「ほう…聞いてはいたが若造と子供ばかりか

しかし昨日の今日で我が工場の警備を掻い潜り
手玉に取るとは、侮れぬな貴様ら」





上から目線で満足そうに頷く彼の言葉へ

引きつり気味な顔の銀時が答える


「…え?何コレ?どっかのヒーローショーの
悪役か何かですか?アナタ」


「ふん、帝王としてのワシの姿が珍しいか?
王なら自らに相応しき格好をするのは常識ぞ」


「うわー…これ、完璧イタい人だわー」


「いや、あの者の言葉は一理あるのでは」


「無常識のピーマンは黙っとくアル」


「しかしコレが親玉って、どんだけネタが
ねぇんですかねーあのバ管理人」


「「お前らとりあえず黙っとけ」」





ひとしきり発言がすんで、警備員の一人が
おずおずと手を上げながら口を開く





「あの、社長 侵入者とはいえ外部の人間に
その呼称を使うのはどうかと…」





途端に帝王の顔が苛立ちに歪んだ





ぬぅ貴様!社長ではなく帝王と呼べ!」


「し、失礼しました帝王!!


叱責を受けて、警備員は気をつけの姿勢を取る





短く頷いてから帝王は 万事屋トリオと
真撰組トリオ+へ視線を向ける





「それでこの者達はともかくとして、貴様ら
警察が何故ワシの工場を探りに来た?」


「あ、いやあのオレは成り行きっていうか」





しどろもどろに口走る近藤に代わって二人が
言葉を告げるよりも先に







「しっ失礼します!帝王!!





ノックと共に、社員が室内に入り込む











第五訓 続編や望みへの一念、多けりゃ叶う?











責任ありげな役職を感じさせる スーツ姿の
中年男性が不自然に身体を震わせて


七人と警備員に会釈し、帝王の前まで進み出る





「て、ててて帝王…そろそろ例の物
いただけますでしょうか…?」







そのおかしな足取りと、期待に満ちながらも
どこか虚ろな眼差しは


奇しくも 土方達にとって見覚えがあった





「おいトシ、アレって…」


「ああ間違いねぇ」


ふむ、もうそんな時間か…受け取るがいい」





帝王が鷹揚に頷いて、差し出された社員へ
向かって紙の束をばら撒き落とす


"餃子券"と書かれたその紙を





うっひょほよぅ!餃子券だぁぁぁ!
これでたらふくあの餃子が食えるぞぉ!!」






歓喜の表情で床を這いつくばるようにして
集めた彼は、奇妙な足取りで出て行った





「ズリーよ私にも寄越せヨ餃子券んん!」


「暴れないで神楽ちゃん、僕らの立場が
余計悪くなるからっ!」






身を乗り出そうとする神楽に反応して、側の
警備員と新八が抑えにかかる





だが…彼女を止めたのは冷めた沖田の一言だ





「食ったらテメーも中毒でブタ箱行きなチャイナ」


「…何だと?」





睨みつける帝王の視線に、負けないくらいの眼光を
返しながら土方が答える





「近頃の事件でどうもお宅がうさんくせぇと
思ってな、調査に乗り出したんだよ」


「隣のテロが本命では…痛い


余計な一言を紡いだを流れで引っぱたいて





「道理で店からは何も出ねぇワケだ…
工場からの餃子に既に仕込みがあったたぁな


「大方ヤクでも仕込んでたんだろーが、客や
連中を操ってたなら オシマイだぜぃ?アンタ」





告げる二人へ 室内は驚きに包まれて…







「なめるな小童どもが!!」





激怒した帝王が、机を叩いて反論を始める





「成分に関しては既に出店等の際に監査を行い
きちんと認可をされておるわ!!」


え゛、じゃあアレってただの餃子なの!?」





近藤の呟きに力を得て、帝王が更に声を荒げる





当たり前だ!料理人はあくまで味で
勝負するのが信条っ!薬品などに頼って
客を操作するなど恥ずべき行為そのものっ!!」





そしてバサァと大袈裟にマントを広げてこう言った





「あくまで正規の材料を独自の手順で組み合わせ
結果できた禁断の餃子が中毒者を生み出したにすぎんっ!」



「「中毒出てる時点で餃子じゃねぇぇ!!」」

青筋立てた土方と新八のツッコミが大音声でハモる





「あーじゃあの変なカギのドアの部屋に
禁断の餃子とやらのレシピでも入ってんの?社長」


帝王と呼べ 生憎レシピは別の場所にて
厳重保管されておるが同等のモノが入っておる」





言って、金属で出来た餃子のストラップにしか
見えないような物体を帝王がさらす


どうやらアレが 禁止区域のドアのカギのようだ





カギださっ!てゆうかあんな場所に何が…」


「それは我が望みに必要なもののため口には
出来ん…だが誓って違法には手を染めとらん!」


「どーだか、口では何とでも「お主の望み?」
おまっ人のセリフ遮んな槍ムスメ!


