"ウチ〜の餃子はおいしいぞ〜宇宙一だぜ
O・N・E!O・N・E!王(ワン)ギョーザ!
餃子の老舗 王餃子が本日・江戸にオープン!
厳選されたこだわりの素材、熟練の技術によって
作り出された餃子が至福の一時を約束します!
「いやーやっぱここの餃子は最高ですわー」
「皮がね、もうホントパリッパリで
中から肉汁がジュワーって…うほぅ♪」
「スイマセーン ニンニク大目でお代わり!」
アナタもぜひ一度、お越しくださっては?
O・N・E!O・N・E!王ギョーザ!"
天人の技術を取り入れた事により、急速に
発展した日本の中心…江戸の街に
これまた急成長を遂げた飲食店が全国区に向けて
チェーン展開を始めたとしても不思議ではない
CMを流し メディアにも取り上げられた
この餃子屋には毎日のように長蛇の列が出来て
香ばしくも芳しい餃子の香りは外にも漂い
道行く人の足を、次々と止めてゆく
それは日夜 一般市民の安全と平和を護るべく
働くお役人さんも例外じゃなかったりする
「あの店、いつ見ても行列途切れてねぇんだよな…」
「たまんねぇよな〜あの餃子のニオイ…
あー食いに行きてぇえ〜!!」
ヨダレと共に願望を垂れ流す隊士達へ
「餃子ごときで列に並ぶヒマがあったら
犯人の列を消化してけバカ野郎」
眉間にシワをよせつつ 土方が渇を入れる
第一訓 メシ屋の行列は中でも外でも待たされる
「でも副長、仕事とメシとは別ですよ」
「あんなうまそーなニオイ嗅いだら一度くらいは
食いに行きたくなったって…」
「巷の流行りか知らねーが、たかが餃子に
踊らされて無駄な時間使うヒマはオレ達にねぇぞ」
「まあそういうなトシ!急な仕事続きで皆
満足に休みも取れないワケだし、メシくらい
好きに食ったって構わんだろう」
「って何でアンタ並んでんの!?仕事しろよ!」
「いやこれはお妙さ…一般市民の依頼による
れっきとした奉仕活動だ!」
「れっきとした公私混同じゃねぇか!」
余裕で一時間待ちそうな列の最後尾にいた近藤を
どうにか説得し、市中の見回りを済ませて
ふらりと入った食堂のイスに威勢よく座り込んで
灰皿を引き寄せつつタバコを加えた土方は
カウンター向こうの店主へ言う
「餃子定食一つ」
「お客さん…申し訳ないけど、品切れです」
「あん?なんでメシ屋で餃子が食えねぇんだよ」
開き気味の瞳孔と持ち前の低い声へ
更に苛立ちがプラスされるも
慣れた様子で店主は、苦笑混じりに答える
「ここ最近餃子人気でしょ?あの店のおかげで
だからみーんな注文するんですよ、材料も
軒並み品薄で今日もついさっき終わったトコです」
そこまで言われて、なお無理を押し通すなどという
真似がこの男に出来るわけも無く
代わりに注文したレバニラ定食へマヨネーズを
うず高く盛り付けながら土方は
斜向かいでつままれる餃子と、小太りの中年へ
瞳に込めた無言の怒りを叩きつけていた
今、"餃子"のワードに江戸は踊らされている
王餃子による餃子ブームで TVをつければ
餃子特集やお家で作る水餃子が
外へ出れば繁盛している中華料理屋や餃子の棚だけ
カラになったスーパーなんかが嫌でも目に入り
