「アニキぃぃぃぃ!!」





吹き飛ばされて伸びている男へもう一人が
叫びながら寄り添って





「極道娘の暴走止めようとしてたのに
なんでアンタが先に暴走してるワケ!?」






新八の怒号に、銀時が"少々小突いた"とか
何とか言い訳がましいことを口にしている







…まだ頭が少し霞みがかっているのだが





「すまぬが、状況を説明してはくれぬか?」


「アニキが身体張ってわしを助けて
くれたんですよぉ〜カッコよかったです〜」





と、答えた平子殿が銀時へと向き直って





「これで 是が非でも次郎長と大喧嘩するしか
なくなりましたね〜」


楽しげな笑みを浮かべて そう言った





「わしと一緒に次郎長に真っ赤な花を飾って
日本一の大親分になりましょうや〜」





その直後 平子殿はくくり髪をつかまれ





「復讐劇にオレを加担させるため芝居うって
わざとピンチにおちいりやがったなぁぁぁ!!」



怒りに任せた銀時に振り回されていた





「経過はともあれ、謝ればよいのでは?」


「もうその段階超してんですよ!空気が
読めないんだからアンタは会話に参加しないで!」



「そーですよぉ〜もう次郎長と喧嘩して
大親分になるしかアニキに道はギャアァァァァ


「冗談じゃねーぞ誰が次郎長なんかと喧嘩するか
誰が大親分になるかァァ!誰が」






言い募るその後ろから男が怒りもあらわに


「てめーらこんなマネしてタダですむと思うなよ
戦争だァ!!「戦争なんざするかァァァァァ」





放った側から"うるさい"と蹴り飛ばされた





「銀さんんんん!!たった今戦争の火ぶた
切っちゃいましたぁぁ!!」












第ニ訓 バカとゴミは使いよう











…錯乱しっぱなしの二人は放っておいて





振り回しの刑からどうにか逃れた平子殿へ
この際なので訪ねてみる





「お主の目的は次郎長の命か?それとも
かぶき町の支配者の座か?」


「どういう意味ですかぁ〜さん?」


「…手練の者といえ、自らの一家を潰した
手合いの大将首を直に狙うのは無謀だろうからな」





どのような事情かはあずかり知らぬが


恐らくは何らかの策がある上で 戦争を起こしてでも
次郎長を狙うために銀時が必要かと踏んだ


…そこまでして、何を果たす気なのか







少し間があり、彼女は笑顔のまま言葉を返す





「やだなぁ、わしの目的は次郎長に
キレイなお花を飾りたい…それだけですよぉ」





けれども…ほんの一瞬だけ


その瞳に感情が灯ったのを見逃さなかった





―誰にも決して邪魔をさせない


そう言わんばかりの、覚悟に近き決意







「平子殿、お主は」


あ!アニキ達用意いいですねぇ〜」





釣られて視線を向ければ、いつの間にやら
泥に似たモノを詰めたポリバケツがあり





オイぃぃぃぃ何マジで入れてんだぁ!!
どんどんマズイ事になってるから!!
本物の極道になってるから!!」


新八の悲鳴も無視し 二人がその中に
倒れた男達を放り込んでいた





「その状態では運びにくくはないか?
せめて港に運んでからの方が」


「怖いレクチャーはいらんわぁぁぁぁ!
てーか止めてよアンタも!!」



「いやいや詰めてからコンクリが乾いたトコで
転がして運べば楽チンだよ〜(ダミ声)」


やめて!
本当に色々なトコから怒られるからやめて!!」





足が入りきらず苦心している銀時の横手へ





「…ん?なんやごっつい事になってるやんけ
何があっ…」


犬を連れたいつぞやのヤクザ





―――――――――――――――――――――









「そっちの状況はどうだ?」


『相変わらずさ、事前の情報で聞いた限りじゃ
ここまで手間がかかるモノとは思わなかったが…』





無線越しの声に少しばかり苦笑が混じり
こちらも"全くだ"と返す







―かつてこの街に君臨し
賭場の一切を仕切っていた次郎長一家


その勢力へ介入しカジノで成長しながらも
真っ向から対立してきた孔雀姫・華陀


オカマとは言え武者や志士などの武力勢力を
抱え込んで独立しつつある西郷


そして、昔からの顔役としてこの街に
慕われ続けた女帝のお登勢





この四人…いや四天王の勢力間での争い
大きくなり続け、立て続けの事件も含めてか

街は例年にもない緊張状態に陥っている







一応はボスの元 こちらは中立という
立場を取ってはいるつもりだ


新たな勢力として一目置かれ…

また、彼らに危険視されているのも事実だが





「こんな時に限って急な任務とは
お前もついてないなぁ?」


仕方ないだろう?江戸を脅かすかもしれない
兵器の存在は確かめておかなければな』





まぁ、ボスほどで無いにしろ オレとて
街の連中を護るつもりくらいはある


実際 アイツが戻ってくるまでの間

残した二人の護衛を任されたしな





『それより、かぶき町の定例会議がもう
始まってるハズなんだが…行かなくていいのか?』


「まー少しくらい遅れても構いはしないだろ
最悪 内容はお登勢に聞けばいい」


『あの街にいる以上それはマズイだろ…
オレの方はいいから、早めにそっちに顔出しとけ』


「わかったよ 何かあったら連絡をくれ」





