突然の乱入者から二人は少年を庇いつつ身構え


執事は、怒りを隠すことなく言葉を放つ





「貴様っ…あの二人を寄越すだけじゃ飽き足らず
自ら王子を狙いに来るとは何たる不遜!!」


「星の気配を追えるのが貴様だけと思うな
それに妬ましき相手は自らで屠るのが流儀っ!!


「舐めるな狼藉者程度が、いくら実力があろうとも
三人一斉に勝てる道理は…保護者殿はいずこへ!?


狼藉者の足元だレチマ殿」





淡々とが 巨体の下敷きになった侍を目で差す





「なっ、不意打ちで昏倒とは軟弱な!」


「私を無視するその余裕…妬ましい嫉ましい!





正眼に添えて突き出された槍から
咄嗟にレチマは唯碗を庇い 背面を負傷する





「レチマさんっ!」


「ぐっ…」







続けて進軍しようと押し進みかけて





下方の死角から突き出された槍を、襲撃者は
柄と身のこなしを駆使して回避する





その間隙を縫って逆に攻撃に出るだが

盾のように回転する大槍に阻まれて距離を取り直す











第十五訓 月は変わったが、ハロウィンはいいぞ











「ほう、貴様が邪苦の言っていた有守流の使い手か

流派と名ぐらいは聞いておこうか…」


「自らの姿も晒せぬ無礼者に、教える道理無し」





無表情での一言に ピクリとフードが震え





「いいだろう…見せてやる
歩執守貴族種である我が姿を、冥土の土産にっ!


相手はまとっていたそれを勢いよく剥ぎ取る







ソレは…正に"異形"としか形容できない姿だった


鎧に覆われた体躯からはみ出ているのは

七対のカエルの足にも似た腕


背に生えた鳥の羽も山羊のような頭も
全てが黄金色に輝いているが





その頭に並ぶ七つの眼球だけが、血のように赤い





「銀時なら蜘蛛もどきとでも言いそうだが…
まあいい、有守流・派として相手致す」


「口上を述べる冷静さ…益々もって妬ましい!」







同じ槍術同士の睨み合いを呈した二人を
呆然と見ていた唯碗を、執事が我に返らせる





「王子、今の内に船内へお逃げください!」


「でっでもレチマさんだってケガを」


「あの程度の傷なら既に塞がっております…
さぁ!お早く!





申し訳無さそうに頷き 少年は胸元を
握り締めながら船の搭乗口へと駆けて





「私がいつそれを許した……やれ!


襲撃者の声を合図に、怪物然とした者達が

少年と特務管とを取り囲む






「なっ…伏兵だとっ!?」


「あの賞金稼ぎどもが騒ぎを大きくしてる合間
船に潜伏していた私兵どもが手配を済ませてくれた」





愉悦を滲ませて襲撃者は両手を広げ宣言する





今、この建物は私が占拠した!

もはや誰にも私を止める事は出来ないっ!!
誰にも私の邪魔をさせるものかっっ!!」






――――――――――――――――――――









ようやくターミナルの入場ゲートが視界に入り







「な、なんだあの人だかり?」


「奴らの騒ぎに要請された警官にしちゃ数が多い
…一体何が起きてやがる」


「副長!大変です!!」





訝しがる二人の元へ、血相を変えた山崎が
駆けつけてきた





「って山崎テメェ、あのトカゲ張ってたんじゃ…
いやそれより 一体これは何の騒ぎだ!」


「特務管が無事万事屋の旦那方と合流したんで
連絡を入れようとした矢先に、いきなり沸いて出た
武装天人の連中がターミナルを占拠し始めて…!」


あんだと!?
クソッ…賞金首の奴らはこれの捨て石かっ!」





苦々しげに吐き出された言葉の直後







一つの爆音と閃光が ターミナルを揺るがした





「…イワン!」


「ってオイ待て啓一!







土方の制止を振り切り、止めに入る人間を跳ね飛ばし





「イワン!おっさん!ネーちゃん!トカゲ!

だれでもいーから返事してくれっ!!」



呼びかけながら彼は合流場所と相手を探して
ターミナルの通路を駆けていく





と、曲がり角からゲームの雑魚敵として
現れそうな魔物の群れが立ちはだかった





「誰だアレ、新しい侵入者か?」


シラネーヨ トニカク殺ッチマエ!」


「うっうわわわっ!!


すぐさま回れ右で離脱を試みる啓一だが





新たな群れが行く先にも現れて挟み込まれ

逃げ場を失って袋小路へ追い込まれる





「ヘッヘッヘ モー逃ゲラレナイz」


「「トリック、オア」」


「トッリィィィトォォォォ!!」





獲物を前に油断していた敵の群れへ


横合いから現れたカボチャやバズーカが
容赦なく飛来した






『どあぁおああぁぁぁああぁぁ!?』


半数を倒され、浮き足立った残りの残党を片付け





「ったく、チャイナが取り逃がしたデカブツ
追っかけたら…ターミナルでハロウィンたぁな」


「アイツが逃げただけアル!イタズラしに来た
モンスターどもは私が一発退散させちゃるネ!」



「あんまりターミナル破壊しないでよ二人とも」





入れ替わるように彼の前へ 新八達が現れる





「ってアレ?ひょっとして…啓一君?」


「お前一人だけで何してるアルか」


「土方あのヤローは死んだのかぃ?」





ハッと正気に戻った啓一は 問いかけに首を振り





「…っサンキューな女王、メガネ、ドSっ!!」


それだけ言うと再び先へと飛び出していく





――――――――――――――――――――









「ぐ…無念……」





最後の伏兵と相打って倒れたレチマを見下ろし





「これで邪魔者が全て片付いた」


襲撃者は満足そうに呟くと 標的の姿を探す







青白い顔の少年は…彼を守って倒れた満身創痍の
少女へ寄り添い、手を取っていた





「まっててくださいさん!今すぐ治して…」


言いかけた唯碗は槍の柄で殴打されて
少し離れた床へと吹き飛ばされる






「王族の治癒の力を使うとは…やはり王子!
妬ましい嫉ましいネタマシイ!!