同時に、"餃子"絡みの軽犯罪がじわじわ増え始めた
ざっとあげれば、道端で喚き散らして暴れるヤツ
飲食店での度を越したクレーム、野菜泥棒に
恐喝にスリ…と枚挙に暇が無い
にもかかわらず"餃子にこだわる"以外の犯人の
共通点や動機など一切不明
「昨夜のテロ騒動で人手も足りねぇって時に
…クソ、ゆっくりメシも食えやしねぇ」
マヨまみれの白米と共に言葉を飲み下し
とにかく勘定を済ませようと立ち上がり
…いつの間にかレジに並んだ数人の列に
土方の開き気味の瞳孔が、更にもうちょい開く
「オイ、なんだこの列は?」
「アンタ警察かい?だったら何とかしとくれよ
前の方で揉めてる小娘がいるんだ」
嫌な予感に眉を潜めつ、少し身をずらして
列の最先端を覗き込んでみれば
本人的に今 ダントツで出会いたくない女がいた
「財布を落としたので 取りに行ってくる
必ず戻る故、しばし待たれよ店員殿」
「いやいやいやその場でのご清算じゃないと
ダメですから!お金が無いならどなたかに
携帯でご連絡いただいてですね」
「すまぬが機械は苦手でな 行かせてくれれば
半日とかからず戻って支払い申す」
「人の話聞こえてんのこの娘!?」
半狂乱の店員と、後ろでつかえて不機嫌さを
露にしている客に挟まれているにも関わらず
問題の張本人は 眉一つ動かさぬ鉄面皮である
「これでは埒が明かぬな…先に行くとするか」
「そこの作務衣女 食い逃げの現行犯で逮捕」
言うが早いがガシャリと両腕に手錠をはめ込まれ
「む?おぉぉ〜…」
ひと悶着起こしていた少女…はそのまま
お巡りさんに引っ立てられてしまったのであった
「私が何をしたというのか」
「目の前で堂々と食い逃げしでかしといて
どんだけ面の皮厚いんだ槍ムスメ」
鋭い視線を寄越す土方に連れられ、は
最寄の奉行所まで手錠つきで歩かされていた
「あれは誤解だ、とにかく手錠を外してくれ」
「バカかお前 どこの世界にとっ捕まえた犯罪者
解放する警察がいるってんだ」
「誤解だと言っておろう、必ずや支払いに戻ると
店の者へ告げたのをお主も聞いていたはず」
「犯罪やらかすバカはみーんなそう言うんだよ」
「…そこまで私が信用ならぬか」
「逆にどこを信用しろと?!とにかく奉行所に
引き渡したら、とっとと兄貴に引き取りに
来てもらうから大人しく待ってやがれ」
素っ気ないそのセリフは、しかしブラコンの
彼女にとって大いに逆効果である
「兄上に迷惑をかけられるか!今すぐ財布を
取りに行って支払えば文句は無かろう!」
「話がややこしくなんだろーがぁぁぁ!
後で請求するから黙って着いて来…逃げんな!」
くるりと反転したに足払いをかけ
受け身の態勢に入った相手の首根っこを
瞬時に引っつかんで持ち上げる
「うぐっ…お主、殺す気か?」
「無くても勝手に死ぬだろーが、無駄に
くたばりたくなきゃキリキリ歩けオラ」
渋々隣へ戻った少女は、苦しさからか
思わず涙目がちに土方を見上げる
けれどもその一瞬が この男の加虐心を余計に
煽っていることは気がついていないらしい
「って勝手なナレーション付け足してんじゃねぇ!