「どーせ世界一の餃子屋に、とかそんなんだろ」





やる気なさげな銀時の言葉を 帝王は嘲笑う





「笑止…ワシの望みは世界ではなく宇宙!
銀河中を我が餃子の虜にして手中へと納める!

ひいて江戸とこの国は、ますその為の
足がかりとさせてもらおう!!」


「んなアホらしい事許してたまるかぁぁ!!」


「愚かな、ならばワシを餃子で納得させてみろ
貴様ら四人の餃子でかかってこい!!





無駄にカッコよくマントをはためかせ


真撰組の三人とを仲間と見なした帝王が
指を突きつけて料理対決を宣言する







…当然、彼は全く相手にする気は無かった





どこの味 っ子?
そんな下らねぇ挑発に誰が乗るか」


「そうでぃ、オレらの餃子を舐めてもらっちゃ
困るってモンでさ ねっ土方さん?」


「乗っかる気満々かテメぇぇぇぇ!!」


「トシ、これはオレ達だけでなく宇宙の
いやお妙さんの危機だ!負けられんぞ!


逆だろ!?つーか餃子で陥る危機って何!?」





後の二人に親指立てられ、肩を叩かれ

それでも状況をまともに戻そうとする土方だが


が無表情のまま追い討ちをかける





「私達が勝ったらどうなる?」


「万一こちらが負けるなら大人しく
江戸から手を退こう 帝王に二言はない」


「して、相手はお主がするのか?」


「おいテメェも何聞いてんだ槍ムスメ」


「直々に格の違いを見せても構わんが…
ワシはこれでも多忙の身 故に代理を立てる」





バサリとマントをひるがえし、帝王が

万事屋トリオを真っ直ぐに指差す





そこの貴様ら!王餃子の看板をかけて
こやつらと餃子を作り 戦うがよい!!」








当然 銀時達は不満ありまくりの顔をしていた





「やーヨ、私ら何の関係もないアル」


「だよなぁ別に金もらって雇われてるワケでも
何でもねーしぃ?むしろ扱き使われてるしぃ」


「冗談でしょ餃子で宇宙征服って…第一
近藤さん達と料理対決なんて意味が無いにも程が」





が、帝王は余裕たっぷりにこう続ける





「無論 勝利した暁には弁償免除の上、望む金額を
与えても構わん…ついでに今日からみっちり
餃子の作り方も住み込み三食つきで教えようぞ」


「「「お任せください帝王様!!」」」


まさかの好条件に、万事屋トリオは声を揃えて
一も二もなく手の平と態度を裏返した





「それでいいのかテメェらぁぁぁぁぁ!!」





…最後まで 彼の言葉を聞く相手はいなかった









強引かつ無理やりな流れで、万事屋トリオとの
餃子対決が決まってしまい





工場を出た後 土方は頭を抱えてため息をつく





「ったく、証拠掴んで営業停止させりゃ
ケリが着いたのに…余計な茶番付け加えやがって」


「帝王(笑)を納得させりゃー結果は同じでさ
要は勝ちゃいいんですよ、土方さん」







気楽に言う沖田だが、対決までの中毒者による
軽犯罪の突発や増加が防がれるわけでもなく


更には工場自体の異様な雰囲気や警備

わざわざ"禁止区域"なるものがある事に関しても
公に示せないモノが眠っていると嗅覚が告げる


だが確たる証拠が無い現状では手出し出来ない

中毒の件ひとつ取っても、正規の手続きを
パスしている手前 今からでは検証に時間もかかる





彼には"O・N・E!O・N・E!王餃子!"
耳についたフレーズが憎くさえ思えてきた







「しかし、肝心の餃子作りはどうするのだ?」





訊ねるへ、近藤は腕を組みながら唸る





「うーん…やっぱここは、定番通りに
餃子作りの修行とか特訓をするしかないだろ」


「近藤さん、ソレ本気で言ってんのか?