咳き込み、それでも彼女の元へ
這い進もうとする彼へ 槍の矛先が降ろされ







「―ウィヒアアァァァァァァァ!





直前で割って入った啓一の跳び蹴りが

襲撃者を退ける形でそれを阻止した





「おっおおお、オレの子分に手ぇ出すな!


「ケイイチ君!どうして…」


「バッカヤロー!子分のクセに
カッコつけようなんて早ぇーんだよ!!」






叫ぶ声も足も震えがにじんでいたけれども


彼は唯碗ととを 庇うように背に隠す





「オレもネーちゃんたちみたく戦ってやる!
お前なんかコワくねーぞバーカ!!


「…ダメだよ、にげてケイイチ君!」





か細い声を振り絞り、強くかぶりを振って
半身を起こした少年が這い進み


自らを狙う矛先の前へ身を差し出す


「ケイイチ君やさんたちは関係ないんです

ボクが王子です だから、手を出すなら
ボクだけにしてくださいっ!



「なっ…お前だってコエーくせに
出てくんなバカイワン!下がってろ!!」






互いに互いを庇い合う二人の姿に

襲撃者の抱く殺意が、強さを増した





「美しい友情…実に妬ましい、嫉ましい!
安心しろ貴様らはまとめて始末してやる!!





大上段に持ち上げられた大槍の刃が迫り

二人は身を硬くして 目を閉じる







鋼が肉を抉る音ではなく


鋼が硬質の何かに弾かれ噛み合った音が聞こえ
啓一と唯碗が恐る恐る目を開いて







「本当 いいダチ持ったなオメーら」





襲撃者の凶刃を防ぐ、銀髪の大きな背中を見た





「「ぎ…銀さぁぁぁぁん!!」」


「貴様ぁぁ…そこを退け!」


「やなこった、よっくも踏み倒してくれやがったな
とても痛かったのでとてもムカつきました〜」





相手が槍を引っ込めた一瞬の隙を逃さず


銀時は思い切り襲撃者を、遠くの壁際まで蹴飛ばした





「蹴り一撃でここまで傷を負わせる怪力…

地球人の分際で妬ましい嫉ましいネタマシイ!





身を起こし様、槍と足のバネを利用して
高く跳んだ襲撃者の一撃を紙一重でかわし


引き続く猛攻を木刀で裁きながら 彼は問う





「テメーの国でバカ騒ぎ起こして、足りずに
ガキども追っかけまわして楽しいか?蜘蛛キメラ」


黙れ地球人が!そこの王子どもさえ殺せば
私は満足なんだ、その為なら国の人間が
幾人死のうが江戸と戦になろうが構うものか!!」


突き入れられた槍の穂先が肩口を斬り


手元へ引き戻されるハズの穂先が
凄まじい速度で唸りを上げて横へと薙がれ





「くっ!」


寸前でしゃがんだ銀時の頭上を掠めて過ぎた





「強い者ばかりで妬ましい嫉ましいぃぃ…
ああもう皆死ねばいいぃぃぃぃ!!






発狂に近しい叫びを上げて、突きの乱打が放たれ

少年達を護る身体が見る見る内にに染まるが





「そちらさんの狙いも…法も国際問題も
ぶっちゃけ知ったこっちゃねーんだよ!」





閃く刃先へ一歩踏み出した銀時が


下から突き上げるように山羊頭の顎先を
跳ね上げて一瞬だけ手を止めさせる





「ぐ…ぅぅう妬ましい嫉ましいネタマシイぃぃ!







七つの目玉が一斉にぎらついて
彼の心臓を狙った槍の一撃が繰り出されるが


それは残像と床板を貫いたのみで終わり


避けた勢いで乗った柄を足場にして





「他所の国にまで面倒な問題持ち込みやがって

悪夢街の住人はホラーの国に帰れぇぇぇぇ!!






山羊頭ごと 木刀が強く床へと叩き込まれた








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:ボスの外見は"ミシ ャンドラ"という
悪魔の姿まんまです 詳細はア ンサイクロp


銀時:そんな中二病漂う詳細いるかぁぁ!


神楽:明らか後付けのでっち上げクサいアル
てーかカエルの足十四本もあるだけムダね


狐狗狸:ハイハイどーせ見た目だけのキャラです
悪かったですねコノヤロー!


新八:開き直ったよ 最悪だなアンタ


狐狗狸:どうせ三流だからいきなりターミナルが
伏兵に占拠されてても神楽ちゃん達が各所で
ハロウィンデルタアタックかましてても


銀さんがちゃっかり前回の話で普段着に着替えてても
全ては説明がつくんですぅー


新八:そうだったの!?
てゆうかよく考えれば、あの爆発ってもしかして…


沖田:ちょーどいいや、おぃバ管理人
十月延長って事でトリックオアトリック!


狐狗狸:選択権ナッシング!?


銀時&新八:それ某サイトからのパクリィィ!!




恐怖の一時が終わり、二人は一つの答えを選ぶ


様 読んでいただきありがとうございました!