仕事が珍しく早めに終わったので店を出れば





細い路地の間から、新八君達が手招きをしていた





「…こんな時間にこんな所で何してるの?」


しーっ!スイマセンとりあえずこっちに!」


よく分からないけど切羽詰ってるらしい





頷いて路地へと入れば、彼は辺りを見回し
開口一番にこう言った





「あのーさん、銀さん見かけませんでした?」


「見かけてないけど…どうかしたの?」


「万事屋入りたい平子っつー極道娘と一緒に
ランデブー行ったきり行方知れずネ」


「え、どういうこと?」


「追われる内に逸れたのです」


「ゴメン、君には聞いてないから」





ちょっとヘコんだ様子の妹に代わって、新八君が
たどたどしいながらも経緯を語ってくれた







「…って次郎長一家にケンカ吹っかけたぁ!?
一体何やってるの君達は!!」


「決定的にしたのは銀さんなんですけどね…
あの、さんどこ行くんです?」


「話しかけないで僕は何一つ関係無いから」





大通りへ戻ろうとするのを、神楽ちゃんが
思い切り袖を掴んで阻止する











第三訓 時計塔の映画化とS○ECの
続編とかもいつ決定するんでしょうか?












「残念、妹がいる以上今更それは通らないアル
観念して腹くくるねピーマン兄貴


「やめてちょうだいそのあだ名とニヤケ顔…

どうせあの人の事だから、万事屋で待ってれば
ひょっこり帰ってくるんじゃないかしら?」


「留守番してたけど、銀ちゃん全然戻って
こないから探しに来たアル」


「途中 落さんが涙目で頭振り乱して
走っていくのは見かけたんですけどね…」





言われて、今日定例会議で西郷さんが
出席するんだと聞いていたのを思い出す





「お登勢さんにも連絡入れてないの?銀さん」


「それが、お登勢殿はまだ会議から戻らぬようで」


「そう…でも悪いけど僕は役に立てそうにないから
人を探すならプロの方に頼んだ方が確実だよ」


「それもそうアルな じゃあちょっと
アイツらに頼んでみるネ!」





勝手に話がまとまったようで、とりあえず一安心





「僕も一応帰り道で気をつけてはみるけど
…でそのピラ子って子、どんな子なの?」





三人から少し距離を取りつつ形式的に訪ねる





「頭の上に小さく髪の毛をくくってて」


「割合もっさりした印象の女アル」


「あと、植木鉢一家の鉄砲玉だと言っていた」


「いやそれ今関係ないんですけどさん」





聞き覚えのある単語に、僕は待ったをかける





「植木鉢一家?」


「ご存知ですか兄上」


「常連のお客が何人かその筋にちょっと
詳しいみたいで、小耳に挟んでたんだけど」





"酒の席での話"と前置きし、彼らへ語った
大まかな内容をざっとあげるなら





植木鉢一家と次郎長は縁者だったとか


一家の娘が名高い大侠客へ嫁いだらしいけれど

子供を連れて戻って来たとか


次郎長一家に名代だけ取り潰され、今では
看板たたんで紅花園を経営している…とか





え゛え゛え゛え゛!?それ本当ですか!!」


「あくまでお客からの又聞きだからね…でも
いくらかは当たってるんじゃない?」


「じゃ、じゃあ復讐じゃないとしたら
どうして平子さんはあんなことを…?」


「ともあれ本人から聞いた方が早いネ
行くアルよ新八、


「それでは兄上 お気をつけてお戻りを!」







あわただしく立ち去っていく三人を、僕は
手を振りながら見送って…ため息をついた





「ああ…また嫌な予感がするなぁ」





―――――――――――――――――――――









ボスの不在と本日決まった会議の"結果"とを
比較的簡潔に説明をして


無線を通じて少しの間話し合い 銀時と
"ピラ子"なる少女の捜索を引き受ける事を伝えた





「分かった…何かあったら連絡を入れるよ
わざわざ訪ねて来たのに悪いな」


『いえ、こちらこそ大変な時にすみません』


『てゆうかアイツもほとほと秘密主義アルな
私達に内緒で勝手にどっか行くなんて』





ああ、きっと屋敷ではあの二人が困った顔して
なだめてるに違いない…





「まぁそう言うな、アイツもすぐ戻ってくる」


『…仕事だと大変だな お主も』


「今のセリフはどういう意味かな?


『何、気にすることはない』





意味深っぽい言い方にも聞こえたが…下手に
突っ込んでボロを出すわけにも行くまい


任務について"ボス直々の口止め"だからな





「とにかく、夜も遅いし万事屋へ戻っておけよ

それと次郎長の所のゴタゴタについては
後でオレ達も仲立ちしてやるから安心しておけ」


お願いします…お忙しい所失礼しました』







礼儀正しい新八の一言で無線が切れて





「ったく、面倒ばっかり起きるなこの街は…」





ため息をついた直後、再び無線がけたたましく鳴る





「…どうした?」


『想定外の事態が起きた…どうやらオレ達は
まんまとハメられたようだ』


「どういうことだ?」


訪ねれば、アイツの声に耳障りなノイズが混じる





『武器は存在し…奴ら…最初からオレを…』


「おい、どうなってるんだ!」


「電波障害が起きているようです!」





クソっ…一体、どうなっているんだ!?





『街が危な…頼む……二人と、街を護っ…!





その言葉が終わるか終わらん内に無線が切れた


直前で 銃弾の音を微かに響かせて







「何が起ころうってんだ…この街に…!





