『『『(ちゃん・さん)!!』』』





触れていた手に 焼けるような熱さが残る


これは…とてもではないが一溜まりもない





『ダメだよ、この呪縛房はスタンドを
封じる結界で部屋の中を覆われてる…
スタンドのアンタ達じゃ破れないよ


すまない 女将を止められなくて
こんな不甲斐ない様になっちまった』





内側から語りかけるレイ殿の声が





―とても悲痛な呟きに 私には聞こえた







迷わず私は何度でも札に手を伸ばし
弾かれながらも、それを剥がそうともがく





さん!
無茶だ、その身体で札を剥がそうなんて!』


『下手したらが成仏しちゃうネ!』


ダメ…もうこれ以上は…!!』





止めようとする三人を振り切り、遠くの轟音を
耳にしながらも 私は足掻き続ける







『お岩殿の苦労も旅館の事も何一つ知らぬが…
救いをくれたレイ殿を閉じ込め 仲間を
傷つけられ、黙っている程私は優しくない!』


…』


『銀時とお主の力で皆が救えるのなら…
私は、幾らだってお主らの力になる!』








熱さが痛みに変わる直前、襖の札に
触れる手が増える





『…それは 僕らもですよ


『今、あっちで銀ちゃんが戦ってて
がこっちでも踏ん張ってるネ』


『なのに私達が何もしないのは
筋が通らないわ!!』








性懲りも無く弾かれながらも札を剥がす為
全員で懸命に努力して


ようやく剥がれかかったかに見えた刹那





襖に向かって 銀時が突っ込んできた











第六訓 幽霊相手でも飛び道具って有効かも?











その強烈な勢いに巻き込まれ、私達も
部屋の中へとなだれ込み 隅まで飛ばされる







巨大化したお岩殿が廊下を一息に駆け


身を起こしかけた銀時を再び殴り
畳へと叩きつける





止める間もなく、拳の連打を浴びせるお岩殿







「オラオラオラオラオラオラオラ
それで終わりかい ギンんん!!」






その顔は取り憑かれた私達のような
おかしな化粧でありながらも


お岩殿の意思TAGOSAKUの力
確かに感じさせている





「何も知らないガキが知った風な口を
聞きやがって 死んだ奴があの世に行くのが
自然の摂理!?ああそうさ!その通りさ」








銀時を殴りながら、お岩殿は語りかける







「だが落ちる水が全て盆に治まるとは限らない
どうしても零れ落ちちまう奴等だっているんだ


どうしたって未練を断ち切れない奴がいる!
どうしたって癒えない傷を持つ奴がいる!!






一方的に仲間を傷つけている相手の その声は


どこか頷いてしまう切なさと
悲しさを持っていた





「ここはそんな行き場の無い亡者達の
唯一の場所なんだ あんたに…


あんたにそれを奪う権利なんて
ありゃしないんだよぉぉぉぉ!!








お岩殿の拳が振り下ろされるその前に







私と、飛ばされていた者達と





そしてレイ殿が 床下から銀時の元へと












強大な破壊力を持った鉄拳が、畳をぶち抜く







塵が煙と化して辺りに舞い…







「だったら…アンタに奴等をここに
縛り付ける権利もありゃしねーんじゃないのか」





降ろされた拳が 徐々に持ち上げられてゆく





「女将 盆から零れ落ちてんのは
奴等なんかじゃねぇ…


テメェだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!







銀時の叫びと同時に上げられた拳が
お岩殿の鳩尾を捕えた







…いや、銀時だけの力ではない





「ブワハハハハッうす汚いババアがぁぁぁ
糖人形にしてやろうかぁぁ!」






憑依し その身に現れたレイ殿が
銀時へ力を与えている







『女将…旦那…いつから私達はこんな事に
なってしまったんだい


私達は…この旅館は…始まりはもっと
……素敵な所だったじゃないか』





語るレイ殿の言葉に呼応するように


その記憶が…レイ殿の旅館での思い出
こちらへと流れ込んでくる…これは…





『女将も旦那も…本当は気付いてるんだろう』


「小娘が余計な事をペラペラとやかましいわ
スタンドは私達の商売相手 それだけさね!







