直感だけを頼りに、路地へと駆け込めば


見たことの無い男が青い顔でへたりこんでいた





ぎゃあああああゴメンゴメン悪かった
ついほんの少しの出来心ってヤツだったんだ
二度としない誓います許してくださいっ!!』



「それは兄上へと言え」





私は槍の石突を平謝りし倒している男の
みぞおち辺りへと突き出す







が、槍は手応えなく路面を叩く





ぬ!?お主のその身体…!」





景色と私の槍とを透かしたまま、目の前の男は

驚いたような顔でこちらへ語りかける


『うわわ、謝ってるのにヒドいなもう
僕が生身の姿だったら過剰防衛もいいトコだぞ
お詫びとしてパンツ見せてくれ、色は白ね


断る、今日は白褌をつけている」


『えー…その切り返しは予想外だぞ
うーむ僕のお株を奪われてかなり残念』


「む、それはすまぬ事をした」


いやいや嘘 大して何とも思っていない
だから気にしなくても全然平気だよ』





それならいいか、と私は槍をしまう





それにしてもこの男 変わった格好だ


僧や神社の神主に似た和装に一本歯の下駄
年は 兄上や銀時よりも上だろうか?


服装のせいか雰囲気がどことなく晴明殿達と
似通っているような気もする





『おっと挨拶が遅れたな、僕の名前は正直
巷じゃ"正直者のマサナオ"で通ってたんだ』











第三訓 残りモノには福っていうけど、誰も
取らないから残りモノになっただけじゃね?












「そうか こちらこそ失礼した、私は」


『知ってるぞ?ちゃん、だろ?


何故それを、と訊ねる前に正直殿は言う





『さっき聞いたんだ 皆は僕が見えないけど
こっちには全部筒抜けだから』





なるほど、レイ殿みたく霊魂としての存在だと
するならば一理ある話だ


それはどうでもいいとして 兄上n


いや死んでないって!初対面のクセに君
冗談キツいな、こんな冗舌な幽霊いるか?』


ぬ!?何故ゆえ私の思考が…」


『顔に出てるから丸分かりさ、僕はね
僕をこんな風にした相手を恨んでるんだぜ』


「それは真の話か?」


『嘘さ 僕のこの姿は欲を掻き過ぎたせい
単純に言っちゃえば自業自得かな?』





いともあっけらかんと、目の前の男は前言を覆す







「お主の言葉は…どうも胡散臭いな





指摘すればますます嬉しげに正直殿は言う





おっと!あの子と同じ事を言われるとは
ますます驚きだ 君ってヤツはカンがいいな』


「あの子?」


『この"本"に封じられた"何か"さ 名前が
無いから、ここの皆はあの子って呼んでる』





本?そう言えば、辺りの様子がおかしくなったのも

銀時達と万事屋であの"本"を読んでからだ


それが何を示すかは分からぬが…





「知っている者なのか?」


『よーくね、僕の存在(こと)を見ようとしないで
自分の気持ちにもフタして それでもなお
他者を巻き込み続ける 最低の自己中だよ』





茶化すような口調とは裏腹に、正直殿の面持ちは
どこか寂しげなように見えて





だけど、出来たら何とかしてやりたい
…これだけは心の底からの 僕の本音』





本気で相手を案じているのだと、思わされた







「何やら事情はあるのは分かったが…
それで先程の狼藉が見逃されるとは思うなよ


『いやまあ分かってるさ!ちゃんと謝るって!


「よい心がけだ、ならば早速兄上の元へ
『但し "本物の"お兄さんにならね?』


「…ぬ?どういう意味だろうか」


『知らないのか、ならこれも何かの縁として
君にここがどういう"場所"か教えてあげよう』







大仰な手振りを交えて語りだした正直殿いわく





あの"本"を読んだ人間は本の中へ引きずり込まれ


自らの記憶に則った世界に囚われてゆく


そうして、出られぬまま本の中で死を迎え


死んだ者の身体は本の外へ吐き出されるのだとか








『ま、こんな荒唐無稽 受け入れらんないよな
常識的に考えて「なるほど理解した」納得早っ!?