いつから見てやがった総悟ぉぉぉ!!」
彼の少し後ろ辺りにあった路地の影から
出てきた沖田は、楽しそうな笑みを浮かべていた
「たまたま店先で職権乱用してを引っ張って
行くのが見えたモンで、とうとう目覚めたアンタの
変態プレイでも証拠として抑えようかと」
「悪質な憶測語ってんじゃねぇ!食い逃げの現行犯
奉行所に引き渡しにいくだっつーの!!」
「へーそーなんですかー(棒読み)」
一通り神経を逆なでし、沖田はの側まで
近寄ると見下ろしながら頭をペシペシ叩く
「まーコレ相手ならナニいじってる方がマシか
でも安心しろ?ブタ箱入ったらたっぷり
折檻(かわいが)ってやらぁ、ヒマな時に」
「私は無実だ」
「やらかしてる人間に限ってそー言うんでぃ
まーオレぁそういう女だと分かっちゃいたがな」
「総悟殿も信じてくれぬのか…困ったな」
彼女が深いため息をついた直後、彼は
顔をしかめるとワザとらしく鼻をつまむ
「くさっ、お前息くせぇー何食ったんだよ
ゴミ?それともコイツの犬の餌かぃ?」
「どんな時でもオレへの罵倒は忘れ「餃子定食は
流石にアレよりマシ」テメェも乗るなぁぁ!」
真性ドSと真性KYのコンボ攻撃に そろそろ
土方の堪忍袋の緒が切れかかって
右手親指で刀のツバが軽く押し上げられる
その直後、通路の先に人だかりと悲鳴が押し寄せ
立ち止まった三人の前に 包丁を握り締めた
板前風の男がおかしな足取りでおどりでた
「ぎょ…ぎょぎょぎょ、餃子を…餃子を
餃子くれぇぇぇぇぇ!!」
「ちっ また餃子がらみかよ」
「ご心配なく、すぐ終わらせまさぁ」
言うや否やバズーカを肩に担いだ沖田は
近づいてくる男へ照準を合わせて引き金を
「って何当たり前のようにバズーカぶっ放そうと
してんのぉぉ!?当たんだろーが野次馬に!!」
「一発で片がつくから手っ取り早いでしょ?
いつもの事なんで皆慣れてるだろーし ついでに
どさくさで土方さんも狙えりゃ一石三鳥でぃ」
「払う犠牲の方がでか過ぎるわぁぁ!!」
両者が気を取られた一瞬、遠巻きに見ていた
野次馬の一人が甲高い声で叫ぶ
その手に握られた"王餃子"の袋を目にして
「餃子を…もっと餃子をぉぉぉ!!」
目の色を変え、男が不自然なすり足で
野次馬の方へと迫っていく
逃げまとう野次馬へ無我夢中に腕を伸ばす男
つられて突き出された包丁が彼らの身体に
刺さる…一歩手前で
槍の殴打を腕に受け 男が包丁を取り落とす
「あ…?」
ほうけた次の一瞬で、間髪入れずに顔面に
拳をお見舞いされて男はその場へ倒れ伏した
仰向けになった男の半身を起こし、後ろ手に
手錠をかけて短く連絡を取った後
一息ついて土方は 槍をしまったへ言う
「…手錠抜け出来んなら なんで初っ端から
逃げようとしなかった?」
「無実なのに逃げる必要がどこにある」
「少し前で逃げようとしてたじゃねぇか」
「あれは財布を取りに行こうとしただけ故」
問答するだけ無駄、と十分身に染みているので
彼はそれ以上問いを口にはしなかった
「何にせよ面倒だ、まとめて聞こうじゃねぇか
この男の豹変も お前の食い逃げもな」
「無実だと「言い訳は次回の冒頭にとっとけぃ」
野次馬を散らし終え、目撃者を連れた沖田に促され
彼女は仕方なく再度手錠を腕に通す
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あとがき(というか楽屋裏)
狐狗狸:かなりブランクが空いてしまいましたが
今回も捏造茶番劇、はっじまーるよー!
土方:本当に書いたのかよ…テメー最後まで
書ききれんのか?
沖田:文章力となけなしのやる気がどん底まで
下落しちまってますからねぃ
狐狗狸:いや、バラガキとかvs金時話書く前に
心の底からふざけたギャグに挑戦したい…と
思ったんだけど もう自信が無いなりよ
土方:ムリせず原作劣化コピーとトンデモで
しのいどきゃあ苦しまずに済んだだろーが
沖田:安心しろ、終わらなくてもケツだけは
痛いほど叩いてやるから
狐狗狸:(お…終わらせて本編長編を書くまで
無駄死にしてなるものか…!)
"手錠抜け"は毎度おなじみ間接外しでやってます
次回、逮捕された彼女の動機は…?
様 読んでいただいてありがとうございました!