普段ならば目を覚ませば何事も無く身体に
戻っているはずなのに


何故私は、霊魂となっている…!?





『もしや、私の身体は死してしまったのか…?』





いや ならばこうして戻れるのはおかしい





しばし悩んだが 答えは出ない







『……部屋に戻ってみよう』





気を取り直し、泊まっていた部屋へと進みだす







歩く事は問題ないようだが 床の感覚が
伝わらぬのが何とも言えず心もとない





「フハハハハハハ!!」





部屋へ近づくに連れ、聞き覚えのある
声音での高笑いが大きくなる





私達の部屋に…誰かいるのだろうか?


襖を開けようとしてかけた手が、するりと抜ける





『む!?』





慌てて手を引くと そこは穴も開いておらず
元通り襖があるばかり







…もしや、霊魂と化している私は
物へ触れられぬ代わりにすり抜けられるのか?





おぼろげな知識を元に思い切って襖に顔を突っ込む


痛みも無く、同じようにその場を通り抜け





隔てた先にあったのは
妙な姿の妙殿と新八と神楽と…私?











第三訓 この話にツッコミは絶対不可避?











「我輩がUNOである」


ウヌハハハハ、我輩もUNOである」


「フハハハ甘いな、我輩はドロー4である」


「我輩もドロー4である」


「ワハハハハ貴様らァ
そんな隠し手があったとは」



「ならば我輩はリバースを使うぞ」







妙な化粧と髪型をしておったが、近寄って
眺めれば私達の身体であると知れた


よく分からぬが何らかの遊戯をしているようだ







『何をしているのだお主ら!』





しかし 幾度声をかけても届かずに無視され





己が身体に近づいても、見えない何か
阻まれるように弾かれる







『何故だ…何故私は身体に戻れぬのだ?!』


『あんた 何してんのさ』







聞こえた声に顔を向けると





何時からか、壁からするりと身体を表した
女人の霊魂がこちらを見ていた







『そういうお主こそ何者だ』


『私はここの温泉で働く、スタンドのレイだよ』


『む…初対面ながら丁寧な挨拶痛み入る
私は『待ちな』





名乗り返そうとするのを手と言葉で差し止め





『ここで迂闊に本名を名乗るのはマズイよ
何か適当な名を名乗りな』





不躾にも霊魂はそう言い放った







『何故ゆえ?私は仕事で来たわけではないのだ
二つ名を名乗る必要は無いと思うが』


『そういう決まりなんだよ、いいから名乗れ』


断る 初対面の者に指図される謂れは無い』







しばし睨み合い…やがて霊魂はため息を漏らした







『…わかったよ、じゃあ名前だけ名乗りな
苗字は出さない方がいい 他のスタンドに狙われる』


『了解した…と申す』





完全に室内へ入ったレイ殿が、私を
不思議そうに見つめている





『にしてもアンタ、初対面で幽れ…スタンドが
話しかけたってのにリアクション薄いわね』


『生憎だが 三途で亡き父上に会うのが
日課ゆえ…先程も会ったばかりだ』


『そう、アンタも見えてはいたみたいだけど
簡単に死にかけちゃ乗っ取られて
役に立たないって女将が言ってたよ』


『そればかりは私のせいでは無いぞレイ殿』


『まあいい、それよりアンタ何しにここへ?
今からでも働くつもりかい?』







高笑いながら遊ぶ者達を見て、私は首を横に振る





『いや それより他の者達を
身体に戻すのが先だ』







しかし レイ殿は淡々とこう言った







『…そいつは無理よ、アンタも含めて
こいつらはギンが働く為の人質だもの』


『ギン…もしや銀時の事か!?』





瞬間、レイ殿がスッと目を細める





『へぇ アイツそんな名前なの』







…本名を口にしてはならぬと言われていた





銀時はどうやら、取り憑かれてスタンドと
なってはおらぬようだ







もし今の一言を レイ殿が悪用せんと
企んでいるのならば…








『安心しなよ、私はアイツをどうこうする気は
ないよ…だからそんな目しない』





言われて、私は己が殺気だっていた事に気づいた





『す、すまぬレイ殿ついクセで』


『…アンタ、一体どんな人生歩んでんのさ?』





呆れたようにレイ殿が言った言葉が終わらぬ内に


どこかからドンドンと強く壁を叩く音が響く





『…レイ殿、この音は何だろうか?』


『毎度のことさ、客のやる事だ…付いて来な』





レイ殿の後から壁をすり抜けつつ音のする部屋を
そっと覗き見ると







もホントマジありえねー光秀
マジ腹立つわー光秀 どっかいけよ光秀』





壁に拳を叩きつけて呟く下着姿の御仁が一人





『…あのヒゲの御仁が客の一人か?』


『そう、あれは信長』





おおーアレが話に聞く魔王信長 しかして
何故ゆえ下着姿?寒くないのか…ん?





