辺りの見えぬ闇には、誰の姿も見えぬ


…けれど 私にとってこの場所は
とても近しいものを感じる





もしここに三人がいて 声が届くのなら


私の声を聞きつけ、銀時を救うべく
スタンドとなってくれるのならば





『…新八、神楽、妙殿 目を覚ませ!』





幾度でも 私は声を張り上げよう







……あれからどれ程闇に向かって呼びかけたのか





『銀時が大変な目にあっているのだ
私達が、助けねばならぬのだ!』






ヒリヒリと痛みだす喉だけが
時の経過を分からせる





『聞こえているのなら 目を覚ましてくれ!』





声は空しく虚空に吸い込まれ


気配はすれども、三人の姿はいまだに見えない







『目を覚ますのだ…皆の者…』





流石に疲れて私はため息をつき


…同時に、沸々と怒りが腹から溜まってきた







これだけ呼んでいるのだから誰かが
返事を返してもよいではないか





スタンドに取り憑かれた程度であの三人が
大人しく屈するワケが無い事は知っている





なのに、仲間の危機のこの事態


いい加減目を覚ますべきではないのか…!







『……っええい答えぬかこの腑抜けども!





思わず口をついて出た叫びに答えるように







『『『誰が腑抜けじゃKY娘ぇぇぇ!!』』』





新八と神楽と妙殿の飛び蹴りが頭に直撃した











第四訓 霊の仇返し











刹那にちらついた三途の川と父上の顔を
振り払うように、頭を振って身を起こす







『痛いではないか…散々呼んでおったのに』





言うと 三人は口元だけで笑ってみせた







『ええ、聞こえてましたようるさいくらい』


『私達も ここで目を覚ましてからずっと
姿を現せるようにがんばってたのよ』


もここにいたアルか?』





訪ねる神楽へ、首を横に振って言う





『いや、私はレイ殿の紹介によって
お主らをここへと呼びに参った』


『レイって誰かしら?』


『旅館のスタンド』


『『『省くな』』』





今度は拳を一斉に顔面へ喰らった









『…と言うわけで、私はレイ殿にお主らを
スタンドとして呼び出すよう言われたのだ』







説明を終え、三人は納得したように頷いた







『そうだったんですか、てーかスタンドで
定着してますけどそれでいいんですか?』


『細かい事気にするなよ新八ぃ、アニメでも
スタンド温泉編ってなってたアルこの話』


『いやメタな発言は閲覧者しか分かんないから』





よく分からぬツッコミを新八がかます





『とにかく この場所から旅館に移動しましょう』


『うむ…道は知らぬが案内いたそう』


『え、道知らないって…ちょっと!
どういうことですかさん!!





物凄い形相で掴みかかる新八に、若干
気圧されながらも口を開く





『私はレイ殿に案内されただけだから
ここの正確な道筋は知らぬと言う意味だ』


『ちょっ聞いてないですよぉぉぉぉ!!』


『呼びに来ただけで役立ってないアル!
もうこうなったら適当に歩くヨ!』


『ちょっと待ちなさい神楽ちゃん』


『話を最後まで聞かぬかお主ら!!』





一括に、皆が動きを止めてこちらを見やる





『申す通り道は知らぬ…が、この場所の感覚は
私にはとても覚えがある』


『って事はここってやっぱり?』


『……三途に近しいな』


『『マジでかぁぁぁぁぁ!!』』





叫ばれても 当てはまる感覚がその場所しか
思い当たらぬのだから仕方なかろう







『とにかく勘でしかないが、何となくなら
あちらへの道を辿れる…信じてくれるか?







