子供二人の宿泊先については…外野も
交えた、散々の言い合いの末
万事屋との家に片方ずつで預かり
一日ごとに相手を交換する形で落ち着いた
「新八の家は候補に入らぬのか?」
「いや…ウチだと姉上の料理が…」
各々微妙な顔で納得する三人だが
事情を知らぬお子様二人は首を傾げるばかり
「メガネのネーちゃんって、リョウリが
下手クソなのか?あとおっぱいデカい?」
「あーありゃ正に暗黒物質だな…それと
アイツだけはやめとけ、貧乳の上に強暴だ」
「子供の前で人の姉貶すの止めてくれます?」
若干苛立ちながらの新八の台詞に
「ちぇーデカかったらモむチャンスだと
思ったのに がっかりだぜ」
啓一はやらしい手つきを止めて唇を尖らせ、
「けっケイイチ君、これからお世話になる
人たちにメイワクかけたらおこられるよぉ…」
唯碗はくぼみがちのマブタを更に下げ
か細い声で、不安げに胸元を握り締める
「先程から気になっていたが…唯碗は何故
胸元を握り締めておるのだ?」
向けられた緑眼に彼はビクリ、と
大きな身体を震わせ益々縮こまった
第三訓 考えるより行動しよう、そうしよう
「あっあの、ここここれはその…クセで」
「ウソつけよ お守りもってんだろどーせ」
呆れ気味の一言に、銀時の眉が跳ね上がる
「お守りィ?」
「こいつスゲービビリだからお守りないと
不安で外にも出れねぇの ウィヒヒ」
「どんなのかちょっと見せるヨロシ」
「あわっあわわゴメンなさいっ、ひぃい…!」
「ちょっ神楽ちゃん、無理矢理はダメだから!」
肩に手を置かれ今にも胸元探られかけて
怯えまくる少年に救いの手が入るが
「へるもんじゃねーし見せちまえよ」
「そうネ江戸巡りする前に一発度胸つけとけヨ」
早速仲良くなった絆を発揮する二人に負け
「院長先生が言うには…生まれた時には
すでに手にもってたらしいです」
おずおずと唯碗が襟元から首にかけた鎖を手繰り
取り出された"お守り"がキラリと輝いた
大きさは金メダル程だろうが、彼の手の平では
それよりも少し小さく見える
歯車を思わせる 大と小の凹凸に刻まれた外周の円盤に
二等辺三角の穴が均一に三つ空いており
その内部に添う緻密な細工で刻印されているのは
向かい合う一対の"片羽の鳥"らしきモノ
「なんかキレイアルなー」
「これ…本物の金ですかね?」
「なワケあるかよ、しかしオモチャにしちゃ
ヤケに凝った造りじゃねぇか」
"お守り"に集中する視線が気に食わないのか
横から不機嫌そうに彼が言う
「言っとくけど オレの子分のお守り
勝手に取ったらショーチしねーぞ」
「安心しろ啓一、その様な不届き者は
私の知り合いにはおらぬ故」
「そーそー こちとらガキのオモチャに
手ェ出すほど落ちぶれちゃいねぇっての」
頬を赤くし"お守り"をしまう唯碗を見届けて
「それよか早く江戸の町を見に行こうぜ!」
「だぁっ待てコラ!右も左も分からねぇガキが
勝手に外に出てくんじゃねぇ!」
せがむように叫び、飛び出しかけた啓一の
首根っこを銀時が掴んだ
「ったく、なんでオレがガキのお守なんざ…」
「決まった事を蒸し返しても仕方なかろう」
正論を返す無表情に八つ当たりで軽くチョップし
玄関にカギをかけ、万事屋一行は子供二人を
引き連れての江戸案内を開始した
も今の時点では、特に用事も無いらしく
そのまま二人の江戸案内に付き合うとの事
「二人は江戸に行きたいって聞いたけど
…どこか見たい所があるの?」
新八の問いに、早速下から勢いのいい挙手が
「オレまずはキレーでおっぱいデカい
ネーちゃんを見たい!出来たらモみたい!!」
「んなもんオメーの田舎でも見れんだろエロガキ」
「いねーから見てぇの!やっぱバカじゃねーの
おっさん アタマ悪そーなツラしてるし!!」
「テメェだってどっこいだろクソガキぃぃぃ!!」
大人気ないケンカ第二段を勃発させる雇い主へ
二人は早々に見切りをつけ もう片方へ問う
「バカは放っといて、唯碗は希望アルあるか?」
「あの…一度、ターミナルの中をくわしく
見てみたいんですけど…」
「ターミナル見学か…悪くはないけど
今日来たばっかだし日を改めてからの方がいいかな」
「しからば どこへ案内するが得策だろうな」
行き先に悩む彼らの側、店の入り口から
ひょっこりと二人の女性が顔を出す
「こんにちは皆さん」
「ん?何だいアンタら 妙なガキと大男連れて」
「こんにちはお登勢殿にたま殿、今から
江戸案内をするつもりだが行き先に悩んでおっ
「省くんじゃないっつーの」
ビシッとツッコミを入れ、と銀時から
事情を聞くお登勢と卵を
残った子供組は遠巻きに眺めている
「なぁなぁ女王、あのバーさんとネーちゃんは?」
「ウチの大家とスナックの従業員ネ
あともう一人 猫耳の年増ババアがいるアル」
「スナックって…おかしじゃないんですか?」
「あーうん、そういう名前のお酒を飲む
大人のお店があるんだよ」
…と、事情を聞き終えたお登勢が二人の前に立ち
値踏みするかのようにジロリと一瞥する
「へぇ〜コレがあの娘っ子んトコのガキかい」
「え、バーさんもババアのこと知ってんのか?」
