わったし、アイツの視線がいい加減
うっとおしくなったんで家を出て


微妙に曇りだす空模様の中 特に当ても無くぶらつく





…にしてもあのピーマン兄妹がモテてんのに

オレには美女とのフラグが立たないってどゆ事?


人気投票で連続1位なんだから結野アナ似の優しくて
マメでマトモな性格の可愛い女と同棲展開になって


"ご飯にする?お風呂にする?それともわ・た・し?"
っつー甘い展開繰り広げたり オレの取り合いで
キャーキャー黄色い声を浴びたりしてもよくね?


オレの股間のギャリック砲取り合いしてもよくね?





年末の六股ドッキリのトラウマがぶり返した辺りで
見たくもねぇ面がひょっこり勝手に寄ってきた





「何だ銀時、貴様が辛気臭い顔をするとは珍しいな」


「うるせーよどっから沸いて出やがったヅラ」


ヅラじゃない桂だ!悩みでもあるのか?」


「あったとしてもテメェには言わねー」


「水臭いではないか!同門でいずれ革命に参加し
日の本を変えていく仲間に気兼ねなどするな!」






うぜぇ…心底うぜぇ、が一々否定すんのも
面倒なんで ついて来てるヅラに軽く謎かける





「色気もへったくれもねぇ、バカ正直が取柄の
小娘によぉ…恋する男がいたとするだろ」


「ほほう 要するに恋煩いか」


言っとくがオレじゃねぇぞ?で、もしその小娘が
マトモじゃない知り合いならテメェはどう思う?」


「とりあえずその男を志士に勧誘する」


「テメェに聞いたオレがバカだったわ」


普通そこは"リア充爆発しろ!"でFAだろーが





「それで銀時、娘と男は誰の事だ?
よもやリーダーではあるまいな?万一オレも
知っている相手ならぜひとも攘夷志士に」


興味ありげに迫ったヅラを拳で沈めて答える





「んなもんテメェで考えろ」







バカを振り切って更に辺りをぶらつくけれど


やっぱりどうにも納得いかねぇ





「…





言葉にすりゃ僅か数文字の名前に、なんで
オレがイライラしなきゃならねぇんだか


イライラしてっ時は甘いモンでも食って…





あり?財布どこ行った?」





懐やケツポケットを慌ててまさぐっていたら


ひょいと横から見慣れた財布が差し出された





「これであろう」


「お、サンキ…って何でオメーが持ってんの!?
つかいつからつけてやがった!!」


失礼な、所用ついでに見かけたゆえ
お主の忘れ物もと思ったまで」





また説明省きやがってこのバカ娘は


でもまぁ多分、メシ食ってくつろいでた時
懐から転がり落ちたんだろうな…てかついでかよ





「ああそう…それで?手紙の相手にゃちゃんと
断りいれてきたんだろーな?」


無論 狼狽して残念そうにしてはいたが
快く承諾してくれた、よい青年だった」





表情変えずに堂々と言うな すげぇ腹立つわー





「そりゃ、兄貴がいるから付き合えないとか
ブラコン全開な断り方されりゃ驚くよな」


「うぬ、兄上と結婚する旨を告げる皆驚くか
固まる ある時にはしつこく食い下がられて
大変な迷惑を被った故 説得に大分骨を折った」


やっぱりかぁぁぁ!大体の予想でカマかけたけど
バカ正直に告白しすぎだろお前ぇぇぇぇ!!



あと骨を折ったって言葉の響きがリアル過ぎる!