問いかけると 三人は首を縦に振った







『…ああもう、こうなったらヤケです
ちゃんと案内してくださいよさん!』


『間違って三途連れてくとかなしアルよ』


『頼んだわよ ちゃん』









己と仲間達しか見えぬ闇の中を





普段の感覚だけを頼りとして歩き続け







…やがて、旅館の通路へと出た







『あら ここ私達の部屋の前ね』





本当だ、取り憑かれた私達の上げる高笑いが
相変わらず響いてくる







室内へと入り込んだ三人は おかしくなった
自分達を見て、改めて驚いていた





『話には聞いてたけど…なぁにコレ?』


『これひっどいアルな〜閣下になってるアル』


『てゆうか何で皆してUNOやってんの?』


『UNO?』


『…元に戻ったら説明しますよ』





早速神楽も身体に戻ろうとしたが、やはり
私と同じように弾かれてしまった





『本当アル 身体に戻れないネ』


『言ったとおりであろう 無理をするな神楽』


『…それよりちゃん、私達はこの後
どうすればいいのかしら?』


『そうですよ それにレイさんでしたっけ?
僕らを呼ぶよう頼んだって話ですけど
後の行動とか考えてあるんですか?』







言われてみれば、頼まれた先は何も
聞かされていなかった…


もしかしたら呼んでから また戻ってきて
落ち合う段取りがあったのやもしれぬが





近くに、レイ殿や銀時の姿が見えぬのはおかしい







『…少し二人を探してくる お主らは
部屋で待っていて欲しい』


『え、ちょっとさん!?』







三人をその場に置き去りにして天井へ
飛び上がると、屋根を突き抜けぬ程度に滑り込み


そこから仕事の要領で梁を這い回りながら


耳を澄まし…所々で顔を出し辺りを見回す





たくさんのスタンドの姿はあるものの


レイ殿銀時だけは見当たらない…







『…ん?』





今、見覚えのある金髪の御仁の姿が…?





『…気のせいか?』







まあいい、今は二人を探さねば!







再び辺りを這い回って耳をそばだて…







「…アンタがまさか裏切るとはね、レイ!







お岩殿の声に 顔だけを廊下へ出せば


まさしくお岩殿に捕まれ、引きずられ
どこかへ連れてゆかれるレイ殿がいた







『レイどっ…』





見交わした目が "口を閉ざせ"
強く叫んでいるような気がして押し黙る







その合間も視線は私へ向けられたまま


パクパクと微かに口を動かし


レイ殿の目が、お岩殿に悟られぬよう下を示す





……もしや そこに銀時が!







返答代わりに強く頷き 私は下へと降りる









程なくグッタリとした牢の中の銀時を見つけ





『ぎ…!』





思わず声を出しかけ…どうにか言葉を飲み込む







レイ殿が囚われた今、ここで感情に任せ
声をかける時間は無い







"もしもの為に準備をしておきたいのさ"


"それじゃあ頼んだよ…"








頼みを無にせぬ為にも、新八と神楽と妙殿を
急いでここへ連れてこねば…!









だがもう一度天井から部屋へ戻る最中


只ならぬ気配を感じ、咄嗟に
近くの部屋へ身を隠す





『…っ貴様は!』


『お主はやはりオ…いや、今はとにかく
私がここにいる事は黙っていてくれ』


『何を言って『黙れ』





なおも文句を言う口に手を捻じ込み


その身体を押さえながら息を殺して
天井裏の気配がどこかへ去るのを待つ







『……去ったか、手荒なマネをして
すまなんだなオセ』


…何だ、泡を吹いて気絶か まあいい


部屋の主をその場に残し 私は素早く
天井から部屋へと戻り







『三人とも 銀時を見つけたぞ!』


『本当ですか!?』


『ああ…奴に見つからぬ内に早く!!』







やや急かしながらも、三人を再び
銀時の入っている牢へと連れてきた









『全くそんな急がせなくても…
てーかアレ こんなトコで何やってんスか』


『くっさ、何ですかこの匂い…オナラ?


『おーい大丈夫アルか銀ちゃん』





声に反応し、銀時がゆっくりと顔を持ち上げた





「…何だよ お前らもスタンドになったの?」


が私達を呼んだアル』


レイさんって人に頼まれたらしいですよ』


「そうか お節介な女だな…アイツ」


『…銀時、これからどうしたらいいだろうか?』


「え、お前何も考えずこいつら連れてきたの?」


『うぬ』







はぁ…と息を吐きつつ銀時が頭を掻きむしる







「ったくカンベンしてくれよぉ…あっちにゃ
TAGOSAKUっつー恐ろしい奴もいんだぞ」


『すまぬ…』


「まーいいや、仲間(コイツら)連れてきただけ
にしちゃ上出来ってトコだろ」





私達を順繰りに見つめ 銀時は不敵に笑った





「そんじゃ 皆でこの旅館のスタンド大量成仏
極楽大作戦と行こーかぃ!!」









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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:銀ちゃんと合流する下りまで書きました
こっから成仏とスタンドバトルが


銀時:オィィ!何でMGSのパチスロいんの!?
何このサイト、捏造以上にやりたい放題過ぎ!!


神楽:銀ちゃーんそれ今更過ぎアル


狐狗狸:そーそ きっと取り憑かれたかして
スタンドになっちゃってたんだと思います


新八:いやそれだけじゃなくさん
ナチュラルに息の根止めてましたよね!?


狐狗狸:仕方ないよ、TAGOSAKUに
見つからないよう緊急的に潜んでたし


妙:やっぱりあの時天井にいたのは…


狐狗狸:はい、TAGOSAKUだと思われます




次回 銀時達の反撃が、今始まる!


様 読んでいただきありがとうございました!