気がつくと、彼らはとてもだだっ広くて
見覚えの無い 真っ白な部屋にいた
「え?な、何これ 今度はどんな異空間に
飛ばされちゃったワケ?」
「銀さん、ここ何だか息苦しいような…
嫌な感じがしません?窓が無いからかな?」
きょろきょろと辺りを見回すけれど
そこには白い壁と床と天井以外は 何も無い
「あんなトコに誰かいるアル!」
神楽がふいに、部屋の中央へと視線を向ける
つられて三人も顔を向ければ
白い部屋の中央の空間から、ぼんやりとした
白いモヤが固まって人の形を取っていて
それが見る見るうちにハッキリと
仰向けに浮かんで眠る 一人の少年になった
「子供…何故ゆえこんな場所に?」
呟くの言葉に、反応するように少年は
ゆっくりと空中で身体を垂直に半回転させ
ふわりと白い床へ降り立つと同時に
閉じていたまぶたを、静かに開けて…
【…あれ?なんでここにいるの?】
「しゃべったアル!」
「つーか誰だよお前、ここがどこなのか
説明してくれねーか?頼むからよぉ」
「アレ?どことなく梗子さんに似てるような
…ひょっとして君が、真白君?」
【違うよ…僕は―私は―】
言葉半ばで、少年の声が高く変化して
同時にその姿すらも歪んで…彼らの目の前で
見覚えのある相手の姿へと変わって行く
「あ…姉上!?」
「こいつ姉御に変身したアル!!」
【いやぁね、変身じゃないわよ?チケットだって
ちゃんと渡してあげたでしょ?新ちゃん】
「チケットって…まさか、あの時の!?」
新八の脳裏に、始めに人がいなくなった
かぶき町で会った妙とのやり取りが浮かんで消える
楽しげに笑う妙の輪郭が曖昧になり
【ほんまに鈍いヤツらやな〜自分!】
金丸へと変化したのを目の当たりにして、再び
銀時達の顔色が変わった
【…なーんてね♪ふふっ、どうかな?】
くるりとその場で一回転しながら
金丸は、結野アナへと姿を変えて話しかける
「また姿が変わったネ!」
「もしや…お主、他の者に化ける力が?」
【そう、アナタたちが今まで会ってた人たちは
ぜーんぶニセモノ 全部××】
「全部って…」
【みんなに決まってまさぁ、あの小さな
陰陽師は別ですがねぃ】
話しているうちに目の前の相手の姿と声は
沖田のそれへと変化して
間を置かずに移ろいで、梗子に成り代わってゆく
だがどの姿で語ろうと××と名乗ったモノは
本物と同じ仕草と気配、そして雰囲気を保ち続け
【真白なんているわけない、アナタたちの
知っている人なんてここには誰一人いやしない】
言葉半ばで声がぐっと低さを増してゆくと
和装で一本歯の下駄をはいた、冴えない中年男に
変わって四人の前へと現れる
「あ!そいつ…なんか会ったことあるアル!」
【これも××、正直だっていないんだ
だから助けられない…絶対に助からないのさ】
「そんな…正直殿も、偽者だと言うのか!?」
そう言ったの声音には、どこか現実を
受け入れられないような響きが混じっていた
けれど…三人はその理由など 覚えていない
「で?色んなヤツに変われるってのは分かったけどよ
結局、テメーは何なんだよ?」
訝しげな銀時へ、しかし正直の姿をしたモノは
【冷たいね アナタたちの望みをたくさんかなえて
しあわせにしてあげたのに】
どこにでもいるような町娘の姿をとって笑いかける
「まさか、君が…この本の核!?」
【そう、願いを言ってくれてありがとう】
四人へとお礼を言って、相手が両手を広げると
【アナタたちのおかげで、××ももうすぐ
お外に出られそうなの…ほら!】
その言葉に合わせて…白い部屋一面に
"本の外にある現実世界の現状"が映し出される
「そんな…これが、今のかぶき町…!?」
万事屋はもとより建物の大半以上が破壊され
黒い霧に覆われきった町の中では、人々が逃げまとい
おぞましい化け物に襲われ 倒れてゆく
悲鳴と怒号とが霧と共に辺りへと満ちて
もはや、この世の地獄としか思えない光景が
彼らの目の前に広がっていた
「冗談じゃねぇぞ、こんな事になってるなんて
アイツ一言も…!」
「兄上は、兄上はご無事なのか!?」
「こうしちゃいられないヨ!