通話を終了し、軽くため息をつくと他の者に
ニ三命令を告げて基地を出る





…美女が一人いるのが救いといえば救いか





―――――――――――――――――――――









「待たんかいワレぇぇぇぇぇぇぇ!!
ウチの組のモンに何してくれてんじゃァァァ!!」



「ぎゃああああああああ」





いつぞやのヤクザによって手下の者どもが
どこからともなく押し寄せてきて


殺気をはらんだ集団から、私達三人は逃げていた





「銀さんんん とんでもない事になりましたよ!!
どーすんすかぁぁぁ!!」



「銀太くんならしずか御前とランデブーだよ(ダミ声)」


はあ?野郎 人を囮に使いやがったなァァ!!」





初めに逃げた時には一緒にいたハズなのに
一体いつの間に分かれたのか…


二人とも、逃げ足の速いことだ







にしてもこのまま当てもなく走り続けたとて

後ろの奴らが私達を見逃すとも思えぬ


一旦 振り切る必要があるのだけれど





「流石にこの数相手に往来で殺傷はマズイ
…何かいい手は無いだろうか?」


「僕に聞かないでくださいよ!もうほんっと
この状況で相談とか空気読んで!?」



「もーしょうがないなぁちゃんは〜」





駆ける足を止めぬまま、神楽が取り出したのは





「こんな時にはこれ 黒板〜(ダミ声)」


「だからどっから持ってきたの
神楽ちゃんソレェ!」



「コレを尖った物で思い切り引っかけば
どんな奴でも一撃コロリだよ〜」





言って適当な場所に黒板を立てかけたので

私も 立ち止まりながら槍を取り出す





「なるほど…それはいい手だ」


「え、ちょっタンマさ」


「追い詰めたぞテメェらァァァァァァ!!」





男どもの手がこちらへ伸びるよりも早く


刃を表面にあてがい、思い切り擦り下ろした





『ぎゃあああああああぁぁぁぁぁ!!』





不快な音とゴロツキども(ついでに新八)の
悲鳴とが合わさって路上に響く中


もだえ苦しむ隙だらけの連中を

耳を塞いでいた神楽と共に全て張り倒した





よし、これでしばらくは追っ手も途絶えよう」


「って何で平気なんですかさんんん!?


「慣れてるだけ故」


「とにかく今の内に逃げるアルよ!」





頷いて、私達は転がる者どもを無視し
急いでそこから離脱するのだった





―――――――――――――――――――――









街の中も何やら騒がしかったが


会議所である寺でも、不必要なほどの大人数が
入り乱れての騒ぎが繰り広げられていた





「なぁ…先程ものスゴイ音が聞こえたが
誰か状況を説明しちゃくれないか?」


見ての通りさね それよりアンタ
代理にしちゃずいぶん遅いじゃないか」


「すまない、こちらも外せぬ用があってね…
こいつはヒドイ有様だな」







まず目に付くのが部屋の中央にある崩れた大仏


真ん中から鋭い刃物で斬り開かれているが

…やったのは、そこに佇む次郎長だろう


元々大仏のあった場所には それを投げたらしい
西郷が仁王立ちで腕を組んでいる





室内には極道者とオカマ達が鼻息荒げてひしめき


対比している華陀の、すぐ側にある襖には
黒尽くめの人間が数人控えるのが見える





で 開け放たれた襖の側


平たく言えばオレのすぐ横にはお登勢が
キセルを悠々と吹かしているワケだが





「ほう…お前さんが最近この街に来た英雄かぃ?」


「その者は英雄の率いる軍の司令に過ぎん」


「まぁ、当たらずとも遠からずってトコか

それよりお嬢さん方 あまり話し合いの場
ケンカをするのはよろしく無いと思うんだが?」





扇子で口元を隠しながら、華陀は笑みと共に言う





「なに そち達の手を煩わす必要も無きよう
我らの間で取り決めが交わされた所じゃ」


「取り決め?」





首を一つ振り、西郷が代わりに淡々と告げる





「これより四天王配下4つの勢力に属する者は
かぶき町での一切の私闘を禁ずる


…これに反したものは残る三つの勢力により
一兵卒にいたるまで叩き潰すんだそうよ」







不敵に笑い、口を開いたのは次郎長





「…ここの奴らはこの次郎長の命(タマ)狙いだが
兄ちゃんはどっちにつく気だい?」






静かな…しかし気迫のこもる一言へオレはこう返す





「オレ達が護るのはあくまで"江戸の街"だ…
そちらの争いには仲裁はしても、関与はしない」


「ふぅん…そいつぁ賢明だねぇ」





これは…想定していたより状況は深刻かもしれんな








――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:匿名の方々が大分出張ってますけれど
紅蜘蛛パターンな感じでご勘弁を


銀時:出来るかぁぁぁ!何でまたオレだけ
ハブられてんの!?何恒例化してんのぉぉ!?


平子:一緒のポリバケツに入った中じゃ
無いですか〜アニキ…ぎゃあぁぁぁ〜!!(回)


神楽:毎度ながら、ここまで風呂敷広げといて
収集つくアルか?バ管理人くん(ダミ声)


新八:気に入ったのそれ?てーかポリバケツや
黒板はどっからだしたの本当に!!


狐狗狸:ドラいモンだからアリですよ(笑)




渦巻く思惑…そして銀時達の命運やいかに?


様 読んでいただきありがとうございました!