牢屋を脱出し 天井裏へ入れる場所を教え


銀時と共に私達が目指すのは…宴会場





「今日は家康が来てっから、大半のスタンドは
宴会の為に集まってるって寸法だ」


『なるほど そこに僕らが突入して
暴れまわるんですね?』


「バッカちげーよ、奴等はこの世に未練たらしく
しがみついてるスタンドなんだよ
そんなんで倒せるわきゃねーだろ」


『銀ちゃんはスタンドの倒し方分かるアルか?』


「あん?よーするに成仏…つまり奴等を
腹の底から満足させてやりゃいいんだよ」





流石は銀時 死した者への手向けを
きちんと心得ているとは…恐れ入った







感心しつつ這う内に、賑やかな声が響き渡る


天井から覗くと 廊下の片側から数人の声が
より大きくハッキリ聞こえてきた





『…皆の者、どうやらこの下にある
部屋の向かいが宴会場のようだ』


「よっしでかした ほいじゃ降りて
会場に乗り込む前の準備をそこですっかね…」





天井の戸板を外した銀時に続いて







降り立った室内には、集団でのスタンドの
泊り客と従業員らしきスタンドがいた





『なっ…お前らぁぁぁ!!


「ちょっとちゃぁぁぁぁぁん!
こっちも団体パックだったんですけどぉぉ!?」



『すまぬ、うっかり中の確認を忘れた』


『忘れた所の話じゃねぇぇぇぇ!!』





驚き戸惑うスタンド達が行動へ移す前に







『はちょぉぉぉぉぉぉ!!』





神楽が目にも留まらぬ速さで全ての者を
部屋の外まで蹴り飛ばした











第五訓 安木じゃなくて安来節な
間違えると恥ずかしいから気をつけろ












『って成仏はぁぁぁぁぁ!?
それ完全に実力行使だよね!?』



「この場合は仕方ねーの、ケースバイケース」


『ぶっちゃけこれ悪いの僕らですよね?』





それでも僅かに残ったスタンドがこちらを
じっと睨みつけていたが





『ごめんなさいねお騒がせして…後できちんと
お詫びに参りますね 素敵なお兄さん


『あ゛ぁぁぁぁぁぁぁ…!』





微笑みを浮かべた妙殿の優しい言葉により
あっさりと成仏を果たした







『おぉ〜妙殿 お見事!』


『さっすが姐御アル!!』


『フフ、二人も大人になったら使いなさい
大概の男はコレで何とかなるわ』


『いや姉上 末恐ろしい事教えないで下さい
特にさんには』









姿を整え、銀時は私達へ役割を指示する







曲を奏でつつ全体的に持て成すのは銀時





宴会の客達に酒を注ぐのは妙殿、そして





「鼻に楊枝を挿してほっかむり巻いてザル掬い
…これぞ伝統の安来節スタイルだ」


『おお、その姿は見覚えがあるぞ!』


だろ?宴会にゃこいつがねーと盛りあがらねぇ
つーわけでお前らはこれで踊れ」





残った私達は 曲に合わせての踊りで
周囲を楽しませる役だ





『いや僕らはともかくさんまで安来節は…』


『う?なんふぁろぅふぁ、ひんふぁひ』


ってもう準備万端なんですか!その絵面
夢小説のヒロインとして失格なんですけど!?』


『ここの管理人はハナからキャラ全員
いじり倒すつもりで書いてるアル 諦めるヨロシ』


『それ誰に言ってるの神楽ちゃんんんん!?』









…何はともあれ、宴会場への突入は無事果たされ







『愉快、愉快 踊れ踊れワハハハハハ!!』





それぞれの役をこなす事によって、スタンド達に
楽しみと満足感を与えてゆく







『あー愉快愉快、こんなに楽しい宴会は
生まれて初めてだ』







ニッコリと笑う家康殿の肩にそっと手を置き





「何言ってんですか…生まれて初めてじゃなくて
死んで初めての間違いでしょ?」





銀時が優しくささやけば





アッハッハ いっけね!そうだった』







笑い声の余韻を残し、家康殿が成仏する







…いや 家康殿だけでなく宴会場の
全てのスタンド達も


嬉しそうに笑いながら成仏し始めていた







「千の風になって!」


「あ゛あ゛あ゛あ゛客が大量に成仏していくぅ!!」







いつの間にか襖から覗き見ていたお岩殿の
叫びに呼応するように、次々と姿を消す客達







「千のか〜ぜ〜」





歌いながら縁側を伝って歩き回りだした銀時に
倣って、私達も部屋から出る









『この調子で、宿の客を全員成仏させましょう!』


『にゃ、ひょのまへにれひろのうぉはふふぇねふぁ』


『いい加減安来節の楊枝取れぇぇぇ!!』


ウェイト!これ以上お前達に宿の客は
成仏させねぇぜ…この独眼竜 伊達政宗がな!!』





言って私と新八の目の前に現れたのは


信長殿達のように下着姿の、片目に眼帯をつけた
とてもふっくらとした御仁





『あんたの何処が伊達政宗!?
眼帯無かったら単なるデブだろぉぉぉぉぉ!』



何をォォ!これでも若い頃はモテてたんだよ!
ちょっと油断してリバウンド来ちゃっただけなの!!』

死んでんだからリバウンドもクソもねぇぇぇぇ!
てか体型の前にパンツ洗えぇぇ!とんでもないトコ