「ダメだってそんな口きいちゃ!ゴメンなさい
ケイイチ君は口が悪いだけなんです…」
「そっちのチビは生意気だけど、アンタ
ブサイク面の割にゃ礼儀正しいじゃないか」
小さく笑った辺りで もう一人の従業員が
重そうにケースを抱えて現れる
「オ登勢サーン、コレ結構重タイデース」
「ああちょっと待っとくれキャサリン…
何だ、今日のはそこそこ量あるね」
見に行った彼女の言葉通り、仕入れた品の
ケースはそれなりに小山を作って積まれている
やれやれと零し お登勢は振り返り様言った
「ちょいとアンタら、少し手ぇ貸してっとくれ」
「承知した」
頼みにがすかさず行動へ移し
神楽と新八もソレに続いて動き出す
…が銀時は佇んだまま、残りの二人の背を叩いた
「何ボサっとしてんの?お前らも
行って手伝って来いよガキども」
「えっ…ええぇぇぇ!?」
「ってオレたちもやるのかよ!?」
「当たり前ぇだろ、これも立派な社会勉強だ」
「いやいやいや仮にも他所様の子供に
いきなり仕事手伝わすってのはどうかと!」
「それに銀ちゃんだけサボろうったってそーは」
当然 程なくお登勢の怒号が飛来した
「いーからとっとと手伝わんかいテメーらぁ!」
『へーい!!』
手際よく別れる三人へ やや戸惑いつつ二人も
側へと寄って位置についた
そして手早く仕事も終わり、六人は特に
当ても無いまま町中を歩き出す
「あ゛ー疲れた…にしても唯碗オメェ
デケェ図体の割にゃ非力なんだな」
「ご…ゴメンなさい…」
「まさかケース一個で潰れるなんて予想外ネ」
二人の言葉に、彼は汗だくのままうな垂れる
「本人とて一生懸命頑張ったのだ
その言い方はなかろうお主ら」
「コイツ見かけだおしだからな ウィヒヒヒ!」
からかうように笑う啓一には余り汗が浮いてない
…誤解無きよう捕捉するが、彼は重いケースを
幾つか片手で持ち運びしていた
「同い年なのにどうしてこんなに
差があるんですかね?」
「オレが知るかよ、お前何か特技とかねーの?」
胸元を握り 弱々しい声音で少年は返す
「あの…ボク、あやとりが好きでっその…」
「ダメだろ!んなナヨナヨしたモン全然ダメだ
男ならケンカか野球だろ、なーネーちゃん!!」
「あーダメアル 結構ノーコンね」
振られた当人よりも素早く神楽が答える
「そうなの?」
「モノが軽いと、どうも手元が狂ってな
槍なら自信が「ソレ野球じゃ無くなりますから」
真顔のその発言になんか噛み合わないモノを
感じながらも、分からない二人は聞き流す事にした
「つーか今どこに向かってんだよおっさん」
「あん?とりあえず身体使ったしまずメシだろ
オメーらだって腹減ってんだろ?」
「銀ちゃん言うほど働いてないアル」
目的地に着き、引き戸を開ければ
見慣れた料理屋の亭主が厨房から出迎える
「いらっしゃい旦那、今日は大勢で来たね」
「おう ちょっと知り合いのガキども
預かっちゃってよ…いやー参った参った」
挨拶もそこそこに適当な席へつき
注文をしようとした段階で、新たに客がやって来た
「親父 今日はいつものじゃなく…げ!」
「って何でテメーが来るわけ?サボりか」
「オレのはれっきとした休憩だっつーの
テメーこそまたぞろ妙なの引き連れて一体何だ?」
「一般市民が仲間内でメシ喰いに来ちゃ
いけないんですかぁー警察屋さーん?」
火花散る嫌味合戦の傍ら 蚊帳の外にいる
彼らが小声でささやきあう
「アレって、真撰組の制服ですよね?」
「流石にそれは知ってたアルな その通り
アイツらこそ天下無敵の税金泥棒ヨ」
「あの顔オレもTVで見た!TVよりも
もっと目つき悪っりーしガラ悪そう!」
「瞳孔マヨ殿だから仕方なかろう」
「お前ら聞こえてんぞそこ!特に最後
どーいう意味だ槍ムスメぇぇ!!」
ドスの聞いた低い声にお子様二人と新八は
肩を竦めるが 神楽と銀時は屁のかっぱ
名指された当人に至っては眉一つ動かない
「…二人とも何を頼むか決めたか?」
「無視かコラ!さり気に無視か!!」
彼らと土方がどういう関係かまでは
初対面の二人には全く分からなかったものの
とりあえず銀時とは、彼が嫌いらしい
雰囲気は何とはなしに理解した
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あとがき(というか楽屋裏)
狐狗狸:やっと外に出て、これから二人は色々
やらかしたり学んでいくカンジです〜
神楽:それより ノーコンでよく白鴉ん時
マダオやヅラとかジャストミート出来たアルな
狐狗狸:ある程度の重量がある物体…特に形状が
槍なら精密に目標へ投げられます
新八:いるかそんな不必要な誰得情報ぅぅぅ!
銀時:だよな〜バーさんと親父はともかく
大串君もいらねぇだろ、ぶっちゃけ
土方:ざけんなゴラ!それと
しつけぇよいい加減その呼び名ぁぁ!!
狐狗狸:(スルースキル発動)えー皆さんは
お気づきでしょうが、時間軸は親父生前時っす
"お守り"モチーフは歯車+核+某ゲーム紋章
…一応理由はありますが趣味全開サーセン
様 読んでいただきありがとうございました!