「局長に副長 それに沖田隊長ぉぉ!」


「遅れて申し訳ございません!!」





人形どもの真っ只中で小競り合いをしていた
オレ達を引っ張り出したのは

遅れてやって来た隊士達だった





警備の不備について聞けば、

どーやらあの刃物野郎が近くで
暴れてるのを取り押さえようとして


人形女の人形どもに押さえつけられてたとか





厳重警備に当たってるたぁいえ、従来の激務に
昨日の一件プラスで屯所の人員も手薄になってる


その隙を突いた奇襲たぁ…





「賞金稼ぎにしちゃ頭使ってやすねぃ」


「ふざけやがって…奴ら二人をふん捕まえて
裏にいる奴吐かせてやる!行くぞテメェら!!





駆けつけた隊士どもを引きつれ、オレらが
元来た廊下へ駆け戻れば…







「ぐあぁっ!!」





そこに色物特務管どもが傷だらけで倒れこむ





マリエズさんにレチマさん?!一体どうし…」


驚いた近藤さんの声音が途中で止まった


土方さんもオレも、他の奴らも吹きだして来る
殺気に足を止め 刀の柄に手をかけ構える





「特務管だか何だか知らねぇがよぉ!
ボスの前じゃ形無しだなぁうあぁぁぅあ!!」






殺気の主はくそエラそーに吼える刃物野郎の隣


フード被ってデケー槍を構えた―





「…なんでぃアイツぁ」











第十ニ訓 作中ではまだ十月延長ってコトで











屯所から街までひた走り、細い路地に入り込んで


そこでようやく六人は足を止めた





「今の所 追っ手はまだ見えないようだ」


「あのっ…あの、真撰組のみなさんや
レチマさんたちは大丈夫なんでしょうか…」


「平気ヨ、トカゲどもはともかくあの三バカ
アレぐらいでくたばるタマじゃないアル」


「町まで出たのはいいんですけど…僕ら
これからどうしたら、おわっ!





急に袖を引かれ 新八はややつんのめった





「にげろって言ってたけど、どこににげたら
いいんだよ!なぁ!?



「お、落ち着いて啓一君」


「見つけたぞテメェら!」


背後からかけられた声に振り向き様全員身構え





相手を確認した瞬間、全員の緊張も同時に解ける


「んな狭ぇトコでコソコソしてんじゃねーよ」


「追われてるんのに無茶言うなよ大串君」


誰が大串だ…っと無駄口叩いてるヒマはねぇ
ターミナルへ行くからついて来いガキども」


「どーいう事アルか?説明するネ!







訝しげな視線に晒され、彼が道すがら
掻い摘んで説明したのは





六人が屯所から脱出した直後


神楽が見たらしき風貌の者が大振りの槍
振り回して特務管の二人と隊士数名を負傷させ


子供達を追って賞金稼ぎ両名を引き連れ逃亡した事





ついで 再確認の意味を込めて

昨日の話により浮上した"厄介な問題"







「そうか…政治が絡むと色々面倒だな」


「お前ちゃんと理解して言ってるアルか?」


首謀者だけ無傷で捕まえるって事は
出来そうにありませんか?」


無理だな 大の大人数人を薙ぎ散らす奴相手に
加減してたらこっちの被害がデカくなる」





かといって下手に傷つければ、後々でそれが
国際問題へと発展してしまう





「つまりあの二人組が復帰しねぇと親玉は
抑えられねぇっつーわけか、面倒だな」


「それは分かりましたけど…それがどうして
ターミナルへ行く事に繋がるんですか?」


「そーだよ オレらまもるんじゃねぇのかよ!


「言われなくてもそのつもりだが…特務管とか
言ってた連中からも注文があるんだよ」







―三人が屯所から逃亡してすぐ、レチマは言った





「警察の皆様方 すぐに王子達を見つけて
ターミナルの私どもの船へお連れください!」



痛々しげに身を起こし、マリエズを支えて
歩き出そうとする彼を近藤が止める





「待ってくれ、アンタ方はどこへ?