仮にもオレらは警察組織だぞ 何が悲しくて
料理教室の生徒みてーな真似しなきゃなんねーんだ」


「嘆くコトは無いぞ若人よ!」





路上で立ち止まった四人の前に、ひょうたんを
手にした赤ら顔の老人がふらりと歩み寄る





「話は聞いた…お前さんら、あの餃子帝王の
餃子に挑もうと言うのじゃな?」


「誰でぃアンタ」


「ワシは単なる餃子好きの老人よ…若者の
情熱と可能性を信じる、な」





ニヤリと不敵に笑い 老人はひょうたんを一口
あおって、口元を拭いながら彼らへ言う





「奴の禁断のレシピは並大抵の食材や技術では
太刀打ちできん…そこでお主らにはまず、最高の
食材を得るべく山へと向かってもらう!」


「いや、何でいきなりアンタに修行つけてもらう
感じになってんの?初対面だよなオレら」


待て待てい!貴様一人が餃子の真髄を
知っていると思うな、餃子老子!!」


むむっ!貴様は餃子導師!?」


「だから誰だオメーらぁぁぁぁ!!」





叫ぶ土方を無視し、現れた中華風の老人が
ひょうたんを持つ老人を指差す





貴様のやり方では古い!奴の餃子に勝つには
何よりも技術の習得が必須!!お前達にはワシが
直々に海での修行をみっちり叩き込んでやろう!」


「ワシの門下生に口出しせんでもらおう!」


「弟子入りしたつもりはさらさらねーぜぃ」


「技術に溺れる者にあの餃子を超える餃子
伝えられるとでも思うのか!」


何を!そちらこそ食材にこだわって技術を
疎かにして、餃子を知った気になるなよ!」





彼らそっちのけで激しい口論を繰り広げ

顔を近づけ、ガン飛ばしまくった老子と導師は


やがてしびれを切らして互いに戦いの口火を切る





「それならどちらがこの四人に餃子の真髄
教えるか、互いの餃子で決めようぞ!」


「面白い…ワシこそが餃子の伝道師として
相応しい事を餃子で証明してくれん!!」


「餃子の真髄だと?!聞き捨てならぁぁん!!」





料理対決を始めかけた二人へ、別の一人が駆け寄る





醜い老人どもめ、引っ込んでおれ!
この者達には この餃子老子の導師が」


「「貴様こそ引っ込め若造が!!」」





揉める老子と導師と老子の導師の間に割り入って


我慢できなくなった土方が、声を張り上げた





何で一発キャラがでしゃばってんだぁぁぁ!
料理対決なら他所でやれ他所で!!」



「同感でぃ、色物に付き合って無駄な修行話
尺伸ばすつもりはさらさらねぇでさ」





三人は不満そうな顔つきで彼らを見やり…

やがてすごすごと、どこかへ立ち去っていった





居たたまれない間を払拭しようと近藤が口を開く





「と、とりあえずだ 技術はともかく材料は
いいモンがあった方が有利だろうな」


「野菜なら任せろ勲殿、当てはある」


「…え?それ本当かいちゃん」





少女は無表情のまま、力強く頷いた









「…分かったぜ サイコーのヤツを超特急で
届けるからキタイしてくれよ?ウィヒヒ!」


『度々すまぬな、頼むぞ?





通話が終わり 受話器を置いた五分刈りの
金髪少年へ、青白い顔の巨大少年が弱々しく呟く





「ねぇケイイチ君…やっぱり、言った方が
いいんじゃないかなぁ…」


ダメって言われてんだろ?それにズルじゃ
ねぇんだから平気だっつーのビビりイワン!」


「あら、二人とも電話終わった?」


「おっ、ちょーどいいトコに!なぁババア
オレ達また江戸に行きたいんだけど!」


「ご、ごごごゴメンなさい梗子先生!
あのっあのどうしてもって頼まれまして…」


「またさんの頼み?」





二人が同時に首を縦に降り 彼女は小さく笑う





「院長先生にちゃあんとお願いして、大丈夫か
聞いてきなさいね?準備はしてあげるから」


「「はーい!!」」







廊下を駆ける両者の背を見送って…梗子は

頬に手を添えながら、虚空へ目を向け呟く





あの餃子が出回ってから、こっちでも
妙な事だらけみたいだし…本当、江戸で何が
起こっているのかしら?」


その顔には 危惧と心配とが浮かんでいた








――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:祝!翔の回四月一日放送決定!!
やっべテンションフルMAXで上がってきた!!


土方・新八:いい加減自重しろぉぉぉぉ!!


近藤:本編的にアリなのあの餃子!?ねぇ!!


狐狗狸:原理はマジックマッ○ュルームみたいな
感じなので、一応は合法です


銀時:ダメだろそれ!そもそも信憑性に欠けるわ


新八:ですよね…あの人にも伝えたんですけど
"ナンセンスだ"って笑われて終わりましたし


神楽:老子の導師って、完璧意味不明アルな


沖田:白々しい、オメーんトコの回しモンだろぃ


神楽:あんだとこのインペイ野郎がぁぁ!


狐狗狸:それ以上いけな…ぎゃ!(アームロック炸裂)




料理対決に向けて、彼らが意外な行動に!?


様 読んでいただいてありがとうございました!