「そんなデケェ声出さないでくだせぇ
こっちの鼓膜が破けちまわぁ」





某ホラー漫画顔で叫んだ子供達と

その倍の…ホラー実況者も真っ青の悲鳴を
上げて尻餅ついた大人二人を見下ろして


沖田はかぶってた血まみれ男のマスクを剥がす





「こんにちは総悟殿、精巧な覆面だな」


「だろ?被りモンにしちゃよく出来てっから
映画見た記念に買ってみたんでぃ」







平然と(レイガイ)が挨拶した辺りで
ハッと我に返った啓一が





「しゅしゅしゅっ、シュミ悪りーんだよ!
なんだよお前っ!バカだろバーカバーカ!!


沖田を指差して、精一杯強がってみせる





「こんなトコに吸血鬼がいるたぁ驚きでぃ
どれ、鼻と口とケツにニンニクでも突っ込むか」


相手は黒い笑みを浮かべて、おもむろに
懐からニンニク取り出し迫ってきた





「いぎゃー!ごごごゴメンなさいぃぃぃ!!」


当然真っ青になりながら震えて逃げる啓一を
しかし当人が見逃すはずは無い





どうした?まだお楽しみはこれからだz」


「ハン、さっそくガキいじめとはほとほと
タマのちっさい男アルな」





が、呆れ交じりの一言が彼の矛先を変えた











第五訓 ホラゲは案外ネタも多い











「そういや中国にも吸血鬼がいるらしーぜぃ
てーことで正体現せやチャイナぁ!


「上等ね、こっちの台詞よドS吸血鬼ぃぃ!


「オメーら往来で大暴れすんじゃねぇぇぇ!!」





繰り広げられたケンカに、土方のツッコミが入るも

二人が止まる事は当然無かった





「あの…止めなくても大丈夫なんですか?」


「ああ、二人の事は気にしなくていいから」


ようやく平静を取り戻した新八が、声に答える


"吸血鬼本体"はどうにか沖田から逃れた
の後ろへ隠れて震えていたりする





「落ち着け啓一、総悟殿は悪い男ではない」


「いや悪いからね思い切り てーか女の背に
へばり付いてビビリ倒して情けねぇガキだな」


一番ビビッてたおっさんが言うんじゃねー!
スゲェ声でさけんでコシぬかしてただろ!」


違ぇって!いやコレ、アレだから総一郎君の
唐突な登場に驚いただけだから!そういうのじゃ
全然ねーから!コイツはガチビビりだけど!!」





必死な顔して指差す銀時の言い分に

勿論、彼も黙っておられず睨みを利かせる





あぁん?そりゃテメェの方だろうが!

オレはホラあの、ガキンチョの声に反射的に
驚いただけでだな…その目は何だテメーら!」


「旦那に土方さん 言い訳は見苦しいですぜぃ?」


「「元々オメーのせいだろがぁぁぁ!!」」


「化け物程度でその有様か、情けないなお主ら」


「「お前に言われたか無いわKY娘!!」」





デュアル怒鳴りツッコミが炸裂しても、元凶と
能面には何の効果も無いようだ





「会ったときから思ったけどネーちゃんって
全然おどろかねぇな、スゲーよ!」


の能面はデフォルトね…アレ?」


「啓一君、何だか身体縮んでない?」





言われて彼もまた 自らの身体の変化に気付く


始めは170越えてた背丈が、凄まじい速さで
新八よりも小さくなり始めている





「ああそっか、そろそろだ…イワン!