「私どもは先に船に向かうつもりです」





悔しげながらも語った当人によれば


少しでも頑強な建物で、集中した警護
切り替え敵による襲撃を防ぐつもりとのこと





「本来すぐにでも王子をお連れしたい所ですが
妻がこの怪我では奴らに太刀打ちが出来ません…」





足手まといとなるよりは先に妻の負傷を直すと告げ


二人はそのままターミナルへ向かったらしいが…







「なんか胡散臭いアルな」


「そう思って、一応山崎に後をつけさせてある
妙な動きがありゃ知らせが入るだろうが…」


「でも、あの人たちは味方なんじゃないでしょうか
ボクらを助けてくれたワケですし」


「主にお前がダイジだからな」





おずおずと夫婦を擁護した少年は

突き放すその一言で、余計に俯き
胸元をきつく握り直して黙ってしまう





啓一、その言い方は無いだろう」


「ネーちゃんも…コイツのことがダイジなのか?」


「そういう意味では」


ない、と言いかけたの言葉を遮るように





勢いよく側のマンホールが跳ね上がり


そこから何故か半分顔の欠けたマネキンが
虫のような四つんばいで次々這い出してきた






『どあぁぁぁぁぁ!!』







押されて走り出す七人の行く手


ちょうど前方の道路のマンホールも跳ね上がり





「王子どものニオイだあぅあぁぅあ!」


両手をすり合わせた邪苦も飛び出して―





「ここであったがオガッア゛ァァァァァ…!





銀時と土方にドタマを踏まれて、あっけなく
元来た下水道へ瞬殺される







「ターミナルの二人の船までたどり着ければ
何とかなるんでしょーね!?」



オレに聞くな!奴らに何か考えでもあんだろ!」





二人を護る態勢を取りながら、ターミナルへと
歩を進めていく七人だが





「そっち言ったぞうぁあ!」


「アア゛アァァァア゛アァァアァアァァア゛アァ」





要所要所で殺取が先回りや思わぬ場所からの
出現を繰り返し、中々先へと進めない





背後から迫る人形を振り切ろうと角を曲がり

商店街らしき通りを出れば





前方からフードの人物が槍を片手に直進してくる


「あ…アイツは!」


「星の気配が二つ…護られて実に妬ましいぃぃ!





庇われる二人に向けて無造作に振り上げられた
大振りの槍が突き出されるよりも早く


八百屋へ駆け込んだ神楽が行動を起こし





フードの人物の頭に、カボチャが直撃した





僅かによろめき投げられた方を向いた刹那


先程の比じゃない量のカボチャが飛来し

相手は咄嗟に槍を振るって防御に徹する





オィィ!奴を傷つけたら
国際問題になるっつってたろ!話聞いてた!?」



「何言ってるアルか、これはハロウィンに
つきものの伝統行事"カボチャ投げ祭り"アル!」


無いからそんな物騒な行事!てゆうか
ハロウィンは先月で終了しちゃったじゃん!」





カボチャ攻撃が止んだと同時に、奴はフードに
隠れた目玉をいくつもギラつかせ神楽を見据える





「貴様…昨日私の邪魔をした小娘か!」


「覚えてたアルか、ちょうどいいネ
昨日ディスられた恨み晴らさせてもらうヨ!」





互いに戦闘態勢取り出したのを見て取って





「それじゃ任せたぞ新八ィ、神楽!」


「えちょっ!僕もですかぁぁぁぁ!?





タイマン始めた二人と、ついでに呆然と眺めてた
新八を置き去りに五人はその場から離脱する









しかし四方から這うように追い続ける人形と

腕の刃物を振り回して接近する猫背男の追跡は


一定の間を置きながらしつこく続いている







「一気に来ないトコ見るとそーとー
ナメられてんなオレら…うどわっ!?