室内にこだまするノイズで埋まった無線へ
オレは、そう毒づくより他に無かった





―――――――――――――――――――――









空が白み 日が昇るよりも早く万事屋へと
はせ参じ、二人と共に再び銀時達を探すも


依然として行方は知れぬままで





「銀さんと平子さん…やっぱり何かあったんじゃ」


「落ち着きなよアンタら、銀時(アイツ)が
そう簡単にくたばるタマかね」





行く末を相談すべく集まった店内に
電話の呼び鈴が鳴り響く





「はいよ、こちらスナックお登勢…」





普段と変わらぬ調子で受話器を手にし


ほんの一瞬だけ…お登勢殿の目の色が変わった





しばらくの間、集う私達を手で押さえつ
短い相槌だけを繰り返し





「……そうかい…わかったよ」







静かに受話器を置き 振り返ったお登勢殿が

笑みを浮かべてこう言った





「フン、心配いらないよ 銀時からだ」





先程の通話で、平子殿も無事であり


次郎長一家と衝突寸前 あの"取り決め"
あちらに伝わったらしく話し合いで
決着が着いた…そう言っていたらしい





それを聞いて、私達は肩の荷を降ろした





「心配させやがって
どこで何やってたアルかアイツら!!」


「戻った折にしっかり問い詰めねばな、神楽」


全ク、毎度毎度人騒ガセナ男デスネ」


その点については猫耳年増殿と同意だな





「アンタらもご苦労だったね 昨日から
ずっとメシ食べてないだろう」


「そういや、安心したら急にオナカが」





腹に手を添え苦笑する新八へ笑いかけ
お登勢殿は私達に向け、こう言った





「どこに食べに行く?」


「いいアルかァァ!!」


「焼肉!!
断固焼肉デス タッカイ所ガイイデス!!」



「アホか!!それじゃあたら腹食えないネ
食べ放題!!ソフトクリーム作れるトコ!!」



「ケンカはやめてください ここは折衷案で
ガソリンスタンドにしましょう」


「どこが折衷案!?」





…しばらく神楽と猫耳年増殿の口論が絶えず


しばしば卵殿や新八と共に二人を諌め





どうにか話がまとまり、少し遠目のその場所へ
足を向けるべく外へと出て







肝心のお登勢殿が 店から動かぬ事に気づく





「…お登勢殿?参らないのか?」


「先にいっといておくれ 私も銀時とピラ子が
きたら行くから…ほら行きな


促す姿に不自然さを感じてはいたが





それ以上、踏み込んではいけないモノを感じ





!何ボサっとしてるアルか!!」





神楽に腕を引かれるまま 五人で店へと歩む





―――――――――――――――――――――









昨夜の無線妨害の後、副司令は早急な対策に奔走し


その傍らでボスのご友人方の"頼み"へ
人員を割り振るよう我々へ命じられた





「副指令…よろしいのですか?」


「仕方が無いだろう、アイツらだって心配だろうし
次郎長一家と接触している可能性が高い以上
中立であるオレ達には争いを沈静させる義務がある」


「はっ!失礼いたしました!」





敵味方、どちらであろうと無益な殺生を避けるのが
我々の軍の規律でもある


それに副司令も、ボスとの通進が途絶え
安否を懸念しておられるのは我々と同じのハズ





与えられた任務をこなすべく思考を切り替え







捜索の末…ある波止場の防波堤に
依頼されていた人物の片方を見つけたのが明け方





何故かコンクリートで固められたポリバケツらしき
物体から足を出した状態で横たわっており


側には次郎長一味の幹部・黒駒勝男も

腹部を負傷した状態で発見した





「こちら捜索部隊!目標の一人と男性一名発見!
双方とも負傷している模様!救護願います!!


『了解!』







応援が到着するまでの間、応急処置を行い





二人が一度海へと入水した形跡と


勝男の負傷が刀によるモノとを認める





「う…」


「目覚めましたか、ご安心ください
もうすぐ救護班が到着いたします」


何や、存外しぶといのぅ兄ちゃん」





意識を取り戻した彼へ、すぐ側で安静にしていた
勝男がいくつか言葉を語りかけ





直後 唐突に彼が身を起こして立ち上がる


いけません!安静にしていてください!」


「うるせぇ!
オレは…オレは行かなきゃならねぇんだ!!」






暴れだし、抑える我々を振り切って彼は
その場から走り出し





「ったく…待ちぃやアホんだら!!





勝男もまた舌打ちをして、彼を追っていく





「無茶だあんな状態で…!」


とにかく無線にて連絡を入れ 急ぎ二人の
怪我人の後を追って駆けて行く








――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:ロクに銀さんが絡んで無くてスイマセン
次回以降でどーにか…出来たらな〜


銀時:おーい、とうとう奴らだけでなく
奴らの軍のモブキャラまで来たよーコレ


神楽:私達だけでなくまで空気化するヨ
KYから空気嫁になるアルよ


新八:何度目?時系列丸無視のその発言


キャサリン:ソレヨリアノピーマン娘ノ
オ兄サン案外情報通デスネ


狐狗狸:そっちの世界のたくって長いからね


たま:生体反応微弱…体温低下…
これより電気ショックを行います


勝男:ほぎゃぎゃぎゃぎゃあぁぁぁぁぁ!


銀時:展開早ぇよ!三途に行ききってねぇ奴に
トドメさすなポンコツぅぅぅぅぅ!!





広がり行く不安を抱いた、彼女の前に…!


様 読んでいただきありがとうございました!