―ここなら何でも願いがかなう、いくらでも
         際限なく願いはかなう


         願いを言ったら出られない


         何だって誰だってアナタのワガママ思いのまま


         願いを言ったら出られない





         でも楽しんだその後に、待っているのは
         しっぺ返し 破滅への道





         願いを言ったら…出られない
















カレー、焼肉、餃子、タコさまウィンナー
焼きそばにおでんにアイスにみかんに…


食べたいと思えば食べたいだけ


どんどん新しい食べ物が私のために現れてくれる





お腹が千切れるほど食べきっても


もう次のご飯を心配することもなく
好きなだけ食べれるなんて、夢みたい!





すっげーアル!どんどん食べ物が出てくるネ!」


こんなお腹いっぱい食べれるなんて夢様々よ


いや、この味にこの満足感は夢なんかじゃ
絶対ないアル!もう本当幸せネ〜





「ふぅーシメはなににしよっかなー…アリ?」





豚の丸焼きなんていつの間にあったっけ?


まいっか、もうちょいお腹に余裕あるアルし


こんがりと焼けた おいしそうな丸焼きに
頭からかぶりつこうとして





ミリミリと豚の口が…顔が十字に裂けた





「え」





スレスレで屈みこんで横に飛び、こっち向いた
豚頭を思い切り蹴っ飛ばす


「一体なにアルかっ…!」





思ったよりも早く跳ね返ったグロい顔裂け豚が


さらに顔を巨大化させて…いや、分裂までして
迫って来たのをスレスレでかわし







時間差で現れたもう一匹が顔面3cm先にいた











第四訓 中の人なんかいない
いないったらいない












最悪の想像が頭を駆け巡った次の瞬間


後ろから突き出された木刀と槍の一撃

喉から豚の頭をかっさばきながら吹き飛ばした





「おいちょっと何この状況、つーか何アレ
新手のエイリアン?またあのバカ皇子の仕業?」


「いやアレは焼き豚らしいな」


「違うね丸焼きアル」





なるほど、とか無表情で納得してる
の頭を銀ちゃんが叩く





「どーだっていいんだよアホ娘ども、それよか
いい加減何が起きたか説明し…」


銀ちゃんの引きつった顔を見て そっちを見れば





さっき真っ二つになった丸焼き豚がいつの間にか
それぞれに別れて復活していた


他の豚どもも大きさと数を増やして、歯を
噛み合わせるようにして裂けた顔を開け閉めしてる





おいぃ何これ!?お前豚の恨みでも買ったの?
メッチャグロいんですけど、ヤツらこっちを
捕食する気満々な雰囲気出してるんですけど!?」


「そんな覚えないアル!牛も豚も鳥もみんな
おいしくいただいてたはずヨ!」



「とにかく問答は後だ、行くぞ神楽!





わけが分かんないまま、私は二人と一緒に
襲ってくる丸焼き豚軍団から逃げ出した







     ――――――――――――――――――――







おかしい、こんなの夢だとしてもおかしい





ついに撮影開始したお通ちゃん主演映画の
エキストラとして選ばれて


親衛隊の皆が見守る中で午後の撮影に入ってたのに





「新吉君!今日こそ年貢の納め時だ溶岩流!!」


「だから僕新八ですってバンダ○ナムコぉぉ!」





なんでお通ちゃんにものっそいイイ笑顔で
バールで頭狙われなきゃいけないんだぁぁぁ!



こんなの聞いてない!台本にもない!!


アドリブだとしてもシャレじゃすまない
フルスイングっぷりに避けながら背筋が薄ら寒い





風切り音とともに軍曹の釘バットが耳をかすめる





「ダメじゃないか、君の頭が潰れないと撮影が
終わらないんだからさぁ、ちゃんとやろうよ?」






他の隊員やタカチン、お通ちゃんファンの
追っかけも普通の客もスタッフさんも


みんながみんな笑顔で鈍器を持って


僕へとじりじり近づいてくる





「こんなの悪夢だ…早く覚めてくれ…!







背にしたスタジオのドアを開けようとするけど
鍵がかかって開かな…ってうわ!





「ぼやぼやすんな新八!」





バキョっとかスゴい音がして支えがなくなって





倒れかかる僕の腕を引いて、銀さん達が
廊下を迷いなく走っていく





銀さん!今日は仕事のハズじゃ…」


「このブラコン娘に強引に連れて来られたんだよ
つーか何でアイツら鈍器持ってんの?ねぇ」


「とうとう新八抹殺組合が結成されたアルか?」


とうとうって何!?僕どんだけ害悪な
存在にされてんの…ってうわっ!前、前っ!!