「このまま逃げててもジリ貧だ、一端どこかに―!」





背後からすがる人形を振り払い 五人は寂れかけた
カラオケボックスになだれ込むと





「おいガキども!急いで扉の前にモノを積め!」


「「は、はいっ!」」





啓一がソファを、唯碗が植木を引っ張ってきて
バリケードを形成した





「あ、あのお客様っ」


警察だ!緊急につき
この店に一時留まらせてもらうぞ」





手帳を突きつけ、土方が鋭く睨みを利かせると





「はっはははい!どうぞお部屋もご自由に
おつかいくださいませぇぇ〜…」


"ウタヤ"と店名入りプレートをつけた店主は即座に
愛想笑いを浮かべて壁にある部屋の見取り図を示した





現在地の入り口付近と 奥にある非常口を
挟んだ室内は一つの大きな回廊となっており


その通路の内壁と外壁にそれぞれ

適度な広さを持った部屋が点在するようだ







外で群がる人形達が、ガリガリと途切れる事無く
戸板を引っ掻き続けているのは


恐らく 中の五人を煽る算段に違いないが…





「下手に非常口から抜けても同じ事の繰り返しだな

…どうやって、奴らの目を誤魔化すか」





息を整えながらも小さく震えている二人と

店内に並べられたコスプレ衣装とに目を走らせ





銀時の脳裏に一つの"作戦"が浮かんだ


「奴らがガキどもの居場所が分かるってんなら
それを逆手に取るっつーのはどうよ?」


「何か案があるのか?銀時」


「まーな、啓一ィ
総一郎君からのプレゼントはまだ持ってんな?」


「え、うんイヤイヤもってるけどよ…」





しかめっ面で啓一は、懐から
たまり漬けニンニクのビンを出してみせる





「よーし じゃ土方君そこのソレ取ってくんね
ちょーど二人分あるみてーだし」


「自分で取れよ…なるほど、テメェらしい手だ」





そこで彼もまた 相手の意図を理解する





「けど賛成は出来ねぇな、リスクもデケェし
第一面倒だ 片っ端から斬る方が早ぇ」


「あん?コレが不服だってんなら
テメェが囮になって玉砕してこいやビビリ土方」


何で護衛が捨て石!?お前が玉砕しろぉぉ!!」





ケンカが始まりそうになった手前で
いくつも突き出した刃がバリケードを微塵に砕き


壊れた扉から押し入った人形達が、店主へ絡みつく



「悩んでる時間ねぇなコリャ…先に準備してるぜ!」


「え、ちょっ銀さ…!?





足元へ寄ったいくつかのマネキンを蹴り散らして

唯碗の腕を引き、彼は回廊通路の右へと消えた







「ひっひぃぃ!ひぃぃいぃぃ!!





分かれ目で怯える啓一を人形から庇いながら


横手にいる土方へと、は語りかける





「瞳孔マヨ殿 私はお主が嫌いだ」


「奇遇だな、オレもテメーなんざ大嫌いだよ」


「だがお主は交わした約束は必ず守る
…その部分は尊敬すらしている」


上から目線?つかまた何か頼むつもりなら
それなりの態度ってモンをとってみやがれ」





半ば吐き捨てれば…真っ直ぐな緑眼が返され
彼はほんの少したじろぐ





「作戦への協力と助力をお願い申す 十四郎殿」





一拍間を置いて啓一の襟首を掴むと


「…この件が片付くまでだからな、


「了解した」





に背を向け、土方は通路を左に駆けた








――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:この話は紛う事無く虚構ですので
現実・版権の作品またはホラゲに関係がある筈も


銀時&土方:ほざきやがれバ管理人んんん!


狐狗狸:ございませっ!!(パンチめり込み)
って開始早々鉄拳制裁とかヒドスっ


新八:いや、正直同情出来ませんし…

カラオケボックスの店名があからさま過ぎて
スク○ニに怒られても知りませんよ?


神楽:むしろ怒られればいいネ 親玉の説明も
ほぼナッシング状態で解決見通し甘いし


狐狗狸:う…そーいうこというなよぅ


土方:しかし駆け込んどいてアレだが、何で
カラボにコスプレ服なんておいてあんだよ


銀時:あんだよ知らねーの?成りきりで
歌えるように衣装置いてるトコもあんだぜ?


狐狗狸:…もっともあの場所は君らと
ある呪いのゴタゴタで営業停止ると思


全員:コラ反省しろバ管理人




店内には上階に続く階段や厠もありますが
篭城目的で無いので省きました


様 読んでいただきありがとうございました!