「えっ うん分かったよケイイチ君」





まとっていた服が液状化して地面へ落ち
それが唯碗の姿へと戻ってゆく


その間も啓一の身体は見る間に縮んで


程なくして六人の前に、青白い巨漢の子供と
金髪五分刈り少年のコンビが復活した







「吸血鬼が二人に増えるたぁ驚いた
あいつら、何なんですかぃ土方さん」


「オレが知るかよ コイツに聞け」


「いやこっちだってほとんど突然押し付けられて
迷惑してんだっつーの!」





まあまあと間に入った新八が


「実は、孤児院をやっている知り合いの方が
いるんですけれども…」





掻い摘んで彼らの素性と江戸に来た理由を説明した







「社会科見学ねぇ…まあテメェにゃ向きがいいか
反面教師っつー意味合いじゃな」


「おーよ、ダメな権力者の見本もいるしな」


「それじゃー一丁気張って教えますかね
まずは人間の抹殺方法を」


「そーだな、じゃオレは生意気なガキンチョの
粛清方法もとい斬り殺し方な」





バズーカ差し向ける沖田に 抜刀しかかる土方


両者が行動を起こすより早く、その頭に
強烈な拳骨が振り下ろされた





二人とも何やってんの、勤務中でしょ!
…ってまたお前らか万事屋ぁ!!」





路地へ現れた近藤に、彼は赤い眼を光らせて叫ぶ


スゲ〜!江戸ってしゃべるゴリラいんのか!」


「け、ケイイチ君…あれは刑事さんじゃないかな」


「間違っちゃいないネ、デカだけどゴリラよ」


「何この失礼な子達!?つーか誰そこの二人!!」


「梗子殿の頼みにて預かった童達だ勲殿」


「ゴメンちゃん、もうちょっと詳しく!」







初っ端こそは憤慨していたものの、事情を聞くと
彼は納得し 元々の人懐こい笑みを浮かべる





「なるほど…まあそういう事ならゆっくりと
江戸を見て回るといい!何だったら屯所も案内」


近藤さん とりあえず仕事戻るぞ」





余計な発言をする前に土方が、彼の襟首を
やや乱暴に掴んで歩き出す


連なるように沖田も踵を返してそれに続き





「まー機会があったら遊んでやるぜぃ
そんじゃまたな、ガキども





三人の黒い制服が 彼らから遠ざかっていった







「こっちの台詞ね税金泥棒が」


「そ…そーだそーだ、ドSヤロー!


「半泣きになりながらて…どんだけトラウマ?」





と そこで彼女も急に声を上げると


「兄上から買出しを頼まれたのを失念していた…
すまぬ、後で迎えに来る故失礼致す!


「え、ああああのっさん待って…!」


戸惑う二人を置き去りにとっとと立ち去る







「ったくブラコン自重しろよアイツぁ…
さて こいつらどーすっかな」





ため息混じりに二人を見やる銀時へ、神楽が言う





「晴太んトコに連れてっちゃダメアルか」


「いやあの…子供同士ってトコは賛成だけど
吉原自体は彼らにはまだ早いんじゃないかと」


「なっ、何だよ!エロいトコだったりすんの?
ボインボインのおっぱいネーちゃんいるの!?」



「たっくさんいるぜ〜ただし手ぇ出したら
抉られんぞ、クナイで」


「お…おっかないトコロなんですね」





色々意見を出し合いながらも 最終的には





「しょうがないアルな〜じゃ、今日は
私の遊び仲間紹介するね!来るアル二人とも!