早く私らをこっから出すアル!!」
真剣な顔つきで、向かい合った銀時達から距離を取り
【帰れるわけ無いじゃない、帰さないもの
帰したりなんてしてあげない アナタたちは
ここで永遠に……】
ぐにゃり、と真白の姿に落ち着いた××が
【死合わせにしてあげる】
とてもいびつなほほ笑みを 浮かべた
同時に、うそ寒いような空気に包まれるも
「おいコラ勝手に人の運命決めてんじゃねーぞ」
木刀を握り締め、銀時が睨みを利かせて続ける
「オイタしたガキは…おしりペンペンって
相場が決まってんだろーがぁぁぁ!!」
吠えて駆ける彼を先頭に、四人が武器を手に
××へ距離を縮めて一斉に攻撃する
ひらりと空中へかわした××が
【当たらなきゃ、意味ないよね?】
両手に二丁の拳銃を出現させて狙いを定めるが
「遅いな」
高く飛び上がっていたの槍が、発砲する
直前で銃身を同時に叩き切っていた
対応しようと振り返った××へ
「後ろががら空きアル!」
同じように飛んでいた神楽の蹴りが炸裂し
××は、勢いよく床へと叩きつけられる
それでも無傷の相手が平然と体勢を
立て直そうとしている所へ追いついて
「今だ、捕まえ…っ!?」
小さな身体を押さえつけようとした新八は
目を見開いて、固まってしまった
【やめて新ちゃん!何をするの!?】
―"目に涙を溜めた妙"が、急に目の前に現れ
「あ、姉上っ!?」
とっさに動きを止めてしまった新八が
そこに妙がいない事と××が姿形を変化できる事を
思い出した時には、もう遅かった
いつの間にか握り締めてられていた巨大な木槌を
もろに鳩尾に食らって
「ぐぅあぁぁぁっ…!」
真っ白な壁へと叩きつけられてしまう
けれども他の三人には "真白"の言葉に動揺した
新八が木槌で殴られたようにしか見えない
「新八!てんめぇぇ何したアルかぁぁぁ!!」
着地した神楽が、床を蹴って××へと迫り
横殴りに襲い来る木槌を蹴り砕いて握った拳を
振り下ろそうとした寸前で
【神楽、お前がオレに勝てるの?】
"笑みを貼り付けた神威"を認識(み)たことで
ほんの一瞬、勢いを鈍らせてしまい
腕をとられた神楽は、投げ飛ばされて
離れた床に軽くめりこんだ
「神楽!貴様、動くな…!」
死角から接近していたは、××の首筋へ
刃を突きつける事が出来たのだが
真白が、××がゆっくりと振り返ると…
彼女の身体は、ガタガタと震え出す
【ひどいよ…僕をまた傷つけるの?】
「あ、兄上っ、いや違う、違う…!!」
目に見えて狼狽しているへ××が手をかざすと
白い天井から、長い縄が垂れ下がり
その首へと巻きつき高々と吊るし上げてゆく
「ぐっ…う、ぐ、がっ…!」
ギリギリと喉に縄が食いこんで、もがき苦しむ
を楽しそうに眺めて××は目を細め
振り下ろされた木刀が頭を掠めて
××が避けた拍子に、縄が緩んで少女を落とす
【ひどいねぇ…邪魔するんじゃないよ】
そう言った××は"お登勢"に見えていたが
銀時がなおも木刀を振るうので、出現させた
日本刀で受け止めて××は真白へ戻って訊ねる
【大切な人じゃなかったの?】
「黙れ化けモン、胸くそ悪ぃ猿知恵働かせやがって
人の弱みに漬けいろうったって無駄なんだよ」
相手のセリフと、戸惑った三人の言動とを
見比べた銀時は ××のカラクリに気づいたようだ
【そうだよねぇ…忘れちゃえば関係ないモンね】
「うるせぇよ、その青くせぇケツ今から
百叩きしてやっから覚悟しやがれクソガキ!」
斬りつけようとする刀の連撃を難なく捌き
刃を折り飛ばして、銀時が大上段に木刀を―
【銀時】
名前を呼ばれて "偽者"だと分かっていても
長い髪に凛とした佇まいと面持ちを持ち
あの時のように、笑顔で振り返った―
記憶に残る姿と寸分違わない師を前にして
彼もまた 一瞬動きを止めてしまった
××は "自分"を認識して出来たその一瞬を
逃すことなく手の平を差し出す
そこから生えた石の柱の直撃をまともに受け
「がはっ!」
打ち出された弾丸のように吹っ飛んで
銀時は白い床へと転がった
「銀さん!」
「銀ちゃん!」
身を起こした新八と神楽が、辺りの様子が
変わっている事に気がついた
白い部屋から徐々に滲み出した赤黒い染みが
不快な水音を立ててうごめき
生き物のように 自分達の足元へと這いよってくる
【下手に暴れるから苦しむんだよ…でも
もう大丈夫、すぐに楽にしてあげるから】
「余計なお世話だこのヤロー…!」
軽く咳きこみながらも、立ち上がった銀時と
槍を握りなおす…新八と神楽の姿を
視界に入れて××が 手を一振りすると
その途端、四人の身体が急に重みを増した
「な…何なのだ これは…!」
見れば彼らの腕や足、顔などの皮膚の上には
足元の床や部屋中を染めて生々しくうごめく
赤黒い染みが湧き出し その範囲を広げていた
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あとがき(というか楽屋裏)
狐狗狸:さて、ヒントを元に謎を解いて
ここを読んでいる方は何人いるでしょーかね?
銀時:うっわ!人気作家気取りとかないわー
神楽:ただのド素人のクセにちゃちな謎解きを
仕掛けて悦に入ってて 本当ウザいアルわー
狐狗狸:…うわぁぁぁん!(泣きながら走る)
新八:ちょっと!あとがきどうするんですかぁぁ!
まだ答え合わせとかあんのに!!
銀時:いやいや、今更いらねーだろ?まさか
当てずっぽうでたどり着いたワケねぇだろうし
神楽:そうヨ、こんなのちゃんと頭から
この長編読んでヒント拾えば一発で分かるね
新八:まあそうだけど…ん?管理人さんが
メモを残してる どれどれ?
[まだ、謎はもうちょい残ってるんじゃよ♪]
全員:うぜぇぇぇぇぇ!何これ、うぜぇぇぇぇ!!
ラストに"謎"の答え合わせします、気づいた方も
気づかぬ方も それまでお待ちくださいませ
様 読んでいただいてありがとうございました!