「ちょっと神楽ちゃ、子供相手にケンカは」


慌てて啓一を引き剥がそうとして


ボディーブローの流れ弾をくらい吹っ飛ぶ新八





「イダダダダダっ!」


「おいおいぱっつぁんよぉ〜お前なに
ガキに負けてんだよ情けねぇ…ブガァ!


言いつつ取り押さえようと手を出した銀時もまた

暴れまわる彼の力に負け、あっさり投げ捨てられた





「この子強っ!意外に力強っ!!」


「あ…ケイイチ君、見た目よりすっごく
チカラもちなんです…なので気をつけてくださ」


「遅ぇよ警告すんのがぁぁぁ!!」


「ごっごごごごめんなさいっ!!





怒鳴られ、思わず真っ青になりながら謝る唯碗


その直後に向こう脛を蹴飛ばされ


「ぎゃあぁっ!?」





銀時は思わず目に涙を浮かべ 打撃箇所を押さえる





「おい!オレの子分になーにエラそうに
どなってんだおっさん!」



蹴り上げたのは、鼻血を垂らしながらも
腰に手を当て仁王立ちに睨む啓一





「っだぁぁ!何しやがんだクソガキ!!」


「うわっ何すんだよ!イダダダダダっ!!







振り解こうともがく怪力をどうにか押さえ込み

見事なまでのアルゼンチンバックブリーカー
決め込もうとしていた矢先


ひょい、と彼の腕から子供が救出された











第ニ訓 問題児に必要なのは荒療治…かも?











「その辺にしておけ、大人気ないぞ」


「あに言ってんだ!こーいうガキは
社会出る前に一辺シメといた方がいいんだって!」



「いや…幾らなんでもプロレス技は
大人げないでしょ 流石に」


「ネーちゃんとメガネのいう通りだぜ
お子さま相手に大人げねーんだよバーカ!





二人に咎められる銀時を、彼らの後ろに
回った啓一もここぞとばかりに責め立てる





「こんのぉぉ…」





アカンベーをかます憎たらしい顔に手が再び


伸ばされるより早く、前へ出た唯碗が
胸元を握りながら深々と 周囲へ頭を下げた


あ…あのっゴメンなさい!ケイイチ君が
いきなりメイワクかけてしまって…」


「気にする事ないネ、それよりお前
ガキのクセにいいパンチ持ってるアルな」





神楽の言葉に、鼻の下を擦りながら啓一も笑う





へへん オレとはり合えるなんて
お前もやるじゃねーかチャイナ女」


「どうせなら神楽かかぶき町の女王って呼ぶネ」


よし!じゃあお前もトクベツにオレを
呼びすてで呼んでいーぜ女王!」





やや身長差はあるものの 満足のいった笑み
二人は互いの拳を合わせた





「おお…早速仲良くなったようだな」


「いやいや、どこの青春ドラマの川原ですか?」


表情一つ変えない呟きに 淡々と新八がツッコむ







「で、テメーら貧乳ネーちゃんから
どういう経緯でここに来るよう言われたワケ?」





渋面の銀時に、見下ろし気味に言われてか

二人はちょっとビビりながらも顔を見合わせる





「ボクらにしてもイキナリだったんですけど…」


「ババアがやたら進めてきたんだよ…つか
ノドかわいた なんかジュースだしてくれよー」


「ちょっちょっとケイイチ君!


「じゃあとりあえず座りながら話を聞こうか
…ええと、そっちはお茶でもいいかな?」


「あ、スイマセン…お願いします」





応接間のソファに案内され 出されたお茶と
いちご牛乳をすすりながらお子様二人が語るは


数日前の童子の里で起こった出来事…









ダメだダメだ全然ダメだな、こんな田舎じゃ
オレの理想のおっぱいは見つかんねーぜっ!」


「危ないよケイイチ君…おこられるし下りてきなよ」


「あん?ビビリの子分はだまってろ、ウィヒヒ」





高々と伸びる木の上で笑う啓一を 下で
胸元を握りながら不安げに唯碗が見上げている





「にしても空は広ぇなー…この空のむこうに
オレたちの生まれた星があんのかな?」


「え…うん、そうかもしれない…」


「オレたちの生まれた星なら、オレ好みの
デッカイおっぱいがいっぱいあっかなー」


え!?そ、それは…」


「テメーにきいてねーよバーカ」





頬を染め、戸惑う唯碗に向けて木の枝が
投げつけられた所で







「やっぱりここにいたのね、啓一君!」


少し顔に怒りを乗せた エプロン姿の
烏魔 梗子が二人のいる木までやってくる





「梗子先生…」


げっ、ババア…!」





顔をしかめ それでも器用にするすると
啓一が木を下りきったのを見計らい


彼女は手を腰に当て、やや咎めるように言う





「どーして院長先生の作ったごはんを
残しちゃうのかしら?せっかくみんなの為に
丹精込めた野菜から作ってくれたのに…」


「あんなヤサイばっかのメシいらねーよ!」


好き嫌いしちゃダメでしょう?お野菜さんと
院長先生を悲しい気持ちにさせて悪い子ね」





ばつが悪そうに顔を歪めてから、彼は
隣でもじもじする唯碗の脇腹を突いてささやく





「オイ、なんでお前全部食わねーんだイワン!
食っとけっていっただろ!