「無論 兄上に危害を加えぬよう、しっかり
相手には釘を刺してあるぞ」


「聞いてねぇし聞きたくねーよそんな情報」







こりゃダメだ、どう足掻いても普通の男じゃ
到底太刀打ちできねぇわこのブラコン振りは





「あのにーちゃんには、ご愁傷様としか
言いようがねぇな…」


「確かにな あれほど出来た若者には私などより
よき女子と幸せになって欲しいものだ」


あ?何ソレ、モテてる余裕アピールかコラ」





痛がるのも構わずコイツの両頬を思うさま引っ張る





「いひゃいいひゃい、やめんふぁぎんほひ」


「ロクに兄貴離れしてねー女に先行き案じられちゃ
振られた方も外野もムカつくんだよ あぁん?」



「にゃぜゆえお主がふぉこる、ひっほは「誰が
テメェに嫉妬するかふざけんな」
いひゃひゃひゃ





もがくを見下ろしながら ぼんやりと


兄貴に言った"縁談"の案を思い起こす







こんなんでも めかしこんで黙りこくってりゃ
言い寄る男の一人や二人いてもおかしかねぇし


万が一過ぎるが、その中の誰かに惚れこんだなら


相手のために口調を変えたり簡単にソイツの好み
染まっちまうであろう事は兄貴とのやり取りから
あっさりと想像できちまう


なのにコイツは普通の女らしい幸せを放棄して


そのクセ 余計な世話焼いて面倒に首つっこんで…





胸のムカつき増加とシンクロで余計手に力がこもり


それでもじっと見返す緑色の目ん玉に
いい加減たまらず、赤くなった頬から手を離す





「…何がそこまでお主の気に障ったのだ?」


「平らな胸に手ぇ当ててよーく考えてみろ」





言われた通り考え出すバカをその場に放置して


オレは歩きながら糖分摂取のために
財布を開いて持ち合わせの確認をする







がその最中に、背後からベルトを引っつかまれた





「ちょ、あにすんだ


「考えたが…やはりお主 今朝から様子が妙だ
何かあるなら教えてくれ、私に非があれば直す


「遡って考える脳みそがあるんならもう少し
深く考え直しとけバカ娘 つーか放せコラ」


「お主が、教えるまで、放すのをやめない」


何を言うだぁぁぁぁー!ホラ周りから
おかしな子扱いされてるから放そうね!!」



何でコイツ今日に限ってしつこいの!?





振りほどけない相手へ我慢も限界に達して

思い切りぶん殴ろう、と振りかぶった直後





くそデケェカミナリの音が耳へと飛び込んだ







間を置かずにポツポツと生温い雫が垂れて


とっさに飛び込んだ茶店の軒から先は
あっという間にどしゃぶりの雨に覆われちまった





「おいおいおい傘持ってねーのにゲリラ豪雨とか
勘弁してくれよ、ったく」


「…すまぬ銀時」





ちゃっかり隣に避難したが、殊勝にも
反省したような態度でそれだけ呟く


が 視線は"質問を諦めてねぇぞ"と語ってやがる





…こうなりゃこっちも意地だ





「しょーがねーな、雨が止むまで甘いモンでも
おごってくれんなら答えてやるよ」


「心得た」


「よしじゃーまずカキ氷だ、宇治金時な?」





即答するバカ正直な娘っ子へ、女子力向上の
コツでも適当に教える算段を立てながら


二人同時に 店の扉をくぐった








――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:結局、どちらも意地を張り通してます
銀さんに至っては意地でも誤魔化し通す気満々です


銀時:アイツの頑固さが悪いんだっつの!


桂:それよりも管理人…この話は六月に書く筈の
モノではなかったのか?


狐狗狸:それについてはひたすら謝罪するしか
ありませんね、ちょっと邪神様に喰われてきます


銀時:やめろぉぉぉ!反省の振りして
オレらもそっちに巻き込む気かァァァ!!



桂:案ずるな銀時!互いのペル○ナを召還して
コンボで畳み掛ければ勝機はある!


銀時:既にテメェが正気0じゃねぇかヅラぁぁぁ!


狐狗狸:はいはい這い寄る方のせい這い寄る方のせい




夏なので喫茶店にカキ氷があっても不自然じゃない
…ハズです きっと


様 読んでいただきありがとうございました!