シミついてんだろがぁぁぁぁぁ!!』







食ってかかる新八をどうにか宥め、私は
政宗殿へと声をかける







『お主が有名な政宗殿か…初めてお会いしたが
下着姿で寒くは無いのか?』


『え、いやスタンドだから平気だけど…』


『そうか…しかし今は冬ゆえ
風邪を引かぬよう気をつけられよ?』







思った事を告げた、まさにその瞬間





『いぇあ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』





いきなり目の前で政宗殿は成仏した







むぉ!?何故政宗殿は成仏したのだ!!』


『えぇぇぇ天然!?』







面食らった一幕はあったものの、神楽や妙殿とも
程なく合流し 宿の客を成仏させていき







光秀殿ぉぉ!!光秀殿アルマゲドンで
成仏しちゃったよどーいう事『オイ』





消えかかる信長殿とそれを支える秀吉殿にかち合う





『あっ、すいませんジャン=クロード・
ヴァンダムと間違えました』


『あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』







外国人の名前はよく分からぬのだが、二人は
とても喜んでいるようだ…スゴいな神楽







『神楽ちゃん もういいよ行こ』


『とどめささなくていいアルか』


『…恐らく大丈夫であろう、それよりも
レイ殿の方が心配だ』







その言葉に、こちらが口をつぐんだ隙をつかれ





アレ!君 一見地味だけどメガネとったら
カッコよさげじゃない?』


『あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』





信長殿の台詞に、新八が思わず成仏しかかる





『新ちゃん!!』


『やられたぁぁ!!
やられたけどちょっとうれしい!!』







苦しむこちらを他所に、思わぬ戦果に
喜び合う信長殿と秀吉殿





『やったぞぉぉぉ!!』


『やったッスね流石殿!』


あ゛ぁぁぁぁぁぁ!!流石とか言うなや…』





が、秀吉殿の励ましによって信長殿は成仏する









『いやちょっと待って、もういいでしょコレ
もう勝負付いたでしょコレ!!』





近寄る妙殿に必死で言い募る秀吉殿だが


妙殿は短く『行くわよ』と私達を促しながら
その横を通り過ぎてゆく







『アレ〜そっ、そこの三つ編みのお譲ちゃん
君ってスッゴイ可愛くない!?』







背後から追い縋るような秀吉殿の言葉は





あまりにも 白々しさに過ぎた





『ウソをつくな!
私より兄上の方が五千億倍麗しい!!』



『『えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?』』





何故新八まで驚いたのか分からぬが


私にウソは通じないと知り、今度は妙殿に
目標を変える秀吉殿





『あ、アレ君は芸能人に似てるとか
よく言われない!?ほらアレ誰だっけ伊』


しかし言葉の最中に近寄った妙殿が


最後まで言わせず、スタンドを踏みつけ
半ば無理やり成仏させた





『うわーさすが姉上 全然動じませんね』


『だって、当たり前の事じゃないの』





…妙殿が時折怖いように見えるのは、気のせいか







『三人とも、レイ殿の閉じ込められた部屋へ行き
レイ殿を助け出そう!』


『『『おー!!』』』







最強のスタンド・TAGOSAKU
倒す方法を知るのはレイ殿のハズ







必ず…助け出さねば!!









あの時見かけた部屋へと辿り着くと、向かいの
廊下の方に お岩殿と銀時の姿が見えた







『あれって…銀さん!?


『女将も一緒アル!てゆうか何アルかアレ!』


『アレがまさか…TAGOSAKU!?





あの距離でも分かる…間違いない、天井裏で
感じたあの気配 やはりこやつか…!







私は急いでレイ殿を救うべく、札の
張り巡らされた襖に手をかける





『レイ殿っここにいるのであろう…ぐあっ!







しかし、強い力により弾き飛ばされてしまった








――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:どうにか成仏まで来たので、あと
一〜二話ほどで終われそうです この長編


銀時:ってどの長編よりも活躍してね?


狐狗狸:だって三途に両足突っ込みかねない奴だし
この話はむしろ独壇場?みたいな


新八:てーか安来節とか伊達政宗出すとか色々
フリーダム過ぎ!怒られますよファンに!


狐狗狸:だって史実の政宗の絵ぽっちゃりしてるし
成仏しちゃった人を見せたかったもんで…


お登勢:随分やんちゃやらかしてくれるじゃないか


お岩:蝋人形にしてやろうかぁぁぁぁ!!


狐狗狸:ぎゃあぁぁぁ二代女帝来たァァ!(逃)




次回 スタンドの真の強さを解き放て!(ちょ)


様 読んでいただきありがとうございました!