「だ…だってボクお腹イッパイになっちゃったし…」





もちろん会話の内容は梗子に丸聞こえである





「まぁ、また唯碗君に押し付けてたのね?

呆れた…お友達をイジメちゃダメだって
いつも言われているでしょう?」


「こいつはいーの、オレの子分だから!


「ここの子供達は皆 大事なお友達で家族だって
院長先生いつも言ってるでしょ?」







返す刀で諭され反論が出来なくなる
啓一に対し、おずおずと呟く唯碗





「ほらおこられた…あやまりなよケイイチ君」


やだねーだ!
エラそうにすんなイワンのクセに!」


勢いよくベロを出す悪ガキに それでも彼女は
努めて優しく相手を叱る





「お友達をイジメちゃダメでしょ?それに
唯碗君は、アナタと同じ境遇の子なんだから
もっと仲良くしてあげなさい」


「う、うっせーよババア!」


「ケイイチ君、梗子先生にそんなコト言っちゃ
ダメだよ…いたい!


「だまれよウスノロイワン!
図体ばっかデカいだけのクセして!」






脇腹へのパンチと同時に、片腕を掴んで
彼の巨体を地面へ引き倒そうとする啓一の


その腕を掴み…梗子が釣り気味の目を眇めて呟く


「あんまりヤンチャばっかりするなら…
苦ぁいお薬飲ませるわよ?


「ご、ゴメンなさいぃぃぃぃ!





"白鴉"以来の気迫と、過去の経験から

言われた当人は思わず涙目になり


助けられた唯碗ですら青くなりながら両手で
胸元の辺りを強く握り 震えていた





手を離して梗子は軽くため息をついた







この孤児院での生活は充実しているとは言え

やってくる子供は後を絶たず、当然
色々な事情や問題も抱えてはいる


…が 中でも一際手を焼かせるのが
年と境遇が全く同じのこの二人





イタズラ盛りの(若干おっぱい星人な)ガキ大将と


大きい身体に似合わずとても内気で臆病な少年






(別に悪い子達じゃ無いんだけど…もう少し
性格がまともになって欲しいって言うか…)


などと考えていた彼女の脳裏に


ふっ、と一つの考えが過ぎった







「…そうだ、二人ともこの間
江戸に行ってみたいって言ってたわよね?」


「「江戸…?うん、まあ」」





時折語られる話を熱心にせがんだり


TVで見かける情報を食い入るように見つめたり


行った事の無い都会の情景に興味を持つのは

年頃の子供ならば当然だろうけれども





特に強く熱意を示していたのは、この二人だった





ソレを思い出して梗子は 江戸にいる知人達へ


子供達の見聞と認識を広める"社会科見学"
頼み込む事を決めたのだった









「そりゃまた何とも単純アルな」


「"可愛い子には旅をさせよって言うじゃない"
って…梗子先生から言われまして」


「だからって江戸までこさせなくても
いーだろ別に?どんだけ遠出させてんの?


「それにしても…啓一は女性の胸が好きか」





空気を読まない発言に、しかし彼は食いついた





「大好きだぜ!肉とおなじぐらい好き!
でもキラいなのはヤサイ、とくにニンニク!」



「ダメだぞ好き嫌いばかりしておっては」


「いやさん そーいう問題ですか?」







何にせよ二人がやって来た目的も判明し


万事屋三人が頭を突き合わせ話し合い始める





「…で、このガキどもウチに連れて来て
どーしろってんだよ?」


「決まってるネ、江戸を見せて回るアル!」


「その前にあの二人…両方ともここに
泊めるんですか?」





深刻な新八の台詞ももっともだろう


既に神楽と定春が居候している万事屋へ

更に子供二人を預かるつもりが銀時に無い事は
当人の表情から十二分に推し量れる







「…おい、マジでお前んトコにこいつら
両方とも預かれねぇわけ?」





呼ばれては無表情のまま淡々と言う





「兄上は 二人はダメだと言っておられた」


「ってことは一人はOKアルか?」





恐らくは、と返した所で彼の腹は決まった





「よーし じゃあそのクソ生意気なガキンチョ
お前が責任持って預かるように」


「ってカッテに決めんじゃねーよおっさん!


見事な勢いに乗った空のコップが

スコーン!と小気味よい音を響かせて
銀時の額に命中したのだった








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:真意っつー程でも無いですが、とにかく
いい加減までは日常パートでギャグります


銀時:え?何ソノ"日常パート"って?


狐狗狸:フフフフ腐…そこは話が進んでからの
お楽しみってヤツでさぁ


新八:なんでそこで沖田さん口調?


神楽:てゆか、チャイナはアイツら税金泥棒
思い出さすから多用されたくないアル


狐狗狸:女王はOKなんですね…つか次回以降
どうやって貶めようかな(主に銀さんを)


銀時:ちょっそれどーいう意味ぃぃ!?




来て早速、彼らは江戸の空気に触れる


様 読んでいただきありがとうございました!