「オッケーだぜ女王!おら行くぞイワン」


「えっちょ、あの…行って来ます」


神楽の引率により 啓一と唯碗が現地の
子供達と遊ぶ事に決まったのだった





「夕飯までには万事屋に戻ってきなよ〜」


「分かってるアル〜!!」







三人の姿が消えたのを見計らい、銀時も動き出す





「ようやくジャリが片付いたか…じゃオレは
ちょっくらパチンコにでも」


「何でだよ!!」









止める新八の言葉も聞かず繰り出した彼の
戦歴は…普段通りなので割愛するが







同じく夕暮れに万事屋へ戻ってきた三人は
とても上機嫌な顔をしていた







「お帰り二人とも…楽しかったか?」





用を済ませ先に上がっていたの言葉に
八重歯を覗かせ 啓一が笑う





まーそこそこってトコだったな!
鬼ごっこじゃオレ最強だったぜ ウィヒヒ!」


「私には叶わなかったクセにエラそーアルな」


「つっ、次は負けねーよ女王!」





彼は持ち前のガキ大将気質により
他の子達と 早速打ち解けていたようだ





「唯碗君はどうだった?」


「あの…あやとり教えてって、たのまれました」


「コイツ色々技もっててスゴかったアル!
将来テクニシャンになれそうね」


「何の?」





意味深過ぎる台詞はやわいツッコミでスルーだが


青白い顔を赤らめる彼は繊細なあやとりの型を
披露し、大人しめの子に慕われたらしい





ほう…お主の技、一度見てみたいものだな」


「いやさん 多分アナタの想像とは
全然違うと思いますから」







和気あいあいと話す彼らを眺めながら





『ゴメンなさいね、色々と迷惑かけちゃって』


「まあその分報酬はもらうからいいけどよぉ
アイツら いつまで江戸にいさせるつもりだ?」





銀時は 梗子からの電話に応じていた





『そうね…出来れば五日間くらいを目安に
考えているのだけれど』


何気に図々しくね?二泊三日にしとけよ」


『あら、アナタ子供嫌い?』





冗談交じりに笑いながら、彼女は柔らかく告げる





『それじゃあ引き続きお願いしますね…
明日も同じ時間に電話して大丈夫かしら?』


「いやあの、正直速攻郵送してぇんだけど
明日宅配頼んでいいかなお宅のガキンチョ」


「デカいおっぱいモむまで帰んねーからな!」


耳聡く聞きつけた啓一が声を張り上げ

早速拳骨を頭にちょうだいしていた





「電話中にデケェ声出すなクソガキ!!」


「いってぇぇぇ!」





こうして今日も 江戸の夜は更けていく…









人気の無い ゴミ捨て場付近の道路にて





「うぃ〜…吐きそう、おえぇぇ





電柱へと寄りかかる酔っ払いが
近づいてくる何かの音に気付いて 顔を上げる


「ん…何の音、だ」





前方からジワジワ迫る音が、やがて

一つの形を取って少ない街灯に照らし出された







背の低い…いや極度の猫背にコートの姿


両腕で刷り合わせられた大型の刃物





そして…どこかの恐怖映画から
飛び出した怪物さながらの


醜く崩れた人ならざる禍々しい凶笑








「ひぃぃっ、ば、化け物ぉぉぉ…!!


たちまち顔面蒼白になり逃げ出した男に構わず





「クンクン…ニオう、プンプンとニオうぞ
王子のニオイがこの街からあぁぁぁあぁぁ!


怪人は狂気に彩られた声で叫びながら

天空へ向けて両手を思い切り振り上げ







「煩い黙れ超黙れ!


「オガッ!?」


背後の陰に潜むもう一人に殴りつけられた





「人形でぶったたく事ねーだろ杭印よォアァ!」


「アンタが超際限なく騒ぐのが超悪いのよ邪苦」


"杭印"と呼ばれた女は淡々と言いつつ
拾った人形を再びゴミ捨て場に戻す





後頭部を擦りながら"邪苦"は彼女へと言う


騒ぎもすんだろぉ?何たってよーやく王子の
居場所が突き止められるんだからよぅえぇ」


「ま…気持ちは超分からないでもない気がするわ」


「だろ?久々の地球だ…楽しませてもらおうぜぃえ」





おぞましい笑みを浮かべるこの男…果たして何者か







[次回へ続く!]


「えちょっ、今回コレでオレら出番終了?!
今から襲撃っぽい雰囲気噛ましてたぬぉにぇぇ!?」



「超うるせぇぇぇぇぇ!!」





怪人の第二の叫びと悲鳴が 空しく闇夜に木霊した








――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:今年中に公開されるらしいけど…果して
本当なのか釣りなのか、真偽は定かじゃ無いです


新八:あの…何の話ですか?


沖田:映画の話だそうで…現実で不確かなモンを
こっちで実現して自己満足してるそうでさぁ


狐狗狸:間違ってはない…マスクはもち吉d


土方:本編の話をしろぉぉぉぉ!!


近藤:まあ、ちょっとむさ苦しいが見学なら
歓迎するから遠慮なく来てくれていいんだぞ?


狐狗狸:この先で嫌でも叶うんで今でなくても


神楽:マジでか それより唯碗のあやとり技術
言うだけあって半端ないアル


狐狗狸:の○太の"幻の蝶(名称不明)"
再現できる程度の腕前だからね


銀時:本格的にテクニシャンじゃねーか




こっから先は(天人的に)ドタバタします


様 読んでいただきありがとうございました!