「へぇ〜院長先生が野菜庭園やってるんだ」


「はいっ、みんなで取ったつみ立てヤサイで
おいしい料理を…作ってくれるんです」





注文を済ませ、料理が出来上がるまでの合間


二人が語る孤児院での日常を 大体三人は
嬉々として耳を傾け相槌を打っていた





「どーせなら肉中心にしてほしいぜ
あと味つけがもの足りねーんだよなー」


「贅沢だなお主、私が放浪していた時分は」


「オメーのとっ外れた意見はいらないから」


トンデモ発言が飛び出る事を見越して
銀時が先に意見を完封する


その合間も胸元を握り、唯碗が
不機嫌そうに席へ腰かける土方を気にしていた





「あの人…まだ、おこってるんでしょうか…?」


「気にしなくても平気ネ唯碗 アイツ程度で
ビクビクしてたらここじゃ身が持たないヨ」


「そうとも、それに瞳孔マヨ殿はアレが常故」


「「お前が言うな能面が」」





への的確なステレオツッコミが
寸分の狂いも無く繰り出された所で





「スタミナ丼土方スペシャル、お待ち!」


出てきた丼の…とぐろを巻いたマヨネーズの山
目の当たりにし 言葉を失う啓一と唯碗











第四訓 大人数での絡みはスランプの種











そんな二人の視線をどう勘違いしたか





「あんだよ…欲しいのか?


早速丼を頬張っていた土方が、彼らへ
すっと器を差し出した


青ざめながら即効で首を横に振るお子様二人





いっいいいいらねぇ!マヨネーズ好きだけど
そんなウ○コになるまでかけねーしオレ!」



「テメッ、メシ時にそゆ事言うんじゃねぇ!
つーか断るなら一口食ってからにしろ!!」


「やめとけアレは食うなよー絶対食うな
見た通りウ○コの味だからな」


「なワケあるか!ガキンチョにデタラメ
吹き込んでんじゃねーぞぉぉ!!」








再び勃発するいがみ合いを 冷めた目で
見やりながら神楽が溜息を一つ





「てゆうか銀ちゃん人のこと言えないアル」


「え、どーいうイミだよそれっ」


「特殊味覚だからな」





省き過ぎなの説明が示す答えは

程なく二人の目の前へと現れた





「旦那、宇治銀時丼お待ち!」


「おー来た来たっ!」


黒々とした小豆を山と盛った白米の器を
受け取り銀時もおいしそうに掻き込む





「あの、新八さん…銀さんのごはんに
乗ってるのって…アンコですよね?」


「うん…間違いなくね」





信じがたい光景の連続と言った顔の彼らへ


新八はそれ以上語る言葉を持たなかった


「江戸の大人って変なのばっか…
「「あんだとクソガキ?」」ウィひぃっ!


「大人気ないぞお主ら」





味覚バカ二人をがたしなめた辺りで
自分達の丼がやって来たので





「「いただきます」」





手を合わせ、箸を取り二人は食べ始め…


ん?なんだこのかかってる赤いの」


直前で啓一が手を止め 自分の丼を見つめる





肉を惜しげなく使った丼にかかってる

見た事の無い赤い液体が気になるらしい





「ケイイチおっくれてるアルなー、江戸で
今流行の"食べれるラー油"ネ!」


「ラー油って…ギョーザとかについてる?
食べられるんですか?コレ」


「うまいアルよ」





神楽と丼を交互に見比べ、啓一は恐る恐る
最初の一口を口にするが





「…ホントだ!ちょっと辛いけどウメー!!」


気に召したらしく二口目からは進んで食べ始めた





どうやら彼の方にラー油はかかってないらしく

物欲しげな窪み眼で 唯碗は自分の丼を
差し出しながら思い切って切り出す


「け、ケイイチ君…あの、一口コウカンし…」


ウィヒッやーだね!これオレのだもん!」


「でっでもこれおいしいし…一口だけでも」


「しつけーよ!ヤサイなんかいるかよバーカ!
カリカリしたトコなんかサイコー!!」



しかし拒否して彼はおいしそうに丼かっ食らう





「一口ぐらい分けてあげてもいいんじゃないかな」


「そうネ、心が狭いと銀ちゃんみたくなるアルよ」


うぉい!それどーいう意味神楽ちゅわん!」





しょげる巨体少年を哀れに思っての助け舟も

生意気なガキ大将には効果がなかった





「啓一…ニンニクが食せるなら野菜も
共に食せばよかろう」


「「え」」







が、のこの一言が場の空気を変える







「ウソだろ…これニンニク使われてんの!?


「え、うん 最近のラー油は大抵
フライドガーリックが入ってるけど」


「む…どうかしたか啓一?」





衝撃の事実と言わんばかりに目を見開くと

口を押さえ、席を立った啓一が身を屈め
気持ち悪そうな素振りを見せる


「ニンニクキラいなんだっ…うっ…」


「オイちょっ、大丈夫かクソガキ?」


「吐くなら厠でやれよ 連れてってやっから」





四人だけでなく、土方や店内の客に亭主の
注目を集めた次の瞬間







「ウリィィィィィィィ!」





叫び声と共に身を起こした啓一が

―成長した







伸びた背丈は…ちょうど銀時や土方と同じぐらい


元着てた服が破け引きつれて下半身を覆い

若干伸びた金髪と八重歯…いやもはや"牙"
呼んだ方が正しいソレと元々の赤い瞳


そして露出された背から生えた薄い漆黒の羽は


明らかに"ある怪物"を連想させる







目の前で起こった現象に呆然としたままの
刺さるような周囲の視線に耐え切れず


「へ、へーん!どーだっ変身したオレ
カッコイイだろメガネ!!」






彼は誇るように笑い、バサリと羽を動かした





「「「どっ、どどどドラキュラぁぁぁ?!」」」









突拍子の無い展開に驚き、騒がしくなる周囲の
ドサクサに紛れて店を出て





「天人だってのは見当ついてたが…正直コレは
予想してなかったぞ何だコレオィィ!!