行く手を阻むように現れた、パイプ椅子担いだ
掃除のおばちゃんが突っこんでくる


が、さんの槍底カウンターにより撃沈


「一般人に何してんのアンタぁぁぁ!」


「案ずるな峰打ちだ」





いや峰打ちとかそー言う問題じゃ…って

言ってる間にまた他の人しばき倒してるし!
迷いなさすぎるよこの人!!怖すぎ!!







けど、追っかける人達が怯む様子はない





「ヤバいこのままじゃ追いつかれ…
うぉあ゛っ!?





不意に神楽ちゃんが僕の顔からメガネをもぎ取り





「新八はこっちアルよ〜そーれっ!!


すかさず追手の向こう側へと放り投げた





そんなんで騙されるかぁぁぁ!
それメガネだし!撮影用に新調したメガネだし!」








って…え?アレ?みんなメガネに向かって
まっしぐらに走っていってる?


メガネの袋叩きに対して熱が入りすぎじゃね?





さっきまでのやり取りがウソみたいに、僕には
誰一人として見向きもしてない





「おお、囮作戦たぁやるじゃねーか神楽」


「よし今のうちに逃げるぞ こっちだ」





……納得いかねぇぇぇぇ!!







     ――――――――――――――――――――







の案内に従い、恐ろしい追手から逃れて


どこかの路地裏へたどり着いた三人はやっと
一息つき 自分達の身に起きたことを話しました





「…それにしても、どうして急にみんな
おかしくなったんでしょうか?」


「オレが聞きてぇわ、つかお前が来てから
いきなしホラー展開に突入するとか管理人の
嫌がらせか?夢ぐらい好きに見させろっつーの」


「夢ではない現実を見ろ」


「現実って言われても、夢の中じゃ実感ないネ」


口を尖らせる神楽へが首を振って答えます





「いや…私も教えてもらったばかりだが
ここは夢ではなく、本の中だぞ


「「「はぁ!?」」」





突拍子もない発言に、三人の目が点になります





「教えてもらったって誰にですか?てゆうか
それ騙されてません?」


「新八の言う通りヨ、夢以外でこんな
メチャメチャな展開納得できるわけないアル」


「いくらなんでも二次元のオレらが本の中の
世界に行くとかありえねーだろ!」





信じられないのか、信じたくないのか


銀時も新八も神楽も 彼女の言葉を頭から
疑ってかかっているようです





「大体ここが本の中だってどーやって
証明すんだよ?メタ無しで」


「むぅ…」





根拠が"勘"と"怪しげな男の話"では説得力もなく

説明する事自体が苦手なので


そう言われては首を傾げてしまいます







「…残念ながら の話は本当じゃぞ」





と、答えた声に全員が見上げた空中から


人を型どった手の平大の紙がの頭上へ落ちて


瞬く間にソレは晴明の姿を取りました





晴明さん!?それ一体どういう事なんですか!」


「落ち着いて聞いてくれ、これは
お主らの命にも関わる話じゃ」





それを皮切りに 小さな晴明は過去に本によって
起きた"呪い"とそれを祓う依頼をされた事


そして手違いで本が銀時の手に渡ってしまい


"決して読んではならない"と忠告すべく万事屋へ
赴くも、間に合わなかった事を語ります





「じゃ、じゃあ あの本は本当に呪いの…!?」


「そう…この"本"は昔、同人サークルを御上に
潰された者達による呪詛が詰まっておる



「「まさかの黒歴史ノートぉぉぉ?!」」







結野衆の情報網により判明した"本"の由来によれば


かけられた呪い自体は年代が浅く、内容も
"読んだ者に不幸をもたらす"程度のモノであり


更に言うなら術式もきちんとした手順を
踏まえたものではなかった…ようなのですが





彼らの募り募ったただならぬ怨念


使われた"落丁本"が、百年を経る品であったことが

不運にもおかしな方へと作用してしまったのです







百年を経た器物に神が宿る、という話は
お主らも聞いたことがあるじゃろう?」


「イヤな付喪神だなオィ!!」


「ダメ元で結界に干渉したが…幸い
誘惑に負けておらんおかげで式を顕現できた」


「誘惑?」


「この本は取り込んだ者の記憶を読み、その者の
欲…願望を口にさせ叶えようとする性質がある」






思い当たるフシがあり、三人の顔色が変わります





「えーと…何でまたそんなまだるっこしい事を
させようとするんですかねお兄様」


誰が兄様か 要は契約の一種じゃな
口にした願望を満たす代わり 相手をこの場に縛り
その者が本来持つ"運命力"と呼べる力を吸う」


「え…じゃあその運命力を吸われた人は…?」


不安げな新八へ、清明はいともあっさり返します