『隣からも誰か壁を叩いておるな』







こくりと頷くレイ殿について隣へ移ると







『信長をやったってのに、何後からおいしいトコ
かっさらってくわけ?ムカつくんですけど秀吉





信長殿同様の姿と行動をする、若い御仁が





『これは明智光秀ね』


『隣の部屋だったのか…稀有な事もあるものだ』





光秀殿の方が信長殿より下着がキレイだ…む?





『また隣もうるさいな』







先程と同じく隣へ顔を覗かせると





『…ブッ殺ス…床屋


『あの妙な顔と頭の御仁は?』


『ザビエルよ、キリスト教を伝来した人
でも髪型は流行らなかったの』


『…それはまた不運な御仁だな』







廊下へといずると、ちょうど老人が
するりと通り過ぎた所であった





『ったく本当うるせぇなーアイツら
静かに眠らせろっての 信長ムカツクわー


『…あのご老体は信長殿のお知り合いか?』


元部下の秀吉よ 鈍いわねアンタ』





むぅ…下着姿なのがおかしな所ではあるが


歴史に名高い人物が揃っている所を見ると
この場所はやはり 普通の場所ではない







お登勢殿が私達を寄越したのも頷けるが…





『ざっとこんな感じで色んなスタンド
宿に泊まってるから、正直手が足りないわけよ
…悪いけどギンはしばらく借りとくよ』







一方的に言い放ち、レイ殿はどこかへと
移動し始めので 慌てて声をかけた







『そんなっ…待たれよレイ殿!


『……何さ?』


『銀時は どのぐらいで解放されるのだ?
よもや冬中ずっと、私達の身体をあのままで
いさせるというのだろうか…?』


『それは女将が決める事さ 女将がギンを
解放するまでは…ずっとあのままだ』


『そんな!』







それではいつ兄上に会えるか分からぬではないか





いやそれだけではない、神楽や新八
妙殿の帰りを待つ者達を不安にさせるし







何より銀時が 私達のせいで縛られ
苦しんでしまうのが耐えられぬ…!









『…レイ殿、お岩殿はどこにいる』


『女将に会って どうする気だい?』







ひたり、と私はレイ殿を見据えて答える







『私のこの身を代わりにしてでも銀時と
仲間達を解放してもらうよう頼んでみる』


『無駄だよ 今のアンタは戻っても役立たず
それに女将には最強のスタンドがいる』


それでも!私は頼みに行く…
例え何が立ちはだかろうと 命に代えてでも!』









視線が絡み合い…沈黙を破ったのはレイ殿だった







『……どうしても仲間を取り戻したいなら
私を信じて、頼まれてもらえるかい?


『無論だ!』


『…いい目をしてる、スタンドにしとくには
惜しいくらいだ 足音殺して付いて来な』





首を縦に振り、私はレイ殿に付いて行く







『女将もここも 始めはスタンド達の為に
懸命に働いていたんだけどね
…旦那が死んでから、全て変わっちまった







スタンド達に気付かれぬよう進みながら
道行でレイ殿は語る







『死した旦那・TAGOSAKUを従え
女将は従業員のスタンドをこき使い、私服を
肥やす事に執着してしまっている


…私は 女将のやり方にはもうウンザリなんだ』





そうか…あの背後にいた者は、お岩殿の
大切な婿殿だったのか







『アンタの仲間のギンは、どうやら女将に
匹敵するスタンド使いの素質を持っているようだ
…だから アイツにかけるつもりだ』







いつの間にか辺りは暗く闇に沈んでいたが
前にいるレイ殿の歩幅は変わらない





『レイ殿は、私に何を頼むのだ?』





振り返らず 答えが返って来る







『私がギンのスタンドとなってアイツを
サポートするつもりだが…もしもの為に
準備をしておきたいのさ』





やがて、深い深い深遠の闇の中で私達は足を止めた





『狭間でスタンドになれず彷徨う
あんた等の仲間を…こっちに呼んでほしい』







ここに…新八や神楽や妙殿がいると言うのか?







『それじゃあ頼んだよ…





真っ直ぐに私を見返して、レイ殿は来た道を
引き返し…見えなくなった








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:今回ほっとんどレイさん達スタンドの
ターンですねぇ…名前変換三箇所しかないや


銀時:こんなの夢小説でも何でもねーよ!
サブタイからして閲覧者に丸投げじゃねぇかぁぁ!


狐狗狸:だってツッコミがいないから自然と
ボケとの会話進行になっちゃうんだもの


新八:てゆーかブリーフ3とかのシーンいるかぁぁ!


狐狗狸:いります、ここで出さないと後の方で
面倒なやり取りやらかさにゃならんくなるんで


レイ:…あの狭間ってどこよ?


狐狗狸:ブリーフ3とかを喚んだ所、かな?




次回 仲間を呼び戻すべく彼女は奮闘する


様 読んでいただきありがとうございました!