突き放すようなお岩殿に、レイ殿が僅かに
悲しんでいるのが…分かった







『長年に渡り、霊達をこの地に縛り続けてきた
呪われた鎖を解き放つ時が来たんだ』





レイ殿は銀時へ静かに言った





『ギン 全てを解放してやっておくれ
霊達を…そして、女将を』










吼えて、お岩殿がこちらへと突進する





『閣下化程度で調子に乗るなぁぁぁ!!
レイ程度のザコを憑依させた所で
ウチの旦那に勝てると思ってんのかぃぃ!!』






勢いの乗った両者の拳がつき合わされ


力負けしたか、銀時の拳から血が出る







怯んだ隙を見逃さず 巨大な手の平が
こちらの身体を押しつぶそうと包み込む





「セカンドスタンド、アイアンガール!」





叫んだ声に 中でスタンドの交代がなされ


直前でお岩殿の手を掴み、そのまま
力押しに外へ繋がる襖へと押していく





「ブワハハハハハ!!お前を薬局にある
ユン○ルのあのちょっと古いタ○さんの
パネルの人形にしてやろうかぁ!!」






高笑いと共に銀時の身体を借りた神楽が







「ほぉぉぉぉアたぁぁぁぁぁ!!」





強烈なひと蹴りでお岩殿を吹き飛ばす







だがしかし、体格差が災いしてか
思ったよりも相手との距離は開かず





「くそっ…これでどうだぁぁぁぁ!!







胴を思い切り握り締められ
こちらの身動きが取れなくなる


…ここは、私の出番だ!!





「セカンドハーフスタンド!スピアブラコン!」





呼び声と共に 引き寄せられるようにして
意識を交代し、こちらへと現れる







「フヌハハハハハハハハ!
兄上の記念像にしてやろうかぁぁ!!」






笑いながら瞬時に関節を外し、力を込めた
両腕からすり抜けて身体を元に戻し





「セカンドスタンド!アイアンガール!!」





もう一度神楽へと戻り 今度こそ蹴りで
お岩殿との距離を大きく開ける







相手が足を止め、柿ピーの袋を出した合間に





「サードスタンド!キャバクラスマイル!!」





神楽が叫び 今度は妙殿が銀時に乗り移る





「フハハハハハ お弁当の時間に
してやろうかぁぁぁぁぁ!!」








胸の前で掲げた両手の中に生み出した
真っ黒い玉子焼きの塊を





「玉子焼きだぁぁぁぁぁ!!」





思い切りお岩殿の顔面へとぶつける







「ぐぁぁぁぁぁぁ焼けるぅ!!」







怯んだ今こそ、とどめを刺す好機と見て





「いけぇぇフォーススタンド!!
ジミーヘヴンリー!!」






妙殿から新八へと交代が…









と思いきや、何だか知らぬ者が
銀時の身体を乗っ取っていた







知らない人出たぁぁぁ!誰だコレぇぇぇ!
こんな奴入れた覚えねーぞ!!」







どうやらこうなった原因はお岩殿らしく





「余程スタンドを寄せ集める体質らしい!
雑霊が次々に憑いていくわ!!」





その手に操られ、銀時に次々と
スタンドが寄り付いて身体へと入り込み





『ぐああああ!銀さん 満員です!!』


「オイどっから出てんだテメーは!」


『ぐるじい』


『げほっ…無理だっ』


「神楽ぁぁっ、それどこ?
何処から出てきたの!?」






収まり切れず銀時の身体から皆がはみ出す





『銀さん!!前 前!!』


「お前しか見えねぇぇぇ!
口説き文句とかじゃなく!!」








妙殿の注意も空しくお岩殿の一撃を喰らい





衝撃で、私達を含めた全てのスタンド
体外へと飛び出してしまった







ヤバイ!
スタンドが全部飛び出してしまった!!』


銀ちゃん!逃げろぉぉ生身アル!!』


『銀時ぃぃぃ!!』


「フハハハハハもう遅いィィィィ!!」







体勢を立て直す銀時へ、お岩殿が迫る







「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」


「うおおおおおおおおおおお」






咆哮をあげて 地を蹴り銀時が駆ける







互いに至近距離まで近づいて…







パアン!









渇いた銃声が、凍りついたこの場に鳴った





一拍遅れてお岩殿の巨体が崩れ落ち


煙の漂う銃を構えたまま 銀時が
こちらへと振り返る







…いや、あれは銀時ではない





その身体を借りた ザビエル殿だ







言葉も無い私達をじっと見つめてから


ザビエル殿は宿へと戻り、襖を閉める







『どーでもいい奴が倒したぁぁぁぁ!!』







この時の新八のツッコミは 山の間を
しばらく木霊し続けていた…








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:スタンド合戦まで来てザビエルまで
行ったので、次くらいで終われそうです


新八:ちょっとォォ!セカンドハーフって何!?
てゆうか僕の出番はぁぁぁ!?


狐狗狸:半人前的な意味合いで命名したから(笑)
出番は原作もアニメも無かったのでナシです


銀時:銃使う伏線なくザビエル出していーの?


狐狗狸:次回でまた出るしいいンダヨ〜


神楽:グリーンだヨ〜!


新八:それ某CMネタぁぁ!分かる人いるの!?




次回 TAGOSAKU暴走、そして…


様 読んでいただきありがとうございました!