「オレだってたった今知ったわこんな仰天事実!
つかなんでお前まで一緒にいんの!?」



「うるせぇその場の勢いだドアホゥ!!」


近くの路地で 早速口論を始める土方と銀時





「二人とも、唯碗が何か意見あるみたいアル」





こわごわ手を上げた少年が、向けられた視線に
震えながらもたどたどしく答えた





「昔からケイイチ君、ニンニクを食べると
どうしてかこのスガタに変身するんです…」


「だから言えよお前ソレ先にぃぃぃ!!」


「ごごごごゴメンなさいぃぃぃ!!」


泣き出しそうな声で彼は身体を小さく丸め
すぐさまの背へと隠れてしまう





「そ…それで嫌いなの?ニンニク」





問いに、啓一は顔をしかめて首を振る





ちっげーよ!だってマズイんだもんアレ
辛いしクサいし苦かったりするしヤサイだし!」


「そこは徹底してお子様アルな」


「オメーもお子様だろうがチャイナ」





もっともなツッコミをかまし、煙草を取り出す土方







理由はともあれ少しずつ気持ちが落ち着いた所で

銀時の脳裏に ある一つの仮説が過ぎる





「ひょっとしてよぉ…貧乳ネーちゃん
アイツにお前らのこと、詳しく話してた?」





視点が逆転しつつも顔を見合わせ


「そういや言ってたな」


うん…梗子先生ニンニクのことも言ってた」





口々に言ったお子様二人の言葉は

彼にとって、十分に納得の行く答えだった





「なるほどな…あのヤロそれで拒否ったのか」


「流石にソレは……無いと思いたいです」


しかし否定しきれないのは新八も同じであった





小さくため息をつき、彼女は背に隠れたままの
気の弱い少年へ顔を向ける





「啓一がどれぐらいで元に戻るか、分かるか?」


「食べたニンニクの量にもよりますけど…
短いと十分、長くても三十分でもどってました」


「テメーらの事情は知らねぇが、早いトコガキに
何か着せとけ…そのままじゃ変質者扱いでお縄だぞ」


「いや、それシャレになりません土方さん」





その一言に、半裸で手に腰を当て息をつくと


「しょーがねぇな…おいイワン!
久々にアレやるぞ!!」


「う、うん…!」





言って、啓一が目だけで相手を側まで呼び出す







「何やる気アルか?」


「まー見てろって女王!」





ニッと八重歯を覗かせ笑い 彼が唯碗の手を取る


すると…その手からスルスルと青白い巨体が
液状化して金髪少年の身体を覆い

あっという間に五人の目の前で一人が消え


代わりにスーツ姿の吸血鬼っぽい天人が残った





「ふ、服に変身したぁぁぁぁ!?


「コイツ知ってるモンならなんでも
どんな大きさでも化けらんだぜ〜ウィヒヒ!」


「人とかカラクリなんかはムリですけど…
服やボールとかなら なんとか」





胸を反らし笑う啓一の服から、消え入りそうな
ボーイソプラノも確かに聞こえ

予想斜め上の展開に今度こそ彼らは空いた口が


塞がるかぁぁぁ!つーか天人だからって
こんな能力ありかバ管理人んんん!!」



「気持ちは分かりますけど地の文にツッコミは
控えてください銀さんんんん!!」





動じたり呆れ返ったりする男三人とは逆に





変身できる天人か…すごいなお主ら」


「羽ついてるなら空飛べるアルか?」


少女二人組は既に現状へ順応していた





「え?いや空はまだだけど…」


「あの…神楽さんやさんは、あんまり
おどろいてないんですね?」


「あーうん 天人だからそいつらも」


「「えぇっ!本当に!?」」







逆に驚かされた二人の様子を眺め





「アホらし、付き合ってられっか
オレぁ帰らしてもら…ん?」


煙と共に吐き出し、踏み出しかけた土方の背から





『いっしょにあーそぼぉぉぉぉぅ…?』





奇妙に歪んだ血塗れの男の生首が飛び出し

腐り落ちる寸前の眼球をギョロつかせた







場の空気が音すら立てて凍りつき…





『ぎゃああぁぁぁ「「うわぁぁぁぁ
ぎゃあぁあぁぁぁぁぁ!!」」






直後、数多の叫び声が辺りを揺るがした








――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:まさかのビックリ超展開ですが、彼ら
特殊な天人なので見逃してくださ


土方:無理だろ流石に!特に青白いの!!


新八:それより久々にとか言ってたけど…
何度かあー言った事やらかしてるんですか?


狐狗狸:孤児院でニンニク食べたらその度に(笑)
でも本人が味的な意味で嫌いだから滅多に無い
あと院のみんなは一応慣れてます


神楽:まだって事はいずれ飛べるアルか?空


銀時:つーか唯碗のアレってJ○J○第四部の―


狐狗狸:前者については何れ説明するかも…
後者は宇宙人?繋がりで(分裂出来ないけど)




ラストに出た生首の正体と、悲鳴を上げた
人々の内訳は次回に即効で判明します


様 読んでいただきありがとうございました!