細かい事はさっぱりだが、とにかくここが
かぶき町ではないのと本物の兄上がいない
いう事は 何故だか妙に腑に落ちた





「ともあれここを出なくてはいかぬのか
正直殿は、出口を知らぬか?」


『え、あーゴメン分かんないな…
それはそれとして君、バカだろ?順応早すぎ』


「よく言われる、しかし先程の言葉は嘘と思えぬ
それに お主には深いワケもありそうだからな」


『……ありがとう もし生身の身体なら
真っ先に結婚前提でお付き合い頼んでた』


「気持ちは嬉しいが、私は兄上とけ『嘘だって
悪いけどちゃんタイプじゃないし、僕は
こう見えてバツ五で子持ちの八十代なんだぞ?』


そうは見えぬが、きっと冗談だろう…多分





それにしても正直殿は表情も口も達者だ





『まあ出口は知らないけどさ、余計なこと考えず
仲間と合流して相談してみたらどうだい?』


「それは名案だ しかしニセモノがいるなら
探すのに骨が折れそうだな」


まずは万事屋を筆頭に心当たりを回るとして…





お困りなら、僕の力を貸してあげるぞ
耳を澄ませば仲間のトコまでひとっとび!』


おお!それはすごいな」


『いやいやお礼なんて君のパンツが拝めれば…
って冗談冗談 だからそんな引くなよー』





いや、あの目の輝きは東城殿に負けず劣らず
本気のように見えたのだが…まあいい





「しかし助力はありがたいが、何故に
初対面の私へここまでしてくれるのだ?」


『僕の事信じてくれたしお互い様だろ?
それに僕は、人の嘘も秘密も見抜けるし』



「なっ…!それは真か!?


嘘さ 適当吹いただけ!初対面の人間の
秘密が分かる
、なんて事言うヤツはペテン師か
化け物のどっちか 騙されちゃダメだぞ?』





どうも食えぬ御仁だが…余計な詮索はすまい







"力"の貸与は 手を触れ合うだけの動作で行われた





『痛くは無いけど 覚悟はいいかい?』


「無論だ」





伸ばした右手と正直殿の右手が重なった瞬間


雷鳴のような鋭い音が耳の奥で鳴り


思わず手を引っ込めた途端、いくつもの
人の声とも物音ともつかぬ音が湧き出してきた





「おおっ…音が、たくさん聞こえる 頭が…!」


落ち着いて 慣れれば何とかなるから
とにかく、一つの声に集中してみるといい』





耳を押さえて 言われた通り意識を研ぎ澄ます







…少しずつ騒音は弱まり、浮かび上がるように
聞きなれた者達の声が 耳に届き始めた





「この声について行けば、銀時達に会えるのか」


その通り!飲み込みが早くて助かるよ
僕は後からついていくから、先行ってて』


「分かり申した正直殿 しからば後ほど


『気をつけてなちゃん』





手を振って正直殿と別れ、私は声を頼りに進む







        ――――――― 「銀時!」 ―――――――











あれから金だけじゃなく、他のいろんな願いが
口にしなくても叶えられまくって





『あ〜ん銀さんステキぃ〜!!』


うっひょひょ〜ハーレムじゃーい!
苦しゅうない近うよれぇ、なーんつって!!」






オレは今、高級クラブのソファに座って
キレイどころ侍らせながら美酒を味わっている



もちろんその中には結野アナだっている





「今日…夜までお伴させてくださいね?」


「んふふ〜わーかってるって、今夜は
寝かさないぜぇ?みんな好きなのじゃんじゃん
頼めよ!今日も銀さんのおごりだぜ!!


『きゃー!銀さん太っ腹〜!!』





さいっこーに幸せ!


ついにオレの時代キタよコレ!!