「枯渇した瞬間 呪いによって死ぬじゃろうな」







痛々しい沈黙を置いて







…万事屋三人が頭を抱えて絶叫しました





「「「やっちまったあぁぁぁぁぁ!!」」」







上目がちにが頭上の晴明へと訊ねます





「清明殿、私達はもうここから出られぬのか?」


「今となってはほぼ手遅れじゃg「そんな殺生な!」


「陰陽師なら「破ぁー!」とかスッゴい力で
一発解決しないアルか!?」



「誰が寺生まれか 事が簡単に済めば苦労せん」







元々の呪力に加え、今まで取り殺された者達の
怨嗟が上乗せされているため


下手に手を出すと中にいる四人が


本の中からも、現実からも消えてしまうそうです







「さて、ここからが本題じゃ」





と、仕切り直すように絶望しきっている彼らへ
小さな晴明はこう言います





「お主らを縛る契約を破棄しなければ本から
出ることは叶わぬが、一つだけ望みはある」


「そ、それは一体何ですかミ兄たま!?」


「大きさは式神だからじゃ、この"本"に残る
呪力の核を見つけて どうにか出来れば或いは…」





言葉を続けていた晴明が、突然ハッと辺りを
見回すような仕草をしました





「マズい、もう時間が…急がねば!


「何があったんですか!?ま、まさか呪いの力が…」





三人の視線を受けて 小さな陰陽師は
世界の終わりを救うみたいな顔で言いました





今からクリステルの番組が始まるんじゃ!
少しの間だけ離脱させてもらう…すまん!
ワシが戻るまで持ちこたえていてくれ!」


「ちょっ、え゛え゛え゛え゛え゛え゛!?
待って清明さぁぁぁぁん!!」



「行かないで新(に)ぃたまあぁぁぁ!!」


「誰が新しいたまか、というかそれもはや
元の言葉の原型も残っとら…」


文句の途中で頭上のミニ晴明が紙へと戻り


ひらりと落ちてゆく小さな依代を、
すんでのところで受け止めます









取り残された銀時達の間に、居たたまれない
静けさがしばらく残っていましたけれど





「それで…結局どーすればいいアルか?」


「お、おおお落ち着けオメーら、こういう時の
セオリーは"振り出しに戻る"コレが基本だろ」


「振り出しって…あ!あの本ですか!」


「そういうこったぱっつぁん まずは万事屋に
戻ってじっくりあの忌々しい本を探すとしようや」





そう言って大通りへと出た四人は、再び音と人が
消え去った世界に驚いて





「十二日       じゃねぇか…!」
「三週間 前と同じ だ…!     」
「数日        アル…!    」








それぞれ口にしてから、三人が"えっ"って
顔をして自分以外の二人の言葉を否定します





「っていくらなんでもそんな経つわけないアル
どんだけ日にちカサ増しされてるアルか!」



そっちこそ日付感覚ズレてない!?僕の方は
ちゃんとお通ちゃんの活動スケジュールと
照らし合わせてるから間違いないって!!」


「にしても三週間はねーだろ、精々二週間
経つかどうかだよな?なっ





同意を求められた彼女は、眉一つ動かさず
首を横に振ってこたえました





「…私にとっては昨日の出来事だが」


「ああ、昨日の事みたく思い出してるんですね」


いや言葉通りつい昨日の事だ
お主らと公園で別れた翌日が今日なのだ」





根本的に噛み合わない会話に口元をひきつらせ





「…とりあえず、万事屋に戻んのが先だな」


銀時のセリフを皮切りに三人はの発言を
今のところはスルーしておくのでした








――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:年明けて一発目の長編が二月更新に
なって本当もうね…申し訳ないね!(涙)


銀時:よりによって同人誌が呪いの呪物とか
全国の呪いの書に謝れテメェぇぇぇ!


狐狗狸:いや同人誌っつってもピンきりだし
ハードカバー蔵書に近い代物で(膝蹴り喰らい)


神楽:んなもん知らなくても生きていけるネ!


新八:あ、あのー…何でさんと僕らで
本の中で経った時間が違うんでしょうね…


神楽:妹燃えが運命力がどうたら言ってたし
やっぱ私らの寿命的なモノが


銀時:ソレ以上言うな神楽ぁぁ!やっぱ
あんな本速攻で捨てりゃよかったよチクショー!


晴明:無駄じゃな 呪いのせいであの本に
一度魅入られたら捨てても戻ってくるし
燃やすことも刻むことも汚すことも出来ん


三人:イヤァァァァ!呪いモノのお約束!!




"願いを口にさせる"までが発動の条件のため
口にしたらアウト、言い切らなきゃセーフです


様 読んでいただいてありがとうございました!