「こんな所にいたか…戻るぞ銀時


「あんだよ、ガキがこんなとこに
来ちゃいけません〜ほら帰った帰った」





手で追い払うけれど、みすぼらしい作務衣の
ピーマン娘は引き下がろうとしない





ここでのんびり骨休めをしている場合か?
早く新八や神楽を探して合流すべきだろう」


あんだようるせーなぁ、銀さんだって色々
忙しいんだから休みぐらい必要なんだよ





いい気分に水を差されて白けたオレへ


店の兄ちゃんが、気を利かせて耳打ちする





「お客様、よろしければ限定サービスとして
個室でポロリありの娘をご紹介しましょうか?」


「え?ポロリっつったらあのポロリだよね?
組んずほぐれつイヤ〜ン、キャー!みたいな」


ええ!誰もが声を上げて喜ぶあのポロリです」


「当然女子だよね?野郎とかのパンツが
ポロリとかじゃないよね?」


もちろん、お客様のご要望に沿った女性の
ポロリですとも!
もしお客様にそちらの趣味が
ございましたらそういったご用意も致しますが…」


マジでか!あ、いやオレはノーマルなんで!
けどつまんねーモン見せたら金払わねぇよ?」


構いません!万一ご不満を抱かせるようであれば
私めが責任を取らせていただきます」



「よーし そんじゃ期待しちゃおっかな〜」


「お任せください!必ずやお客様に盛大かつ
大満足のポロリをお約束します!!」



いやー気が利くいい店じゃねぇか





銀時、そんな悠長な事をしている場合じゃ」


あーはいはい要件は後で聞くから
大人の楽しみ邪魔すんな そこで待ってろ」






野暮なバカ娘へそう言って、兄ちゃんの案内で
期待を胸に個室へと足を運んだ







雰囲気のいい室内にいたのは…





オレ好みのナイスバディーをした、ポ○リ





「確かにポロリだけど、それ別のポ○リぃぃ!


「お気に召していただけた〜のだ?今回は
特別サービスで一発までなら本番オッケー


出来るかァァァ!テメェみたいな下手な
アイコラもどきで誰が勃つかぁぁぁ!!」



騙しやがったなあの野郎!こんな店訴えてやる!





意気込んだオレへ、アイコラもどきがすがりつく





「待って欲しいのだ、僕のポロリをぜひ
見ていって欲しいのだ〜」


あん?オレにそんな趣味ねーんだよ離しやがれ」





腕を振りほどこうとしたその瞬間







相手の首が落ちて 音を立てて床に転がった





スゴイでしょ〜僕のポロリ!
これで許して欲しいのだー」


いやああぁぁぁ!ポロリっていうか
ゴトリいぃぃ!」






しゃべる生首すり寄る身体をひっぺがし

部屋から出たら、そこに兄ちゃんが佇んでた





「どうですか?お客様のお気に召しましたで
召すかぁぁぁ!エロを期待してたらグロって
どこの層に受けるワケ!?てか誰得ぅぅ!?」



「それは大変申し訳ございませんでした
かくなる上は、私が責任をとって


「おーよきっちりケジメつけてもらおうじゃ」


オレの台詞半ばで、兄ちゃんの首が取れた





「ポロリさせていただきます」







ヤバい よく分かんないけどオレ
なんかヤバい扉を開けたっぽい





無我夢中で逃げようとしたら 店の女の子も


周囲の客も首をポロリさせて、身体だけ
オレの方へと近寄ってきている





「ぎゃああぁぁぁ!何このバイオ状態ぃぃ!!」


「銀時!こっちだ!!」





いつの間にか側にいたに手を捕まれ


導かれるようにして、オレはその場から逃れた








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:正直さんの元ネタは某洋ドラ博士と
AAの白大根、そしてネジ先輩の三人ほどっすね


銀時:要はミーハーなだけだろテメェ


狐狗狸:否定はしない あとこっから色々
ホラーチック…てかグロ注意です


銀時:その警告遅くね?てゆうか最近の話
オリジも夢小説も問わずグロばっかじゃねーか


狐狗狸:そろそろ意識してセーブするべきかな
…これでも一応抑えめなハズなんだけどね


銀時:絶対ぇウソだわー、それより何で
だけあのパンツ男と会話できたの?


狐狗狸:それは彼女自身の性質が関係してます




何気にファインプレーが行われていますが
それは、後ほどネタバレする予定です


様 読んでいただいてありがとうございました!